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奄振−地元からの提言−「法延長と奄美振興」

2003年2月14日南海日日新聞より

奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)が03年度末で期限切れを迎える。延長を見据えて奄振審議会の議論、出身者の提言などが相次ぎ、奄振総合調査報告の原案も示された。五十年続いた奄振はこれからも奄美の発展、自立のキーワードとなりうるのか。キーワードとするために必要なことは、地元に求められていることは何か。奄美から提言してもらった。 (聞き手・久岡学)

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−奄振事業の成果と課題をどうみているか。

 よくいわれているように港湾、空港、道路といった社会資本の整備が進んだ。それは評価しないといけないと思う。ただ、地域活性化に対する貢献度ということになると、疑問もある。まずは人口の減。奄美全体で十三万人台まで減った。全国に過疎地域が千百ほどあると思うのだが、その中で人口が増えているところが百十二地域ある。雇用確保と住宅政策。この二点に力を入れたところが人口が増えている。

雇用の問題だが、各種事業が導入され、各自治体が施行するわけだが、島外に流れている予算が多く、地元企業の体力が付かない。きちんとした社会保障を付けられる企業がなかなか育たない。沖振法は県の採択の段階で、県内の業者に80%以上は受注の確保という付帯決議まで付けてあった。官公需の需要の確保という法律がある。地元業者を育成しようとするものだが、法律に沿う部分はどんどん取り入れるべきだ。

−地方に対する風当たりが強い。そうした風潮をどう受け止めているか。

 議会も反省すべき点がある。今までは予算を獲得すればいいという風潮だった。道路にしても現道の幅でいいのに国の規格に乗って無駄な税金を投入するようなことがあった。これだけ財政が厳しくなれば税金(財政)がどう使われているか、住民の目も厳しくなっている。これからは環境と共生するような事業でないとやっていけないだろう。

−奄振は必要か。離島振興法でいいのではないかという議論がある。

 格差是正が解消されたかといえばそうではない。和泊町の町民所得を見ても郡平均の98%、県の82%、国に対しては64%。所得格差は縮まっていない。離島振興の枠組みよりも奄振法を延長した方が資金の回転、循環という面でも地元の活力につながると思う。

離島振興法にも参考にすべき点がある。今までは県が策定をして国が認めるという形だったが、市町村できちんと策定をしないといけないシステムに変わっている。奄振も地元の意見を本当に吸い上げ、地元が汗をかくシステムにしていかなければいけない。

−法延長にはこれまでと違った理論武装が必要だと考えるがどうか。

 沖永良部でいえば、農業の振興が重要課題だ。BSE(牛海綿状脳症)問題などもあり、食の安全性が問われる時代になった。安全・安心が大事だ。国に対する食糧基地という位置付けで事業を進めていくべき。

少子化の問題もある。和泊は日本一の合計特殊出生率の町であり、子育てしやすい島。地方交付税の測定単位に合計特殊出生率を認めてもらう。高いところは交付税がもらえる仕組みをつくる。

奄美は安心・安全、そして健康、子育て支援の島。これらが奄振延長のキーワードではないだろうか。

依存体質からの脱却と自立自興の島づくりが重要だ。農業の基盤整備をさらに進めながら建設、水産、観光業とすべての産業がバランスよく発展しないと地域の活性化にはつながらない。

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