谷山地区の地学情報

ここでは,鹿児島市の南部地域にある谷山地区についての地学情報を紹介します。

谷山地区の位置図
Fig.1 谷山地区のおおよその位置とその範囲
 谷山地区は,薩摩半島東部の鹿児島市の市街地の南部域を含んでいる。

Googleマップで見た地区の様子

地形概要

谷山地区の等高線図
Fig.2 谷山地区の等高線図(50m)等高線

中央付近に記入されている「河川」は,永田川(山之田川・滝之下川)・木之下川・和田川。

谷山地区の南西部には山地があり,谷山地区を流れる河川はこの山地から生じている。主な平野部は「永田川」を主とする河川により形成されている。北部には標高50〜100m程度のシラス台地が広く広がっている。

半島状に南東方向に飛び出した「シラス台地(桜ケ丘・紫原など)」が鹿児島市街地(平野)との接続を難しくしている様子が確認できる。

地質概要

基盤

地質の基盤になっているのは、西日本太平洋側の基盤である「四万十累層群」である。

四万十累層群は、主に砂や泥を主体とする堆積層(いわゆる「地層」を形成している)からなっている。

現在で言うところの日向灘沖の海底に溝状の窪地である「南海トラフ」に堆積した堆積物が、西日本に沈み込んでくる「フィリピン海プレート」の働きによって陸側に「付加」されることを繰り返してできたものと考えられている。

基盤でありながら,地上へ露出している場所は限られている。地上へ露出している場所の多くは山地地形が分布している地域に集中している。そのため,谷山地域の南西部で基盤を見ることができる。

火砕流起源の岩石類

鹿児島全体に特徴づけられる岩石に「火砕流起源の岩石類」がある。谷山地域では主に2種類の火砕流起源の岩石類を見ることができる。

山地の縁に沿うように分布する優黒色の「阿多火砕流(阿多カルデラ起源)」と,主な「台地地形」を作っている「入戸火砕流(姶良カルデラ起源)」を主に見ることができる。この他にも古い火砕流起源の岩石類が確認されているが,一般に見やすいのはこの2つである。

阿多火砕流は,溶結凝灰岩になっていることが多く,柱状節理が発達しているため,阿多火砕流の上を流れた河川は,その縁で滝になっていることが多い。

永田川近辺流域の川を上流へさかのぼっていくと,山地に近づいたところで大小さまざまな滝に出会うが,この滝を作っているのが,阿多火砕流の溶結凝灰岩であることが多い。

見てみよう

谷山地区の代表的な地形地質を見るのにおすすめの場所をいくつか紹介します。

地形を見てみよう

谷山地区の地形を全体的に見やすいのは,山地と台地の中間地点付近と言えると思います。個人的におすすめなのが,「指宿有料道路」の無料区間である「中山インター」〜「谷山インター」の下り車線区間にある休憩場所(展望所?)がおすすめです。以下に,その場所の地図上のリンクを張ってありますので,そちらで確認してください。

Googleマップで見た地区の様子

ここでは,谷山平野とその奥にシラス台地地形を遠望することができ,反対の山地地形も合わせてみることができます。

山地地形を形成しているところには基盤岩である四万十累層群が分布し,台地地形はシラスに代表される,火砕流堆積物(溶結凝灰岩)が広く分布しています。また,南西部の山地に接している台地地形の一部にはシラスだけではなく,「阿多火砕流」起源の阿多溶結凝灰岩を見ることができるところになります。

地質を見てみよう

谷山地区の代表的な地質を見やすく,交通の便がよさそうなのが「慈眼寺公園」の遊歩道付近です。河川沿いやがけを見て回ると溶結凝灰岩を見ることができます。以下に,その場所の地図上のリンクを張ってありますので,そちらで確認してください。

Googleマップで見た地区の様子

溶結凝灰岩の上を河川が流れているところでは,河川が球形に河床を削り込む「ポットホール(甌穴【おうけつ】)」を見ることができます。