なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?


株式会社アメリカの日本解体計画、目次、堤未里著

PART05ウォール街と対極の価値観を持つ・

 

・デジタル断食のススメ ・堤未里著

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151頁・

・・日本人のDNAには、助け合いの精神「お互いさま」が刻まれている過言ではありません。・151頁・


 

144頁・2023/06/14 6:28

・騙されやすくなり、日々の情報の洪水にされてしまうでしょう。 でも大丈夫です。 歴史の勉強がちょっと足りなかったなとか、現代史に明るくない自覚のある人はこれを機会にぜひ見てみてください。

ニュースの見え方が立体的になって騙されにくくなり、近未来が先読みできるようになりますよ。


NHKが「何を報道したか」ではなく、「何を報道していないか」を見る・144頁・

 

・お金の流れと歴史、そして三つ目は「法律」の動きを見ることです。

・国内法と国際条約の二つ。

このことを大学の講義で話すと学生たちはこう言って口をとがらせます。「法律なんてわかりません。弁護士を目指しているわけでもないし」

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・でも大丈夫です。

弁護士を目指す人のように法律の細かい条文を勉強する必要はありません。

・もっと簡単な方法があります。

その法律や条約がどこから出てきたのか、誰が何のために法案を出しているのか、誰が何のために法案が出しているのか、推進している人 ()は誰なのか?こういうことだけでいいので、ちょっと意識を向けてみてください。


・テレビを見ながら実践できる簡単なやり方をご紹介しましょう。

NHKの夜7時のニュースで聞きなれない法律の名前が出てきたら、すぐに参議院と衆議院のホームページに行きましょう。

そして、その法律に関する審議(:国会インターネット審議中継。衆議院と参議院が提供している、本会議や委員会などのリアルタイム(生中継)やオン・デマンド ネット動画)を、ノーカットで見てみてください。

審議の中身を全部見るのではなく、NHKがどこをカットしているかをみるんで

ART5 ウォール街と対極のを持つす。


146頁・

テレビの放送でカットされているところこそが知らなければいけないところ、私たち日本国民にとって本当に価値のある情報だと思ってください。

・同じことをテレ朝のニュースステーションでも、テレ東のWBSでもやってみてください。

・そうやっているうちに、省略されるニュースとはどういう種類のものなのか、国民に知られたくない情報とは何かが、だんだんピンとくるようになっていきます。

ニュースがある事件一色になったら、 その裏で何かが起きている

・前に、芸能人のスキャンダルの裏側では大変なことが起こっているというお話をし ましたが、同様に、テレビをつけて全部のチャンネルが同じニュースを流していたら(どの新聞も同じ記事一色だったら)、要注意です。


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・こういう場合は、まずスピン報道 (:政府に都合が悪い問題が起きた時、その問 題から世間の注意を逸らすため、違う問題をことさらに大きく取り上げること)を疑ってください。

・「女優の沢尻エリカ容疑者が1116()、合成麻薬のMDMAを所持していたと して、警視庁に逮捕されました」というニュースが流れていた時、SNSは数日間ずっとこの話題でもちきりでした。

・同じ頃、日米貿易協定の承認案が賛成多数で可決されたことは、話題にのぼりませんでした。

・日本中の目が一斉にエリカちゃんに向いているその隙に、私たちの将来を大きく変 える重要法案がするっと通ってしまう。

・そんなスピン報道がしょっちゅう行われているのです。

・ですからテレビと新聞、スポーツ紙、全部が同じニュースの時は芸能人のスキャ ンダルに限らず、大きな災害や事件などの場合も)、必ず国会のホームページを見てその時期国会で何が審議されているかを確認するようにしてください。


148頁・

・これだけ個人がネットアクセスを持つ時代になってもまた政治が変わらない大きな 理由の一つは、マスコミが行使する「報道しない自由」によって、重要なことを市民 が知らされないこと、そしてそのマスコミを主要情報源にしている国民が今もたくさんいるからです。

