・誰も知らない・日本国の裏帳簿・石井コウキ著・・・


・はじめに


・最近10年あまりの日本では、経済政策が迷路にはまったままです。これはなぜでしょ うか。たまたま政府の対策が時期や方法の誤りを繰りかえしてきたためでしょうか。そんなレベルの問題ではない、と私は思います。それは経済の次元をこえた、国のシステムに根本的な問題があり、それに気づかないまま、従来どおりの手法で「景気対策」や「金融対策」をとり続けてきた、ということです。

・この本をお読みになるみなさまは、私がこれからのべる日本の姿に接して、耳をうたがうかもしれません。


・本書で私がしめす日本国の姿は、私が国会議員にあたえられた国政調査権という、小さな権力。をもちいて精いっぱい調査した事実です。これこそが「ほんとうの日本」の姿です。


・じつは、日本には「ベルリンの壁』があり、一般にしめされる国の姿と「ほんとうの日本」の実態とはまったくちがうのです。


・つまり、経済学者や、経済学者と官僚に依存する政府は、日本が資本主義市場経済の国と思いこんで政権を提起してきましたが、実際は日本に、体制としての市場経済は存在していないのです。すでに1970年代頃から日本は「分配経済」「官制経済」の体制に転化していたのです。このため、あらゆる済政策は。(姿なき)市場。に反応をしめきなくなったと考えられます。


・本書はこのことを立証し、「真の構造改革論」を提示するものです。が、なぜ日本は「真の構造改革論」を提示するものです。が、なぜ日本は「官制経済」の国になってしまったのでしょう。


・それは一言でいえば、第二次大戦後20年で集権的営体制をつくり、奇跡的な成長にはいった一方で、政治文化はついていけなかったということと関係があるのではわさないことではないでしょうか。


・国家運営においては、政治家が殉国的精神を忘れるなかで官僚機構が独走するところとなり、高度成長で生みだされる収権をつぎつぎにその管理下にいれてきました。何度も退職金をうけとれる何万団体という官企業をつくり、それを国の「政策」とし、財政法律の体系を編みあげたのです。この怒涛の勢いは、まさに極力機構そのものとして拡大したために、一般には、正当性。の意識として根ざしてきたし、またその全体像は窺い知るよしもないという性格のものでした。

5頁・


・やがて権力の経済浸出、は、その量が質に転化し、国の体制を市場経済から官制経済に一変させてしまうことになったのです。こんにちにいたっても、その総体をつかむには政治的な権力をもってしなければ不可能です。しかし官制経済はすでにいくつかの外見的な指標にもあらわれてきています。たとえば、需要政策がごく瞬間的効果しかしめさないこと、市場で国債の評価がつかないこと。金利がゼロであること、などです。

2001年末、企業倒産件数はかつて例をみないほど増加し、失業率は5%台後半にふれようとし、いっそう悪化する気配が強い。そうした状況のなかで、政府は平成14年度も国債の増発を行い、日銀による「買い切りオペ、を月8000億円に拡大するということです。国債の信用をかろうじて保ってきた。表面張力。が切れて、ついにあふれだす瞬間が刻一刻とせまっています。その瞬間が、日本崩落、のときです。

・小泉政権の誤った「構造改革」が“崩落”の引き金を引く可能性は高いと思われます。本書が、せとぎわで日本の危機を回避し、一転、日本列島を明るい陽光で包むことに役だつことをねがっています。

