海洋

ここでは,海洋についての簡単な知識を紹介します。

鹿児島と海洋

鹿児島は南北におおよそ600kmもある県で,その大半は島嶼が点在する海洋域が占めています。

鹿児島の地学現象の背景にある海洋について簡単にまとめます。

海流

黒潮

鹿児島は「黒潮」の流域にあります。黒潮は世界最大規模の海流の一つで,幅100kmにもおよび流速は早いところでは2m/s以上にもなり,輸送する水の量は毎秒5,000万トンともいわれます。

黒潮を作っている海水の特徴は,水温が高(暖流)く塩分濃度が高く栄養塩類(リンや硝酸態窒素など)が少なくなっていることがあげられます。

栄養塩類が少ないため,プランクトン類が少なく透明度の高い海水になっているため,周囲の海よりも「青黒色」が強くなります。これが黒潮の名前の由来になっているそうです。

黒潮の流路は,台湾と石垣島の間を北上し,東シナ海の大陸棚斜面上を流れ,トカラ列島を過ぎたところで屋久島-種子島の南側を迂回するように大きく回り込みながら太平洋側へ抜けていきます。その後,九州の東部を四国方向へ向かって流れていきます。

黒潮は,紀伊半島〜房総半島沖でしばしば変則的な蛇行をすることが知られており,大きく蛇行するとき「黒潮大蛇行」と呼ばれています。この変則的な流路変更は船の運航だけでなく,潮位や漁業にも大きな影響を与えているそうです。

対馬海流

トカラ列島までは東シナ海を流れる黒潮ですが,種子島-屋久島の南側を太平洋側へ抜け出ていってしまいます。

ですが,黒潮が運んできた暖かい海水の一部は,そのまま北上を続け,東シナ海の海水と混ざりあいながら対馬方向へ流れやがては日本海を北上する暖流になっていきます。これが対馬海流です。

海浜流

海流ほどの強さはありませんが,沿岸には「海浜流」と呼ばれる海水の流れが形成されることが知られています。

海浜流は主に波によって形成され,代表的なものに沿岸に沿ってほぼ平行に流れる「沿岸流」や,「離岸流」・「向岸流」が一般に知られています。

海水面の上下動

ここでは海水面の上下動について簡単に紹介します。

潮汐

もっとも一般的に知られているのが「潮汐」だと思います。

潮汐は,主に月と太陽の重力の影響を受けて生じる現象です。月は太陽の約二倍の潮汐力を発生させています。

月と太陽が地球と一直線上に並んだ時の潮汐が最も大きくなり(大潮),月と太陽が地球を中心にして直行する方向に並んだ場合に潮汐が最も小さくなります(小潮)。

そのため,大潮になるのは月が「新月」または「満月」のときで,小潮になるのは,「上弦」または「下弦」になるときと言えます。

潮汐は,「潮汐力」という重力によって生じる見かけ上の力で,「重力方向に平行に引き延ばされるような力」として理解することができます。

地球は基本的に「固体」でできているため,潮汐力によって形を大幅に変形させることはないが,自由に流動できる「海水」は月の重力差によって,月の重力方向に平行に引っ張られ月の方向と月と真反対方向に引き寄せられ,地球を半周するような巨大な「波」を形成します。

実際の潮汐は計算上の潮汐とは異なり,摩擦や地形の影響を受け,計算上のものより遅れるそうです。

高潮

台風などの発達した低気圧が接近すると,海面海面が上昇する現象が知られています。これが「高潮」と呼ばれるものです。

高潮の原因は大きく2つ知られており,低気圧の接近に伴って気圧が低下することによっておこる「海面の吸い上げ」による海面上昇(ストローの吸い上げと同じ)と,岸に向かって吹く強風が「海水を吹き寄せる」ことによって生じる海面上昇とが知られています。

海岸地形との関連も強く,台風接近時に台風の接近方向に開いた遠浅の湾奥部はしばしば猛烈な高潮に襲われることがあることが知られています。

高潮と潮汐の大潮が重なると,堤防を海水が乗り越えたりするなど被害が大きくなることがあります。

副振動

最近,よく耳にすることがあります。「副振動」という原因不明の海面の上下動があることが知られています。この副振動場合によっては短時間のうちに急激に海面の上下動が生じるため,しばしば災害へと発展することもあります。

気候変動による海水面の海進・海退(上下動・海水準変動)

海水面の上下動のことを,「海進」・「海退」といいます。海面が上昇した状況を想像してみてください。その場にいると,波打ち際が陸側へどんどんと進んでくるように見えるはずですよね。このことから海水面の上昇のことを「海進」と呼んでいます。反対に,海面が下降した場合の状況を想像してみてください。波打ち際がどんどんと退いていくように見えるはずですね,このことから海水面の下降のことを「海退」と呼んでいます。

最近,国際社会問題として取り扱われることの多い話題の一つに「温暖化」の問題があります。

温暖化が進行することによって,陸地の上にある氷河や大陸氷床【陸地の上にある主な大規模な氷は,グリーンランドと南極にあります】などが溶けて海洋に流れ込むだけでなく,海水自体の水温が上昇することで海水が膨張してしまう作用も手伝って,海水面の海進が起こると考えられています。

反対に地球が寒冷化すると,海水温が下がることで海水が収縮すると共に,高緯度地域では陸地に降った雪が溶けることなく陸地に残り続けやがては自重で押し固まり氷となって低いほうへと流れる氷河や大陸氷床が形成されることで海水の総量が少なくなっていき,海退(海面の低下)が生じると考えられています。

地質時代を通じて地球は数限りなく海水面の上下動を繰り返してきていると考えられており,新生代だけに着目しても100m近くも海水面が上下動を繰り返してきています。

海岸付近の領域区分

海岸付近は潮の満ち干などによって多くの環境ができているため,それぞれを呼び分ける名称があります。ここでは,それらについて簡単に紹介します。

潮間帯

潮の満ち干が起こる領域のことを「潮間帯」と呼びます。これは,潮干狩りなどででかける領域と考えれば分かりやすいかと思います。この潮間帯の上の部分を「潮上帯」,海水面下を「潮下帯」と呼びます。

サンゴ礁

鹿児島の島嶼域の多くの場所でサンゴ礁を見ることができます。サンゴは化石としても歴史が古く,環境の限定されたところに生息しているため,サンゴ礁の化石が産出すると「古環境」を復元することができるため,「示相化石」としても有名です。

汽水域

海水と真水が混ざり合う水域を汽水域(きすいいき)と呼びます。例えばマングローブ林で有名な場所の多くは汽水域として知られています。