・選択肢がいつの間にか奪われてしまう。

・国民が自分の頭で考え、一時情報にアクセスすることを習慣にするようになった ら、社会は間違いなく変わります。


・自分の直感を信じる

・もう一つ、フェイクニュースやスピン報道だらけのこの時代に真実を見抜くため 何よりも大事なのが「目先の情報を追いかけない」ことです。

・情報は追いかければ追いかけるほど、「これも大事かもしれない、あれも大事かもしれない。これも知っておかなければいけない」というように、つい大量に溜めこんでしまいます。


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・不思議なことに、情報を溜めれば溜めるほど、人間は不安が大きくなってゆくのです。自衛のための武器と同じで、もっともっと、となってしまう。

・そしゃく そして、咀嚼しきれない量の情報で頭が一杯になると、パソコンと同じように、私たちの頭はフリーズして思考停止になってしまいます。

・だから、そうなる前に、一度情報を断って自分自身を取り戻してください。

・デジタル断食して直感を働かせるようにするのです。

・「これは果たして本当だろうか?偉い人がもっともらしいことを言っているけれど、政府が素晴らしいことを言っているけれど、でも何だかモヤモヤする」

・知識や情報ではなく、こういう自分の中から湧き上がってくるもう一つの声、みぞおちに感じる違和感の方を信じてください。

・それが、情報にのまれやすいこの時代に、私たちを守ってくれる武器になるからです。

・これから社会に出る十代の若者たちに、私はいつもこう伝えています。


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「スマホを見て情報をたくさん入れるよりも、自分の直感、自分の五感、それが鈍らないように磨く訓練をした方がいい。

・立ち上がって外に出て、自分の足で歩き、心と身体と魂で世界に触れてください」と。


ウォール街が一番怖がっているもの

・このようにして、ヴォール街の眼から世界を見ると、何が起きているか、ビッグピクチャー(問題の全体像、大局)が見えてくるかと思います。

・「今だけカネだけ自分だけ」という彼らの価値観が、わずか数十年の間に、世界をどんどん侵食しているという現実に。

・通貨が、言語が、情報の収集場所が、政府が一つに統合され、世界が一つのマーケットになるまで、このマネーゲームは続いてゆくのです。


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・そこまでのスケジュールもすでに準備され、その間に起こるイベントのラインナッブも揃っています。 そして、これまでのところ、すべて予定通りに進んできています。

・経済性や効率性が重視され、短期間で結果を出すことが求められるこの歪んだ価値親は私たちを分断させ、大事なものに気づかなくさせるだけではありません。

人間という種としての自然とのつながりも失わせているのです。

・しかし、これがすべてではありません。

・対極にある全く別の価値観があります。例えば私たち日本人のDNAの中にある「お互いさま」という言葉、ここに私は希望を感じるのです。


日本人のDNAには、助け合いの精神「お互いさま」が刻まれている

今や四半期の数字だけが価値を計るものさしのようになってしまっていますが、日本では古くから、漁業も林業も農業も、かつては政治も教育も医療もすべて、30年、50年、百年という長いスパンで考えられていました。


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・先人たちの長い努力の結果として、ある世代が亡くなってもその次の世代、次の世 代、もっとずっと先の世代まで同じ共同体で一緒にやっていかれるような社会が作られてきた。

・日本に、マネーゲームを仕掛けられてもびくともしないような素晴らしい知恵と技 術があるのは、先人たちの積み重ねのおかげなのです。

これはまさに、ウォール街のような「自分さえよければ」とは対極にあるものでは ないでしょうか。

・例えば、日本には農協という協同組合があります。

・農協と言えば、昨今マスコミから既得権益の代表として叩かれっぱなしの存在ですが実は、世界から「世界でも有数の、成功した共助モデル」と称賛されているのをご存知ですか? 組合員同士が全員の幸せのために出資し合い、地域の農業から貯金・ 保険などの事業を行う。農家でなくても加入できる共済制度は、この国でどれだけ多くの人の救いになっていることでしょう。

・一人ひとりは弱い存在ですが、皆で助け合ってゆくことで大きな力になる、このような協同組合のシステムが、日本にはいくつもあります。


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・この礎になっているのが日本人のDNAに刻まれ、先人たちから受け継がれてきた「お互いさま」の精神なのです。

・日本人が時を超えて無意識に育んできた知恵、「お互いさま」の精神性こそ、ウォール街が一番怖がっているものです。

・どこまでも自分自身と深く向き合う 崇高な文化や伝統、命に優劣はなく、人間もまた万物の一部であるとするアニミズムの思想そういうものが、彼らの計画を脅 かすのは何故でしょう?

