はじめに
3頁、
本書では、フィンランドの教育制度がいかに子どもたちの平等を保障し、学習の助けとなって高学力を支えているかについて論じています。今から15〜2年後に、社会の一員としても個人としても責任ある行動をとれる若者たちを、現在、フィンランドでは育てているのです。
現在のフィンランドの子どもたちの学力の高さは、特にOECDによる生徒の学習到達度調査(PISA)における好成績によって、世界中で注目を集めています。その成功をもたらした要因を、教育制度だけでなくフィンランドしゃきあの側面や教師の育成、成人教育といった面からもここでは紹介しています。
高学力達成の成功の陰には、ここ数十年の努力だけではなく、1世紀近く続いてきた教育制度の見直しと発展のための確固たる信念が支えとなってきました。フィンランドの国家全体と全国民が一緒になって、教育制度を支持し発展させてきたのです。
本書が、フィンランドの教育制度のサクセス・ストーリーを紹介するにとどまらず、読者の皆様に、日本の教育制度が直面して、未来の発展のための課題に向けて、新たな視点を与えることができますよう心から願っています。
2007年4月、フィンランドセンター所長、ヘイッキ・マキパー
平成23年12月21日 水曜日
内容(「BOOK」データベースより)
平等は平和のいしずえ。教育における平等の実現が新しい時代のゆたかな学力を育てる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
マキパー,ヘイッキ
2004年よりフィンランドセンター所長。ヘルシンキ大学開発部研究部門長を休職して着任。地震・火山学の研究者として、これまで、北欧火山研究所(アイスランド)、ジョンソン宇宙センター(アメリカ)、東京大学、フィンランド地質学研究センターなどに所属。フィンランドでは、中学校の学校評議会会長、高校の学校評議会メンバー、ヘルシンキ大学の大学教育開発委員会メンバーなどを務め、学校教育に関わる。東京都内に家族とともに暮らす。フィンランドと日本を行き来する生活。PISAでフィンランドの教育が注目され、取材や講演の依頼が相次ぐ
高瀬 愛
フィンランドセンター・学術担当マネージャー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
目次
第1章
責任感ある市民を育てる
21頁、責任感のある市民を育てる、21頁、
PISAで好成績をおさめたフィンランドの生徒たち・教育の場で社会的責任
をを学ぶ・25頁、
フィンランドの学校教育は、個人の利益を守り、よりよい社会的地位を得るためだけのものではなく、若いころから社会的責任を教えるためのものとなっています。
生徒はそれぞれ、家族や友人に精神的にも肉体的にも献身しながら責任を担うことは、社会的責任の一部だということを教育の場で学びます。そして、より高度な教育へ進めば進むほど、周囲の共同体への配慮や、ひいてはフィンランド全体の幸福を守ることへの責任の重要性が増すということを理解するようになります。
修士号を取得した学生は、多くの事柄について国際的に責任を負うことになります。国際連合(国連)は、2005年から2014年までを「持続可能な開発のための教育の10年とする」と宣言しました。
国連と国連加盟国の宣言は、持続可能な開発の基本理念が、教育制度全体に浸透するように国家のカリキュラムに組み込まれることを目的としています。また、持続可能な開発の象徴である教育の目標設定の際は、自国の文化、社会、経済、環境などをふまえながらも、地球的規模で考えていくことも大切です。
26頁、11/12/21 17時45分、
すなわち、学校に行くというのは地域のためでなく、社会全体ひいては地球規模で貢献できるように、他者のことも考えられる若者を育てることなのです。
フィンランドでも同様に持続可能な開発のための教育を長年心がけてきていますが、国連の宣言を受けて、さらに次世代へのヴィジョンが打ち出されることになりました。
「持続可能な開発のための教育」をすべての市民に・・
26頁、
フィンランド政府の「持続可能な開発のための教育の10年計画」では、フィンランドの教育制度に対して、次のようなヴィジョンが打ち出されました。
持続可能な開発を支えることができるようにすること。
すべての市民に
フィンランド政府の「持続可能な開発のための教育の10年計画」では、フィンランドの教育制度に対して、次のようなヴィジョンが打ち出されました。
個人が、未来の世代の需要を満たす余地を残しながら現代の需要を満たすこと。持続可能な開発を支えることができるようにすること。
27頁、
その目的とは、持続可能なライフスタイルを実践する人々を育成し、生涯学習の一環として、個々人の持続可能な開発に必要な知識と技能を向上させ、促進することである。
基礎学校や高校における持続可能な開発のための普通教育では、そのための環境づくりと生徒たちを、持続可能なライフスタイルに取り組む市民として育成することに重点を置いています。
