国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係 (講談社+α新書) 新書 鈴木 宣弘 (), 森永 卓郎 ()を・

本物の森を奄美大島の自然を大切に: ・国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係 新書 鈴木 宣弘 (), 森永 卓郎 ()を大勝老人クラブ・高齢者の学習療法・! (synapse-blog.jp)

4/9/2024 7:33:01 PM



(13562) 髙橋洋一チャンネル - YouTube


11月理事会、忘年会、老人クラブ連合会・クラブ加入のメリット・メリット10・.pdf へのリンク

財務省を解体せよ!高橋洋一著・目次・

はじめに


第一章

財務省スキャンダルの真相

前代未聞のスキャンダル・22・

「すいません、おっぱい触っていい?」・23・

財務省の事後対応処理火に油を注いだ・24

危機管理の基本は「金月処理」・26

自分で自分の首を絞めた財務省・27

部下からの評判はよかった福田氏・28

セクハラ被害者を支援する弁護士に・30

テレビ朝日はなぜ自社で報じなかったのか・32

財務省とマスコミの癒着・34

再発防止のための「本質論」を議論すべき・36

トップ2人が不在の異常事態・38

森友学園問題の経緯・39

森友文書「改ざん」はなぜ行われたのか・41

本省局長として低すぎた答弁能力・42

不用意な嘘を塗り重ねた佐川答弁・44

「交渉記録を処理した」もウソだった・46

突きつけられた公文書管理の問題点・47

財務省「恐竜番付」の常連・49

近畿財務局「失敗の本質」・50

価格交渉をなぜ否定したのか・52

マスコミと野党の政権攻撃は「愚策」・55

財務省が安倍政権に忖度しない理由・57

「口裏合わせ」まで発覚した財務省の今後・59

あまりに的外れなマスコミの柳瀬批判」・60

内閣府は「受験資格」を与えただけ・62

行政センスのなさを露呈した「前川発言」・64

大学設置認可権はあくまで文科省・67

11/14/2023 2:59:36 PM


・第二章 財務省と安倍政権の「暗闘」舞台裏

「財務省依存」から抜け出した安倍官邸・70

「経産省内閣」のメリット・71

今井秘書官と財務省の激突"73

第一次安倍政権における財務省の倒閣運動75

増税スキップで財務省は安倍憎し・77

財務省はなぜ「増税」にこだわるのか?

財務省の本音が表れた「大増税ゲーム」・81

安倍総理と財務省の「消費増税をめぐる攻防」・83

「経済主義」と「財政再建至上主義」はこんなに違う・85

小泉政権と安倍政権で財政再建は進んだ・87

財務省の言いなりだった歴代政権・88

安倍政権に対する必死の抵抗90

石破氏と岸田氏は財務省に何も言えない・92

反アベノミクスは「財務省路線」・95

長期政権に不可欠な「経済パフォーマンス」・97

「マクロ経済政策」と「財務省コントロール」・99


第三章

マスコミを洗脳し「増税」を目論む財務省の大罪

江田憲司氏の「炎上ツイート」・102

スクープのほとんどは「官僚リーク」・104

官僚と記者クラブの「共犯関係」・105

政治家とマスコミを操る「官僚の情報力」・108

財務省のメディアコントロール術・110

財務省が「社説」を書ける理由・112

日本の財政状況は本当に「ヤバい」のか?114

財政状況の把握は「統合政府」で考える・116

「借金が多い」と「財政状況が悪い」はイコールではない・118

財務省がひた隠す「不都合なバランスシート」・1202023年11月16日 14:13:33・

財務省が喧伝する「財政赤字の危険性」・122

官僚が恐れる政府関連会社の民営化・124

増税しても景気は悪くならない」の大ウソ・127

「全税アメリカ」と「増税ニッポン」・130

控除額の増減という「不公平な増税」・131

「痛みに耐える」論者たちの大錯誤・133

4/2023 3:17:15 PM


・将来世代を巻き込む消費増税の危険性・135

インフレ率が上がれば失業率は下がる・137

「緊縮病」の異様さ・139

第四章「最強官庁」の権限・仕事・人事

「国士」を気取る財務官僚たち・142

「変人官僚」が生まれるまで・143

2年に1人は君のような人材がいてもいい」・144

同期入省の顔ぶれ・147

税務署長は「バカ殿」・148

尊敬できる上司の存在・149

財務官僚の「逆玉婚・151

大蔵官僚たちのおごりを目にしたか・152

ハイヤーと料亭の官僚接待・153

省内人事の掟・155

キャリアの昇進課長クラスまでは横並び・156

同期から事務次官を出したい!158

財務官僚は日本最高のエリートか?161

「最強官庁」の内部機構・162

主計局にひれ伏す各省庁・164

税金を司る主税局・166

主計局の配下にある「国税庁・167

政治家が主税局を恐れる理由・168

国の財産を管理する理財局・170

財政投融資は「第二の予算」・172

経済外交では外務省より極限が大きい国際局・13

輸出入に目を光らす関税局・175

大臣官房は省庁の司令塔・176

中央と地方をつなぐ財務局・178

霞が関の「人事権」も握る財務省・179

「官邸ネットワーク」の実態・181


・第五章「財務省 解体」。と霞が関改革

不祥事の背景に財務省の「おごり」・186

4/2023 3:59:48 PM


・「歳入庁」は野党とマスコミのタブー・1872023年11月15日 12:08:30財務省解体とは何なのか。すなわち、新たに税金と年金などの社会保険料の徴収を一括して行う「歳入庁」を新設すること。つまり、国税庁と日本年金機構の徴収部門を統合した組織をつくるということです。

歳入庁は世界の常識・188

年金保険料の未納を防ぐ・190

消費税を社会保障目的としている先進国はない・192

財務省による「歳入庁」潰し・194

ツートップが辞任しても業務に影響なし・196

事務次官は「財務省のトップ」ではない・197

国税庁長官は税務の素人・199

財務事務次官を外部登用せよ!200

霞が関改革は「政治家の鬼門」・201

 忘れてはならない「日銀法改正」・204

「公文書管理庁」の新設が必要・205

「天下りあっせん禁止」を立案・206

「天下りあっせん」を死守した官僚OB208

公務員擁護の党”だった民主党・210

「倒閣運動」はもうできない・212

天下りの「正しい定義」・214

不当な再就職を見抜くポイント・216

抜け道としての「現役出向」・217

再就職規制の改善点・219

「全府省庁調査」を毎年行う・221

11/14/2023 4:15:17 PM


 

財務省を解体せよ!高橋洋一著・第三章・102頁・


マスコミを洗脳し「増税」を目論む財務省の大罪

江田憲司氏の「炎上ツイート」

・森友学園問題をめぐり、衆議院議員の江田憲司氏の201744日のツイートが炎上しました。NHKが報じた財務省の「口裏合わせ」についての言及ですが、まずは全文ツイートを見てみましょう。

・大阪地検女性特捜部長のリークがどんどん出てくる。NHK「何千台分のトラックでゴミを撤去したと言ってほしい」と本省理財局の職員が森友学園に要請と。ネタ元はメールらしい。今のところ、特捜部は「やる気」みたいだが、法務省と財務省の関係からするとどこまで貫けるか?? 頑張れ!

・問題のNHKの報道を確認しておきましょう。国会で森友学園問題の追及が行われた17年 2月、財務省の理財局職員が、森友学園に売却する国有地のゴミの撤去に関して、嘘の説明をするよう学園側に口裏合わせを要求していたという内容です。

・野党から「8億円かけてゴミを撤去するとなればダンプカー4000台分くらいになる」と追及されたためか、職員は学園側に電話し、「撤去費が相当かかった気がする、トラック何千台も走った気がするという言い方をしてはどうか」と呼びかけたといいます。

・103頁・


・財務省はのちにこの報道内容を認めました。国会対応のために嘘をつくことを呼びかける行為は、官僚失格とでも言うべき背徳行為です。

・そこで、冒頭の江田発言があったわけですが、これに対して、「江田氏はなんだかうれしそうだが、もし本当に大阪地検から報道機関へのリークがあったとすれば、これは国家公務員の守秘義務違反ではないのか。それを放置するのは国会議員としてどうなのかという批判が多数寄せられました。江田氏はこれを受け、46日にツイッター上で次のように釈明しました。

(大阪地検の件は、各報道機関も「大阪地検特捜部の調べでわかった」と報道している通りです。ただ、特捜部の捜査を指揮し万般の責任を持つのは、トップである「女性特捜部長」であるため、その捜査へのエールも込めて彼女だけを特掲してしました。言葉足らずだった点を訂正してお詫びいたします>

・104頁・11/15/2023 6:07:46 PM


・スクープのほとんどは「官僚リーク」

・江田氏はいわずと知れた元通産官僚です。筆者も財務官僚時代の経験から、官僚がしばしばマスコミにリークするのをよく知っていますので、正直言ってNHKの「口裏合わせ」の報道を聞いたときには、「ああ、特捜部のリークだろうな」と似たような感想を持ちました。そこで、次のようなツイートをしました。

・江田憲司さんのリーク元発言。そんなのみんな知っているでしょ笑。厳密には国家公務員の守秘義務違反だが、官僚のリーク、悪口、サボタージュは常套手段。官僚のリークなしになったらマスコミは成立しないからマスコミはリークを叩かない。野党は特定秘密保護法も反対でリーク大歓迎でしょ)

・このようにツイートしましたが、決して断定はしませんでした。元官僚なら「断定せずにあとで言い訳の余地を残すべき」と心がけます。江田氏もそうなのですが、あのツイートは、普段なら絶対にしないであろう断定口調だったのでちょっと驚きました。

・いずれにせよ、地検に限らず、官僚からのマスコミへのリークは常態化しているといっても過言ではありません。もしも、官僚や部内者からのリークがなければ、マスコミの「スクープ報道」の多くが成り立ちません。

・105頁・


・ぜひ、マスコミの記者に「これまでスクープを何本書いたのか、そのうちの端緒が官僚や企業の内部者からのリークではなく、自分の調査によるものがあるのか」と聞いてみてください。きっと、「ほとんどない」という答えが返ってくるでしょう。多くのスクープは、官僚または企業の内部者からのリークによるもの、というのが現実なのです。

