なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか [単行本] ケンジステファンスズキ世界最高レベルの社会保障制度を整え、食料もエネルギーも自活、世界でもっとも民主主義が進んでいる国、デンマーク。「共生」の政策理念の基盤となる国の歴史と国民の姿を通して、年金・雇用・貧困・格差・「愛国心」・環境・エネルギー・食料など問題の山積する日本社会を見つめ直す。


リンク 翌1866年3月28日には早くも、ヒースの原野を開拓するために「デンマーク原野開発会社」をヴィボー市に設立しています。彼の計画に賛同し、率先して協力を申し出た人もわずかにいましたが、ダルガスは一人で各地の農民のものを訪れ、ヒースの原野を開墾するよう説得して回りました。ダルガスの行動力は今なおデンマーク人を衝き動かしているようです。


2、地方自治なくして民主主義国家はありえない、84.

目次

1章 デンマーク・私が「理想とする国家」に近い国

1、億単位の医療費も税金から給付される、11頁、

2教育費はすべて国が負担する、16頁、

3,18歳からは国が扶養義務を持つ、22頁、

4、食糧自給率は300%を超えている、25頁、

5、エネルギー自給率は156%を達成した、26頁、


2章 なぜ、デンマーク人は国に愛情を持つようになったか

1、民主主義と国民の幸福度は比例する、31頁、

2、デンマーク人の事業家は国境を超えて活躍する、34、

3、バス・タクシーの運転手が女性なのはあたりまえ、39.

4、国政選挙の投票率が80%を割り込んだことはない、40.

5、高額の税金に対してさしたる不満がない、46.

6、デンマークの田舎生活は快適、50.


3章 氷河とバイキングがつくった北欧の小国

1、狩猟民が南の方から移動してきた、53.

2、バルト海がデンマーク農業を育てた、58.

3、バイキングはヨーロッパの文化を撹拌した、60.

4、バイキングの遺伝子がデンマーク人を鼓舞する、63.

5、国民の85%がキリスト教徒、70.

6、国際性は国土が狭く天然資源がないからこそ育った。75.


4章 デンマーク人が国を愛する心の原風景

1、何百年もドイツと国境をめぐって争ってきた、77.

2、地方自治なくして民主主義国家はありえない、84.

2、地方自治なくして民主主義国家はありえない、84.


7:37 2012/02/26

中央政府なびかない国民性


さて、1250年頃のデンマークの人口は約80万人といわれ、各地に集落をつくって散在していました。王は各種の法律を出して国家統一を進めますが、ユトランド半島では、地方の有力豪農がその領地を統治していました。ユトランド半島に住む人々の自律性は高く。王権には服従しない地方気質が育っていきます。

中央政府は1241年、フェン島と南北ユトランド半島に適用する「ユトランド法」、シェーランド島は「エリック・シェータンド法」、東部には「スーコンスク法」を公布、その他の地域には「教会法」などを適用して、統一国家や地方への支配権の強化を進めていきますが、デンマーク全土をカバーする法律が公布されたのは、クリスチャン5世(在位1670年〜99年)が国民の人権、宗教、通商などを定めた「クリスチャン5世のデンマーク法」(1683年)でした(127ページ参照)。

2000年1月1日からデンマークの行政システムは、国の下に5つの地方行政区(日本の県に相当)と98の市町村がおかれる形に再編成されましたが、それ以前は13の地方行政区と271の市町村で構成されていました。このように13の県を5つの県に大幅縮小したのは、これまで県で取り扱っていた社旗福祉や教育などの業務を市町村へ移管することで、住民と行政の距離を短くするという制度設計の変更に伴うものでした。


85頁、12/2/26 84分、

デンマークではできるだけ住民に近いところで行政が行われるというベクトルが働いているようです。

今日においてもデンマーク人は中央権力に迎合しない国民性を持っています。これは、国土が半島と点在する島で構成されているという地理的な事情から、地方の独立性が高く歴史的に中央集権国家の体制が発達しなかったためと考えられています。


王権と神権・市民権が衝突して、王が譲歩していった


1215年、イギリスでは「マグナ・カルタ(大憲章)」(ラテン語でマグナは偉大な、カルタは憲章、契約書の意味)が公布されています。「マグナ・カルタ」は「イギリス憲法の土台となった文書。封建貴族たちが、ジョン王の不法な政治に抵抗して承認を強制したもの」(「広辞苑」)で、国王の権力を限定する63ヶ条から成る条項でした。

特に重要な項目は、「教会が王の支配から自由であると宣言」(第1条)、「王の徴税権を制限」(第12条、王家は戦争に際して戦争協力金などの名目で税金を集めていた)、「自由市は交易の自由を持ち、自らの権限で関税を決める権限の既定」(第13条)、「議会召集の既定」(第14条)、「市民は法か裁判によらなければ、自由や生命、財産をおかされない」(第38条)など、教会や市民に対する王権の行使を制限する性格を持った文書でした。