また、批判的かつ革新的な考え方を育てることで、責任を持つこと、参加すること、意見を提示すること、といった経験を積むことを目的とします。
より良い教育を実現することや、社会との緊密な連携を持つことは、持続可能な開発の課題でもあります。実際の授業では、さまざまな科目の視点や考え方を組み合わせて、一つの学習項目を取り扱うことによって、持続可能な開発が実現できます。
多くの学問分野や職業分野が協同しあうことで、教材作成にも新たな視点がもたらされます。さらに、新たなオペレーションモデルやパートナーシップ、教育を取り巻く社会との協力体制も必要になるのです。
このような対策をとることで、若いころから責任感のある市民が育ちます。また、本人にとっても、教育は単なる義務的に遂行すべき過程ではなく、これからの人生の準備過程であるという認識が生まれるのです。
28頁、11/12/23 11時50分、
教師と教育への高い評価・・
労働市場でも高い評価を受ける高等教育・・
「教えること」から「学ぶこと」への変化・・子どもたちも参加する居心地の良い学校づくり・・休暇がいっぱいの学校生活「学校生活1年間の流れ」・・少ない授業時間、通学時間も制限「国公立学校の7〜14歳児の総標準授業時間数国際比較」・・学校と家庭の協力が生み出す効果・・基礎学校から大学院まで無償の教育を保障「教育機関に対する教育支出の私費負担割合」・・地域格差のない学校教育「15歳児の数学的リテラシー得点に関する学校間と学校内でのばらつき」・・性別・居住場所・経済状況・文化的背景で差別されない教育・
第3章 教師の専門性の高さ
秘密の鍵は教員養成・・就学前教育とデイケアセンター活動の教育養成課程・・基礎学校の教師は修士課程修了が原則・・教員資格において重要な教育課程・・教育実習で専門技術を習得する・・教師の教育スキルアップと現職教育のさらなる普及・・少子化への対応と教員養成・・まだ不十分な特別指導や補修・・
第4章 持続可能な社会を支える教育
教育は経済と雇用を左右する「世界経済フォーラムの経済競争力ランク」・・学校が社会参加を育む・・通信インフラで教育と研究の質の向上を・・情報通信技術の活用を国家戦略に・・情報通信技術を学校づくりに活用・・コラム、マッティ・ヴァンハネン首相の見解・アンッティ・カッリオマキ全教育大臣の見解・・
第5章 平等を実現する教育制度
教育制度の基本理念・・教育に関する決議と行政の関係・・自治体ごとに運営される教育制度・・学校委員会の活動・・学校を運営する母体・・教育費用のほとんどは公的負担・・徹底した無償教育と教育給付金による補助制度「高等教育に対する公的補助」・・革新的な就学前教育・・就学前教育の教師に求められる優れた技能・・コラム就学前教育を受けている女の子が書いた日記・・充実した義務教育「基礎学校の教科の時間数」・・後期中等教育段階、高等教育及び職業教育・・職業教育の中心は職業学校で・・高等教育制度、大学及び専門大学AMK「大学型高等教育進学率」・・専門大学AMK・・最高学府としての大学・・幅広い分野にわたる成人教育・生涯学習・・国民にサービスを提供する図書館・・
第6章 フィンランドの歴史と教育
ルーテル教会の到来が教育始まり・・国民学校制度の誕生・・フィンランドの独立と教育制度の第一次困難・・教育への強い信頼、無償の義務教育を憲法で制定・・教育制度の第二次困難・・
第7章 未来に向けて
教育はすべての人の基本的権利・・教育政策の方針・・社会・文化の新たな変化・・社会的格差の是正を図る就学前教育・・さらに柔軟な義務教育施策を・・全員進学をめざす後期中等教育段階・・これからの高等教育・・
11/12/21
16時34分
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15:36
2011/12/21
原発・放射能 子どもが危ない (文春新書) [新書] 小出 裕章・黒部 信一 (著)
http://kurobe-shin.no-blog.jp/
商品の説明
内容紹介
放射能から子どもを守るために今、絶対に知っておくべきこと──
放射能に最も弱いのは、細胞分裂の活発な子どもたちです。
低線量の放射能は「ただちに」健康に害は与えません。しかし、数年後、十年後に何が起きるのか?「癌や白血病、奇形が多発する」という人もいれば、「害はない」「むしろ体に良い」という人さえいます。特に子どもを持つ、あるいはこれから子どもを持とうとしている人は、いったい何を、誰を信じたらよいのか、と思っているのではないでしょうか。
この本では、『原発のウソ』『原発はいらない』などのベストセラーで知られる、今最もその言動が注目を集める原子物理学者の小出裕章さんと、長年チェルノブイリの子どもたちを支援してきたベテラン小児科医の黒部信一さんという最強のタッグが実現しました。
低線量の放射能による癌も、一般の癌と何も区別はつきません。いわば「放射能の完全犯罪」です。十年後、数十年後に後悔しないために、今、絶対に知っておくべきこととは?