・官僚と記者クラブの「共犯関係」

・近い将来に公表するものを少し前倒しして、特定の記者に伝えるといった形での「官僚リーク」は、法律上は問題がないといえます。

・一方で、公務員の守秘義務と照らし合わせた場合に、この「事前リーク」と行政内部の犯罪行為の告発以外のリークは、ほとんどすべてに問題があることになります。

・106頁・11/15/2023 6:09:10 PM


・筆者の役人時代の経験からいえば、マスコミのスクープは一般的に官僚からのリークによるものが多いように感じられます。その手のマスコミへのリークには、やはり問題があると言わざるをえないのです。

・官僚は、基本的には記者クラブに属していないメディアには形式的対応を行うので情報を出しません。一方、官僚と共犯関係にあるといってもいい記者クラブ記者には情報を出します。この共犯関係がいきすぎて、「違法」なリークが発生してしまってみいるのが現実です。

・記者クラブ以外の者が情報を取ることがいかに難しいか。NPO法人の理事長が20181月に、当時国税庁長官だった佐川宣寿氏のスケジュールを情報公開請求したところ、60日間待たされたあげく、「平成30117()の予定(日程表)」だけが公開されただけということを鑑みればよくわかるでしょう。

・さて、マスコミへのリークは、官僚の政治家に対する嫌がらせであるケースも少なくありません。この他にも、政治家の悪口をマスコミに言いふらしたり、サポタージュという戦法に打って出たりということもあります。

・107頁・


・元行革担当大臣の渡辺喜美氏は、「リーク、悪口、サボタージュは官僚の常套手段」と喝破していました。

・では、なぜ官僚がリークを行うのでしょうか。答えは簡単です。そのほうが情報戦を有利に運べるからです。これは、捜査当局としても例外ではありません。マスコミへのリークを通して、世論を味方につける狙いがあります。

・捜査中の事案について、「捜査のなかで、対象者がこんなに悪いことをやっていることがわかった」と報じられれば、世論は「捜査関係者はもっと頑張れ!」となるでしょう。そうすると、捜査がやりやすくなるのは明白です。いわゆる「国策捜査」は、多くの場合、この手法が利用されます。

・一方、前述のとおりマスコミは、官僚からのリークなしではほとんどの記事が書けなくなります。こうした共犯関係があるからこそ、いくら官僚からのリーク違法なものであっても、マスコミがそれを表立って批判することはないのです。

・とくに、新聞やテレビの事件取材は、捜査当局からのリークなしでは記事の書きようがありません。たとえば、「参考人の事情聴取」と「重要参考人の取り調べ」は、マスコミでは完全に区別されており、後者はこれから逮捕される場合に用いられますが、これは捜査当局からのリークなしでは書けない情報です。

・108頁・11/15/2023 6:21:09 PM


・政治家とマスコミを操る「官僚の情報力」

・官僚も自らが率先してマスコミにリークするのはまずいと考えているので、与党政治家を隠れ蓑にして情報を流すこともよくあります。政治家としても、記者から「情報通ですね」と言われるのはメリットになりますから、官僚からの情報を喜んで受け取ることが少なくありません。

・このため、官僚が情報を与えれば、政治家はまるで拡声器のようにマスコミに広めてくれるのです。筆者も投入時代、ある情報について政治家へのレクチャーをすればそれは「公表済み」と見なしていました。つまり、政治家に話した時点で、マスコミや外に漏れることと同等と考えていました。

・結果的に自分のやりたいことや考え方がマスコミを通じて世間に広がるので、官僚にとっては大きなメリットです。政治家へのレクチャーは官僚としての責務です。から、別にリークはしていないという口実にもなり好都合なのです。

・109頁・


・官僚から政治家へ情報が流れると、その政治家がマスコミにリークする。そのリークは、マスコミ各社内でメモ化、情報共有され、幹部が「早耳情報」と吹聴し各社のニュースになることも珍しくありません。

・こうして官僚から、いろいろなルートで情報がバラ撒かれ、それがマスコミのニユースになっていることは、もう一般の人にもばれつつあるのではないでしょうか。

・記者クラブと官僚が共犯関係にあることも、ほとんどの人がお見通しでしょう。

・結局、マスコミには調査能力はなく、官僚からのリークに頼っているのが実情だということもばれているはずです。

・江田氏は官僚時代には記者たちの「ネタ元」になっていたはずです。さらに、政治家になってからは各種情報に精通していることで知られています。そんな氏が、なぜツイッターで「記者のネタ元」について明かすようなつぶやきをしたのでしょというか。さすがに不用意だし、やりすぎではないかと、ある意味で驚きがありました。

・いずれにせよ江田氏への批判は、マスコミにリークする官僚のおかしさと、官僚のリークばかりに頼っているマスコミの実態に対する、一般の人からの素直な反応と見るべきでしょう。

・110頁・11/15/2023 6:36:14 PM


・財務省のメディアコントロール術

・役所のなかでも、財務省はとくにメディアコントロールに長けています。マスコのみならず、主要な学者や知識人を取り込み、財務省に都合のいい報道や論評が大量に拡散するように工作しているのです。

・大半の記者は知識不足で情報をチェックする力がありませんから、財務省の影響下にある学者や評論家の意見をそのまま垂れ流します。まさに財務省の思う壺です。官僚に簡単にまるめ込まれてしまう記者たちは、まさに「ポチ」という形容がぴったりです。

・また、記者たちは政府文書を疑いなく信じる傾向が強いです。スクープになる「文書」を渡されれば、当然記者心理として色めき立ちます。官僚や政治家にとっては、まさに操作しやすい存在なのです。

・111頁・


・筆者も官僚時代に、マスコミ操縦のテクニックを数多く駆使してきました。極端な話、財務官僚は翌日の新聞の社説を「書く」ことさえできてしまうのです。これ実際にあった話ですが、筆者が本省の管理職になった頃、上司に「明日の社説に書け!」と命令されました。

・新聞記者でもない筆者が社説を書くとはどういうことなのか。そう首を傾げていると、上司は「お前が書くわけはないだろ。記者に社説を書かせるのだ」と言いました。筆者はそれまでも情報をリークして、記事を書かせるということはしていました。ただ、社説まではコントロールしたことはありませんでした。

・その後、管理職としての業務を進めていくと、新聞社にこちらの思うとおりの社説ことはよくあることなのだと気づきました。

・局長は社説に書かせたいことがあると、課長級の人間を5~6人集めます。そこで、「さあ、明日何社出るか?」ハッパをかけて、課長たちを競わせるのです。

・各課長は、局長から指示を受け、一斉に新聞社にアプローチ。当然、うまくいく場合とそうでない場合があります。当然ながら新聞社も、役人に頼まれたからといって、やすやすと社説の内容を変えるわけにはいきません。

・112頁・11/15/2023 6:53:40 PM


・それなりの準備がなければ、役人にとってはかなりキツい仕事になります。

・財務省が「社説」を書ける理由

・とはいえ、財務官僚の思うとおりの社説を書かせることができる場合も、ままあるのが事実です。

・どうしてこういうことができるかというと、財務省がメディアコントロールのために、新聞社の社説を書く論説委員たちと濃密な人間関係を結んでいるからです。財務省の考えを、新聞を通して拡散するために、普段から手を打っているのです。

・財務省の審議会に新聞社の論説委員を加えておく、というのは常套手段です。建前としては、マスコミの意見を聞くということなのですが、本音でいえば、マスコミを取り込むための作戦です。

・もちろん、審議会に入れただけで、社説を書いてもらえるわけではありませんが、財務官僚は若い頃から、新聞社を中心とした有望なマスコミ人との付き合いを深めています。

・113頁・


・将来の幹部や論説委員になりそうな人に目をつけ、記者が困っているとリーク情報を提供したりして、貸しをつくっておくのです。

・こうして、ギブ・アンド・テイクの関係ができてしまえば、こちらが書いてもらいたいことがある時には、「ちょっとお願いしますよ」と頼めるようになります。そして、相手が論説委員になった暁には、社説でしばしば財務省の主張を取り上げてもらうというわけです。

・どのタイミングで社説を書かせるかは局長の判断になりますが、審議会の答申などいくつかわかりやすい節目があります。筆者などはそれを見越してマスコミ側への働きかけを進めていました。

・メディア状況が変わりつつある現在では、新聞以外への媒体へのアプローチも欠かせませんが、こうした事情のため若手財務官僚たちはマスコミとの関係づくりに勤しんでいます。そうした積み重ねが、財務省の圧倒的なメディアコントロールを支えているのです。

・114頁・11/15/2023 7:07:33 PM


・日本の財政状況は本当に「ヤバい」のか?

・財務省はあの手この手でメディアや政治家を洗脳しています。それは時に政策を歪め、国益を損なわせるほど有害なものです。

・代表的なものが「国の借金1000兆円」というまことしやかな説でしょう。経済財政諮問会議は財務省の提灯持ちのように、この考え方を貫こうとしています。

・マスコミもこれに洗脳されています。2018511日付の共同通信の配信記事を見てみましょう。

・財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」が2017年度末時点で10878130億円になったと発表した。16年度末に比べて162536億円増え、過去最大を更新した。増加は2年連続。13年度末から5年続け1000兆円を上回っている。

・高齢化で膨らむ社会保障費などの財源を赤字国債で賄ってきたため、満期10年以上の長期国債を中心に国債の残高が増加を続けている。

・総務省推計の41日時点の総人口(12653万人)で割ると、国民1人当たり約860万円の借金を抱えている計算となる。

・115頁・


・借金の内訳は、国債が9591413億円に上り、242410億円増えた。金融機関などからの借入金は3971億円減って54228億円。一時的な資金不足を穴埋めするために発行する政府短期証券は75903億円減の746489円だった〉

・財務省の言い分を垂れ流しただけの記事ですが、まさに典型的な「国の借金1000兆円」論と言えるでしょう。記事にも書かれているとおり、国債と借入金、政府短期証券を国の借金と捉え、その合計が1000兆円を超したと騒いでいるの ですが、正しい見方とはまったく言えません。バランスシートで全体を見るのではなく、負債にだけ注目して、財政問題を論じているからです。

・「歳出が増え財政規律が緩んでいる」「税収増頼みだ」思えば、1712月に18年度予算案が閣議決定されたときも、メディアはこぞって「財政規律の緩み」を指摘しました。全体を見れば昨年並みなのにもかかわらず、です。