・それは絶対にお金で買えないからです。

日本にはお金で買えない知恵がある、日本人はお金で買えない精神性を持っている。日本が持つこうした宝の数々は、どれだけ札束を積んでも、決して奪うことはできません。

・だからこそ、狙われるのです。


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「日本売り」を食い止めることはもう手遅れか

・こうしている間にも、私たちの国の大切な資産が、一つまた一つと売りに出されています。

ではこの「日本売り」を食い止めることはもう手遅れなのでしょうか・

・いいえ、そんなことはありません。

・この国の未来はまだ、未知数です。何故なら人は、一度真実を知ってしまうと、もう知る前には戻れないからです。

・私たちは今まで、主要メディアの「報道しない自由」や刺激的な「スピンニュース」 によって、本当に知るべき情報から遠ざけられてきました。

・裏で一つのお財布でつながっている二大政党を、主要メディアがまるで対立しているかのように演出し、SNS上で左右イデオロギーが煽られ、本当に立ち向かうべき存在の前で一丸になるどころか、敵をすり替えられ、感情的に分断されてきたのです。


155頁・2023/06/13 9:01

・彼らが情報を歪め、遮断する理由はたった一つ、私たちが持つ「未来を選び取る自由」を封じるためです。

・この間、ウォール街を始め、「今だけカネだけ自分だけ」の価値観に対抗して、世 世界中で巻き起こっている「反グローバリズム」の潮流は、「ポピュリズム」「極右」な どのレッテルをつけられ、国民の意識から外されてきました。

・地方から生まれたイタリアの五つ星運動、ドイツのAfD(ドイツのための選択 肢)、フランスの国民連合 (旧国民戦線)、イギリスのブレグジット、ハンガリーのオ ルパン政権は極右と、腐敗したメディアや政府機関にメスを入れるトランプ大統領や ドゥテルテ大統領は人間性を貶める形で悪魔化され続けていますね。

・目先のニュースやセンセーショナルな情報を追っていると、こういうスピン情報に 騙されてしまいますが、お金の流れを辿り、歴史を紐解き、小さな現象でなく大きな 構造を意識するようになった時、モヤモヤとした違和感が消え、何が起きているかがはっきりと見えてくるでしょう。

 

PARTS ウォール街と対の価値観を持つ


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・そこからが始まりです。

・知らぬ間に奪われそうになっている宝物の存在に気づいた時、私たちは本当に大切 なもの、守るべきものを意識し、無意識に日々の選択を変え始めるからです。

・それはコップの中の小さな波かもしれませんが、やがて大波になり、「今だけカネだけ自分だけ」の勢力を崩してゆく力に変わります。 日本売りを食い止められるかどうか? ではなく、絶 絶対に売らせない、と決断しましょう。


私たち日本人が本気になれば、必ず守れます。

今私たちが心に刻むべき「国家百年の計」とは

・日本は、百年先も子孫に残せるような、漁業、農業、中小企業の優れた技術など、世界が絶賛するものがたくさんあり、高い精神性を持つ、世界でもまれに見る豊かな国です。


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「お互いさま」を礎にして設計された皆保険制度、その子を一生導いてゆく種まきとして百年先の国の未来や民の幸福を考えて設計されたものばかりです。私たちの多くは気しての公教育、一人はみんなのためにを柱に共同体を支える協同組合などは、どれもづいていませんが、これは、国家百年の計を立てて実践していた心ある政治家が、か つて日本にもたくさんいた証です。

・私の父は病院で亡くなったのですが、最期にこんな言葉を遺してくれました。

・「どんなに素晴らしいものを持っていても、持っている人がその価値に気がつかなければ簡単に奪われてしまう。国民皆保険制度なんか当たり前だと思っていたけれど、これがなかったら自分は大変な借金をお前たちに残して死んだだろう。