一般に信じられている放射能についての誤解を解きながら、データや図表を駆使して、原子物理学者と小児科医の立場から「子どもと放射能」についての正しい知識を伝えます。
「私は、未来の子どもたちから、つまりこれから被曝をしながら生きていかなければならない子どもたちから『お前はどうやって生きてきたのか』と問われるでしょう」(小出裕章)
この本には、学者としての、医師としての良心と魂の叫びが詰まっています。「子どもと放射能についてのQ&A」付き。
【目次】
第一章 何があっても子どもたちを守らなくてはいけない──小出裕章 低線量被曝の危険性を認めない政府や原発推進派 ただちに影響は出なくてもいずれ影響が出る
第二章 子どもと放射能の基礎知識──黒部信一 放射能の影響を受けやすい子どもたち 低線量被曝でもさまざまな健康被害が急増 DNAの二本鎖切断
第三章 子どもたちが置かれた被曝状況──小出裕章 福島市の子どもたちの尿からセシウム検出 「福島産」を避けても内部被曝は避けられない
第四章 子どもたちの健康被害──黒部信一 チェルノブイリで何が起きたか 甲状腺癌の見つけ方
第五章 子どもと放射能のQ&A 被曝を少しでも少なくするために気をつけることは? 野菜は洗えば安心?
第六章 弱い人たちを犠牲にする原発というシステム──小出裕章 劣化ウラン弾で子どもたちに癌や白血病が多発 強者が弱者を踏みにじる構造
終章 原子力を終わらせるということ──小出裕章 未
内容(「BOOK」データベースより)
放射能にもっとも弱いのは、細胞分裂が活発な子どもたちだ。低線量被曝は「ただちに」健康に影響は与えない。しかし…。十年後、二十年後に後悔しないために、今、知っておくべきこと。反骨の原子物理学者とベテラン小児科医による決定版。
新書: 192ページ 出版社: 文藝春秋
(2011/9/16) 発売日: 2011/9/16
目次
第1章 何があっても子どもたちを守らなくてはいけない
第2章 子どもと放射能の基礎知識
第3章 子どもたちが置かれた被曝状況
第4章 子どもたちの健康被害
第5章 子どもと放射能のQ&A
第6章 弱い人たちを犠牲にする原発というシステム
終章 原子力を終わらせるということ
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子どもたちを助けるために今できること, 2011/9/23 By A・佃崎 - レビューをすべて見る(VINEメンバー)
レビュー対象商品: 原発・放射能 子どもが危ない
(文春新書) (新書) 原発事故による放射線被曝は拡散し続けている。取り分け子どもへの影響は深刻なものだ。本書で黒部が指摘するように、DNA二重螺旋遺伝子の被曝による損傷が、子どもの場合、大きく影響する。それは、成長期の遺伝子が脆いこと、細胞分裂が早いことなどから、異常になった細胞
が三乗の広がりで増殖することが、言わばガン細胞を止めどなく増やしてしまうことになるからである。
小出は、本書に、自らの子どものことを述べている。太郎・次郎・三四郎兄弟の内、次郎が障がい児であることをカミングアウトすることで我々読者に今の福島事故の出来事を深く考えさせる。多くの原発事故にかかわる書籍に埋もれそうであるが、本書は、子どもを中心にした放射線被曝の怖さを警鐘している。
5.0
子供の被爆を最小限にするマネジメントが必要, 2011/9/27
By
大森 義範 (北海道) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー) レビュー対象商品: 原発・放射能 子どもが危ない (文春新書) (新書)
原子力の専門家の立場で40年以上も原発に反対している、
反骨の原子物理学者:小出裕章氏が「科学のことば」からだけではなく、 哲学・生き方の観点からも、原子力の問題・特に子供の被爆問題に関して問題提起及びそれに対する処方箋の模索を行った書です。
それに加え、小児科医であり未来の福島こども基金代表の黒部信一氏が、チェルノブイリ原発事故での経験・データを交えながら、放射能の医学的な問題点の提示及び、現実的な範囲での具体的な対応策の提言を行っています。