20011210


2024/02/12 14:45

・だれも知らない日本国の裏帳簿


・はじめに・5

・第一章)だれも知らない税金の使いみち・11

1・日本国のほんとうの予算・2

2・経済は政・官に侵蝕され、寝たきり状態・14

3・税収22年分の借金大国・16

4・ツケを払わされるのはやっぱり国民・20

5・官僚と族議員が予算を決めるノーテンキな政治・22

6「決算」もない・24

7・無力な会計検査院・26

・第二章・国のウラ帳簿・特別会計・27頁


1・・利権財政の「御三家」・28

2・公共事業と特殊法人の利権構造・30

3・官僚が自由にあやつる裏予算・32

4・国民の知らないところで動く330兆円・34

5・国の逆マネーロンダリング・38

6・国のゼネコンと政治家をうるおす高いガソリン道路特別会計・40

7・高速道路は金をしきつめたベルト・42

8・税金で業界支配をめざす・石油特別会計・44

9・巨額の不良債権をかかえる石油公団・46

10・行政が支配する港湾建設・港湾整備特別会計・48

11・空港公団のムダ空港整備特別会計・50

12・補助金をバラまく農業経営基盤強化特別会計・52

・第3章・「予算」といわない。財政投融資計画の闇予算・55


1・利権大国の巨大な財布・56

2・具体的な使途がしめされない財投の闇会計・58

3・財投のウソとヘリクツ・(60

4・新・財投のマヤカシ・62

5・国民の金を使って国民に損をさせる裏切り・64

6・国債買い切りオペは郵貯や年金の利回りを下げる・66

・第四章・経済を機能マとに・おとしいれる補助金制度。69

・第四章・経済を機能マとに・おとしいれる補助金制度。692024年2月13日 14:48:22



1・ヒモつき年間補助金50兆円超・70

2・公共事業の「箇所づけ」と国会議員の「手柄」・72

3・「ノー政」のハイエナたち・農水省の補助金と土政連・74

4・政治家と土政連のおいしい関係・78

5・農水官僚は族議員を手なずける・80

6・一世帯あたり1億円の補助金・82

・第五章・権力の市場からの退却・健全な経済をとり戻すための改革案・85


1・ドラスティックな改革が必要・86

2・改革は順序をまちがうと悲劇になる・88

3「開発」「整備」「事業」法の廃止・90

4・公共事業、行政企業を廃止して、「生活事業」の発展を・92

5・地方分権と地方の自立・94

6「特別会計」「財政投融資」「補助金」の廃止・96

7・特定財源の抜本見直し・98

8「公務分限法」の制定・100

10頁・


9・会計検査院の問題点・102

10・会計検査院の権限を強化・104

115年で国家予算を2分の1に・106

12 30兆円は構造改革の原資に・108

12・国債の新規発行をゼロにし、大規模で高福祉社会を実現・110

11頁・2024/02/12 15:38


・誰も知らない・日本国の裏帳簿・石井コウキ著・

・第四章・経済を機能マとに・おとしいれる補助金制度。692024年2月13日 14:48:22


1・ヒモつき年間補助金50兆円超

・こんにちの日本の補助金制度の本質は、政治家や官僚が、国民の金をまるで自分の金のようにバラまいて、それを道具にヒモをつけるという制度です。

・平成12年度の補助金の総合計は、約50兆円。これに特殊法人、認可法人が独自に支出する補助金をくわえると、総額はさらに10兆円程度は増えるでしょう。国や地方自自治体から「補助金」をうける団体や企業などは、じつに数万団体()にもおよびます。

・さらに、建設費、整備費などの名目で、地方公共団体や特殊法人などを経由して間接的に補助金をうける企業・団体は2300万にもたっしています。平成12年度の一般会計で旧通産省分を例にとると、団体などの職員の給与補助だけで2200人分が計上されています。団体ぐるみ、業界ぐるみで「面倒」をみているわけです。

・お金を貰った企業側としては、役所に頭が上がるわけはありません。首輪でつながれたペットのような状態です。企業は役所の一挙手一投足を見守り、新しい「事業予算」や「補助金」情報があれば、ただちにとびつく準備をおこたりません。

・こうして政治と官庁は、補助金をとおして公益法人をつくり、各種業界団体と個別企業をしばりつけ、あわよくば政治献金や選挙運動に動員するのです。

72頁・2024/02/13 7:15


・経済を機能マヒにおとしいれる補助金制度

2・公共事業の「箇所づけ」と 国会議員の「手柄」

・補助金を使った事業のひとつひとつが、どこで行われ、いくらお金をだすかを決定するのを「箇所づけ」といいます。全国何万か所の箇所づけが各省庁から発表されるや、国会議員は先をあらそって選挙区に電話やFAXをいれる。なぜなら、これこそ が、国会議員の「業績」となるからです。


・国の補助金事業を獲得したい市町村などは、その事業をまず都道府県の予算要請の重点項目にすべりこませ、つぎに各省庁の概算要求のなかにいれてもらう。そして必要なものは各省庁と財務省の折衝で決まりますが、この各段階で市町村や団体は国会議員の「お世話になる」わけです。


・筒所づけが決まった瞬間に電話することで、議員は自分の貢献がいかに大きかったかを地元に実証し、印象づける。なかには役所への口ききもしていないのに、自分の手柄にしてしまう議員もいます。役所のほうでも心得ていて、選挙区ごとに仕分けした事業の一覧表を議員にわたします。

・事業誘致を支援した議員たちは、市町村などに対し、自分の息のかかった系列業者に発注するようにはたらきかけます。一方で業者側にも情報をあたえる。

73頁・


・発注してもらった建設業者は国会議員を「支援」します。さらに選挙のたびに集票で議員に貢献する。そのために建設、農業関係をはじめとして、あらゆる業界に「政治連盟」がつくられています。業界として必要な政策活動もやりますが、政治献金活動もやっているのです。