・マスコミは、「国の借金総額が2017年度末に883兆円になるので、財政規律を正すべきだ」と繰り返し主張していました。

・116頁・11/15/2023 7:20:54 PM


・相変わらずバランスシートの考え方が抜け落ち 資産を無視して借金だけを見ていることに呆れてしまいます。

・国の財政状況を正しく見るためには、銀を含めた「統合政府」としてのバランスシートを元にすることが必要です。それを見れば、日本ではほぼ財政再建が終わっている状態で、健全な財政状況だということがわかるのです。

・現状を見れば、ほぼ資産と負債がバランスしています。これを毎年のフローで見ると、国債の利払い費は、資産サイドの金利収入などでほぼ賄えるということになります。つまり、財政状況について問題はないのです。

・さらに、資産サイドからの金利収入は、各主体において「準備金化」され、フローの資産収入を少なく見せています。こうした隠れた準備金〟を発掘するのが国民からの期待です。かつて、筆者が発掘した「埋蔵金」と同じです。

・財政状況の把握は「統合政府」で考える

・「統合政府」についてもう少し詳しく説明していきましょう。これは、財政・金融問題を考えるときに、政府と中央銀行を一体のものと捉える考え方です。

・117頁・


・法的にも中央銀行はいわば「政府の子会社」ですが、一般企業においてグループ企業の業績と資産を連結決算で考えるのと同じように、政府と日銀の財政と資産を一体で見るべきだという立場です。

・もちろん、この考え方は中央銀行の独立性と矛盾しません。中央銀行の独立性とは「政府の経済政策目標の範囲内で、その達成のためにオペレーションを任されて「いる」という意味です。これも、グループ企業がそれぞれの営業の独立性を持って同じ意味になります。

・この「統合政府」という考え方は、グローバルスタンダードです。20173 14日、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ米コロンビア大学教授が来日して経済財政諮問会議に出席しました。

・スティグリッツ教授は、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張したのです。これは、統合政府の考え方そのものです。日本では何かと批判の的となる筆者の分析方法が、国際的には標準的なものであったことがわかっていただけるでしょうか。

・118頁・11/15/2023 7:30:35 PM


・日本の経済学者のなかには、スティグリッツ教授が間違っていると息巻いている人もいますが「統合政府は国際標準の会計的な考え方ですので、否定しようがありません。そうした経済学者には、英語でスティグリッツ教授にレターを書いて、スティグリ教授が謝ってきたら、教えてくれと言ってあるのですが、まだその知らせはありません。

・「借金が多い」と「財政状況が悪い」はイコールではない

・バランスシートで見て財政状況を把握するのは常識であり、その右側の借金だけ見る方法は国際的には通用しません。ただ、それでも懐疑的な人は、来年3月に確定申告をしてみるとこのことがわかるはずです。

・税務署に「借金が多くて苦しいので、税金を払えない」と申告した場合、その人の所得が一定以上であれば、資産負債の明細書を求められます。その際に、資産を過小に申告し、税務調査で「隠し資産」があることが判明したら大変なことになるのは誰でもわかるでしょう。

・119頁・


・ちなみに、政府のバランスシートを初めて作成したのは、二十数年前、大蔵省に勤めていた筆者です。その当時は、政府の財政状況をいかに客観的に把握するかを大蔵省内で議論しており、会計に詳しい筆者が政府のバランスシートの作成を担当したのです。

・バランスシートに着目した財政運営も行おうとして、理財局内に「資金企画室」という組織をつくり、初代室長に就任しました。この資金企画室の俗称英語名はAsset and Liability Management Office」。まさに「バランスシート管理」という意味です。そうしたバランスシートを政府がつくるのは、当時から世界の潮流になっていたのです。

・筆者は様々な国の事例を勉強し、日本でも政府のバランスシートをつくろうとしました。そのためにアメリカに出張に行くと、米財務省でも似たようなことを考えているということで、担当者とかなり親しくなったものです。

・120頁


・財務省がひた隠す「不都合なバランスシート」2023年11月16日 14:12:32・

・アメリカは、日本に先立って1995年版から政府のバランスシートを公表しています。日本でもほぼ同時期につくりましたが、当初は対外的には非公表で部内利用となっていました。2005年、小泉政権のときに18年度版を正式に公表するようになりました。

・これは筆者が経済財政諮問会議特命室時代に、いわゆる埋蔵金論争 (資産負債改特別会計改革)を仕掛けていた時期と重なります。財務省は筆者の動きを封じ込めようと、バランスシートが積極的に取り上げられないように、マスコミにはその存在や意味をほとんど説明しませんでした。

・筆者がバランスシートについて指摘すると、財務省は「公表済み」と言うのですが、マスコミに説明(レクチャー)しないので、どこも報じないという状況が今でも続 いているのです。

・筆者の元には、しばしば海外投資家が訪れ、日本政府のバランスシートについて話をしてもらいたいと依頼してきます。

・121頁・


・財務省も、海外投資家向けに日本国債の状況を説明するときにはバランスシートしばしば用いるようですが、最近では英文資料も用意していないようです。先進国であれば、「financial statement(財務諸表)を用意するのは常識です。

・海外投資家は、日本の財政状況が悪くないことを正しく理解しています。バランスシートで日米比較をすると、過去20年弱、アメリカの財政状況のほうが日本より一貫して悪いことがよくわかります。

・逆にいえば、日本がアメリカの数字を上回るようになったら注意すべきだということです。もっとも、国には「微税権」をはじめとする「見えない資産」があるので、少しぐらいネット債務額(負債の総額から資産を引いた額)が大きくなっても、びくともしません。それでも、一応の目安はアメリカの数字だと筆者は考えています。

・中央銀行を含めないベースでGDP20%程度、含めるベースではGDP60% 程度の日米格差がありますので、現状100~300兆円くらいの国債を発行したとしても、大きな財政問題にはならないでしょう。

・122頁・11/15/2023 8:03:44 PM


・財務省が喧伝する「財政赤字の危険性」

・財務省は消費増税の最終的な根拠は、財政赤字の問題だと主張しています。「借金はけしからん」というわけですが、本当にそう言い切れるのでしょうか。

・そもそも、財務省はなぜ財政赤字は悪いと考えるのでしょうか。わかりきったことのようですが、財務省の見解を知るために、財務省のホームページにある財政パンフレットを覗いてみましょう。

・このなかには、「日本の財政関係資料」という項目があり、以下のような財政赤字の問題点が指摘されています。

1,公的サービスの水準の低下

・②世代間の不公平

3,間部門の経済活力の低下

・④財政への信認低下による金利上昇

・つまるところ、は支払い金利の増加、②は償還費(国債の元本返済に充てられ費用の増加、は金利の上昇、も金利の上昇を指しています。さしずめ、金利の上昇を問題視しているようです。

・123頁・


・ちなみに、この場合の金利とは、日本銀行が民間金融機関に貸出しする際の公定歩合金利のことです。

・結論からいえば、負債の総額から資産を引いたネットベースで見れば、これらは大した問題ではなくなってしまいます。

・債務のストック分析では、ネットベースの国債は統合政府で見なくても500兆円もありませんし、統合政府で見ればほぼゼロです。資産の多くは金融資産なので金利収入があるものが多いです。ただし、資産のなかに有形固定資産もあり、収益を生み出さないものがあるのも事実です。

・いずれにしても、ネットベースで国債が少ないための支払い金利については、その悪影響をかなり相殺できます。の金利上昇ですが、仮に金利が上昇したら借り手 がいなくなり、景気は後退すると考えるのは完全な取り越し苦労です。今はマイナス金利政策をとっていますので、まったく気にしなくても大丈夫です。

・124頁・11/15/2023 8:05:30 PM


・では、2,の償還費はどうでしょうか。ネットベースで債務を考える立場からは、償還するなら資産を売却すればよいということになります。資産の大半は金融資産なのですから、資産売却は容易です。

・もっとも、金融資産の多くは政府関連会社 (特殊法人、独立行政法人等)への貸付金や出資金です。これらを売却することは政府関係会社を民営化することを意味し、官僚の猛烈な反発が予想されます。政府関連会社は天下り機関なので、民営化すると天下りができなくなるからです。

・官僚が恐れる政府関連会社の民営化

・こうした観点から、増税派が負債の総額から資産を引いたネットベースではなく、単なる負債の総額としてのグロスで強調する理由のひとつがわかるでしょう。ネットベースの話になれば、当然政府のバランスシートの資産側も注目されます。資産サイドを見ると、政府関連会社への貸付金、出資金が大きいのがわかります。

・国債を償還するとすれば資産売却、つまり政府関連会社の民営化が筋であることはすぐわかってしまいます。

・125頁・


・資産売却すると天下りができなくなってしまいます。

・だからこそ、国債償還が財政赤字の問題点と言いながら、天下り先を守るために資産サイドに注目されないようにしているのです。

・そこで、「償還には増税が必要」というロジックになるのです。この官僚ロジックはえげつないです。自分たちの天下り先を温存し、資産売却をしないまま、国民には増税を強いるのです。

・政府を連結ベースで見たとき、日銀が重要な関連会社であると筆者はこれまで指摘してきました(前述した政府と日銀を合体させた統合政府ベース)。日銀は資産して国債を450兆円も保有しているからです。この450兆円は連結バランスシートでは、負債サイドの国債と相殺されますが、実際には政府のバランスシート負債にもあり、日銀のバランスシートの資産にもあります。

・ただ、この450兆円の国債は事実上償還しません。つまり、この分については財政赤字の問題点となる償還費の増加は一切生じないのです。というのは、日銀保有国債は乗り換えられるからです。日銀引き受け(政府から市場を通さず国債を買い取る)は法律違反と解説するコメンテーターがいますが、これは制度への無知をさらけ出しているだけです。

・126頁・11/15/2023 8:17:38 PM


・現在行われている日銀引き受けは、財政法に反することはありません。なぜなら、日銀保有の国債で償還期限が来た一定割合のものについては、日銀引き受けされた国債と乗り換えられると規定されているからです。

・以上のことからわかるように、の償還費の増加についても、今のところ心配する必要はないと言えるのです。

・ちなみに、これまでの日銀の国債引き受けの最高額は15年度の25兆円です。これ筆者が小泉政権で経済財政諮問会議の特命室担当の時でした。当時、そんなに日銀が国債引き受けをすると国債の信認が低下して金利が上昇するという財務省筋からの圧力がありましたが、そんなことにならないと言って最高額を決めました。