この「マグナ・カルタ」の条項を改めてみると、民主主義の基本原則が盛り込まれていることに気付きます。当時は、「王権神授説」あるいは「帝王神権説」という「君主が権力は神から授けられたものであり、人民に反抗の権利はないとする説」(広辞苑」)が信じられた時代であったため、王(君主)の権力は絶対であり、国王は自分の思うように国を治めることができていたのでした。その時代に「マグナ・カルタ」は王権の権力の行使に制限を設け、権力行使の正統性の担保に教会・市民の承認を求めたのです。


86頁、12/2/26 833分、

「マグナ・カルタ」によって近代の民主主義の重要な原理である「法治主義」「議会主義」が提示されたのですが、じつは、「マグナ・カルタ」の少し後に、おなじような事件がデンマークでも起きています。バルダマー・サイヤーの3番目の息子クリストファー1世(在位1252年〜59年)は、教会との権力争いが原因で暗殺されます。その王位を継承した息子のエアリック・クリッピング(在位1259年〜86年)は教会の力に屈し、戴冠式に際して国家の運営は教会の指令に基づくことを「確約」しました。

このクリッピング王と教会の間で起きた「確約事件」にデンマークの民主主義の萌芽が垣間見えます。クリッピング王が教会(市民)から確約させられたもっとも重要な原則は「いかなる者でも法律と判決なしに拘束すべきではない」というものでした。つまり、中央政府の王の権威といえども「法律と判決」から自由でないという近代法の原則の承認でした。


首都コペンハーゲンに本社がない


このように早くから王権と教会・市民の主張が衝突して、王権が規制されていたこと、また、半島と島で構成されている地理的条件もあって、強力な中央集権国家体制が発達しなかったデンマークには、産業界と国家との間に癒着の構造が生まれることがありませんでした。

87頁、12/2/26 849分、

日本のように中央政府の関係者(政権政党、国家官僚など)と関連業者が親密な関係になり、例えば防衛省の役人のトップが300回以上のゴルフ接待を受けたり、その奥さんの高級カラオケ店の遊興費まで業者に面倒を見てもらったというような、スキャンダラスな報道にはデンマークではお目にかからないのです。

業者と中央政府の役人たちとの日常的な密接な付き合いがありませんから、大企業でも首都コペンハーゲンに本社、本社工場を構えていません。たとえば、世界最大の風力発電機メーカーであるベスタス・ウインド・システム社も玩具メーカーのレゴ社も、ポンプメーカーのグロンホース社も首都のコペンハーゲンに本社、工場を構えていません。それぞれ起業した地方都市に工場や事業所を持っています。


地方都市が健全な国は国全体が健全


日本では大企業の多くは「東京本社」を開設していますが、純粋に企業経営を考えたら、世界で最も土地の高い場所に本社を置くのは不合理です。

そもそも東京のように一極集中の巨大都市は大変不合理で、不便な住環境で、人間の生活環境としても健康的なものではありません。東京や大阪など大都市に住み人達のために、毎日何百台、何千台というトラックや鉄道で食料を供給しています。渋滞を重ねながら、膨大な人力とエネルギーを使って食料を供給することによって得られる生産性は当然マイナスです。


88頁、12/2/26 914分、

また、食料を遠距離輸送・長期間販売するために加工食品には、食品添加物、保存料の使用が不可欠になります。さらに、大消費地に向けて大量生産・大量流通する結果、売れ残った食品を目の前にして、製造業者、販売業者は材料の再加工、製造月日を付け替えて再出荷する誘惑にさいなまれます。

食品偽造問題を解くカギもここら辺りにありそうです。不健康な生活環境は、最終的には医療費の負担につながることを考えると、大都市集中型の国土利用は決して良い結果を生まないのです。

首都に本社を構えないことは、地方都市にとっても企業にとってもメリットがあります。土地の値上がりや通勤の渋滞がなく、国民経済の観点からみてもプラスです。日本では100万人くらいの地方都市が経済的・文化的に自立したシステムで成立していれば、人々の通勤・通学の距離はバスでせいぜい20分程度「職住接近」が実現します。それによって、労働力移動の省エネルギーが可能になり、通勤や通学のストレスも解消されます。食料に供給もいわゆる「地産地消」が実現します。

そのためには地方都市の農業を活性化、仕事を創り出すインフラ(動力用電力共有や通信回路)の整備が必要です。また、企業家が育つような教育や社会の仕組みを作る、長期的なプランが必要になります。


89頁、12/2/26 937分、

デンマークでは「天下り」聞いたことがない


デンマークの企業が、コペンハーゲンに本社を構えないのは、雇用者の確保、不動産の確保などから経済的メリットがあるからですが、国内市場が小さいデンマークにとって、国内販売もさることながら国外販売を見出さなければならない事情もあり、コペンハーゲンを飛び越えてロンドン、パリが重要なのです。

このような実利的な理由も考えられますが、そもそも「コペンハーゲン本社」を設ける必要がないのです。日本の企業がこぞって東京本社を開設する理由は、政治家や官僚との連絡機関、利権調整の舞台として必要とされているように思えてなりません。