・俺はジャーナリストとして、権力の不正を監視し、弱いものの側に立つことにずっとエネルギーを費やしてきたけど、足許は見ていなかった。 今こうなってみて心から思う、日本という国に生まれてよかった。この制度を作ってくれた先人たちには、本当に感謝しかない。

 


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社会を見れば、問題は山ほどあるだろう。

・だがその根底には、日本人の精神性と、「お互いさま」の心、百年先も見据える。長いスパンでものを考えるものを深く考える力、そういうものがここ日本社会の礎として、確かにあったのだ。

この宝物の存在を、その価値を、日本人に伝えなさい。 それがジャーナリストとしてのもう一つの大切な使命だよ」と。


「お互いさま」の精神を世界中に広げ、 貴重な資産を次世代に残そう

・私たちのDNAに刻まれた「精神性」が、今ほど求められている時はありません。世界中の金融資産の半分以上は、実体のない詐欺商品です。

・強欲資本主義が推し進める「今だけカネだけ自分だけ」の価値観は持続不可能であり、やがて必ず滅びるでしょう。


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そうなった時、価値あるものだけは次世代に残せるよう、私たちが今しっかりと目覚め、守ってゆくと心に決めることが肝心です。

・この国がつないできた文化、伝統、顔が見えるものづくり、数字で測れない価値を持つ教育、保険証一枚あれば、誰でも治療が受けられる国民皆保険、誰も取り残さず、ともに発展してゆく協同組合の思想や、誰もが誰かに助けられて生きていることに気づかせる共同体の存在。私たちが受け継いできた、他者を思いやる想像力と知恵を使って、支え合う豊かなコミュニティを国のすみずみに作ってゆくことが、日本がこの国を守りながら持続可能な発展をしてゆく一番の近道だと、私は信じています。

・お金の流れで世界を掴み、歴史を紐解き、直感を磨き、強欲な力に押し流されず 「お互いさま」の精神というかけがえのない宝を世界中に広げてゆく。

・そんな大人たちの姿はきっと、子供たちの胸に未来への希望を灯すでしょう。

・貴い資産を次世代に残していけるよう、どうか皆さん、一緒に頑張りましょう。本日は、ご清聴本当にありがとうございました。


終、2023/06/13 9:20


 


なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?


前例・ 慣習を打破する仕事術

Heroes of Local Government (HOLG.jp) 編集長

加藤年紀 []

市プロモーション 人 において、200億円にこ58億円の市町村順員研修研究センター「」1960年生まれ。

#03

目の前の仕事に誇りを、 目の前の仕事に全力をおかもとじょうじ

岡元讓史おかもとじょうじ・1983年生まれ、寝屋川市経営企画部都市プロモーション課係長。入庁後、12年間にわたり税金や保育料などの滞納金を徴収する滞納整理業務に従事。滞納債権整理回収室において、2007年から2016年の実績比較で、市全体の差押え件数を約34倍増加、約358億円の市税滞納繰越額を約126億円にまで圧縮させることに貢献。

・培ったノウハウを元におおさか市町村職員研修センター(マッセOSAKA)の研究事業として「徴収事務マニュアル」を作成。また、自主研究会「迷子不動産活用プロジェクトチーム」を立ち上げ、所有者不明土地・建物問題を研究。

・一般社団法人日本褒める達人協会が提唱する「めめる」の定義(=人、モノ、起きる出来事に価値を発見して伝えること)に共鳴し、同協会の認定講師資格を取得。滞納整理業務の価値を全国の徴収職員に伝える。

 

55頁・

「お前、夜道に気をつけろよ」「お前にも大事な家族がおるやろ」「顔と名前覚えているからな」「俺は全部失ったから、怖いものはないからな」

・自治体において、ときにこんな言葉をかけられることもあるのが、地方税徴収、 滞納整 理の仕事だ。控えめに言っても、決して人気のある部署ではない。その厳しい職場環境に あって、若くして大きな成果を上げたのが、 寝屋川市の岡元譲史だ。

・滞納繰越額を20億円以上圧縮職員の意識も変化・

岡元が地方税の滞納整理担当となったのは、入庁6年目の2011年。寝屋川市が2009年に「滞納整理回収室」を新設してから2年後のことだった。 滞納繰越額の健全な状態は、現年度課税額の1%以内だといわれる。当時の寝屋川市は10%を超える危機的状況だった。