・今でも、日銀が国債引き受けをすると金利が上昇する、ハイパーインフレになると言うテレビのコメンテーターがいますが、こうした事実はまったく知りません。財務省のポチになるとしても、もう少し勉強すべきです。

・127頁・


・「増税しても景気は悪くならない」の大ウソ

・こうして、財務省の言う「財政赤字の問題点」は、現時点で見ればそれほど心配することではないことがわかります。筆者は、一部のネット住民のように、いくらでも財政赤字があって大丈夫と言うつもりはありません。財政赤字はバランスシートなどを見てきちんと把握すべきという立場です。現在の状況を見れば、問題なしと言っているのです。

・あえていえば、財政赤字を心配しすぎて過度な緊縮財政に陥り、必要な財政支出を抑制することのほうがよっぽど危険です。

・金融緩和と積極財政によって、2020年度に名目GDP600兆円を達成し、財政再建も同時に果たすことはそれほど難しくないのです。

・もっとも、財務省の御用ポチ”であるマスコミ、エコノミストや学者はこれまでとまったく同じ調子で、財政赤字の問題や社会保障費が大変と指摘し続けるでしょう。そして、「増税や緊縮財政こそが王道」と主張するのです。

・その際のロジックとして、増税しても景気は悪くならないと言うかもしれません。

・128頁・11/15/2023 8:43:42 PM


・このロジックは、144月の消費増税ですでに破綻しているにもかかわらず、です。

・実は、財務省や財政制度審議会では景気の長期予測を行うとき、増税しても景気にはまったく影響が出ないモデルが使われています。それを使って、「このままで増税しないと、債務が大きくなって財政破綻しますよ。増税しても、景気は落ち込まないから、増税しましょうよ」というストーリーが語られるのです。

・筆者は、これまでも財務省や財政制度審議会のそうした長期試算を「クソ試算」として批判してきました。144月の消費増税の際にも、増税派は「増税しても景気は悪くならない」と断言していました。

・それがとうとう外部のシンクタンクにまで蔓延してしまいました。東京財団政策研究所の財政推計モデルがそれです。これが、財務省で使っているモデルとそっくりなのです。

・もっとも、ほとんどエクセルで計算できるようなもので、モデルというほど大層なものではありません。経済成長を前提として財政収支を計算しただけで、「どれだけ増税しても経済成長には何の影響もない、増税すればするだけ財政収支がよくなる」というきわめて単純な結論が出てきます。

・129頁・


・東京財団のものは、消費税率を50%にしても経済成長は下がらないで、たちどころに財政再建が完成するというものです。

・驚くことに東京財団は、それを政策担当者が使うように勧めているのですが、まともな担当者ならこんなものは信用しません。増税志向で正確性などどうでもいい財務官僚しか使わないでしょう。

・東京財団モデルは、財務省や財政審が使っているものとほぼ同じものを、誰でもわかる形で一般に公開したのですから、社会的には大きな意味があります。ちなみ 東京財団は、役員や研究員に財務省関係者が多いシンクタンクです。そして、その試算結果をマスコミが無批判に取り上げています。

・財政状況が悪くなく、しかも、財政赤字の問題点も現時点でほとんどない。それにもかかわらず、増税は経済成長に影響を与えないというありえない前提で、増税と大変になるという試算をあらゆるレベルで流し、増税が必要とのムードづくりに増税勢力は励んでいます。

・130頁・11/16/2023 6:44:20 AM


・マスコミもそうした情報をそのまま垂れ流し、増税の雰囲気づくりに励んでいるのです。財務省のこうした「世論工作」は今後も続くことでしょう。

・「減税アメリカ」と「増税ニッポン」

2017年末、日米の税制改革がほぼ同時期に行われていました。両者を比較しながら見ているうちに、気になることがありました。

・アメリカでは、共和党が35%の連邦法人税率を1年から2%に引き下げる大型減税法案が決定されました。個人所得税の最高税率も3.6%から30%に下げ、概算控除も2倍に増やすといいます。

・その結果、全体の減税規模は10年間で1.5兆ドル、年間円換算で17兆円となります。この減税規模は、過去最大とされた01年の「ブッシュ減税」を上回るものです。

・一方、日本では、自民党の税制改正大綱が決定され、法人税では「事業継承税制」「賃上げ・設備投資減税」が検討されたものの、結局のところ「増税減税ゼロ」「所得税は900億円増税」「たばこ税2400億円増税」などで、全体で2800億円の増税となりました。

・131頁・


・アメリカと比べて日本の状況を見ると、なんとも寂しい気持ちになってきます。今の自民党税調の主要メンバーは財務省OBなので、ほぼ財務省の意向と軌を一にして行動しているからこうなるのでしょう。つまり、「減税なき増税」路線です。

・控除額の増減という「不公平な増税」

2017年は予算編成のまっ最中である10月に衆院解散総選挙がありました。 選挙結果を受け、19年の消費増税は予定通りとして、同時に掲げられていた「財政再建」は棚上げとなりました。官邸は財務省と交渉して「消費増税はのむが、財政再建はのまない」と手打ちをしたのです。

・しかし、増税はするがそれを財政再建には充てず支出に使うというのは、経済学者の目から見るとあまり賢いやり方とは言えません。本来なら増税なしで人をそのままにしたうえで、歳出の「中身」を入れ替えるべきだったのです。

・132頁・11/16/2023 7:44:51 AM


・ところが政治の世界では、中身の変更は個別分野の利益代表による反対が生じるので難しい。それよりも増税に反対するほうが抵抗が少ないと判断される場合には、増税したうえで、歳出が選択される傾向にあります。

・今回の場合、経済界が消費増税に賛成なので、「消費増税で財政再建棚上げ」という選択肢がとられることになったのです。きわめて政治的な判断による増税ですから経済学的にみると、この税制改革の「歪み」は決して小さくありません。

・財務省は、経済界に消費増税を賛成してもらったので、その見返りに法人税、祖税特別措置には手をつけられません。とくに、経団連企業は租税特別措置で大きな利益を得ていますので、この見直しは政治的には不可能に近いのです。

・事実、いくら企業の内部留保が大きすぎると指摘されても、それへの課税は検討されることはありませんでした。麻生太郎財務大臣は、何度も企業の内部留保が大きすぎることを指摘していました。しかし、最終的には、法人税増税には言及せず、逆に内部留保の活用をした企業には減税措置をすると言い出す始末でした。

・消費税も法人税もダメとなれば、手がつけられるのは消去法で所得税となります。こうした経緯で、今回の税制改正は所得税が中心となったわけです。

・133頁・


・といっても、実は本格的な所得税改正ではないのです。税率変更となると、所得の再分配をどうするかという大きな政治問題につながるのですが、今回の税制改革では正面からそこに向き合うことはありませんでした。

・その代わりに、「控除額の増減」という技術論でごまかしたという印象です。税制中立であればまだ理解ができますが、少ない額とはいえ控除額が増減したことにより、不公平な増税になったことには間違いありません。

・「痛みに耐える」論者たちの大錯誤

・一方で「税率変更はしていないので大改正ではない」「控除額の変更で所得再分配をした」と言いながら、他方で細かな増税の積み重ねでちゃっかり税収を確保する・・・。

・いかにも財務省のやりそうな姑息な税制改正だったわけですが、こうした細かな増税策が積み重なると、結局は財務省が主導する財政再建路線が推し進められるおそれがあるのです。

・・134頁・11/16/2023 7:55:04 AM


・こうした財務省の財政再建路線をサポートするものとして、「将来の日本のために、今は痛みに耐えるべきだ」という意見があります。多くの学者やメディアはいまだにこの議論に固執し、もっともらしく語っています。

・「痛みに耐える論」の代表例に、「米百俵の精神」というものがあります。 小泉政権 発足直後の国会の所信表明演説に引用されたことで有名になりましたが、長岡藩の小林虎三郎による教育にまつわる故事であり、百俵の米を決して食べずに売却し、学校設立資金に充てたという話です。

・この話を今の財政にあてはめると、政府支出をする際、消費支出を削って投資支出に振り替えたということに相当します。当面の消費支出を我慢できるのであれば、将来投資にかけてみるというのは、それが正しい投資である限りにおいては妥当な判断になります。

・しかし、「痛みに耐える論」を唱える人たちは、その故事を曲解して使っているのです。「いま消費増税をして、日本の債務を返済して、将来の不安を解消しよう」という類いの主張は大間違いです。

・135頁・


・将来世代を巻き込む消費増税の危険性

・考えてみてください。いま消費増税するのは、いま政府支出を削減することと、マクロ経済からみれば同じです。そして、次にくるのが「債務削減」です。ここがポイントですが、実は「債務削減」と「投資支出」は似てなるものなのです。

・こう言うと、「痛みに耐える」論者は「債務はマイナスの投資であり、それを削減することは実質的に投資を行うことと同じだ」と反論するでしょう。そのうえで、「いま増税(=歳出削減)して債務を返済するのは米百俵の精神に合致する」と主張するかもしれません。

・しかし、正しい投資であれば、投資による将来の収益は債務による将来の利払いを上回るものになります。たしかに、債務にはマイナスの投資の側面はあります。ただ、その収益率を考えると、債務のマイナスの収益率は投資の収益率を下回ります。

・136頁・11/16/2023 8:10:23 AM


・つまり、消費増税 (歳出削減)したら、債務の返済に回すのではなく、適切な分野を選んで将来投資するのが正しい政策となるのです。投資による将来的な収益率が債務のマイナスの収益率を超えるようにすれば、将来世代のためになることは間違いないでしょう。

・次に、消費増税 (歳出削減)という前提が正しいのかどうかを検討してみましょう。米百俵の故事の場合、米が他藩から送られてきたという他力的なところから事実 がスタートしていますが、消費増税 (歳出削減)は他力ではなく主体的に行うものです。

・マクロ経済的に見れば、失業をなくすのが人的資源の最高活用になります。そうでないと物的資源も活用できず、投資不足にもなるからです。投資不足になると社会全体で人的、物的投資が最適水準より低くなり、将来の富を減少させてしまいます。