デンマークの産業界が官僚や政治家とどのように関わりを持ち、頼みごとをする度合いが日本と比較して多いのか少ないのかは判断できませんが、産業界には政治や行政とは密接な関係を持たないとする企業風土があるように思えます。また、行政や官僚は産業界の存続に関し「口を出さない」し、「出させない」仕組みになっています。表1、を見てください。このデータを見ると、大半の企業が企業の運営上、公共機関との接触を持っていることがわかります。

90頁、12/2/26 953分、

調査対象293社の約9割の企業が少なくとも年に1回、企業の運営に必要から公共機関と接触しており、企業の規模が大きいほど公共機関への接触が多いことがわかります。

一方、企業の政治家や官僚への接触の頻度については表2、の通り、60%以上の会社では接触はほとんどなく、欧州議会議員や役人との接触なると80%以上の企業が「接触はほとんどしていない」と回答しています。ただし、業務に関係する関係官庁や委員会メンバー、地方自治の政治家や役人との接触は多くなっています。企業が多く接触する関係官庁や委員会メンバー、地方自治の政治家や役人との接触の理由は業界によって違いますが、特に建設業界では、建築の許認可のために接触が多く、IT部門では一般規則の確認のために接触が多くなっています。


デンマークの産業界と各レベルの行政機関との関係、企業と政治家や官僚との接触度合は、程度の差があれ日本と違いはないと思いますが、その質の大きな違いがあるように思います。確かなことは言えませんが、日本に見られる「天下り」という話をデンマークでは聞いたことが聞いたことがありません。

日本では、関連部署にいた役人を雇用することで、その役人の人脈を通じて会社の業績をあげるという方法が残っているようですが、デンマークでは聞いたことがない企業と行政の間の風習です。

官僚が中心となって業界を指導する日本の「護送船団方式」の手法もデンマークではお目にかかったことがありません。日本の官僚が相変わらず「護送船団方式」を完全に投げ捨てないのは、国益を守るという反面、国家の指導に従う企業を優先する、そして官僚や役人が企業経営に影響を及ぼす余地を確保しておくことで「将来の就職先」つまり天下り先を囲い込んでいるように思えます。


92頁、12/2/26 1346分、

行政の指導責任ということが日本ではよく言われます。企業の倒産と労働者の保護という点では、デンマークの労働者の多くは職業別組合に加盟しているため、企業運営は産業横断的な組合と労使交渉によって終始チェックを受けています。仮に大企業が倒産しても、社会福祉政策のセイフティーネットの下で守られている労働者は生活に困ることはないために社会的な混乱は起こりません。官僚が産業界の存続に関し、まったく関与しないのは、企業の指導は官僚に与えられた職務ではないと考え、利権の対象、官僚の天下り先と想定していないからでしょう。その背後にはおそらく、企業の存続は企業自体の責任という社会的な合意があるためだと思います。

官僚の天下りがないのは、企業の側に高齢に達した役人を雇用してもほとんどメリットがないためです。また、中央の官僚も地方の役人も在職中に組み立てしている早期年金や各種の積立年金で、60歳からの第2の人生が十分保障されているのです。


封建時代が生きている日本


一方、日本の産業界においては「東京本社」を設立することがその企業にとって会社の運営と社会的信用を得るという点で非常に大きな役割を果たしているようです。

中央をありがたがる「寄らば大樹の陰」の国民性は、鎌倉幕府の成立(1192年、武家政権の誕生)から明治維新(1868年)まで続いた670余年間の封建制度によって醸成され、それが現代まで残っているからではないでしょうか。封建制度とは「天子の下に、多くの諸侯が土地を領有し、諸侯が各自領内の政治の全権を握る国家組織」(広辞苑)ですが、封建時代を通じて醸成された日本人の国民性は21世紀に入った今日でもうえk継がれているように思えます。


93頁、12/2/26 1420分、

例えば春・夏の高校野球、全国高校駅伝、国体のようなスポーツ大会で県(封建時代の藩)同士の争いをしています。「天下り」という制度も封建制度の官僚システムが生んだ官尊民卑の遺産でしょう。行政官僚と産業界との癒着は封建制度時代から引き継がれている国の形といってよいでしょう。


江戸時代(約260年間)に導入された「士農工商」の階級社会では、生まれた時から身分が決められていたため、農民や商人の子は武士になることはできませんでした。生まれた家の身分や権威を大事にする国民性が現在でも残っているのは江戸時代の遺産でしょう。

過労死するまで働くサラリーマン、自分を守るために部下に責任を押し付ける上司、政治家のために過酷な条件下で働く役人、高級官僚同士の談合なども江戸時代に確立された階級社会の遺産だと思えます。また会社や役所で持たされる会議で、上司の前で自由に発言できない部下の例など、封建時代に確立された上下関係がそのまま現在の日本人の国民性となって残っているように思えます。


