連載 「死」を学ぶ子どもたちーPARTU 第6回

  「君らしく生きればいい。それが素敵!それが心地いい!」こんな言葉で始まるHPを見つけました。
和歌山県橋本市在住の佐藤さん(出身は別府だそうです)とおっしゃる自称"おっちょこちょい主婦"の方がつくられたページです。
タイトルは「種まく子供たち」。URL http://www.cypress.ne.jp/donguri/Top.html 

 出会いは1ケ月ほど前のこと。佐藤さんから突然メールが届きました。私のアドレスは、埼玉県浦和市で、オンライン古書店「パラメディカ」をなさっている星野さんから聞かれたということでした。
星野さんは、奥さんをがんで亡くされたあと、患者の体験記などの医療関係の本を、必要としている人がいつでも探せて入手できるようにオンラインで検索・注文できる古書店を運営されていま。
URL http://member.nifty.ne.jp/PARAMEDICA
 体験記は病名から検索できるという便利さ。もちろん、私の2冊の本もこの古書店で扱っています。(しかも定価の半額!?)
 
 さて、佐藤さんのメールには、次のような自己紹介がありました。
次男拓也を97年の9月に、小児がんの一種、骨膜肉腫で喪いました。
16歳の旅立ちでした。
 そのことがきっかけで、8人の小児がん体験者による、体験談集を刊行したいと準備をすすめております。
 この本は、小児がんで亡くなった子供3人、現在生死の境を懸命に生きている子供1人、治って元気でいる子供4人の計8人です。
私は、次男との闘病をとおして、生死は結果で、そこにいたる、家族の愛や、思いやりや、すごす時間、本人が小児がんを通して成長する事が大切なのではないかと、考えるようになりました。
 そして、小児がんで自信を失っている子供たちに「あなたたちは敗者ではないよ。種を蒔きつづけている勇者なんだよ」と大声で伝えたいと思うようになりました。
 たくさんの健康な子供たちに、生きることや死ぬことを、一度はじっくり考えてほしいなぁ・・と考えました。
 それで、本を作ろうと思い立ったのです。自分らしく生きた、生きている小児ガンの先輩たちから、2万人の後輩たちや健康な子どもたちに贈る体験談集です。全国どこでも、どんな小さな本屋さ
んにも置いてもらえるような素敵な一冊にしたいのです。(情報量の少ない地域の子供たちにも手にとってもらえるように。)
 巻末には、小児がん、難病の子供を支援するための情報、ホームページ、楽しめる施設など、掲載したいと思っています。

 最愛の子どもを亡くして悲しみの癒えないうちに、同じような小児がんの子どもをもつ家族をサポートする活動を始められるなんてすごいことだなと思います。本人や家族の闘病記を出版するケースは、いままでにたくさんありましたが、電子メディアを使って情報発信した例を私はこれまで知りませんでした。
 
 私は、この自己紹介を読んで「生死は結果で、そこに至る過程での成長が大事」という言葉に圧倒されました。きっと佐藤さんの家族にとって、拓也くん(偶然、私がこのMM第3回で紹介した生体
肝移植を受けた拓也くんと同じ名前ですが、あちらは仮名です)の小児がんと向き合ってこられた1年2ヶ月という時間が、かけがえのない密度の濃い日々だったのだと思います。HPには、この日々のことを「彼と共に小児ガンに関わった1年2ヶ月は、彼にとっても私たち家族にとっても、生きることの質を問い直す、短くて長い、一つの旅だったように思います」と記してあります。それでも、こういうふうに振り返ることができるまでに、どれだけつらい、悲しい、悔しい思いを乗り越えてこられたのでしょうか。

 佐藤さんは、小児ガンの子供たちの応援をしたいと、HPで呼びかけておられます。

 お金持ちではないので、治療費の応援はあまりできません。お医者様ではないので、最新の治療法も教えてあげることはできません。でも私は書くことが好きです。好きなことで楽しく応援したい
と、ない智恵しぼって考えました。それが「種まく子供たち」を作ること。心のサポーターになること、でした。
 拓也は他のガン患者さんたちのために、小さな冊子を作りました。「元気の種」という名前です。3冊目の原案を手帳にのこして亡くなりました。小児ガンと戦う子供たちが、日々困難と向き合い
ながら生きている姿が、世の中に、元気の種、勇気の種、思いやりの種、生きることを考える種をまきつづけることができますように。
 そんな願いをこめてーーー「種まく子供たち」です。

 このMMの読者のみなさんもぜひHPを訪問してみてください。
かわいい天使が案内してくれます。最後に、同じようにかけがえのない子どもを亡くした家族のHPへのリンク集があります。なかには、家族紹介に「長女…天国在住」というのまであって、胸が
いっぱいになりました。
 それと、佐藤さんは、ベルギーで死の図書館を作っていて、中学などに公費で死の教育に出かけて行かているというパトリックさんと文通しておられます。一体、どんな図書館でどんな活動をされて
いるのか、私も興味津々です。
 佐藤さんは、パトリックさんの資料を訳してくれるオランダ語のできる方を探しています。どなたか、オランダ語をボランティアで訳してくださる方をご存知ありませんか?

 もうひとつ、小児がんの関係の本をおいてある書店の情報や小児ガンの子ども連れで、車イスでも行ける温泉(できたら安くしてくれる所)を探しています。情報があったら、佐藤さん(Email ・
・・donguri@cypress.ne.jp)か私のところに連絡ください。 


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