2008年11月 「健康情報棚プロジェクト」と「からだとこころの発見塾」の仲間たちと長い時間をかけて、ようやく「からだといのちに出会うブックガイド」を出版しました。

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「健康情報棚プロジェクト」は、「生活に身近な図書館が、誰もが気軽に医療情報や健康に関する知識、病気との向き合い方を学べる場になれたらいい」と全国の図書館や病院図書室などに、闘病記文庫を設置する運動を続けてきた民間グループ。「からだとこころの発見塾」は、子どもたちが、自分自身のからだとこころに向き合い、いのちの大切さに気づくような活動をおこなっているNPO法人です。
 今回出版した本は、子どもたちが、自らの健康といのちについて、学ぶことができるような本のリストです。執筆したメンバーは、医学図書館司書、公共図書館司書、ジャーナリスト、医師、看護師、患者会などなど、実に多彩なメンバーです。読み物としても楽しいです。
 私は、ブックトークの部分を担当しましたが、この種の本で、ここまで広範囲に図書や情報を集めたものはないのではないでしょうか。学校図書館、公共図書館にはぜひ備えていただきたい本です。



「いのち―幼児がじっと聞き入る絵本リスト55+85」明治図書 1680(税込み)

出版社明治図書のサイトによる紹介

「いのち」の大切さが幼児の心に沁みこむ絵本

「いのち」はとても大切で、かけがえなく、すばらしいものである、と幼い子どもたちに伝えていくには絵本の読み聞かせが一番。子どもたちの生活に合わせて子どもがじっと聞き入る絵本を140冊以上セレクト。きっと子どもたちにぴったりの本がみつかります!

すずらん文庫渡辺順子さんからコメントが届きました。
いのち」、種村さんならではの1冊です。
リストもコメントも、すーと心の奥にしみこみました。
幼児向けにといいながら、その親たち、大人たちへの21世紀のメッセージですね。
じっくり読ませていただきます。取り急ぎ貴重な心強い1冊を世に提起してくださったことへの感謝とご活躍に元気をいただきました。
やれることを精一杯、生きている内に次世代にバトンタッチしましょうね!



2006年3月出版 専門の図書館学の本です。
「学習権を支える図書館」 南方新社 定価2,520円(本体2,400円+税)
出版社南方新社のサイトによると、椋鳩十が提唱した読書運動発祥の地から、
図書館再生への試案
──貸出、レファレンス、予約、資料案内、障害者サービス、自動車図書館、講演会、展示、読書会、研究会、読み聞かせ、古本市、学校との連携など、図書館にもとめられる機能は限りなく広がる──
豊富な資料と実例をもとに、生きる力をはぐくむ図書館のあり方を探る」と宣伝いただいていますが、果たして・・・
とにかく、私にとっては初めての図書館関係の本です。目を通していただき批評いただければ幸いです。

「シリーズいのちの授業」全5巻(ポプラ社)も5刷になります。



 以下は、図書館界の先輩で、私より一足先にがんも体験された佐賀の築山信昭さん(佐賀県立図書館を経て、九州龍谷短期大学教授 佐賀がんを語る会を設立)が、図書館問題研究会の仲間向けに私の著作を紹介してくださったものです。


鹿児島の図問研会員種村エイ子さんの2冊の本を紹介します

『知りたがりやのガン患者』 

『知りたがりやのガン患者』 種村エイ子著
 農山漁村文化協会 1996年11月
 222p 19cm (人間選書196)

 さて、賢明な図書館員諸姉諸兄には、書名だけでも見当がつくとおり、著者、種村さんのがん闘病記なのです。

 ところで― 種村さんのがんの最初の発見「潰瘍が見つかった」のは、1994年1月のことです。
 「半年前から続いていた腹部の激痛の原因を探るため入院して、三日目のこと」でした。
 ここから種村さんの「物語」が始まります。胃の全摘手術を受けたのが2月3日、術後12日でガストロ造影、その頃さりげなくがんの告知。その時のことを種村さんは「やっぱりそうだったのか。そのときの私は、意外に落ちついていた。」と書いています。
  
 私は肺がんの手術を受けたのですが、術後の告知の時はこの種村さんと全く同じ気持ちでした。
 がんの患者にとって、手術や抗がん剤、それに告知など、心身ともに大変なのですが、治療の結果、一時的によくなった状態(これを寛解または緩解といいます)になった時に、どんな考え方で生きるかということが、とても大切なことになります。
 この時の気持ちの持ち方や死生観によって、その人のその後の命が決まるといっても過言ではありません。この本の第3、4、5章に、手術後の種村さんが、がんを生きる心構えを、どう自分の中で築いていったかが、示されています。
そしてそのがんを生きる心構えの中に、がんに罹るまで精一杯に生きてきた種村さんの、図書館員としての生き方、子どもの本にかかわって来た生き方が、きっちりと組み込まれて行ったのです。そしてそのことが更に命を見つめる、2冊目の本の主題へと発展して行きました。


『「 死 」 を 学 ぶ 子 ど も た ち 』 教育史資料出版会 1998年12月

  
 さて、2冊目の本です。発行所に注目してください。1冊目とは違います。
キャッチフレーズに「知りたがりやのガン患者が語る「生と死」の授業」とあります。種村さんは、この本ではがんのことではなく、「生と死の授業」について書いています。
  
 種村さんが自分のがん体験から、がんの生き方を考えて行く中で出合ったのが『性の授業 死の授業』という本です。この本は金沢市の小学校の先生、金森俊朗さんが自分の実践を書いたもので、出版社が実は教育史料出版会だったのです。
 金森先生は死の授業で、当時50歳の乳がん患者さんを教室に呼んで4年生の子どもたちに、死を語ってもらったのです。この患者さんは1年後には亡くなられるのですが、種村さんはこの患者さんの生き方に強烈なショックを受けました。それが「生と死の授業」を始めるきっかけとなったのです。
 
 この本で種村さんは、図書館と子どもの本に関わって生きて来た自分の経験と、死に直面した自分のがんの体験を生かして、その二つの世界を越え、人の"いのち"の尊さ大切さを、死を通して子どもたちに教えるすばらしい仕事を広げています。その方法として、この本の第5章ではブックトークを取り上げています。
 
 私も肺がんの手術後、図書館の仕事とがんを生きる患者の生き方を、種村さんと同じブックトークで結びつけることを考えて来ました。こんなことから、種村さんの生き方と私の生き方とは、非常に似通ったところがあり、私自身の生き方にも大きな勇気と自信を与えてくれています。
 
 図書館と子どもの本の経験を生かして、自分のがん体験を乗り越え、生と死の尊厳を考える授業を、日本中に広げて行く種村さんの活動に支援を送るために、種村さんのこの2冊の本を図書館にも購入して一人でも多くの人に読んでもらってください。お願いします。

      1999年2月24日 図問研佐賀支部 築山信昭



著作紹介