・失業率が最低水準で完全雇用の状態でなければ、消費増税 (歳出削減)は将来のマクロ経済状況を悪化させます。そして、将来の財政事情さえも危うくする可能性があります。

・137頁・


・それゆえ、消費増税 (歳出削減)は不適切な選択という結論になるのです。

・「痛みに耐える」論は、故事の本来の趣旨から逸脱しているのみならず、現在の人をも痛め、さらに将来の人をも痛める可能性がある危険な議論なのです。「将来への投資を行うべき」との、正しい「痛みに耐える」論をマスコミは報じてほしいのですが、財務省の言いなりでは、この正論を理解することができないのです。

・インフレ率が上がれば失業率は下がる

・マクロ経済の考え方に則ると、経済運営のよし悪しがみやすくなります。マクロ経済政策には、金融政策と財政政策があります。そして、マクロ経済状況で着目すべきは、インフレ率と失業率です。周知のようにインフレ率と失業率は逆相関関係(フィリップス曲線)にあります。

・ただし、失業率はある一定からは下がらなくなります。そこで、「これ以上は下からないある一定の失業率を達成するために必要な最低のインフレ率」を「インフレ目標」とするのです。

・138頁・11/16/2023 8:23:12 AM


・これは、経済学でいうインフレ率を加速させない失業率(NAIRU)とほぼ同 じ考え方です(NAIRUとは、インフレを生じさせない失業率の下限を意味し、 失業率といわれます。失業率がNAIRUを割り込むと、急激にインフレが加速するといわれています)

・失業率がNAIRU、インフレ率がインフレ目標となっていれば、雇用状況は完壁です。賃金上昇もあり、その結果として適度なインフレ率になっていきます。これが理想的な経済状況の「最適点」となります。この場合、名目成長もベストになるので、財政問題も自ずと改善していきます。

・マクロ経済運営としては、「最適点」に到達しない時点では金融緩和と積極財政、それを達成してしまったら金融引き締めと緊縮財政をとるのが基本です。日本の場合、「最適点」はインフレ目標2%NAIRU2%台半ばという現状です。民主党政権時代では、「最適点」ははるか彼方でしたが、安倍政権になってから徐々に近づいてきています。

・139頁・


2014年の消費増税は失敗でしたが、日本経済はそれでもなんとか「最適点」に近づいてきています。ちなみに、2%台半ばの失業率と2%インフレを達成するためには、GDP2%程度の有効需要が必要ですが、これは金融緩和か積極財政で達成できます。

・「緊縮病」の異様さ

・さて、日銀は20169月から長期金利を0%程度にするように調整しています。

・こうした日銀のオペレーションは、果たしてインフレ目標2%達成のための近道 になっているのでしょうか。データを見る限り、失業率の低下は足踏み状態ですが、インフレ率についても183月の全品目消費者物価指数の対前年同月比は1.1%です。

・生鮮食品を除いてみると0.9%、食料とエネルギーを除くと0.5%であり、インフレ目標2%には今一歩です。こうしたデータから、日銀のオペレーションは正しい方向ではあるものの、短期的には力不足だと筆者はみています。

・140頁・11/16/2023 12:07:16 PM


・さらに、年末の税制改正です。これでは、財政面でも日銀の目標達成をあと押ししているとは言いがたいです。まだ日本経済は「最適点」におよんでいないのに、最適点を目指すための金融緩和・積極財政を十分に推し進めているとは言えない状況だからです。

・先進国では「痛みに耐える」論のような緊縮財政を求める声がしばしば聞かれます。しかし、日本の年末の税制改正を見る限り、状況を冷静に捉えないまま「痛みに耐えるべき」と煽り続けるのは、「緊縮病」とでも言うべき異様さを感じざるをえません。

・140頁・第3章終わり、


・第四章「最強官庁」の権限・仕事・人事

11/16/2023 12:16:49 PM

4/2023 3:17:15 PM


財務省を解体せよ・高橋洋一著
・第五章「財務省 解体」。と霞が関改革・186頁・

不祥事の背景に財務省の「おごり」・1864/2023 3:59:48 PM

・不祥事の背景に財務省の「おごり」・

・組織か、個人かという違いはあるものの、森友学園問題をめぐる文書改ざんや福田淳一前事務次官のセクハラ発言など財務省の不祥事がこれだけ立て続けに起きると、「財務省解体」が議論されてもおかしくありません。

・国会で誠実に答えないどころか、嘘までつく。森友学園問題をめぐる佐川宣寿前国税庁長官の答弁からは、財務官僚の傲慢さが見てとれました。一連の不祥事の背景に、財務省のある種のおごりがあるのは間違いありません。

・しかも、最近の財務省では、こうした平気で嘘をつく官僚が、いたるところで見受けられます。たとえば、消費増税をしないと財政再建をしないとみなされ、国債が暴落するという意見があります。

10%への消費増税をスキップした際に主流化したものですが、この「財政再建のための消費増税論」の発信元は財務省です。これまで説明したようにこの論は大嘘なのですが、こうした例は枚挙に暇がなく、財務省の信頼回復には組織解体のよう荒業が必要なのです。

・187頁・

(13486) 第326回 歳入庁に徹底抵抗する財務省!危険を承知で実態を明かします - YouTube

・「歳入庁」は野党とマスコミのタブー

・財務省解体とは何なのか。すなわち、新たに税金と年金などの社会保険料の徴収を一括して行う「歳入庁」を新設すること。つまり、国税庁と日本年金機構の徴収部門を統合した組織をつくるということです。2023年11月15日 12:07:37

・しかし、野党もマスコミも歳入庁の創設に本格的に言及することは今のところありません。筆者らのごくわずかの人が声を上げている状態です。なぜなのでしょうか。

・「圧倒的な調査能力を持つ国税庁は、政治家も恐れる一大「権力機構」です。政治家は、国税庁に資金のやりとりがすべて把握されていることを知っていますから、その上部組織といえる財務省主税局にはどうしても頭が上がりません。いわば主税局、財務省の権力の源泉が、国税庁なのです。当然、手放したくはないでしょう。

・財務省は、ポストを確保する意味でも、国税庁を死守しています。

・国税庁長官は財務省の事務次官に次ぐポストで、事務次官になれなかった人が最後に就くポストです。さらに、東京国税局長、名古屋国税局長、大阪国税局長など、主要も財務省のキャリア官僚のポストになっているのです。

・188頁・11/14/2023 5:30:00 PM

・実は、政権交代が実現した2009年の衆院選で、当時の民主党は歳入庁の導入マニフェストに盛り込み、選挙を戦いましたが、その後発足した民主党政権でそれが実現することはありませんでした。おそらく、財務省の抵抗を前に頓挫したのでしょう。

・こうした経緯から、旧民主党。つまり今の野党議員の多くにとって、歳入庁構想タブーになっている面は否めないと思います。

・マスコミも本腰を入れて議論しません。それは、テレビ局や新聞社、国税庁の能力に恐れをなしているからです。反感を買い、万が一にも、自分たちのポケットに手をつけられたらどうしようと、恐れているのです。

・歳入庁は世界の常識

・財務省は予算案を作成したり、税金などに関する制度や法律をつくったりする「企画部門」です。一方の国税庁は文字通り税金を集める徴税が主な仕事で、いわば「執行部門」といえます。

・189頁・

・世界を見渡しても、日本の財務省のように、企画部門と執行部門が一体化しているケースはきわめて珍しく、非常識ともいえます。

・予算案の作成には、当然、政治家を含めた様々な勢力との折衝や調整が必要となります。よくも悪くも政治色が出てくるのです。半面、徴税の現場では、専門知識に基づいた公平公正な執行が求められます。それゆえ、執行部門は、なるべく政治と切り離されているべきなのです。

現在、国税庁は財務 務省は財務省、国税庁は 国税庁でそれぞれキャリア官僚を採用しているのです。しかし、国税庁長官は、財務 官僚が務めるのが慣例となっており、国税庁の生え抜き職員は理不尽な思いをしています。

・企画部門と執行部門を明確に分離する。そうすれば、業務の面でも、組織としても、よりシンプルになり効率化できる。歳入庁導入 の常識に照らし合わせて、あたり前のシステムをつくろうという話なのです。

・190頁・11/14/2023 5:41:58 PM

・年金保険料の未納を防ぐ

・歳入庁が、税金とともに社会保険料を徴収することはメリットしかありません。徴収漏れをより回避しやすくなり、公平性も担保されます。

・今の日本には、世界で常識になっている税や社会保険料の徴収インフラがありません。このために社会保険料の徴収漏れが予想されており、これは不公平感にもつながっています。税と社会保険料のインフラとは、国税庁と日本年金機構の徴収部門が一体化する歳入庁のことです。

・年金保険料は法律の性格が同じで、年金の徴収が国民年金法95条で「保険料その他この法律による徴収金は、この法律に別段の規定があるものを除くほか、国税徴収の例によって徴収する」とされている以上、徴収は一本化できるはずです。

・つまり、税金と年金保険料の徴収は一つの機関で行えるのです。

・歳入庁を創設すれば、年金保険料の徴収にかかる人件費を大幅に減らすこともでるでしょう。現在、日本年金機構で徴収業務を行っている人の人件費がまるまる節約できる可能性が高いからです。

・191頁・


・国民年金に加入すべき個人事業主の場合は、税務署が税務調査に入るときに、社会保険料についても一緒に調査すれば、その個人事業主が年金保険料をきちんと っているかどうかをチェックできる。そうすれば、年金保険料の徴収漏れを減らすことができるはずです。

・また、税務署は企業の法人所得を調べるとき、法人税の調査ともに源泉徴収税も調べています。社員などから源泉徴収した所得税を、その企業がきちんと税務署に納付しているかどうかチェックするためです。

・源泉徴収税と社会保険料は、社員の給料から一緒に源泉徴収するので、帳簿を見れば両方書いてあるわけです。それを見れば、社員から天引きした年金保険料が、きちんと日本年金機構に納められているかどうかも、同時にわかるのです。

・現在、国税庁が把握している法人数と日本年金機構が把握している法人数は80万件も違うのです。年金保険料の徴収漏れは数兆円規模と推計できます。つまり、この数兆円の徴収漏れも歳入庁の創設で減らすことができるのです。