国民が望む社会的な仕組みを作るには国民の参加が不可欠ですが、封建国家時代を通して育成された、中央政府・官僚・行政に対する服従の精神を持ち合わせている反面、「国家運営に参加する」意識を残念ながら過小にしか持ち合わせていないように見えます。


2007年春になって日本では突然、社会保険庁の「宙に浮いた5000万件の年金記録」が問題になりました。国民が老後のために国に託したお金の納付記録が、ずさんな事務管理体制によって不明なってしまうというような事態は、デンマークでは全く考えられないスキャンダルです。


94頁、12/2/26 1438分、

つまり、勤務している役人の事務能力が問われる問題で、ここにも日本の教育の欠陥、国・公務員はだれのために存在するのかという検証があまりにも軽視されていた結果だと思います。


3、何百年も国土の争奪戦が繰り返された


12/2/26 1441


3、何百年も国土の争奪戦が繰り返された、94.

4、北欧三国の王家は親戚関係にある、99.

 


5章 農奴が下支えした中世のデンマーク社会

1、デンマークを支えた穀物とニシン、103.

2、北欧三国の連携が始まった、105.

3、職人層が力を持ち始めた、109.

4、中世社会の基本構造、118.

5、宗教改革をくぐり抜けたヨーロッパ社会、122.

6章 神聖なる王権から国民の主権へ


1、絶対王制から立憲君主制に、127頁、

2、「生地帰属農民制度」の過酷、130ページ、

3、フレデリック6世の善政、133頁、

4、近代憲法が誕生した、136頁、

5、自分たちを守る仕組みとしての協同組合、140頁、

6、デンマークの手工芸と産業の発展、142頁、

 


7章 福祉制度をつくり出したデンマーク・福祉を考えなかった日本

1,200年前の「貧困救済計画」の先進性、147頁、

2、国家の倒産と社会福祉システムの崩壊、149頁、

3、自治体が受け持つ3つのセイフティーネット、150頁、

4、国民生活への最低限のセイフティネット、152頁、

5、日本では国民のための福祉政策が実施されたことがない、153頁、

 


8章 デンマークは「戦争」とどう闘ったか

1、ドイツに占領されたデンマーク、157頁、

2ドイツ軍に抵抗した国王と若者、

3、ユダヤ人を救ったデンマーク市民、161頁、

4、戦争をしない決め手は食料とエネルギーの完全自給、163頁、

9章 教育の目標は「国家運営」に参加する国民をつくること

1、エネルギー自給政策に国民が参加している、165頁、

2、環境教育の目標は行動する市民を育成すること、166頁、

3、日本の学校教育は解決策を考えさせない、169頁、

4、まだ、「国定教科書」が生きている国、170頁、

5、新しいものを生むには現状の否定が必要、171頁、


10章 借金を残さないデンマーク・つけを残す日本
1、     高福祉でも国家財政は黒字、173頁、

2、引き継がれた悪癖・権力者の汚職文化、174頁、

3、毎年借金が増えていく日本、176頁、

4、納税額が少ない日本、177頁、

5、米国の下請け国家になっていないか、178頁、

6、故郷を里山を「産業廃棄物」の捨て場にする行政マン、179頁、

8、この現状を変えていくいくつかの提案、184頁、


 

あとがきにかえて、資料・参考文献

11/11/9 219

 


2章 なぜ、デンマーク人は国に愛情を持つようになったか


31頁、11/10/8 115

1、民主主義と国民の幸福度は比例する

80%が「自分の国を愛している」と答えるのはなぜか


デンマークで愛国心の世論調査をすると、80%以上の人々が「自分の国を愛している」という結果が出ます。独裁国家、独立したての若い国ならともかく、長い歴史を持つデンマークでなぜ、こんな効率の数字が出るのでしょうか。でも、よく考えれば「自分の国を愛する」のは当たり前のことかも知れません。日本でも「日本を愛していますか?」と聞いたらおそらく80%の人は「愛している」あるいは、「日本が好きです」と答えると思います。


もし、国家への愛情のあり方についてデンマーク人と日本人との間に大きな違いがあるとすれば、デンマーク人は「自国を愛するがために」高額な納税をし、国を守るために徴兵制度を導入し、中学生や高校生から政治活動に参加しているのに対し、日本では「自分の国を愛している」と答える人でも、国家を維持するために必要な施策に自ら進んで参加する人は少なく、国家の基本方針を決める国政選挙でも極端に低い投票率しかありません。

32頁、11/10/8 1121

日本では、「国を愛している」という感情と「国を愛するがために行動する」の間に大きな隔たりがあるように思えてなりません。デンマークでは、「一票を投ずるに足りる人がいない」なら「自分が立候補して」国政に参加する、「税金でお互いに守りあう」「エネルギー・食料自給のために自分たちにできることをする」「国家を守るために国防を考える」など、「自分の国を愛している」ということが具体的な行動になって現れてきます。この大きな違いは、両国の国家と国民の関係の成り立ちの経緯に由来しているのでしょうか。


 