3.11以降、確からしいことは福島県のほとんどが法律で定められているところの「放射線管理区域」−必要な者以外立ち入り禁止・飲食禁止−レベルの放射能汚染があり、福島県周辺も広範囲に放射能に汚染され・汚染は現在も続いているという事実です。
人類はスリーマイル・チェルノブイリというたった2回の 原発事故しか経験しておらず何が今後起こるかわかりません。
具体的な影響・被害がわかるのは一部の小児癌を除いては
ずっと先の事でしょう。その時になってから後悔しても時すでに遅し、 できるだけの対策を行って、実はなんでもなかったで良いのだと思います。 自分の子供の被爆を最小限にするマネジメントを行わなければいけないと思いました。
そして自分の子供以外のお子さんにも気を遣えるようになりたいです。 今後の福島周辺の小児がん発生頻度のデータに注目したいと思います。
5.0
データ半分主張半分の良心的書物, 2011/10/8
By
クレオ・シュライベン (札幌市) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー) レビュー対象商品: 原発・放射能 子どもが危ない (文春新書) (新書) ずばりお勧めします。 わたしは小出先生の政治的立場(本書の後半部分にはっきり打ち出してある)には反対です。しかしこの本は、そのような政治的立場を超えて読むべきだと思います。
放射線医学の専門家と自称している福島県立医科大の副学長さんは、低レベル放射能では大人にも子供にも影響ないと述べており、県内を講演をして回っています。手厳しい住民の質問にも知らんふり。福島県知事指し回しの運転手つき公用車です。世間にまだこういう醜悪な動きがあるのをみると、やはり、われわれ医師は、平凡ではあっても、より真剣に被ばくの影響を考えなければならないし、その危険性を患者さんに教える義務があるとおもう。患者に知識を与える診療はしてはいけないという臨床医もけっこういるのも事実ですが、最も安全な措置へ向かって前進する義務は、世間にもあるし、医師にも当然強くある。だから、被ばくの影響については、患者さんとともに謙虚に学ぶという立場を取るべき。そのための絶好の、考える素材です。
医学部の専門課程でも放射線医学というのはどちらかというと広島長崎の特殊問題みたいな雰囲気がこれまであって、学生にはチョオ不人気講義でした。いまでも必修になっているところは国立医ではないのではないでしょうか?書かれていることは、あちこちの文献をかき回せば出てくるものが多く、チェルノブイリ関係のデータもドイツのサイトに詳しいものがあります。だから、全部が新味のあるデータとはいえないです。
しかし、まとめ方がわかりやすくしかも章建てからひらがな重視。
第三章(子どもたちが置かれた被曝状況)は、セシウム汚染と内部被ばくについて書かれています。福島では3月15日ごろから子供に鼻血がたくさん出ており、影響が心配されますが、これは管政権の犯罪ともいえるデータ隠ぺいが原因。3月13日にプルトニウムやストロンチウムが出たことがわかった時点で、はっきりとした対策(全員避難)をとっていれば、絶対に甲状腺がんの確率を減少できたはず。 第四章(子どもたちの健康被害)では、甲状腺がんと被ばくについて書かれています。おそらくほぼ間違いなく福島の子供は甲状腺がンが増えるでしょう。対策が急務。医師の側の努力がかなり必要。第五章は日常の生活のしかたで、被曝を少しでも少なくするために毎日気をつけるべきことなど。
そのほかの章は、小出先生の、ある意味での社会的政治的見解ですが、やはり原発という大きな利権で甘い汁を吸ってきた勢力は糾弾されるべきであり、即刻退陣すべきでしょう。
◆ 科学というのは、データの正しい解釈なのだということを知らしめる好著。
◆ データを正しく解釈するには、その分野の科学知識が十分でなければならない。福島原発事故のときTVに出演していたのはそのような十分の知識を持った人々だったのだろうか? いまも安全だと言い続ける専門家らは、はたして自らが原発野近くで暮らしてそこの水を飲むことができるのだろうか?
