死を学ぶ子どもたち PART? 第19回
 「金森実践に学ぶこと」
           


この春勤務している短大が引越しした。同系列の4年生大学と同じ敷地で、短
期大学部として再スタートすることになったのである。研究室に大事にしまっ
てあった「いのちの授業」関係の資料も同時に引越しした。4年間で訪れた学
校は90校以上。子どもたちから寄せられた感想は、ずしりと重く、ダンボー
ルで4箱ほどにもなった。荷造りの手を休めて、ひとつひとつの出会いをなつ
かしく思いおこした。

現在、私の生きるエネルギーになっている「いのちの授業」は、金沢の金森俊
郎先生との出会いから生まれた。今年の春もその金森先生から分厚い資料とN
HKが取材した番組のビデオが届いた。本来なら、ご本人にここに書いていた
だければいちばんいいのだが、もっぱら手作り文化(?)で、目下のところP
Cにまで手が回らないとのこと。

4年生の子どもたちと取り組んだ2000年度の実践のなかでも私が心ひかれたの
は、視覚障害者を教室に招いた一連の実践である。4年生の国語(光村)に
は、「手と心で読むー伝え合う心」という単元がある。一般的には、視覚障害
者のコミュニケーションの手段としての点字を学ぶことで終わってしまいがち
である。金森先生は、視覚障害者の生きさまに触れ、さらに子どもたち自身が
心拓いて、人と触れ合うことに気づいて欲しいとの願いから、出産育児を体験
した女性をゲストテーチャーとして招いている。NHKの番組にも登場するそ
の方は、笑顔がとってもステキな澗潟れいこさんである。

澗潟さんの「ひとは一生懸命生きようとすれば、たくさんの人が応援してくれ
るし、支えてくれる」との話に感動した子どもたちは「澗潟さんは、これまで
も十分頑張ってきたし、これからも頑張っていくだろう。頑張らないといけな
いのは、私たちのほうではないか」と考えるようになる。
さらに、澗潟さんのような盲導犬を連れた人を近所で見かけたことがあるとい
う一人の子の発言をきっかけに、先生の手を一切借りずに子どもたちだけでそ
の人にコンタクトをとり、みんなで会いに行くということまでやってのけてい
る。
一人のゲストティーチャーとの出会いが、子どもたちの自ら学ぶ力を引き出し
たのである。

他にも「1本の鉛筆の向こうに」をきっかけに、家族の仕事調べに取り組んだ
記録もある。毎日昼食時に行列ができる父親のラーメン屋を調べた子は、こだ
わって体にいい材料を吟味して使っている父親の気持ちに思いを寄せるように
なる。昼休みも十分に休めないような会社で働く父親の健康を気遣う子もい
る。

金森実践の核になっているのは、「子どもたちが自分の足で学び、自分で考
え、心に刻んだことが、真の生きる力になり、成長につながる」ことである。

さて、新年度が始まった。私のところへも、すでにいくつか「いのちの授業」
の依頼が舞い込んでいる。金森実践に学んで、子どもたちの心に刻み込む「授
業」にすべく、ひとつひとつを丁寧に取り組んでいきたいと思っている。

関連ホームページ

○かなもりとしろうの部屋
http://www.spacelan.ne.jp/~pine/kanamori_.htm

----------------------------------------------------------------------
MM
編集者からのメッセージ

●金森さんの実践は、次の御著書で読むことができます。
『性の授業 死の授業』 輝く命との出会いが子どもを変えた
 著者:金森 俊朗著 村井 淳志著 出版:教育史料出版会 サイズ:B6判
 / 222p ISBN:4-87652-300-2 発行年月:1996.8  本体価格: \1,500
ぜひご一読を! おすすめです。

トップ
----------------------------------------------------------------------