イギリスの社会学者アドリアン・ホワイト教授は、「幸福な国民」の定義を「健康でよい教育が保証された国に住むもの」としています。ホワイト教授はこの定義を基に様々な指標をクロスさせて、各国の「幸福な国民度」ランク付けを行い、デンマークが一位、スイスが二位としています。

また、世界銀行が発表した「全世界の統治指数」では、世界で最も民主主義が進んでいるのはデンマークとフィンランドであると報告しています。この調査の民主主義の指標は、「国家運営に関する信頼に足る質の高い統計データが公表されていること」「国家の運営に国民が直接参加できる仕組みができていること」としています。この公開度、参加度が高いほど民主主義が進んだ国だとしています。

言い換えれば、国民の意思によって国家が運営されている、国民と政府の間の意思疎通が良い国が民主主義の度合いが高いということになります。国家とのインターフェース、一体感がなければ「愛国心」は湧き上がりようがないでしょう。

33頁、11/10/8 1138

国民と国家のインターフェースの悪い国は民主主義の度合いが低い

 

国民と国家とのインターフェースの良し悪しを身近なケースで比較してみましょう。

たとえばデンマークで、ある地域の介護センターの介護内容が悪いというニュースが報道されたとします。すると翌日には必ず社会福祉大臣が何らかのコメント、打開策を国民に示さなければなりません。マスコミが問題解決のために国民に問題を提示したのですから、国の責任者はそれに対して解決策を求められた、と受け止められるのです。

日本滞在中にNHKでワーキングプアを取り上げた番組を見ました(NHKスペシャル「ワーキングプア働いても働いても豊かになれない」2006年7月23日)。勤労世帯の厳しい生活状況、派遣労働で働く若者たちのアリ地獄のような労働実態にも驚かされましたが、もっと驚いたのは番組放送後の政府の対応でした。

次の日には厚労大臣がテレビに出て、対策案あるいは打開策を提案すると思っていたのですが、一部のわずかな反応を除いて、他のマスコミも政治家も番組が提起した問題に対して、正常な感覚での反応がありませんでした。これには、正直失望しました。

自国の世帯数の約10%にあたる400万世帯が「ワーキンブプア」だとマスコミが報道すれば、それは大問題です。問題解決のためのメッセージや対策案を国民に示すのが政治家・行政官僚に課せられた職務だと、デンマーク国民は考えるからです。

34頁、11/10/9 815

日本では、国民各層からの問題提起が国家の改善策の策定につながっていないように思われてなりません。先ほどのホワイト教授の民主国家からの指標からすれば、日本の民主主義の度合いはとても低いのではないでしょうか。

デンマークでは、日常生活の中で発生する様々な問題に対して、国民と行政、政治がそれぞれの立場から改善のために努力をするという相互関係ができています。

その一方で、国政選挙の投票率が常に80%を超えていることを見ると、実質的に政治が国民によって信任されていると判断することができます。

日本ではよほど大スキャンダルになるか、2007年の参議院選挙のように与野党逆転の政界の激震でも起こらない限り、何十年も懸案になっている簡単な政策の見直しさえなされないのはなぜでしょうか。国民の声が行政政策になかなか反映されないという連携の悪さは、国政選挙の投票率が日本では実質的な信任を保証するに足りる数字を超えることが稀であることと大いに関係があると思えてなりません。

2デンマーク人の事業化は国境を超えて活躍する

 

私はデンマークに渡った後、コペンハーゲン大学の政治経済部に2年間就学しました。卒業後、アリタリア航空(1970年4月〜12月)、在デンマーク日本大使館(1971年〜79年)に勤務し、その後、農場を経営しながら、とりわけ風力発電、バイオマス発電など自然エネルギー関連事業のリサーチ会社を立ち上げ、その過程で自然エネルギーに関心を持つ日本の方々のための実地研修センターとして「風のがっこう」を設立しました。

35頁、11/10/9 835

若いうちから起業できた私の例のようにデンマークの個人事業主の特徴を3人の知り合いのケースで紹介しましょう。

 

P氏は、風力発電機メーカーにエンジニアとして勤務していましたが脱サラし、30歳で会社をはじめました。P氏の会社は世界を相手に営業をしていますが、従業員なしの個人経営です。50歳の今、国内に風車を何台も保有して、発電した電力を販売するかたわら、デンマーク製の中古風車を国内はもとより、アメリカ、西欧諸国、バルト海諸国、東欧諸国を相手に販売しています。

彼はアマチュアの音楽家でギターやサキソフォンなど楽器を演奏することを趣味にしています。週末や祭祝日には、仲間と一緒になってダンスパーティーや結婚式などに参加して演奏しています。P氏は、円にして億単位のお金を動かしていますが、奥さんは在宅介護のヘルパーとして働いていて、P氏の仕事の手伝いは一切していません。