・192頁・11/14/2023 6:00:12 PM

・消費税を社会保障目的税としている先進国はない

・社会保障は今後、大きなテーマになるでしょう。

・そもそも公的年金という仕組みは、“破綻しないように設計されています。単純に言えば、「年金破綻論」などは真っ赤な嘘なのです。単純に言ってしまえば、保険数理に基づき、「保険料」と「給付額」がイコールになるように計算して成り立っているシステムなのです。

・社会保障費の増大という点については、「保険料を出した人が給付を受けられる」という保険原理を徹底すれば、かなりの問題は防げます。

・費用を負担した人が、社会保障を受けられるということを徹底すれば、将来収支は費用に見合うように設計されるのは言うまでもありません。

・保険原理を徹底するためには、短期間で支出と費用の関係を見直すことが必要になります。そうすれば自ずと、費用の徴収漏れの問題に行きつくはずなのです。

・実は世界の社会保障のほとんどは保険方式ですが、その徴収は税当局が行い、徴収の効率性を高めています。

・193頁・


・税金とともに、社会保険料を徴収する歳入庁の存在は世界標準なのです。日本では歳入庁がないことによって、数兆円の社会保険料の徴収漏れがあることが指摘されています。

・社会保険料の徴収漏れ分を社会保障費に充てれば、消費税の増税分を社会保障費に回す必要なくなります。一般財源である消費税を、社会保障目的税としている先進国はほかに存在しません。

・歳入庁を導入すれば、1カ所で納税と社会保険料納付が済むため、国民の利便性も高まります。そして、行革の観点からも行政の効率化になるのです。

・海外では、アメリカ、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーが、歳入庁税と社会保険料の徴収の一元化を行っています。東ヨーロッパの国々でも傾向は同じです。

・歳入庁による税と社会保険料の徴収一元化は世界の潮流と言ってよいでしょう。

・194頁・11/14/2023 6:12:49 PM


・財務省による「歳入庁」潰し

・歳入庁を設置することによって税と社会保険料の徴収の一元化を実現できれば、徴税に基礎年金番号を使用することができます。これには、20161月から運用が始まったマイナンバー制度も遠からずリンクするはずです。

・加えて、2510月に導入予定の消費税インボイス」を活用すれば、これまで数兆円程度と推計されてきた、税の徴収漏れを防ぐことができます。

・ちなみにインボイスとは、取引した商品ごとに消費税の税率や税額を記載した伝票のことで、「租税票」ともいわれます。事業者間で商品を売り買いした時に、売り手が発行するのが通例で、買い手はそれを保存しておき、売り手側は控えを取っておきます。多くの先進国では売り手側と買い手側の双方の事業者がこれを使い、国に納める消費税額を計算するため、脱税が起きにくいのです。

・歳入庁を創設し、こうした仕組みを整備することで、ひょっとしたら税・社会保料で合計10兆円程度の増収になる可能性があります。

・ところが、歳入庁の創設は財務省にとって都合が悪いらしいのです。国税庁は財務省の「植民地」になっており、国税権力を財務省が手放さないのです。筆者が第一次安倍政権で旧社会保険庁を解体し、歳入庁を創設しようとした時にも激しく抵抗しました。

・195頁・


12年の消費税増税法の成立のときも、民主党内で歳入庁創設の動きが出ると、財務省はこれを潰そうとしていました。その手口がすごい。消費税には逆進性(低所得者の税負担が大きくなる)があるのですが、それを給付制度(低所得層に税を還付する制度など)で補うのではなく、個別物品の税率軽減措置でやろうとしていたのです。

・軽減措置は個別物品ごとの「租税特別措置」であり、どの物品に軽減税率を適用するかを決める際に、官僚の裁量が入るので官僚利権の確保にはもってこいです。しかも、軽減税率は消費増税を応援してきた日本新聞協会へのご褒美にもなります。

・つまり軽減税率は、歳入庁潰し、官僚利権づくり、新聞へのご褒美という一石三鳥の手と言えるのです。

・196頁・11/14/2023 6:53:48 PM


・ツートップが辞任しても業務に影響なし

・佐川宣寿国税庁長官と福田淳一財務事務次官が相次いで辞任し、野党からは麻生太郎財務大臣辞任を求める声も挙がっています。 多くの人にとって、財務省は混乱のただ中にあるように見えるのではないでしょうか。

・財務事務次官と国税庁長官という、財務省の事務方ツートップが辞任するという事態は、いまだかつてありませんでした。

・ここで気になるのは彼らの「後任」が見つかるまでの間、官庁の業務に影響は出ないのかということです。

・今回のような突然の辞任の場合、代理や後任はどのように立てるのでしょうか。また、その間に有事が起こった時には、様々な承認などの行政行為はどのように執り行われるのでしょうか。この点を考えてみたいと思います。

・普通の民間企業なら、ツートップの連続辞任は、会社を揺るがす一大事でしょう。なにしろ決定権を持つ人がいなくなってしまうため、およそ企業の体をなさないと考えられます。

・197頁・


・しかし、そこは官の世界です。結論からいえば、ツートップがいなくても何の支障もなく業務が回っていきます。なぜか。この不思議な世界について、紐解いてみたいと思います。

・事務次官は「財務省のトップ」ではない

・まず大前提として、役所組織は法律に基づくことしかやりませんので、新たな判断が必要となるわけでもありません。事務代理さえいれば、事務次官は不在でも日常業務は滞りなく回るのです。

・また、組織論からいっても、事務次官の不在はそれほど影響しない構造が財務省にはあります。実は、厳密にいえば、「事務次官は財務省トップ」ではないのです。この点について詳しく説明しましょう。

・官僚の世界には、何よりも尊重されるものとして法律があります。

・財務省の場合は、財務省設置法第2条において、「国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、財務省を設置する」(第一項)、「財務省の長は、財務大臣とする」

・198頁・


(第二項)とされています。

・事務次官は、役職上のランクとしては大臣、副大臣、大臣政務官の下になります。ただし、これらの上位職は政治家です。官僚のトップは、あくまで事務次官になります。

・その一方で、国家行政組織法第18条では、「各省には事務次官一人を置く」(第一項)、「事務次官はその省の長である大臣を助け、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する」(第二項)と規定されています。要するに、事務次官がいなければ、大臣が事務次官の代わりをすればいいのです。

・しかし、現在の財務省では、不在の事務次官に代わり、矢野康治大臣官房長が事務代理を務めています。事務次官の「事務代理」とは、屋上屋のような奇妙な表現です。

・ただ、財務省のトップはあくまで財務大臣であり、その下には財務副大臣と、大臣政務官が控えています。その下に位置する事務次官は、財務官僚のなかではたしかにトップといえますが、厳密には財務省という組織全体のトップではないことがおわかりいただけたでしょうか。

・199頁・


・つまり、民間企業でいえば、専務程度のランクになります。そう考えると、事務次官の不在はそれほどたいしたことがなく、日常業務にはなんら支障が出ないとい うことがよくわかってくると思います。

・国税庁長官は税務の素人

・一方の国税庁はどうなっているのでしょうか。同じく、財務省設置法第 18条において、「国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、財務省に国税庁を置く」(第一項)と規定されているように、国税庁は財務省の外局」です。民間企業でいえば、「支社」に相当します。また、同法には、「国税庁の長は国税庁長官とする」(第二項)となっていますので、国税庁長官はいわば「支社長」ということになります。

・すでに言及しましたが、国税庁は法律で定められた税務を執行する機関です。それこそ、法律の外の新しいことはやらない組織です。税務に関する実務の現場では、かなりの専門知識が要求されます。いわば国税庁職員は、プロフェッショナルなのです。

199頁・11/14/2023 7:19:57 PM


・それにもかかわらず、国庁トップの長官はこれまで、税務には必ずしも明るくない財務省キャリアが就任するのが慣例となってきました。畑違いの人が支社長に成り上がる構図に似ています。

・税務の現場についてはズブの素人である国税庁長官が不在でも、国税庁職員たち日常業務には、まったく事務に支障がないのは当然のことです。佐川氏辞任後の国税庁においても、事務代理事務を担当しています。

財務事務次官を外部登用せよ!

・今回の財務省の連続不祥事によって奇しくも表面化したのは、財務省のツートップは不在でも、国民生活にはまったく無関係であるということです。

・この際、国民の信頼を失った財務省から、ペナルティとしてツートップの地位を剝奪すべきではないでしょうか。

・201頁・


・まず、国税庁のトップである長官職は、税務の現場を知り尽くしたプロフェッショナルである国税庁キャリアに就いてもらったほうが望ましいです。また、本来的にいえば、財務省から切り離し、歳入庁に再編したほうが、社会保険料の徴収漏れも減ります。

・また、先進国では選挙で選ばれた政治家が自分たちの政策を実行するために、官僚幹部の一部を政治任用するのは当然のこと。それにもかかわらず、日本は、各省事務次官で政治任用が一切ありません。

・強大な権力が集中する財務省には、今回の責任を取る意味も込めて、財務事務次官を外部登用ポストとして明け渡すことを考えてみるべきではないでしょうか。

・そうすれば、財務省は日本における政治任用の先駆的事例になることができ、不祥事に対する国民の怒りも徐々に収まってくるのではないでしょうか。

・霞が関改革は「政治家の鬼門」

・ここにきて、自民党内からもようやく中央省庁再編」構想が浮上し始めました。

202頁・11/14/2023 7:39:04 PM


・官僚をめぐる問題が浮上する中、どのような形が望ましのか、筆者の意見を述べてみたいと思います。

・霞が関改革は政治家にとっては鬼門となっています。筆者の恩師である故・加藤寛先生は、「本気で霞が関改革をした原敬、犬養毅は暗殺された。戦後も同じだ。福田赳夫のように行革をやろうとした内閣はすぐ潰されている」と嘆いておられました。

・橋本龍太郎内閣は、霞が関改革に一応成功しましたが、それでも長期政権にはなりませんでした。潰れたのは19974月からの消費増税による景気後退と、その後噴出した大蔵省のスキャンダルが原因でした。

・現在の状況でいえば、裁量労働制に関する厚生労働省調査の不適切なデータの使用や、財務省による文書改ざんなど、ずさんな公文書管理の問題が相次いで表面化しています。国民の行政の信頼を損ねる不祥事が相次ぐなかで、その対応策として省庁再編論」が出てきているという流れです。

