連載★「死を学ぶ子どもたち」PART2 第17回

     「いのちをいただくーその3」


                

 「いのちをいただく」の実践報告を読んでいただきありがとうございました。
この実践は、初めにお断りしたように、私自身は単なるアドバイザーであり、
直接かかわったわけではないので、2回目で止めてしまうつもりにしていまし
た。
 ところが、MM小学NO457に掲載された『「あいがもを食べるか?」につ
いて思うこと』佐々木潤平さんの感想に続いて、多くの方から感想意見が寄せ
られているのを読んで、少し補足しなくてはいけないかなと思っています。

 結論から言うと、K小学校の5年生は、学校であいがもを食べることはしない
という結論に落ち着いたみたいです。ただ、子どもたちから「あいがも食べた
いという気持ちはどうなるの?」と迫られた先生方は、希望者のみ、保護者同
伴で、休日を利用して、あいがも農家のHさんの家で、あいがもを調理して食
べる計画をたてているそうです。Hさんのところでは、たくさんのあいがもを
飼っているので、学校のあいがもはいちおうHさんにお返しして、学校のあい
がもかどうかは分からない状態で食べるのだそうです。あいがもを調理するま
での一部始終を子どもに体験させるかどうかは、それぞれの家庭の判断に委ね
たようです。「是非いらしてください」と今回も招待を受けたのですが、私は
またも別の場で講演が予定されていて、参加できません。ですが私としては、
今回の取り組みを見ていて、教師が現時点で採りうるもっともいい方法ではな
いかと考えています。

 K小学校の5年生は、佐々木さんの言われる通り、当初からあいがもを食べる
つもりで飼っていたわけではありません。例年の取り組みと同じく、安全でお
いしいお米をつくるために働いてくれる動物(家畜)として接していました。
学校で飼育しているうさぎなどのただかわいがる対象としての愛玩動物とは違
う位置付けはあったはずです。

 実践に取り組んだ教師も、これまでK小で5年生を受け持ったこともあり、
あいがも農家のHさんやあいがも同時水稲作の研究者鹿児島大学の萬田正治先
生と連携しての取り組みも初めてではありません。
 今回も伊那小などの先行実践を研究したり、児童や親の気持ちに配慮しなが
ら、誠実に熱心に取り組んでこられました。そういう意味で佐々木さんが言わ
れる指導者次第、指導方法次第の条件は備えていたと思っています。

 また、この実践をMM小学に載せたおかげで、兵庫県の小学校の先生から学
校で飼っていたニワトリを食べる実践をやっているとメールをいただきまし
た。全国的に命の尊さを伝えるために、さまざまな切り口での取り組みが行わ
れているようです。今回のように、ひとつの取り組みに対し、見ず知らずのメ
ンバーが意見を交換できるなんてネット社会ならではですね。

 さて、私自身は田舎で育ちました。戦後のあまり豊かでないころ、子ども時
代を送りました。専業農家ではありませんが、庭先でニワトリを飼っていまし
た。今では見られないのどかな光景ですが、畑の方が柵でかこってあり、ニワ
トリの方が庭をかっぽしていました。石井桃子さんの「犬とにわとり」という
絵本の光景そのものでした。正月やお客様がみえるときは、そのなかの一羽を
つぶすのです。大きな雄鶏や卵を産まなくなった雌鳥が選ばれました。庭のま
ん中の柿の木に逆さまにつるされたニワトリは日常的な光景でした。羽をむし
ったり、長い腸の部分をバケツの水できれいにするのは子どもの役割でした。
 もちろん、ニワトリがあちこちに産み落とした卵の回収や、鶏糞の処理も体
験しました。
 だから、K小の取り組みに「是非やってみませんか」と賛同したのです。K
小学校のような恵まれた環境にあれば、十分可能な取り組みだと考えたからで
す。K小で相談受けたときも、最終的に「食べる、食べない」が問題ではなく
その過程が得がたい体験になるとアドバイスしたのです。結果的に、そういう
面での子どもたちの学びは当初の予想以上のものがあったそうです。

 日々成長しつづける子どもたち相手の教育実践は生きものだと、誰かの報告
にありましたが、今回のK小学校の取り組みもそのとおりだと実感しています。

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