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岩石の種類  ・  岩石の風化  ・  岩石の分布  ・  岩石の分布(堆積岩)  ・  岩石の分布(火成岩)  ・  岩石の分布(変成岩)


岩石

ここでは,岩石についての簡単な知識を紹介します。

岩石の種類

岩石は成因の観点からみると,大きく三種類の岩石に分けることができます。

  • 火成岩‥‥マグマが冷え固まってできた岩石
  • 堆積岩‥‥堆積物が,「続成作用」と呼ばれる,堆積物の隙間が埋まり一つの岩石になっていく作用を受けてできた岩石
  • 変成岩‥‥堆積岩などが地下深くで高い「温度・圧力」を受け,固体のまま「変成鉱物」が成長して元の岩石とは異なる岩石になったもの

岩石と鉱物

岩石の種類を特定するには,岩石がどのようなものから構成されているかを知ることが重要になります。岩石を調べるには,岩石を割って風化されていない岩石の面を割り出すところから始める必要があります。

風化されていない,新鮮な岩石面が出てくれば,下の写真のように「鉱物」を見ることができることがあります(※肉眼サイズのものもあれば,顕微鏡でなければ鉱物と判断できない岩石が多いことを念頭に置いておいてください)。

岩石中に長方形状の黒い3cm大の角閃石という鉱物が写っている
Fig.1 安山岩中に成長した巨大な角閃石の結晶(斑晶)
 安山岩という主に「火山」と関係のある岩石を割って出てきた角閃石の巨大な結晶。

川内市の採石場で採取したもの。これに当たる光の角度を変えていくと‥‥。

結晶面に光が反射し,結晶全体が鏡のように光っている写真
Fig.2 結晶面が確認できるようす
 結晶は,規則正しく原子が配列しているため,結晶面は非常になめらかな面を形成する。そのため,光に当てて結晶を動かすと鏡のように光を反射して輝きます。

例で示した安山岩はあまり肉眼で判断できるほど結晶が成長しないタイプの岩石です。では,大きな結晶が成長してできるタイプの岩石になると(下のFig.3)‥‥。

無数に光り輝く結晶でできている花こう岩の写真
Fig.3 岩石全体が結晶鉱物でできているため,きらきら光る花こう岩
 花こう岩で代表されるような,結晶が大きく成長するタイプの岩石は光にあてて動かすと無数の結晶面がきらきらと輝いてみえる。そのため,花こう岩は化粧岩としての価値が高まり,古くから石材として活用されてきた。

岩石の中に含まれる鉱物や,砕屑物の大きさ(れき・砂・泥)などによって,岩石の名称は決まっていきます。

岩石の風化

岩石は,地表付近の地下水や空気や温度変化などによって,「物理的(機械的)」または「化学的」な作用を受けることになります。

その結果,岩石は次第に細かく砕かれていったり,酸化されたり,鉱物の結晶構造が変化したりして,様々に「変質」していくことになります。これらの現象を総称して「風化(ふうか)」と呼んでいます。

風化は大きく分けて,「物理的(機械的)風化作用」と,「化学的風化作用」の二種類に分かれます(下の写真参照)。

物理的風化作用の代表例である「玉ねぎ状風化」の例
Fig.4 物理的風化作用の代表例「玉ねぎ状風化」
 岩石が玉ねぎの「鱗葉」状に節理が生じることからついた名称。画像左中央側の鼠色の部分が元の岩石。岩石の色がまるで異なることからかなり「化学的風化作用」も進んでいることが分かる。

南薩摩半島,県道17号線沿いにある「千貫平(せんがんびら)自然公園」の駐車場わきの露頭の様子。

核の部分が無くなり,立体的に玉ねぎ状風化が分かる画像
Fig.5 核の部分が無くなり,立体的に玉ねぎ状風化が分かる画像
 核の部分がなくなると,玉ねぎ状風化がどのようになっているかがよくわかる画像。