L氏は風力発電を導入する際のコンサルタントをしています。35歳の時風車メーカーを辞めて、起業しました。彼の専門は、不況調査とは、浮力発電所を設置するために不可欠な事前調査で、風力発電設置予定地の風のエネルギーを試算し、それを基に紀州の選択などをして、設備投資の採算性を調査する業務です。この風状調査を基に「可能性調査報告書」という、適正な機種の選択、それに伴う設備投資額と資金調達、設備投資の利回り計算など、風力発電の設備投資上欠かせない報告書を作成しています。

36頁、11/10/9 90

この3人は、当然のように複数の言語を使っています。P氏とL氏は母国語のデンマーク語以外に、ドイツ語、英語を使えます。デンマークでは、3カ国語を話す人は珍しくありません。学校の語学教育では、英語にしてもドイツ語にしても会話に重点を置きます。小学校3年生から始まる英語教育では教師は児童に英語で話しかけ、7年生から始まるドイツ語の事業はドイツ語で行っています。子供たちは早々に第2・第3外国語を身に付ける学校教育の環境が整っているのです。

37頁、11/10/9 96

会社勤めの間に独立する基盤をつくる

 

人口540万人のデンマークで、毎年2万5000件が起業されています。デンマークで起業するには「職業と企業監督庁」という名前の役所に事業発足に関する届が必要です。特に個人企業の場合は、資本金の払い込みや取締役会の設立など形式的な手続きがないために、容易に起業することができます。そのため、わずかな資本金を元手に、1人で起業することが可能なのです。

デンマーク人の企業家は脱サラで、会社勤めをしながら、資金、人脈、ノウハウを蓄積して独立する基礎をつくっていきます。そんなに足のわらじが可能なのは、労働時間数が少ないため(現在週法定労働時間37時間)職場から帰った後もたくさんの時間が取れるためです。起業するための準備を自宅で始め、給与以上の収入が見込めるようになると退職して起業していきます。

サラリーマンは残業をほとんどしません。就業者も雇用者も残業を望まないのです。組合と結ばれる雇用契約にも残業の抑制の条項が明記されています。午前8時から午後4時までの勤労者が残業した場合、午後7時までの残業代が時間給にして5割増し、それ以降においては100%増額といわれています。就業者も多額の残業代をもらっても約60%は所得税として納税しなければならないのですから、収入を増やすために残業してもあまり効果がないのです。

また、雇用者の方も2倍の時給を払ってまで従業員を残業させるメリットがないのです。

 

38頁、

銀行借入に連帯保証制度がない国

 

事業を起こすには、まず事業資金が必要になります。手持ちのお金がなければ、金融機関から借りることになりますが、企業の時点では金融機関に対する実績がまったくありません。

日本の金融機関の対応はどうでしょうか。事業計画、本人の人柄、意欲がOKでも、不動産担保の提供や本人や家族、第三者の連帯保証が前提条件になります。この連帯保証が問題なのです。

 

デンマークでは、資金融資は個人の信用、事業内容の評価が基本で、本人、家族、第三者の連帯保証を求めることはありません。ほとんどの人が起業を志す段階で自宅か「夏の家」などの不動産を持っていますので、それを担保にして融資を受けます。

もし、不幸にして事業に失敗しても、融資の残額を不動産担保と相殺すれば基本的に解決できます。日本のように第三者に負債の請求が及び、親戚関係、友人関係を破綻させることがないのです。

日本の金融における本人・家族・第三者への連帯保証の要求はまったく悪しき慣習です。

どの田舎に行っても高速の通信回路が整備され、電力も三相交流の400ボルトが動力として使えるように家庭の戸口まで配線されています。動力を必要とする製造業にとって三相の400ボルトの動力は基本設備として不可欠です

サラリーマンの企業を後押しする要因に、インフラが整っていることも挙げられます。どの田舎に行っても高速の通信回線が整備され、電力も三相交流400ボルトが動力として使えるように家庭の戸口まで配線されています。

動力を必要とする製造業にとっては三相の400ボルトの動力は基本設備として不可欠です。しかし日本の配電は一般家庭用では100ボルトです。韓国、中国でも230ボルトの配電をしており、北朝鮮と日本だけが100ボルトを固守しているのが現状です。企業家を育てる意味でも三相の400ボルトをすべての家庭や農家に配電する必要があると思います。

 

39、また世界の先進国の中で最も高いと言われている日本の電力業金の値下げに国民全員協力し合い最大の努力が必要であると思います。なぜならば、供給される電圧が低く電力料金が高いということはすべての企業家にとって大きなマイナス要因となるためです。

3バス・タクシーの運転手が女性なのはあたりまえ

 

労働人口の半分が女性

 

PしやL氏のやS氏の奥さんが、夫の事業を手伝いうことなく、自分の仕事をしていると紹介しましたが、デンマークでは女性は家事と育児をしながらも社会に出て働いています。デンマークの労働人口数284万5000人のうち女性の占める割合は47%です。もともと男性の職場であったバス、タクシーの運転手にも多くの女性が就いています。