・地方で事業に成功するコツは、圧倒的な集票力がある農業団体でのし上がるか、土建業者であるなら公共工事、農畜産業なら補助金がでるように、政治家とつきあって献金することです。こうして「名士」となった人、権勢を誇った「大物」政治家は数知れません。こういう白アリたちを増殖させた政官風上が、日本をつぶしてしまったのです。


・国民の立場からすれば、微税も予算編成もはじめから地方のものとし、地方の細かな事業は市町村や民間法人に自由にやらせればよい。そうすれば多くの不要な工事は行われないし、政治家の省庁への「顔」も不要になるから、白アリたちがかすめとっていたばく大な利権とムダづかいは消えるし、経済は自立して活力がでます。数万にものぼる中央省庁の「事業」決定や、補助金査定などは無用のこと、ないほうが政治も行政も経済もよくなるのです。

・「官公需経済」という長く続いた利権システムをくずすには、「地方分権」という革命が必要です。そのかけ声だけは大きくなっていますが、実効のある分権がけっして行われないのは、土建屋政治と補助金でできあがった巨大な既得権益があるからです。

74頁・2024/02/13 7:21


3・「ノー政」のハイエナたち・農水省の補助金と土政連


・「政治に強い」省庁というと旧大蔵省、現在の財務省に真っ先に指をおる人が多いと思います。たしかに予算配分権限をもつ財務省は、国会議員にアタマを下げさせる力をもっていますが、べつの意味で、つまり末端の有権者票をにぎっているという点で最強なのは農水省です。


・その「政治力」は、かつての参議院全国区の得票にまざまざとみてとることができました。最後の全国区選挙となった昭和55年の選挙で、上位10位以内にはいった当選者のうち、タレント候補でないのは2人だけで、どちらも農水省キャリア官僚のOB候補でした。その後全国区は比例区になりましたが、農水省は毎回かならずといっていいほど、2人の当選を確保しています。そして興味深いことに、毎回そのうち1人は事務官僚出身、もう1人は農業土木技官出身というコンビになっています。

・農水省の官僚人脈は事務系と技官系に大別され、人事面では技官系官僚は冷遇されています。そのかわり技官官僚は構造改善局(平成13年度より「農村振興局」に改称) を「独立王国」とし、この局の中核である農業公共事業については、事務官僚の口だしを許さないという不文律が厳格に貫かれています。

76頁・2024/02/13 7:40


・選挙にさいしては、事務系候補を支えるのは農協政治連盟(農政連=日本最大・最強の集票マシンといわ れる)、彼官OB候補を支えるのは土地改良政治連盟(土政連=農政連に優るとも劣らない集票マシン)です。農政連も土政連も、会員はおもに農家で、末端ではほとんどの農家が重複加盟しています。選挙になると個々の農家のうばいあいが熾烈で、この争奪戦があるから農水省の得票マシンは強いのだといわれています。農水省の高級官僚にとっては、日本の農業の将来像などどうでもいい。農水省の「縄張り」が維持されればそれでいいのです。


・土政連を理解するためのキーワードは「土地改良区」です。土地改良区とは「農用地の改良、開発、保全及び集団化に関する事業」を実施するため、土地改良法にもとづいて設立されるもので、農家が15人以上あつまれば結成できると定められており、公益法人と位置づけられ、現在全国に7700あります。これらは都道府県レベルでは「○○県土連」を構成し、そのうえにたつ全国組織が「全土連」、それと表裏一体 の関係にある政治団体が「土政連」というわけです。


・全土連の表向きの業務は全国の農地改良施設の維持・管理、資金管理、技術指導などとなっていますが、もっと重要な仕事は、県土連、土政連とともに国と都道府県から全上連にだされるばく大な補助金の利権を配分すること。農道や灌排水施設などの公共事業をめぐって政治家、官僚、土建業界、技官OBのコンサルタント業界など がハイエナのように農業予算にむらがるのです。

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4・政治家と土政連の おいしい関係


・土地改良政治連盟は年間1兆数千億円におよぶ土地改良予算を、政党や政治家が吸いとるパイプ役をしています。農業予算は、農家に行くのではなく、公共事業をとおして土建業者、天下り官僚、政治家に都合よく使われているのです。


・土政連は、お金をいったん迂回して政治家にわたすだけでなく、自民党の入党活動や党費の肩がわり、政治団体への会費納入といったかたちで、迂回さえさせずに直接金をまわしていることが明らかになっています。