・自民党の行政改革推進本部(甘利明本部長)20185月にも党内議論を始め、年内を目標に新たな中央省庁のあり方を総理に提言するというスケジュールを組んでいます。3月末に各省庁に配布した文書には「橋本行革における中央省庁再編から20年近くが経過した」とも書かれていました。

・203頁・


・これは、9月に行われる自民党総裁選をにらんだ動きです。安倍晋三総裁が三選となれば、省庁再編を打ち出してくる可能性があります。財務省については、森友学園への国有地売却の経緯が問題となった国有財産業務の分離のほか、前述の「歳入庁」構想も出てくることを期待しています。

20年前には旧大蔵省のスキャンダルがあり、大蔵省から金融行政部門が分離されました。日銀の独立性を高めるために、日銀法の改正も併せて行われました。同時に、霞が関の省庁組織の総数を減らすことを優先し、厚生労働省などの巨大官庁が生まれたのです。

・しかし、厚生労働省はあまりに守備範囲が広すぎました。そこで麻生太郎政権のときに、厚生行政と労働行政の分が検討されましたが、結局のところ実現できなかったのです。

・204頁・11/14/2023 7:54:47 PM


・忘れてはならない「日銀法改正」

・日銀の政府からの独立性に関する議論も、忘れてはいけません。すでに世界の周回遅れとなってしまっています。

・思考停止の野党やマスコミは日銀の政府からの独立性が明確化された1998年施行の新日銀法を金科玉条にして、政府の日銀への介入を批判してきましたが、これはまったくおかしな議論です。

・安倍理は前から政府と日銀の関係について政策目標は同じくするべき。ただ、その手段は日本銀行が自由に使う。あるいは日本銀行の使命として物価安定あるが、ほかの国では雇用を最大化するというのも入っている。そういうことも考えていくべき」と主張してきました。

・まさにその通りであり、「目標の独立」と「手段の独立」を分離する形での「世界標準の独立性」を確保するための日銀法の改正です。そうしない限り、金融政策にしっかり取り組むことができず、デフレ脱却が危うくなってしまいます。

FRBのバーナンキ元議長も、「金融政策の目標は政治的に設定されるが、目標達成へ金融政策をどう実行するかは、政治的なコントロールから自由であるべきだとの幅広いコンセンサスが世界的にできあがってきた」と過去に述べています。

・205頁・


・また、「「目標の独立性」 (goal independence) と「手段の独立性」(instrument independence)の違いは有用だ。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することは困難だ。しかし、今日これから話すように、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のためにきわめて重要だ」とも指摘しています。

・これがまさに世界標準なのです。

・「公文書管理庁」の新設が必要

・歳入庁がいい例ですが、省庁再編のキーワードは、実施部門・規制機関の切り離しとすべきでしょう。

・つまり、政治との接点を持たざるをえない企画立案部門から実施部門・規制機関を切り離して中立・公平性(政治的考慮・圧力からの遮断)を高めながら、ブロックチェーンなどの民間手法を活用することです。

・206頁・11/14/2023 8:07:06 PM


・また、省庁横断的に公文書管理を担う機関(各省内での文書管理の監視を含む) である「公文書管理庁」も新設すべきでしょう。電子政府を一層推進すれば、現在問題となっている公文書管理の問題点はほとんど解決するはずです。

・今のところ、自民党内での議論では、厚生行政と労働行政の分離論、総務省、経済産業省にまたがる情報通信行政の統合、「日本版通商代表部」の新設などが論点になっています。

・「天下りあっせん禁止」を立案

・霞が関改革と切っても切り離せないのが、天下り問題です。

・安倍総理は、一次政権の頃から「天下り問題」を問題視していました。

・そもそも、世間一般では、天下り批判は公務員が関連企業に再就職することを指します。しかし、いくら公務員であっても職業選択の自由がありますので、当然ながら、再就職全般を禁止することはできません。

・207頁・


・そこで、再就職活動に関連し、職員による再就職あっせんの禁止や、現職時の求職活動の禁止、そして、退職後の元の職場である役所への働きかけの禁止といった規制が行われているわけです。

国家公務員法の一部改正(令和3年6月11日法律第61号〔第1条〕 令和5年4月1日から施行) | 記事 | PICKUP法令改正情報 | 新日本法規WEBサイト (sn-hoki.co.jp)

・この天下り規制は、10年前の第一次安倍政権の時に、筆者らが企画立案成立した「国家公務員法等の一部を改正する法律」(平成15年法律第108)に基づくものです。

・当時、官邸で内閣参事官をしていた筆者は、安倍総理から「天下りの根絶を含む公務員制度改革をつくってくれ」と言われ、経済財政諮問会議で議論していたのです。そのときの官僚の抵抗はすさまじいものがありました。

・小泉・安倍政権下で、道路公団民営化、郵政民営化、政策金融改革、特別会計改革など、各省の既得権とぶつかる数多くの改革に携わってきた筆者ですが、その過程では、幾度となく官僚たちが自己の保身や出身組織の防衛に走る姿を嫌になるほど目にしてきました。

・天下りに固執するのは、公務員個々人の資質によるものではありません。官僚組識そのものに内在する問題と言わざるをえないのです。

・208頁・11/14/2023 8:18:08 PM


・「天下りあっせん」を死守した官僚OB

・役人を長く勤めていれば、天下りこそが、各人に各省への忠誠心を誓わせる原動力になっていることは常識です。国民のための政策といいながら、天下り先確保のための組織づくりに淡々としている役所幹部の見苦しい姿を、筆者は何度も見てきました。

・こうした背景事情もあり、第一次安倍政権において、筆者らが企画した天下りあせん等の禁止は、官僚から猛烈な抵抗を受けたのです。

・当時、官僚を取り仕切る立場として官邸にいた的場順三内閣官房副長官(財務省OB)は、内閣府職員から天下りあっせんの禁止を盛り込んだ経済財政諮問会議の民間議員(民間有識者)ペーパーの事前説明を受けると、机を叩いて激怒しました。

・日本は欧米とは事情が違う。欧米には、再就職あっせんの慣行がないなんて言うな」

・209頁・


・そう言い放つと、的場氏は「欧米には再就職あっせんの慣行がない」というペーパーの注記を消したのです。その注記は正しいにもかかわらず、削除されてしまいました。

・また、総理秘書官(財務省出身者)が民間議員ベーバーの事前説明を内閣府職員から受けていたのですが、的場氏はそれらの内閣府職員に対して「お前ら全員クビだ」と怒鳴ったといいます。

・説明した内閣府職員は何も悪くありません。彼らは「これらは高橋さんからの指示です」と答えていたようです。天下りあっせん禁止のための処方箋を立案する張本人として矢面に立った筆者は、これは総理の指示です」と答えました。それでも、官僚の怒りは収まりませんでした。

・天下りあっせん等の禁止は、それほどまでに官僚組織の根幹を揺るがすものだったのです。誰も決して口外しませんが、筆者のように管理職経験者で、実際に天下あっせんを行った役人にとっては常識です。

・実際、各省の意思決定をしている幹部官僚ほど、天下りの確保は自分の人生の問題として切実です。

・210頁・11/14/2023 8:36:59 PM


・官僚が出身省庁に忠誠を尽くすのは、仮に出世競争に敗れたと

天下りによる給与が保障されているからなのです。

・役所の人事 サイドから見れば、退職依頼と天下りあっせんをセットで提供できるため、同意が取り付けやすい。退職者から見ても、依頼承諾とあっせん依頼がセットとなっているため、安心していられます。

・こうして、両者は大満足なわけですが、国民から見れば最悪な展開となってしまっているのです。

・公務員の党だった民主党

・こうした官僚の猛烈な抵抗にもかかわらず、第一次政権の時の安倍総理はぶれずに、「国家公務員法等の一部を改正する法律」を国会で通し切りました。

・ただ、その成立にあまりに多くの政治的な労力をかけざるをえなくなり、結果として第一次安倍政権は短命に終わってしまったのです。それゆえというべきでしょうか。安倍総理は退任時に、記憶に残る仕事として公務員改革を挙げていました。

・211頁・


・その間の様子をよく見ていたのが、現在、官房長官を務める菅義偉氏です。菅氏は天下りあっせん等の禁止が、官僚組織の根幹をどれほど揺るがすのかを誰よりも理解していました。

・筆者らが企画した天下り規制は、天下りあっせん等の禁止とともに、再就職監視委員会の設置もセットになっています。ところが、民主党がこれを天下り推奨と勝手に決めつけ、反対していたのです。

・何のことはありません。官僚から「安倍政権を潰してほしい」との要請を受けていたのでしょう。民主党内にも筆者らの天下りあっせん等の禁止に理解を示す人もいましたが、彼らはその後民主党を離党するなどして、主流派になっていません。

・そして、「国家公務員法等の一部を改正する法律」に基づき、200812月に 再就職監視委員会が設置されたものの、当時参議院で多数派だった民主党の反対で国会同意人事が行えず、発足後も委員長と委員が不在で開店休業状態になってしまいました。

・こうした事情を知っている筆者から見れば、民主党は公務員の党でした。

・212頁・11/14/2023 8:49:54 PM


・天下りあっせんの禁止や、公務員改革に熱心でなかったのです。 その後、民主党政権末期の123月になってようやく再就職監視委員会の委員長と委員の国会同意人事が得られました。

・「倒閣運動」はもうできない

・それにしても、第二次政権以降の安倍総理は、一次政権時の国家公務員改革の成果をうまく使っています。20133月の国土交通省職員による再就職あっせん、163月の消費者庁元職員による求職が、国家公務員法違反と認定されるなど、監視委員会はやっと本格的な活動を始めました。

・第二次安倍政権では内閣人事局も発足させ、各省のトップ人事を菅官房長官がしっかりと掌握しています。この点が二度目となる安倍政権の絶対的な強みでしょう。

・国交省、消費者庁に次いで再就職監視委員会は、171月に文科省OBの早稲田大学教授への天下り問題をはじめとする組織的な天下りあっせんにメスを入れたわけです。文科省はあまりに不用意でした。

・215頁・


・ただし、他省庁でも程度の差こそあれ、似たようなことはやっています。なにしろ、国家公務員法で違反としているのは、「再就職のための情報提供」「再就職依頼の禁止」などです(国家公務員法第106条の2など)。これらが天下りにつきものなのは、国家公務員であれば誰でも知っているはずです。