小出先生と黒部先生の議論は説得力あります。
一読されることをお勧めします。
そして、朝日新聞や毎日新聞の、管政権野田政権の見解である、「被ばく線量安全だ」記事をみるといいです。データを隠し続けた民主党政権内部の枝野や細野がまだ大臣やっていて、謝罪しますといいつつも、論点はずしをしながら、安全だ安全だと言い張ってるんですよ。東電だけの責任じゃない。
政治システムが、いかにでたらめかがわかるはず。
5.0
守るべきものは何か, 2011/10/4
By
けいちゃん☆ (三軒茶屋) - レビューをすべて見る
(VINEメンバー) レビュー対象商品: 原発・放射能 子どもが危ない (文春新書) (新書) 「何があっても子どもたちを守らなくてはいけない」。
細胞分裂が活発な子どもは、大人に比べて4〜5倍も放射能の影響を受けやすい。 さらに、放射能には「しきい値(これ以下なら安全という数値)」がない。チェルノブイリの事故後にも、低線量被曝による健康被害と見られるものが多くあったという。放射能には決して「安全」ということがないのである。また、科学的な人体への影響と言う面以外にも、社会的な「責任」という面からも、子どもたちを守らなくてはならない。
原発による「安くて」「安全な」電気を享受していたのは、今の大人たちであり、受益者がリスクを負担するのは当然のことである。
だが、今の子どもたちは十分な利益を受けることがなく、また利益を享受するかどうかという選択肢さえもないままに被害だけを受けてしまった。
こんな理不尽なことがあってよい訳がない。原発が弱者の犠牲の上に成り立っていることは今や多くの人が指摘するところだが、その際たるものが子どもたちである。大人たちには、原発に直接関係ない人であっても、この社会の一成員としての責任が多少なりともあるが、子どもたちに責任は全くない。
子どもたちを守ることこそが、大人の責任なのである。
この本からは、小出氏の「何があっても子どもたちを守らなくてはいけない」という本当に強い意思がひしひしと伝わってくる。チェルノブイリの子どもたちを支援してきた小児科医である黒部氏による放射能の基礎知識や、子供達の健康被害への影響も分かりやすく、本当に子どもを守るために欠かせない情報が詰まった一冊になっている。
個人的に衝撃だったのは、低線量被曝による健康被害の影響である。 被曝=癌になるというイメージが私の中では先行していた。 だが、実際には癌ほどひどくなくあまり注目されない、頭痛、めまい、疲れやすい、骨がきしむなど様々な症状がチェルノブイリ事故後の低線量地域で統計的に有意な結果として表れていたという。チェルノブイリ原発近くのベラルーシでは、以前はトップクラスだった学校の成績が、事故後急に落ちて今では平均以下になってしまったということがあったという。
これは被曝の直接の影響かは分からないが、放射線の高い地域ではストレスが溜りやすくなることが目に見えている。直接的な健康被害はもちろんのこと、精神衛生上も放射能による影響は無視できないものになるだろう。
低線量被曝が考えられうる3万7千ベクレル以上の土壌汚染された地域は、福島県の大部分から栃木県と茨城県の北部にまで広がっている。私が今住む北茨城市でも、場所によって1万Bq〜10万Bqを観測している。
判断するのは、大人である私たちである。
考えた上で、今居る土地から避難しようとも、その土地に残ったとしても、その判断は非難されるものではない。
だが、何も知らなかったでは済まされない。自分の頭で考えないこと、自分で判断しないことは、非難されるべきものである。
私たちは覚悟を決め、責任を引き受けることで、子どもたちを守らなければならないのである。
5.0
日本に生きる一人の大人としての責任, 2011/9/18
By
タカ "タカ" (日本)
- レビューをすべて見るレビュー対象商品: 原発・放射能 子どもが危ない (文春新書) (新書)
今現在放射能に晒されている子供達に対する責任が我々大人にある。
我々大人が起こしてしまった原発事故。何も知らない子供たちにその被害が及んでいる。
