連載 「死」を学ぶ子どもたちーPARTU
      第2回  中国への旅A
                

「チンパオ」という映画ご覧になりましたか?
実際に学徒兵として中国戦線に従軍した作者黒薮次男の「少年の目」が原作になった映画です。日中友好条約締結20周年を記念して、日中合作の映画として制作されました。両国が対等に制作費もスタッフも出し合った映画というのはこれまであまりなかったのだそうです。

 主人公は、若い一人の日本兵。舞台は風光明媚な地として知られる桂林。日本の敗色の濃くなった1945年、ある村に挑発に出かけた部隊は、1頭の子牛を見つける。その子牛を取り戻そうと必死に追いかけてくる中国人の兄と妹。兄の名は「チンパオ」。子牛を殺して食料にしたい上官と、チンパオに返してやろうとする主人公。その葛藤を通じて、良心を貫くことができない戦争の悲惨さを描いたものです。

 鹿児島でも、この夏試写会が行われ、上映運動が始まっています。南日本新聞でも、数回投稿がありました。なかには、「あの中国戦線で、いちばんつらい思い出が少年に子牛を返してやれなかったこと」だなんて…というのも。

今回、中国へ行って、北京の革命記念館、蘆溝橋の抗日記念館、南京の大虐殺遭遇同胞記念館、「犬と中国人は入るべからず」と書かれていたという上海の居留地跡を訪れました。

 これでもか、これでもかというように かつて日本軍が中国でやった蛮行の数々の展示を見てきました。感情移入してしまう私にはかなりつらい場所でした。広島、長崎、沖縄、そして2年前行ったミュンヘン郊外のナチスの収容所「ダッハウ」を訪れたときより、今回がもっとショックでした。

 戦争という場に身をおくと、人間はここまで残虐になれるものかと思いました。たとえば、南京で中国人を100人以上も殺した日本軍人を褒め称えている当時の日本の新聞記事を読んだのですが、背筋が寒くなりました。そういう行為も、記事にするのもある意味では、「教育の成果」なのですよね。
 南日本新聞に寄せられた映画「チンパオ」に描かれたことへ疑問を投げかける投書の主の気もち、分かるような気がしました。

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