肝属山地の地学情報
ここでは,大隅半島南東部に位置する肝属山地について紹介します。
地形概要
肝属山地は四万十帯による山地とそこに貫入してきた花崗岩による山地,その山地の谷を埋めた阿多火砕流の溶結凝灰岩による台地や平野です。
Fig.1 肝付町南部の採石場に見る四万十帯
肝属山地の山々
ほとんどの山々が花崗岩の貫入岩体です。花崗岩の中には結晶質の部分もあり,大きな石英や長石の脈が見られます。山地北西側の一部(特に国見岳周辺)には,四万十帯の露出も見られ,いたるところで採石場が見られます。
- 国見岳(肝付町)
- 黒尊岳(肝付町)
- 甫与志岳(肝付町)
- 八山岳(錦江町)
- 稲尾岳(南大隅町)
- 木場岳(南大隅町)
特に稲尾岳及び稲尾岳周辺は照葉樹林が原生林として現存するため,昭和50年7月に環境省の自然環境保全地域に指定されています。植物・動物・岩石の採取は禁止されています。
Fig.2 稲尾岳自然石展望台より,稲尾岳を望む。
Fig.3 稲尾岳自然石展望台
Fig.4 南大隅町付近の花崗岩
Fig.4の写真ではスケールがありませんが,黒雲母のサイズが2〜3mm,大きなものでは5mmぐらいで入っています。
花瀬・神川大滝(阿多火砕流による溶結凝灰岩の地形)
Fig.5 花瀬公園キャンプ場
錦江町の花瀬公園は阿多火砕流が山地の谷を埋め立ててできた地形です。河床が平らに広がっています。上流から流れてきた花崗岩の岩石によって,削り取られて滝や甌穴ができている部分もあります。阿多火砕流による溶結凝灰岩の河床がほぼ平らに広がっています。
Fig.6(左)花瀬公園キャンプ場にある滝(右)は岩石の拡大写真
花瀬公園の河床にある岩石の筋模様は,公園上流にある花崗岩体が侵食されてできた「礫(れき)」が転がりながら削った跡と考えられています。
Fig.7 神川大滝
阿多火砕流が作った「溶結凝灰岩」でできた台地を,神川が削り込み,滝を作っている。付近は公園整備がなされ,つり橋からは,写真のような絶景を見ることができます。
Fig.8 大滝を作っている,溶結凝灰岩
南大隅町の神川大滝も,花瀬公園と同じく阿多火砕流による溶結凝灰岩による地形である。こちらでは,柱状の摂理を観察することができます。宮崎県の高千穂峡も同様の地形です。