上の画像と同じ場所で撮影したもの。

岩石の分布

岩石は,地形と関係していることが多く,同じような地形が広がっているところには,同じような岩石が分布していることが多いです。

ここでは,岩石の種類別に鹿児島では主にどのような分布をしているか地形と関連付けながら紹介します。

堆積岩

鹿児島県の地下を形作っている主な岩石は実はこの「堆積岩」です。鹿児島のほぼ全域の地下には「四万十累層群」と呼ばれる堆積岩が分布していますが,多くは「火成岩」やシラスなどの「火山起源の堆積物」に覆われていて山間部や海岸沿いで部分的に見ることができます。

堆積岩の例
Fig.6 堆積岩の例
 堆積岩は堆積物が層状に堆積してできる岩石で,一枚一枚の地層はまるで板のようになっている。堆積物が安定して堆積するのは,「ほぼ水平」な水底であることが分かっている。写真のような露頭では,垂直に近い状態に地層がなっている。このことから,この地層は,堆積当時から相当激しい変動を長期間経て現在のようになっていることが分かる。


堆積岩と言えば「砂岩」・「泥岩」・「礫岩」がその代表ですが,鹿児島を特徴づける堆積岩として「溶結凝灰岩」と呼ばれる岩石があります。

溶結凝灰岩はその時の通り「灰」が集まって(凝),溶けて結合してできた岩石ということを意味しています。

この溶結凝灰岩は人類の歴史記録にまだないほどの規模の「破局的噴火」によってできると考えられています。巨大な噴煙柱を噴出した破局的噴火では,非常に高温の火山灰や軽石などがやがて噴煙柱の上昇力の限界が訪れると,火口を中心に低地へ向かって高速に流れ広がっていく現象(火砕流)が生じると考えられています。

これが堆積すると,高温の非常に厚みのある凝灰岩層ができます。その凝灰岩層が自身の重さと熱で溶けて圧縮して岩石化したものが「溶結凝灰岩」と呼ばれる岩石です。

溶結凝灰岩の写真
Fig.7 溶結凝灰岩の例
 溶結凝灰岩の中には,横方向に平たくなった構造(中には黒曜石化しているものもある)が見られる。これを「ユータキシティック構造」と呼んでいます。平たくなったのは圧縮され,溶けた痕跡で,元は「軽石」です。この構造があると,溶結凝灰岩であることが分かります。この溶結凝灰岩は,南大隅町の神川にある神川大滝近くに見られる「阿多火砕流」によってできた溶結凝灰岩です。

溶結凝灰岩は,空隙が多いため軽く加工がしやすく,保温性が高いことから建築資材として古くから活用されてきました。鹿児島の歴史的な建造物に使われている石材の多くはこの溶結凝灰岩でできていることが知られています(磨崖仏【まがいぶつ】・石橋・中央公民館の外壁・石蔵・主な田の神さぁ・などなど)。

鹿児島は,火山の多い場所にあるため多くの溶結凝灰岩が分布している。主なものとして,九州本島部には「シラス」で有名な「入戸火砕流(姶良カルデラ起源)」・「阿多火砕流(阿多カルデラ起源)」・「加久藤火砕流(加久藤カルデラ起源)」が広い地域で確認できます。


堆積岩が主に見られる地域は,北薩地域では「紫尾山」周辺部や長島町の海岸付近,薩摩半島の中南部の山間地,大隅半島では高隈山周辺,離島地域では一部を除いて岩石海岸のほぼ全域で堆積岩を見ることができます。

火成岩

鹿児島では火成岩は主に「山」と関連していることが多いです。

多くの方が「火山」をすぐに思い浮かべると思いますが,実は意外なほど「火山と関係のない山」も火成岩の分布と関係を持っていることが知られています。

たとえば,世界遺産として一躍有名になった「屋久島」。屋久島の山間部のほとんどは「花こう岩(かこうがん)」と呼ばれる火成岩(深成岩の一種)でできています。

三種類の花こう岩の画像
Fig.8 花こう岩とそのバリエーション
 花こう岩は別名「御影石」(石材としての商品名)とも呼ばれる岩石として知られています。写真の花こう岩は,上のものが薩摩半島金峰山,左下のものがすこし風化した大隅半島南部の花こう岩,右下のものがどこかの石材のもの。石材の白っぽい(または赤っぽいところ)が「長石」,透明(灰色)の部分が「石英」,黒っぽいところが「黒雲母」。

