死を学ぶ子どもたち PART? 第18回
「いのちの授業 in 東京」  
       
                     
 3月16日(木)1〜2校時を使って、東京都世田谷区のT小学校6年2組
に「いのちの授業」をしました。4年前の3月に鹿児島で始めた私の「授業」
は、89校目で東京にたどりついたのです。たまたま私の所属しているかごし
ま文庫の会のメンバーKさんがパートナーの仕事の関係で東京に在住しており
私の上京にあわせて、彼女の子どもさんが在籍している学級で 「いのちの授
業」を、ともちかけたのがきっかけでした。卒業式前の慌しい時期にもかかわ
らず、学級の担任のS先生や校長先生の理解も得られて実現しました。
 
 打ち合わせには、もちろんメールが大活躍。短期間に担任のS先生は、HP
「種村エイ子の部屋」「種村エイ子と学ぶ死の学習」「種まく子どもたち」、
さらに「小学校教師用教育関連リンク集」を参考に「死の臨床研究会」なども
チェックし、私の著作や授業のビデオに目を通してくださいました。そのうえ
で、子どもたちへのアンケートにもとりくんでくださったのです。

 あいにく世田谷区の小学校には学校司書はいないので、ブックトーク用の本
の準備は、Kさんが区立図書館に予約して、3日ほどで20数冊準備してくれ
前日学級に出かけて、『葉っぱのフレディ』『100万回生きたねこ』『わす
れられないおくりもの』の読み聞かせまでしてくれました。学級の保護者にプ
ロのピアニストがいらして、キーボードで即興のバックグランドミュージック
をつけて、それはステキな読み聞かせだったそうです。

 アンケート結果で見る限り、生と死に関する意識は、東京も鹿児島もたいし
て変らないなという印象をもちました。所得水準の高い地域で、ペットの飼育
体験も豊富にもっていて、人や動物の生と死に遭遇した体験もけっこうあるよ
うでした。
 学校は大きな公園に隣接していて、地域の方の協力で、ケナフなどの栽培体
験もしています。

 コンピュータの環境は抜群。教室にもLANが巡らされて、インターネット
に接続したり、メールを送ったりも可能です。コンピュータ室には、私は初め
て目にするティームボードという装置があり、高速でネットに接続し、ボード
に大きく表示して、直接その画面を手で操作できるのです。

 T小学校は、2時間目の終了時刻までチャイムがならない仕組みになってい
ます。その日の授業の進行状況により、1時間目の終了時間を決められるので
す。
 そこで、私の授業は、最初の50分あまりを教室で私の体験を交えたブック
トーク中心の授業、残りをコンピュータ室に移動し、HP「種まく子供たち」
を見てもらいながら話を進めました。

 教室では、1クラスのみですから、子供たちのつぶやきまで聞き取れる環境
で、楽しく話しが進められました。さすがに、東京の子供たち、初対面なのに
臆することなくいろいろ発言してくれます。意外だったのは、死んだ後「なに
かに生まれ変われる派」がほとんどいなかったことです。担任の先生がいつも
「命は一回きりなんだぞ」と強調されているということでしたが・・・。

 「種まく子供たち」では、このHPとの出会い、精一杯生きた拓也くんのこ
と、このHPをつくった佐藤律子さんの思い、私のドイツレポート、自宅で結
香里ちゃんを看取った民子さんのこと、アメリカの青年スティーブの体験、そ
して、空への手紙を紹介しました。ちょうど授業を受けている6年生と同じ1
2歳で別れた娘さんにあてたEKさんの手紙を読み上げているうちに参加者の
目がうるんでくるのです。とくに、同席されていた校長先生は数ヶ月前パート
ナーをがんで亡くされたばかりだったそうで、あふれる涙を子どもたちにさと
られないよう苦労されたようです。

 子どもたちの感想も即メールで届きました。そのうちの一部を紹介します。
なお、しばらくしたら、担任のS先生が学校のHPに紹介くださるそうです。
その折は、またこのMMにもお知らせします。

その1・ 命とは私が思っていたものよりずっとすばらしいものだと先生のお
かげで分かりました。私が先生のように5年間も死の恐怖に襲われていたら、
先生と同じように命の本を読んだでしょう。特に私が読むと思ったのは「葉っ
ぱのフレディー」。死ぬことは痛いことではないことが分かりやすく書いてあ
るからです。先生の授業はすごく考え込んでしまう授業でした。

その2・命のことがわかったし、死ぬとどうなるかちょっと考えてみました。
でも、答えはでませんでした。それでも、考えてる時間が楽しかったような気
がします。

その3・僕はこういうことは始めだったけど、最初は興味がありませんでした。
しかし、聞いていると少しずつ、興味がわいてきて少しずつ、真剣に聞くよう
になりました。僕は、ガンになったときにはこれが運命だと、思うことにしま
した。死ぬ運命にあったのはそれは、何か理由があって死んだことになるので、
生き残れたらその体験を、誰かに伝え、先生の考えを伝えていきたいです。

その4・私にとって、昨日のようにいのちのことについて考えたり、教えても
らったりすることは初めてのことだったので、とてもしんせんだったし、興味
深かったです。短い時間でしたが、受けてよかったと思っています。

その5・昨日は、深い一日でしたよ。いのちについてなんか、イマイチ考えた
ことなんてなかったし。それと、腸を胃にしたのがスゴイと思った。だってさ
ぁ、腸だよ??しかもちゃんとふくらんでるんだよ??スゲェー。ヒトってス
ゲー。。うちの母ちゃんにその事言ってみたんだけど、うちの母ちゃんは特に
珍しいものじゃないって言ってた。(母ちゃん、看護婦さんとかの教科書作っ
てる会社の編集やってるから、しょっちゅうそういうの見てるらしい・・・。)
や、でもスゴイよ。とてもビックリしました。今度、ウチが生まれたときのこ
ととか聞いてみよーかな。「せいめいのれきし」っていう本あったでしょ?
あの本、家にあるんです。でもあんま読んだことなくて・・・。そっちも見て
みようと思いました。