2007年11月の改選前の時点で、国会議員37・7%は女性議員でした。

40頁、

デンマークの二大政党と言われている自由党と社会民主党では、自由党議員52名のうち、女性議員は18名、社会民主党議員47名のうち19名でした。内閣(自由党と保守党の連立政権)の大臣19名中、法務大臣、社会大臣、環境大臣など含め6名が女性です。

国会議員に比べて、地方議員の女性が占める割合は若干少ないのですが、約27%にあたる約4700人が地方議会に進出しています。

小中学校の先生の64%は女性です。

市民が社会で継続的に働くためには、保育環境が整備されているか、家族に長期にわたる病人が出てきたときの看護体制があるか、老人介護の体制が整備されているか、さまざまな条件が必要なのです。女性が社会で活躍しているのは、デンマークでは当たり前のことで、かなり高齢の女性でも働き続けています。

4国政選挙の投票率が80%を割り込んだことがない

 

小学生が街頭デモに参加している

「デンマークが世界で最も民主主義が進んでいる国である」という世界開発銀行の調査を紹介しましたが、このことはデンマーク人の国政に対する意識の高さにも現れています。

41頁、

1953年、現行のデンマーク憲法が施行されて以来、2007年11月までに21回の国会議員選出選挙がありましたが、投票率が80%を割り込んだことはありません。国政選挙の投票権・被選挙権とも18歳以上です。

デンマークでは小学生・中学生・高校生が国の教育問題に意見を出し、国会デモをすることも珍しくありません。

2006年5月17日デンマークの5つの大都市(コペンハーゲン、オーフス、オルボー、エスビアー、オーデンス)において、政府の福祉政策改革に反対する大きなデモがありました。このデモには小学生から大学生までが参加していました。この時に掲げられたのは、「就学支援金削減」反対でした。

「【主権】〔sovereignty(1)国家の統治権。他国の意思に左右されず、自らの意思で国民および領土を統治する権利。領土・国民とともに国家の三要素をなす。(2)国家の意思や政治のあり方を最終的に決定する権利。」

 

42、デンマークの子どもたちは学校教育の過程で、主権者として自分の意見を行動に現し、18歳で選挙権を取得した時点で国家運営への影響力となっていきます。

女の子が「お父さん、デンマークの人口は何人?女性と男性の割合はどのくらい?」と聞いていました。これに対して、父親は「デンマークの人口は540万人、女性の方が男性に比べて少し多い」と答え、重ねてその子は「お父さんが仕事を始めたのは何歳の時からなの?今会社でどんな仕事をしているの?」と質問しました。

43頁、これに対して父親は、「25歳から仕事に就いたんだよ」「今は放送局で編集長の仕事をしているのだ。編集長とは視聴者に対し、何らかの参考になる放送番組を作る責任者のことだよ」と答えていました。

デンマークでは朝食や夕食の何気ない会話で親と子が社会のことを話題にすることが珍しいことではないのです。親子の身近な会話を通じて、社会観が共有されているのです。

 

国政の若者の関心が高い

デンマークでは15歳ごろから政党に加盟する子供たちがいます。各政党の青年部には10代から0代に男女が登録され、選挙運動に加わります。プラカードを作ったり、チラシを配ったり、また自分の学校で政治討論会をアレンジしたりして、自分が所属する政党の選挙運動に努めます。その中には将来の国会議員を目指して活躍している子供たちもいます。

デンマークには常時、政治家を受け継ぐ若年層として何百人、あるいは何千人が控えていて、その中から早ければ20代の前半から国会議員として活躍する人たちが出てくるのです。2007年11月の国政選挙でもそうでしたが、開票が始まる前から各政党は何百人という青年部の党員が入れような大きな会場を国会周辺に借り上げ、テレビで報道される開票結果を見守ります。

開票の結果が出る真夜中に政党の党首の挨拶がありますが、選挙結果の良し悪しに関係なく、最初に各党首が発する言葉は、「みなさんよく頑張ってくれた」等いう「青年部への感謝の言葉で始まります。

デンマークでは街頭演説や選挙カーに大きなスピーカーを取り付けて連呼する選挙運動は認められていません。

44頁、11/10/9 1034分、平成231020

「戸別訪問」には今まで遭遇したことがないので禁じられているのだと思います。主な選挙活動は広場や公園で通行人にチラシ配布、街頭や建造物へのポスター掲示、集会所での演説会の開催、あるいは新聞広告です。

 

テレビやラジオがアレンジする政党代表同士の討論会があります。デンマークで最も視聴率が高いのは、総選挙2日前にテレビ局が夜9時から11時までノンストップで放映する全政党代表者の政策討論会です。2007年の総選挙でもデンマーク放送局(日本のNHKに該当)が制作した討論会の視聴者数は人口540万の国で400万人(74%)だと報道されています。デンマーク人がいかに国政に興味を持っているかは、この視聴率の高さからもわかると思います。この選挙で特徴的だったのはインターネットを使った選挙活動です。

自由党や社会人民党はとりわけ力を入れたといわれています。日本では、各地で「風習」になっているといわれる候補者陣営からの選挙民へのあるいは選挙民の側から金品や利益誘導によって票の売り買いされるようなことは、デンマークでは考えられないことです。