我々一人一人がここで学んで子供たちへの対策を講じる事それが我々の責任である。 決して政治家や東電にまかせっきりではいけないのだ。被害を過小評価して何とか原発を存続させる事にのみ腐心する気持ちもわからなくはないが、それよりもっと大切な子供の命を守る責任が我々にはある。
4.0
子供には1mSv/年以下でなければならない理由は?, 2011/10/1
By
Secondopinion (Japan) - レビューをすべて見る
(トップ1000レビュアー) (VINEメンバー) レビュー対象商品: 原発・放射能 子どもが危ない (文春新書) (新書)
長い間国や電力会社は、炉心が溶けるような事故は「想定不適当事故」と呼び、思い浮かべるだけでもいけないこととして、原発は安全だと主張してきました。機械は必ず壊れ人は必ずミスをすることが無視され続けてきたのです。しかし、福島原発だけでもこれまで原子炉を停止させねばならないほどの事故が50回以上起きています。その裏には、出世のために国民をないがしろにし原子力開発を推進した東京大学を中心とした学者たちや、利益や利権を優先した東京電力職員や官僚たちの姿があります。
被ばくによる健康被害から何があっても子どもたちを守らなければならないこと、原子力は人間の能力で管理できるようなものではないこと、東京電力や国を今後も信じることはできないことなど、本書の内容の99%に大賛成です。
その反面、私が本書を読んだ理由は、なぜ子供には年間の被ばくが20mSv以下ではだめで、既に自然界からの被ばくが約1mSv/年ある(世界平均は2.4mSv)のに、原発からの被ばくが1mSv/年以下でなければならないかが頭脳明晰な著者たちであれば的確に明示してくれているであろうと思ったからですが、その疑問を解決してくれる説明はありませんでした。
私は医師として思うのですが、本書の中では急性被ばくと慢性被ばくを混同している箇所もあります。何度も読み返しましたが、本書における子供には1mSv/年以下でなければならない根拠は「国」が法律でそう定めているからという理由です(99ページ)。一方で、国の発表することは信用できないとも書いています(20ページ)。これは論理矛盾です。
もう一つの論理矛盾は、生身の人間を実験台にすることなどできないのでたいへん困難な学問と言いながら(152ページ)、本書で根拠としているデータの信頼性に対する疑問が述べられていないことです。
子供には1mSv/年以下でなければならないもう一つの根拠は1万人に1Svの被ばくをさせると3731人がガンで死ぬ、だから1mSvだと約3.7人が死ぬというゴフマンの理論(25ページ)ですが、広島・長崎の急性被爆と福島の慢性被ばくは全く違います。加えて、被ばくしない1万人では何人がガンで死ぬかと比べなければ科学ではありませんし、データは必ず一次関数的に比例するとは限りません。
台湾で誤って放射能を帯びた鉄骨で作られたマンションから生涯500mSv慢性被ばくした住民や(Dose Response. 2006;5:63)、自然界からの被ばくが年間70mSvのインドのケララ地方の住民や(Health Phys 2009;96:55)、年間50mSvの被ばくにさらされている米国原子力潜水艦工場の従業員(J Radiat Res
2008;49:83)で、ガンの発症率が全く増えていないデータに反論するコメントがありません。
福島原発は3月12日の午後爆発しました。その時屋外で遊んでおり50mSvぐらい急性被ばくした子どもたちがいるはずです。そういう子どもたちは重点的に救済する必要があります。どうして子供には1mSv/年以下でなければならないのか、もう一度自分で調べてみます。
ともあれ、40年前から一貫して原子力発電に反対してきた原子物理学者と、チェルノブイリ原発事故で被ばくした子どもたちを診察した経験のある小児科医が、福島原発事故でこれまで起きたこと、これから起きうるであろうことを、的確かつ詳細にしかも分かりやすく解説したお勧めの良書です。
15:38
2011/12/17本書は150ページ足らずと短時間にヨーロッパの状況を把握できるので一読をお薦めしたい。
13:42
2011/12/17