・文科省の一件で、官僚たちは震え上がったに違いありません。なにしろ事務次官クビがあっという間に飛んだわけですから、霞が関は大騒ぎになります。あっさり倒れた10年ほど前と、現在の安倍政権は大きく異なり、今や空前の長期政権にもならんとしています。知謀の菅官房長官も、内閣全体ににらみを利かせています。

10年ほど前の第一次安倍政権崩壊時に祝杯を挙げたという霞が関官僚たちは、枕を高くして眠れない日々が続いていることでしょう。

・もっとも、安倍政権としては、伝家の宝刀は抜かずにその威光だけで官僚たちをひれ伏させることできますので、宝刀の無駄振りはしていません。いずれにせよ、第一次安倍政権で横行したような、官僚による「倒閣運動」はもうできないのです。

・そして、上司にあたる政治家が官僚の人事権を持つのは当然です。人事権を濫用

・214頁・11/14/2023 9:02:48 PM


・すれば、政治家は選挙でその責任を追及されます。それでいいのです。しかし、この当たり前のことに異議を唱えるのが官僚です。

・最近、内閣人事局によって官僚が政治家の意向に沿うようにしてばかりでいけないという論調が多くなっています。官僚は自分たちで人事をさせろと言わんばかりの意見です。

・人事を官僚が自ら行えば、官僚の天下になります。政治家が官僚の人事を行うの は、先進国では当たり前の話です。先進国では、選挙で選ばれた政治家が自分たち政策を実行するために、官僚幹部の一部を政治任用するのは当然のことなのです。

・日本は、各省事務次官で政治任用が一切なく、先進国ではありえないほど生え抜き官僚に都合のよい状況になっています。

・天下りの「 正しい定義」

・ネット上にはときどき面白い書き込みやつぶやきがありますが、〈高橋洋一は「天下り」をいるのに「天下り」を批判するのはおかしい)との文を見ました。これには、大いに吹き出し てしまいました。

・215頁・


・正当な再就職とは、退職後に独力または役所以外の助けを借りて仕事を探し、再就職することをいいます。半面、不当な再就職とは、退職前に自分の権限を利用して再就職したり、役所のあっせん尽力によって再就職したりすることです。これがいわゆる「天下り」です。

・退職前の求職活動や役所のあっせんや尽力は、退職者を受け入れてもらう代わりに、受け入れ側に補助金を支出したり、監督上の便宜を図ったりすることがしばしばありますので、 国家公務員法で禁止されているのです。

・筆者は、こうした再就職規制を企画した張本人です。役所からの風当たりは非常に厳しかったです。嫌われていたことは間違いないのですが、それでも役所は筆者に対して、いろいろな再就職先をあっせんしてくれました。

・役所は慣例とおりに人事の一環として対応してくれたのかもしれませんが、ここでこれを受けたら、筆者は一生口封じされてしまいますから、当然ながら断りました。これらのあっせんを蹴ったためかどうか定かではありませんが、その後、筆者は役所から様々な嫌がらせを受けることになります。

・215頁・11/14/2023 9:13:58 PM


・こんな筆者の大学への再就職をして、不当なもの、つまり「天下り」という人は誰もいないでしょう。

・不当な再就職を見抜くポイント

・再就職規制において何がポイントかといえば、退職前に自己による利害関係先へ求職活動を禁止することと、現役職員によるほかの職員に対する再就職あっせんを禁止することです。

・この再就職規制をクリアして再就職するためには、退職前の求職活動を独力かつ利害関係先以外で行うというのが基本となってきます。退職後であっても独力でないとダメです。要するに、役所があっせんや尽力をすると、再就職規制に引っかかるようにできているのです。

・筆者の場合、公開情報に基づく大学(ここは筆者の利害関係先でなかった)の公募に応じたので問題ありませんでした。その前に役所のあっせん案件を蹴っているので、それしか道がなかったという事情もありました。

・217頁・


・こうした公開タイプでない再就職の場合、再就職先のポストについて知った情報源、時期、その後の求職活動について、政府調査では具体的かつ詳細な回答が必要になます。その過程でもし役所のあっせんや尽力が発覚すれば、再就職規制違反になってしまいます。

・この政府調査は、見る人が見れば、誰が違反していたのかがすぐわかるでしょう。退職年月日と再就職日で短期間(たとえば1)しかないのに、利害関係業界に再 就職しているのはかなり怪しいです。

・過去数代にわたり同一省庁の人が再就職しているところも、役所があっせんしないとは考えづらい。1人で複数のところに再就職しているのも、役所のあっせんがあったことが疑われます。

・抜け道としての「現役出向」

・立憲民主党や国民民主党は「民主党政権の時には天下りが減った、その後増えた」と主張するでしょう。

・218頁・11/14/2023 9:26:41 PM


・たしかに、民主党の政権1年目に天下りは減りました。しか し、これは、現役出向という制度をつくったためで、いわば見せかけだけ減らしたにすぎないのです。

・現役出向というのは、筆者が天下り規制を担当していた時には、30歳程度の若手職員を若いうちに民間企業に出向させて、民間の感覚を経験するという制度として存在していました。それが民主党政権になると、この制度の対象者を退職間際の人に拡大したのです。

・つまり、従来は天下っていたケースを、現職のまま出向させるという信じがたい「抜け道」をつくったのです。

・現役出向の扱いは「再就職」ではなく「出向」になりますから、「天下り」の数は当然減るに決まっています。そして、出向で行ったものの、実質的には天下りですから、その後、出向が再就職に替わって、天下りが増えてくるのは当然でしょう。

・この例でわかるように、天下り規制には「抜け道」が存在し、一筋縄ではいきません。こうしたイタチごっこになるから規制は無駄と言う人もいます。しかし、それこそ官僚側の思う壺です。筆者は、抜け道があればその都度フタをしていけば、少なくとも今よりマシになると考えているのです。

・219頁・


・天下りあっせん等の禁止にしても、制定当時から抜け道があるのは筆者も知っています。

・というよりも、少し抜け道をつくらないと、規制の結果、公務員制度全体が回らなくなる懸念がありましたので、やむをえなかったのです。こうした実情は、実際に当事者になってみないとわからないでしょう。

・再就職規制の改善点

・抜け道があると指摘するのは簡単ですが、実際に動いている公務員制度を止めるわけにはいきません。「100点ではないけども、よりマシ」という現実的対応が求められることもしばしばです。

・天下りあっせん等の規制での抜け道は、官僚OBが行うあっせんには網がかかっないことです。実際、人事関係で築いたOBを組織し、今の天下りあっせん等の禁止に触れないようにしている実例もあります。

・220頁


・それから受け入れのペナルティがないのも問題です。監督官庁から要請されれば断りにくいという事情もありますが、受け入れ側にもメリットがあるため、断れないのでしょう。

・筆者があっせん禁止などの規制をつくったのは、役人時代に退職人事に関わり、実際に再就職あっせんを行った経験があったからです。天下りは、通常人事のように行われていますが、ポイントは役所があっせんと尽力をするところにあります。

・天下りや退職人事に関与するのは一定以上の管理職に限られま すが、直接的に関与していなくとも、天下り先への予算や補助金を付ける作業をした者は多いでしょう。天下り先への監督権の行使に際して、処分を手加減した者もいるはずです。

・ここに、天下りを受け入れる側のメリットがあるのです。一方、役所でも退職人事を円滑に行いたいので、なかなか天下りは減らないのです。

2017 1月に問題化した早稲田大学への文科省OBの天下りの例しかり、天下りでは受け入れも共犯者だという側面は否定できません。贈収賄は当事者双方を規制していますので、天下り規制でも受け入れ側の規制は、当然、検討されるべきでしょう。

・221頁・


・「全府省庁調査」を毎年行う

・それから、制度の問題ではありませんが、問題が発覚した時に限らず、普段から全省庁調査 をできるような体制をつくっておき、

予防線を張っておくことが必要でしょう。

・実際、後発で再就職規制を実施した大阪府・市では、全数調査を第三者の有識者の手を借りて行っています。これはかなりの牽制効果があるようです。

・「国家公務員法等の一部を改正する法律」では、天下りのあっせん禁止だけではなく、再就職先を公表するようになりました。内閣官房のホームページで毎年の再就職状況が個人名と再就職先を含めて公開されています。

・ただ、マスコミなどはそれを調査し切れておらず、再就職監視委員会が単発的に調べて違反事例を探しているのが現状なのです。

2024 2 月・222頁
11/14/2023 9:46:36 PM


・全府省庁調査を毎年行い、その調査を精査する第三者を含めた全数チェック体制を取ったほうが、天下り根絶につながるでしょう。

・また、これも大阪府・市で行っていることなのですが、役所の関連団体が人材を募集する時に、いきなり役所に人材提供を申し出るのではなく、ハローワークを経由させることを徹底すべきです。

・そうなれば、公募手続きと同等の扱いとなり、元役人と民間人が同一条件で応募することができるため、手続きの透明性が確保されます。

・こうして一つひとつ抜け道に「フタ」をしていくことで、少しずつ天下りをなくしていくことが重要なのではないでしょうか。

・地道 な取り組みこそが、霞が関改革を可能にするのです。

・222頁・
11/14/2023 10:04:36 PM・第5章終わり・


 

 

・「歳入庁」は野党とマスコミのタブー・187

歳入庁は世界の常識・188

年金保険料の未納を防ぐ・190

消費税を社会保障目的としている先進国はない・192

財務省による「歳入庁」潰し・194

ツートップが辞任しても業務に影響なし・196

事務次官は「財務省のトップ」ではない・197

国税庁長官は税務の素人・199

財務事務次官を外部登用せよ!200

霞が関改革は「政治家の鬼門」・201

 忘れてはならない「日銀法改正」・204

「公文書管理庁」の新設が必要・205

「天下りあっせん禁止」を立案・206

「天下りあっせん」を死守した官僚OB208

公務員擁護の党”だった民主党・210

「倒閣運動」はもうできない・212

天下りの「正しい定義」・214

不当な再就職を見抜くポイント・216

抜け道としての「現役出向」・217

再就職規制の改善点・219

「全府省庁調査」を毎年行う・221

11/14/2023 4:15:17 PM