 

46頁、11/10/20 104分、

5、高額の税金に対してさしたる不満がない

徴税も納税もフェアでないと

私はデンマークの高福祉に感謝するとともに、所得税や各種の間接税を喜んで払う気持ちを持っています。私と同様、多くのデンマーク人が高率の税金をさしたる不満もなく納税しているようです。教育費や医療費、働くなった際には生活保護費の支給など、税が還元されてくることがはっきり実感できるから、高い課税率にも負担感がないのでしょう。

 

現在のデンマークの所得税は、直接税と間接税の2本立てになっています。直接税は国税、アムト税(日本の県行政区に該当、ただし20071月からはアトム行政区が廃止され地区になった)、市町村税、労働市場基金寄与税、不動産価値税(デンマークでは所有する不動産の評価額の1%を所得税として納税)、資産税、不動産税など数多くの名目での所得税があります。間接税は消費税(25%)、自動車の登録税(輸入価格の180%)、酒税(アルコールの含有量で異なり、含有量1522%のワインの場合、1リットル当たり約230円)、タバコ税(シガレット1本当たり約22円)など様々な項目があります。

高負担・高福祉を実現している

社会福祉にかかる財源は、所得税(最高税率59%)や消費税25%を含めた間接税で賄っています。年収1000万円のサラリーマンが支払う所得税額は、大まかに言うと約45%に当たる450万円、年収800万円のサラリーマンの場合、約40%に当たる320万円程度です。

2005年の直接税と間接税の納税額は、国民総生産15510クローネ(39兆円)の約半分に当たる7777億クローネ(19兆円)になっています。の税額の比率では個人所得税が全体の61%、法人税の占める割合は7・5%です。また、間接税の中で最も多いのは消費税で約20%になっています。

このような高負担・高福祉の政策によって国家財政が運営されていますが、2006年の政府予算をみると歳入5154億クローネ(129兆円)に対し、歳出4614億クローネ(115兆円)で、13兆円の黒字になっています。

47頁、11/10/20 1047分、

税金を公平に集める方法

 

先ほど公平な所得の再配分の話をしましたが、税金が公平に再配分されるためには、税金が公正に集められなければなりません。脱税や徴収漏れは許されません。税の徴収方法について簡単に説明してみましょう。

サラリーマンはまず、年始にその年の所得を「予定申告」し、それに基づく税額を「予定納税」します。年間の予定収入から控除額を差し引いた額が課税対象となりますが、毎月雇用者は従業員の税額を算出して、税務署に納税します。その際使われるのが「国民背番号」「事業所登録番号」で、個人番号が明記されていない納付は事業費から控除できない規定になっていますから、事業者が天引きして納付する従業員の税金は個人番号で完全に管理され、納付確認が完全にできるシステムになっています。

48頁、

年度末、事業者は支払った給与額、納税額の明細書を税務署に報告するとともに従業員に通知します。

本人が「予定納税」した額と確定所得による税額に差があれば、その差額が調整されます。納税額が不足している場合は不足分に8%の利子を加えた額を払い込み(通常3回に分け、3ヵ月以内、過払いの場合は8%の利息を付けて全額一括して税務署から払い戻されます。個人事業主も同じで、見込み収入に対して「予定納税」し、年間の確定収入との差額で納税額を清算します。

デンマークの「確定申告表」には必ず、個人登録番号が付与され、既婚者の場合は本人の背番号の隣に相手(夫か妻)の背番号が付記されています。また、銀行の預金残高と銀行の借入残高、不動産の評価額、有価証券(株や証券など)の評価額などの資産状態が書き込まれ、これをみるとその家族の経済状態が一目でわかるようになっています。

税率は累進課税で、課税対象額が多いほど、税率が高くなっています。表3は、2007年度の主な課税項目と税率です。

個人番号の使われ方

 

さて、1970年頃から10ケタの「国民背番号」が導入され、また消費税の課税対象となる農業・漁業・林業などすべての製造業、民間・公共をとわずすべての事業所には8ケタの「事業所登録番号」が付けられています。

50n、11/10/20 1119分、

これ以来、デンマークでは、個人番号、事業所登録番号を持たない事業体は運営できないようになっています。個人では、個人番号なしには雇用されないシステムになっています。なぜならば、事業者は支払った経費を控除する場合、必ず支払先の番号を明記する必要があり、支払先の番号がないとその経費は事業者個人の所得とみなされるためです。

また、現行口座を開設するにも、個人登録番号がないと開設できません。銀行は年度末に各個人の銀行残高額を税務署に報告する義務を負っています。その報告書には個人登録番号ごとに支払い利息、受取利子が記入されていますので、税務署は個人の収支を容易にチェックできるようになっています。

日本ではよく言われるように何千万円、何億円というお金が脱税されたり、徴税逃れが摘発されたというようなことは、デンマークでは考えられないことです。

平成231020日ここまでで終わる。

平成231110

 2011年11月10日 14:18:33