「あたらしくブックトークに加わった本」
4年前に始めた「いのちの授業」がすでに９０校を超えた。ブックトークの手
法ですすめる授業に最近加わった本を紹介する。
『こいぬのうんち』 クォンジョンセン文 チョンスンガク絵 平凡社
道端に転がっている小さな犬のうんち。すずめやつちくれに「くさい」「き
たない」とばかにされ、「ぼくは、なんの役にもたたないんだ」と悩む。通り
かかったにわとり親子にも相手にしてもらえない。
ある日、となりに芽生えたたんぽぽが話しかけてくる。「わたしが、きらき
らかがやく花を咲かせるためには、うんちくんの力が必要なの」
降り続いた雨にうたれて、土にとけこんだうんち。やがて、うんちの愛が
いっぱいつまったたんぽぽの花が咲いた。
多くのいのちは、互いに支えあっていることを伝えてくれる絵本。最近とみ
にレベルアップしている韓国の絵本であるというのもうれしいかぎり。著者
クォンジョンセンは、韓国では代表的な児童文学作家。高学年向きの『モンシ
ル姉さん』（てらいんく）もお薦め。日本の子どもたちには、あまり知られて
いない朝鮮戦争下の子どもたちが主人公である。
『ねこのき』 長田 弘 作 大橋 歩絵 クレヨンハウス
オレンジ色のねこをかわいがっているひとりぐらしのおばあさんがいた。あ
る日、ねこはいつまで待っても帰ってこない。一人の女の子が、車にひかれ死
んだねこをつれてきた。やがて、ねこを埋めた庭から小さな芽がでて、ぐんぐ
ん伸びた。その木に小さなオレンジ色の実がみのった。ポトリと落ちた実か
ら、なんと小さなオレンジ色のねこが・・・。いのちが引き継がれておくこと
をファンタジックに謳いあげている。大橋歩さんのオレンジとグリーンを対比
させた絵が鮮やかな絵本。
『おじいちゃんは１０６さい』 松田 もとこ 作 菅野 由貴子絵 ポプラ
社
ぼくの家族は５世代、９人で暮らしている。いちばん長く生きているひいひ
いおじいちゃんは１０６歳。ぼくと１００歳もちがう。ひいおばあちゃんは言
う。「人はいつか死ぬものだからね。ひいひいおじいちゃんは、天国だってす
うっといけるだろうよ」ひいひいおじいちゃんは１０６年生きて、死んだ。で
もその道はぼくにつながっている。ずっとつながってきた1本のいのちの流れ
のなかに、ぼくは今たっている。
『さよならエルマおばあさん』 大塚 敦子写真・文 小学館
多発性骨髄腫と診断され、残された時間が限られていることを知ったエルマ
おばあさん。その最期の一年を、飼い猫の目で追った写真絵本。おだやかにし
ずかに、家族に看取られて逝ったエルマおばあさんの姿に「死を見つめる」こ
とは「生を見つめる」ことだと納得できる。家族同様のつきあいだった日本人
写真家大塚敦子さんの視点の温かさが感じられる写真絵本。
『１８歳、青春まっしぐらー音のない世界に生きるー』今田真由美 著 ポプ
ラ社（高学年向き）
著者は、生まれつき聴覚に障害をもっている。幼い頃から、母親と二人三脚
で発語訓練に励み、幼稚園から小・中・高校は普通校で過ごす。現在鹿児島国際
大学で社会福祉を専攻、聾学校の先生を目指して勉学のかたわら、たった一人
の女性部員として野球部で活躍中！なにごとにも前向きに体当たりで立ち向か
う姿は、明るくさわやかな気分にさせてくれる。
『種まく子供たちー小児ガンを体験した七人の物語』佐藤律子編 ポプラ社
（高学年向き）
「君らしく生きればいい。それが素敵！それがここちよい」と呼びかけてい
るHP「種まく子供たち」の佐藤律子さんが、3年半費やして出版した本。小児
ガンを体験した7人の子の体験を本人や家族の筆で綴っている。「元気になっ
た子供たちも、亡くなった子どもたちも、その過程では等しく野の花のように
輝いていた。周りの人の心に生きる勇気や思いやりの種をまきつづけてくれて
いた」という佐藤さんの思いから、名づけられたタイトル。
16歳で亡くなった拓也くんに、佐藤さんは呼びかける。「治してあげられな
くてごめんね、という言葉は言わないでおこう。私は一人のサポーターにすぎ
なっかたのだから。拓也は自分の人生を生きぬいたのだ」
拓也くんたち7人がいのちをかけて伝えたメッセージは、「自分は生まれて
きてよかったのだろうか」「生きている意味があるのだろうか」と悩む多くの
子供たちに「今生きていることがすばらしいんだよ」「君は君のままでいいん
だ」
○関連ホームページ○
種まく子どもたち（本）
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=50suma01&bibid=02017759
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