同じように,「花こう岩」でできている「山」は,北薩地域の紫尾山。薩摩半島の金峰山や向江山。大隅半島の高隈山西部,肝属山地。離島地域では,屋久島が代表格ですが,甑島や奄美大島にも分布しています(注釈:鹿児島で一般に「花こう岩」と呼ばれている岩石の多くは学問的には「花こう岩」というより,「閃緑岩」と呼ぶほうが正確な場合が多い)。

また,鹿児島県北西部には,現在は活動していない旧火山群が山を形成していることが多いことが知られています。

例:伊牟田池,八重山(甲突川の源流地帯),川内川付近の平山,丸山など

変成岩

変成岩は大きく分けて,「広域変成岩」と「接触変成岩」に分けられます。


鹿児島県での「広域変成岩」の分布は非常に限定的です。まともに見られるのは薩摩半島南西端に位置する「野間岬の西端」に分布している“片麻岩(花こう岩によく似た岩石)”程度。しかし,該当する露頭へたどりつくためにはかなり厳しい崖を登り降りする必要があります。

また,限定的に薩摩半島川辺町の東部山岳地に分布する堆積岩中に「蛇紋岩」(蛇紋岩化が進んだ「超塩基性岩(橄欖岩)」)が産出することが知られています。


反対に「接触変成岩」は,鹿児島県にはあちこちに深成岩の貫入(主に花こう岩)が見られるため,深成岩が分布する付近の堆積岩の多くは「接触変成岩」になっていることが多いです。

接触変成岩は,最初からあった岩盤にマグマが地下から上昇してきて「貫入」してそのままゆっくりと冷え固まって「深成岩」になるときにできます。最初からあった岩盤は長期間にわたってマグマの熱で焼かれ続けることになるため,固体のまま(あるいは一部溶けて)別の安定な鉱物が成長して,元の岩石とは別の岩石へと変化していきます。以下に代表的な接触変成岩を載せておきます。

  • 泥岩→ホルンフェルス(下のFig参照。黒く,緻密で硬い。変成鉱物として菫青石(きんせいせき)を含む場合がある,紅柱石を含む場合もあるが,県内では確認されていない。硬い岩石の代表格なので,石器の材料にもなっている。菫青石は熱すると効率よく赤外線を放射するようになるので,「石焼きイモ」の石としてよく使われる。)
    • 県内では,紫尾山周辺,向江山近辺,金峰山近辺,高隈山近辺,屋久島の海岸周辺近辺に主に分布する
  • 堆積岩→ミグマタイト(花こう岩などの貫入してきた深成岩と変成岩が混在しているような岩石,貫入岩体との接触部に産する)
  • 石灰岩→大理石(別名:結晶質石灰岩。鹿児島では石灰岩の近くに深成岩の貫入は見られないため,大理石は分布しない。)

菫青石を含んだホルンフェルス
Fig.9 菫青石を含んだホルンフェルス
 ホルンフェルスは先に述べたように,元は「泥岩」(堆積岩)で,泥岩に含む化学組成の割合や変成作用の度合いで生じる鉱物に差が生じる。ここで例に示したのは大隅半島高隈山のホルンフェルスで,「菫青石」が多く見られる。灰色に見える1cm大の結晶が「菫青石」。

上の写真は,大隅半島垂水市市役所近くから,高隈山方面へ県道「71」号線沿いに高隈山を登る途中にある露頭で撮影したもの。

風化した菫青石を含んだホルンフェルス
Fig.10 風化した菫青石を含んだホルンフェルス
 菫青石は風化に強いようで,風化したホルンフェルス上にはまるで何かの生痕化石のように見えることがある。

菫青石はきれいに成長すると六角柱状に成長し,青みを帯びたスミレ色になり「アイオライト(iolite)」と呼ばれる宝石になる(別名ウォーターサファイア(water sapphire))。菫青石が風化すると,その断面が花弁のように見えるため花弁を6枚つけた花のように見えるため,「桜石」と呼ばれる鉱物としても知られています。鹿児島県内では,高隈山の花こう岩貫入付近の泥岩部や屋久島の花こう岩貫入付近の泥岩部で菫青石を見ることができます。