「ねこのき」。あれ、可愛かった。おばあさんもスゴくうれしかったと思う。
ホントに何か・・・なんつーか、うん。新鮮で、楽しかった。夢にでてきそう
なぐらい印象的だったし。有り難うございました。たぶん、この事は一生覚え
てると思います。

その6・私は、先生に本を紹介してもらう前は全く、興味はありませんでした。
しかし、家の帰ってみると、なぜか自分の部屋にある本をすべて読みたくなっ
てしまい、1時間ぐらい見入ってしまいました。とくに好きだった本は「百万
回生きたねこ」です。初め、猫はなぜ今まで泣くことが出来なかったのに白い
猫の前ではなぜ泣いてしまったのか、それが私にはあまり理解できませんでし
た。しかし、私には身近な存在の白い猫が死んだためではなく自分が死んでし
まう恐怖で泣いてしまったんだと思います。自分が好きになった時たぶんその
ことをかんづいていたのだと思います。私はたとえ百万回生きたとしても最後
は死ぬのだということが読み終わってようやく気づきました。ホームページ紹
介でも拓哉君は最後の時間を無駄にせず、楽しい思い出をたくさんつくろうと
していました。私は、そんな本を作った人や拓哉君を真似できないと思います。
しかし、ずっと、心の中命を大切にする気持ちを持ちつづけ、この人たちに近
い存在でいたいいと思います。

その7・
種村先生は,胃を全部とってしまったけれども腸が胃のかわりをしていると聞
いてとてもびっくりしました。家に帰ってお母さんに言ったら,え?っと,と
てもびっくりしていました。私のひーおばあちゃんもいま肺にガンが見つかり
入院しています。あとは時間の問題だそうです。だから,お見まいに行くとき
元気を出してもらうようにがんばりたいと思います。(前にもひーおばあちゃ
んは,ガンにかかってお医者さんにあと半年といはれたけど6年も生きていま
す。だから今回もそのようになってほしいと思います。)ガンに勝つのは生き
たいと思う気持ちと少し思いました。
              
その8・
昨日はどうもありがとうございました。何か言葉になんないけど、すっごく感
動しました。命ってとっても大切なんだよね。スタートもあってゴールもある
んだよね。そんな当たり前のことが種村先生の授業を見て改めてわかりました。
小児がんとかほかのいろいろな病気のこが世界にはたくさんいて、それでわた
したちと同じくらいの子供たちが死んじゃうんだってね。何でその子供たちは
死ななきゃいけなかったのかな?何でがんなんかにかかっちゃったのかな?
よく意味が分かんないよね。もしかしたら私たちが、がんにかかっていたかも
しれないよね。私たちは幸せだったのかな?それもよくわかんないや。先生も
もしかしたら死んじゃったのかもしれなかったんだよね。先生はがんばって今
まで生きていたんだね。胃もとったのに人って死なないんだね。先生は一生け
ん命生きるために、手術もがんばったんだね。私なんか歯医者さんにいくだけ
でもこわいのに・・・

その9・
こんにちは。私は『がん』っていう病気は、『治らない病気』っていうイメー
ジがあったんですけど、先生の話を聞いたら『治せる病気』かもって少し思い
ました。それから、いろいろな角度から「死」についてみれて良かったです。
先生のお話の感想っていってもうまく言葉にできないけど、とにかく、いまま
で考えたことがあまりない話だったのでちょっと難しかったです。でも、先生
のお話を聞けて本当に良かったです。「生きる」とか「死ぬ」とかって、難し
いことだけど大切なことなんだなぁと思いました。

その10・
先生の話を聞いて、心に残ったことは先生の友達のホームページでした。拓也
君のことは特に印象に残りました。私のおじいちゃんもなくなってしまったか
ら、拓也君のお母さんの気持ちが分かります。でも拓也君はものすごくがんば
ってがんばって、一年と2か月も長く生き延びられたと思いますでもそれでも
わたしたちがその立場だったら、もっともっと長く生きていたいと思いました。
命の大切さ、生きるという意味がものすごく感じました。先生が帰ってから、
「だからあなたも生きぬいて」を読みました。主人公の大平さんは小さいころ
ものすごいいじめにあっていました。私はドラマでしかいじめを見たことがな
いので、本で読むと何か大平さんのき持ちがものすごく伝わってきました。と
っても字が小さいので、まだ60ページしか読めていないんだけど、いろんな
ことがわかりました。大平さんも辛かったんだなぁと思いました。 

○関連ホームページ


種まく子どもたち
http://www.cypress.ne.jp/donguri/Top.html
----------------------------------------------------------------------
メッセージ

●東京での授業、ご苦労様でした。子どもたちの感想から授業の様子が伝わっ
てきます。こうやって原稿を掲載することで、学ぶ機会を与えていただくこと
に感謝します。

●蔵満学級の子どもたちの感想をようやく種村さんに送ることができました。
今回は、子どもたちが鉛筆で書いた物を、私が音声認識ソフトを使ってテキス
ト化しました。勤務校でも、T小学校のような設備が整うと、メールでダイレ
クトに感想を送れていいだろうなあと思いました。ティームボードって、よく
わかりませんが、面白そうです。いつか見たいものです。


トップ
----------------------------------------------------------------------