・また、農業土木議員が、こうした公金を公然とうけとっていた例もあります。たとえば埼玉県土連の会長をつとめている三ッ林弥太郎前衆議院議員は、県土連や土地改良区から、平成8年度だけで合計849万円あまりをうけとっていました。これは国会議員の収支報告などで表にでている分だけです。そして三ツ林氏は、そうした金をうけとっている唯一の議員ではありません。こうした報酬とはべつに、土政連は多数の政治家に政治献金をしています。


・農水省OBの須藤良太郎参議院議員は、平成6年、2000万円を受領しています。こうしたかたちで族議員によってピンハネされる金がどれほどになるか、じつに想像をこえています。

80頁・2024/02/13 7:53


5・農水官僚は・族議員を手なずける


・土地改良予算は平成5年度からは年度までの9か年計画で41兆円規模となっています。これによる土地改良事業を推進するのが、農水省の技官です。技官は土地改良、灌排水、開墾、干拓、農業用ダムなどの設計、審査、監督などの力をもち、受注企業には絶対にさからえない存在で、「神様」とよばれています。

・大手ゼネコンから中小コンサルタント会社まで、関連業界への天下りは2000人以上といわれています。


・巨額の予算をにぎる技官たちは、補助金行政と政治家対応のプロです。予算の箇所づけのさいに、「はがし」とよばれる細かい芸をもちいます。これは、事実上決まっている政府案のうち、あらかじめ一部の事業をけずっておくか、予算にゆとりをもたせておいて、政治家が地元代表を引きつれて陳情にくると「復活」させるというもの。つまり、政治家に「花」をもたせる演出。もちつもたれつ、というわけです。


・構造改善局の予算は、その多くがOBの天下り先の会社に流れます。天下りのうけいれを減らした企業には、パタッと仕事がこなくなる。「それは見事なものだ」と、多くのゼネコン社員がいうほど徹底したものです。

82頁・2024/02/13 7:57


・第四章、経済を機能マとにおとしいれる補助金制度・70頁・2024年2月13日 14:17:40

6・一世帯あたり 1億円の補助金・


・補助金をうけるためにもとめられるのは、基本的に、官僚への忠誠心です。ひたすら官僚への忠義だてによって生まれた、ひとつの例を紹介しましょう。

・鹿児島県東町にかかった伊唐大橋は平成88月に開通しました。東町は八代海に浮かぶの島々からなる町で、伊島は町役場のある長島の北東にあり、面積約37 0ヘクタール、周囲8キロの小島です。約120戸、300人が住み、ジャガイモの産地として知られます。

・東町がこの橋をかけたいと陳情しはじめたのは1970年代でした。80年代にはいると、農水省から、島の農地を増やせば「農産物を運ぶ橋」として説得材料になるという示唆があり、陳情の対象を農水省にしぼるとともに、東町は伊唐島の農家に、橋をかけるための農地拡大をよびかけました。今初は住民の3割が反対でした。「橋はありがたいが、労力と金銭の負担が増える」「農地を増やしても、年寄りばかりで担い手がいない」といった理由でした。

・最終的には町職員が説得にあたり、全世帯に協力させて島の農地は90ヘクタールから171ヘクタールと倍近くに拡大されました。橋の紹介看板には「農林漁業用揮発税財源身替農道整事業」とあります。揮発油税(ガソリン税)は、ほんらい、建設者所管の特定財源として道路特会にいれられるのですが、農水省は、その一部は農機具用ガソリンからの税収だとして農家に還元すると主張、その分の使途は農水省が決めることになったいきさつがあります。

83頁・


・伊唐島の住民は、農業をみすてず、逆に農地を拡大し、農水省という「お上」の顔をたてた。そのごほうびとして、農道橋というプレゼントをもらったわけです。伊唐大橋は全長675メートル、着工以来6年をかけ、総工費は123億円にのぼりました。


・つまり伊唐島の住民一世帯につき1億円以上がつぎこまれた計算です。東町も鹿児島県も財政がゆたかなわけではありません。なのに、どうしてこの橋がかかったのでしょうか。


・建造費の内訳は、国が50%県が49%、町が約1%となっています。県は拠出額の95%について地方債を発行しました。つまり大半を借金でまかなったわけです。その借金の元利返済額の50%は国からの地方交付税交付金があてられます。

・特別会計、地方交付税など財政のカラクリをフルに利用して、この「夢の橋」がでました。

・通行料は、計画段階では15001000台とされていましたが、開通後の実測では平均300台ていど、1時間に12台強ということです。

84頁・2024/02/13 8:02