「死を学ぶ子どもたち」 PART2 第30回
   『シリーズ・いのちの授業』(ポプラ社)紹介
    




4月はじめ、ポプラ社からできたてほやほや『シリーズ・いのちの授業』全5巻が送られてきました。学校図書館用に編集されたもので、1〜4巻は監修を担当し、5巻目は私が執筆したものです。
表紙にはいちおう私の名前がでていますが、「私の本です」というのはおこがましいほど、全国各地でユニークな「いのちの授業」に取り組む先生方の協力があってできあがった本です。
ふだん、子どもたちに本を紹介する仕事をしていますが、自分で子ども向きの本を書いたのは、これが初めての体験です。大人向けに比べて、原稿の量は少ないのですが、出版する苦労は何倍にもなることが、とてもよく分かりました。今回は、出版社と編集専門プロダクションの複数の編集者を中心に、ライターやイラストレーターなど、実にたくさんの人の厳しいチェックをくぐりぬけてようやくできあがりました。そのぶん自信をもってお勧めできる本に仕上がったと思っています。
ただ残念ながら、学校図書館用の本は、一般書店には並びません。学校図書館や公共図書館に購入してもらえないと、子どもたちの目に触れる機会がないのです。
そこで、たいへんあつかましいですが、ここで内容を紹介させていただくことにしました。

1巻目は、金沢市の金森俊朗先生の教育実践を中心にした「いのちがはじまるとき」
いのちの誕生のしくみを学び、自分たちのいのちが奇跡的に誕生したことを確認し、自分自身を好きになろうと結んでいます。イラストがとりわけ光っています。類書に比べて、あたたかく、わかりやすいのです。

2巻目は、兵庫県の西本義之先生、鹿児島県の村末勇介先生や種村の実践に基
づいた「いのちがおわるとき」
「死ってなんだろう」と考え、家族の死と向き合い、自分の死を考えるという構成です。いつ訪れるか分からない死を考える素材に阪神淡路大震災で友だちを亡くした子どもの作文、家族の死を考える素材に、HP「知己くんのいのちに学ぶ部屋」
http://homepage2.nifty.com/murasueyusuke/tomoki`s%20room.htm
でおなじみの西村知己くんのこと、自分の死を考える素材に18歳で亡くなった原口明子さんのこと(鹿児島県教育センターhttp://www.edu.pref.kagoshima.jp/inoti/inoti.htm
参照)が取り上げられています。この巻もイラストがいい。子どもたちが、ひとりで読みすすんでも、「死」を通じてかけがえのないいのちについて考えることができる本です。

3巻目は、「いのちのおもみ」
「誰かと違うことは悪いこと?」と問いかけ、障害者や病気の方から学び、みんなが自分らしく生きるために何ができるかを考える構成になっています。
「障害者に学ぶ」では、金森先生の実践を基に、車椅子で何回もホノルルマラソンに挑戦している相馬康雄さん、視覚障害者で結婚・子育て体験のある間潟玲子さんがとりあげられています。「病気の人に学ぶ」では、鹿児島県蔵満逸司先生の実践、薬害エイズ患者であった吉松満秀さん(故人)が入院治療中だったころ、手紙で交流しながらすすめたエイズ学習が中心になっています。

4巻は、「いのちをささえる」
自然と人間や人間同士のささえ合いを救急救命士やホスピス、アイガモ農法から学ぶ構成になっています。秋田県の救急救命士渡部顕さん、鹿児島県のホスピス医堂園晴彦先生、そしてアイガモを通じて「いのちをいただく」実践にとりくんだ鹿児島県の東睦美先生に協力いただいてできた巻です。

そして、5巻はブックトークによる『いのちの図書館』
1巻から4巻の内容に即して、「いのちのバトンをにぎりしめて」「いのちのゴール」「みんなちがって みんないい」「つながりささえあういのち」と題して、59冊の本を写真入りで紹介しています。子ども向けの本で、これだけの本を紹介するブックトークは、おそらく初めての試みです。この本を読んだ子どもたちは、紹介されている本をきっと読みたくなるはずです。

子どもたちにとっても、先生方にとっても、この本を出発点にして、いのちの総合学習を展開できるよう願ってつくった本です。性教育や道徳、読書の時間にも活用できます。索引、注釈、参考資料も豊富で、子どもたち自身が調べたり、考えたり、発展させたりできるよう工夫しました。
いちど目を通していただけると幸いです。

出版社に問い合わせたら、分売できるとのことでした。
でも、堅牢製本、イラストや写真も豊富ということで1冊2,500円もします。
子どもはとても買えませんから、図書館に入れてほしいのです。

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