・「2007年の時点で現年度課税額約300億円に対して、約36億円の滞納繰越額がありました。それが、2016年度で126億円、2019年度の決算では10億円を下回るのではないか、という水準にまで改善されています」

・岡元が異動後に取り組んだのは、差押えの判断を早めることだった。

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従来は、差押え実実施前に督促状を複数回、段階に応じて送付していた。その運用を改め、記載され 納期までに対応しない者については、速やかに差押えを行った。

・また、捜索や不動産公売など。難易度が高く、より専門的な知識が必要となる業務に取り組んだ。

・「玄関や窓の鍵を強制的に開けて、家の中を捜索することもありました。また、分割納 付で5千円ずつ払っていたような人でも、相当の給与があるなら差し押えて強制徴収するようになりました。そういう厳しい処分を続けるうちに寝屋川に厳しくなった」という噂が広まり、自ら納付する方も増えていったと思います」

・地道な取組みの積み重ねは、目にも大きな変化をもたらした。「役所内でも「滞納が放置されれば、厳しい処分は当たり前」という意識が生まれるよ「うになりました」

・税金で食っているからこそ、市民全体のために仕事をする

こうした滞納整理業務の知識を習得することは、決して容易ではない。元東京都職員で、整理に関する多数の著書を持つ、不動産鑑定士の杉之内孝司氏は、その困難さをこう語っている(平成259月、おおさか市町村職員研修研究センター、ミニ講座「滞納整理 の現状と課題について」 基調講演より)57頁・

「収業務で通用するためには、地方税法や国税徴収法など、相当勉強しなければなりません。その要求される勉強の度合いは、他部門より量的にも質的にもはるかに大変です。(中略)徴収部門が行きたくない部署とされる原因かもしれません」

・岡元は、そんな苦労を厭わなかった。 法律の知識にとどまらず、お金に関する知識も必 要だと考え、ファイナンシャルプランナー3級の資格も取得した。

・厳しい対応を滞納者に課すと、「税金で食ってるくせに!」などと反発を受けることも少なくない。しかし、岡元はひるむことなく仕事に邁進した。

・実際、僕は税金で釣ってるんです。でも、税金で食っているからこそ、一生懸命、市 民全体のために仕事せなあかんと思っています」

・もちろん、元にもある 好きこのんで厳しい対応をしたわけではない。

・搜索は、本人の意思とは関係なく無理やり徴収するということです。いくら、『納付している大多数の市民のために』という大義名分や綺麗事を言っても、どう、したって滞納を苦しめながらやってきているわけです。

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それなのに他の者に てしまったら、今まで辛い思いをさせてきた人たちに申し訳が立たないで すよね」

・厳しい処分を行うことによって、ここまでやっても取れない」ということが明確になる。だからこそ法律に基づき不収め、損金処理をすること)を行う妥当性が生まれるのである。

・払わない人が得するなんて不公平、お願い徴収からの変革・

・岡元が滞納債権管理回収室で成果を上げることができた大きな理由に入庁後に配属された部署での経験がある。2006年に新卒で入庁した岡元は、2010年までの5年間、保健福祉部こども室で、保育所保育料の徴収担当を務めた。このとき、岡元は滞納者に初めて向き合うこととなる。

・「恒常的に保育料を滞納している人がいることを知りました。僕も子どもを保育園に預けていましたし、大半の人はちゃんと払っている。払わない人が得するなんて、『こんな 不公平なことないやん!」と、強く思ったのがスタートです。真面目に頑張っている人がバカを見る、そんな世の中にはしたくないと思ったんです」

59頁・

当時、保育料滞納を原因とした差押えは全国でもほとんど行われていなかった。「皆さん払っているんでお願いしますよ」という、まさに「お願い徴収」が一般的だった時代だ。そんなときに、「法律を勉強して、法律に基づいた厳しい処分をやってくれ」と課長に請われ、保育料の徴収業務を専任担うこととなった。

・しかし、初めての徴収業務は一筋縄ではいかなかった。

・「苦しいから払わへんのや!」「そんなん言うんやったら、お前が取りに来い!」「お前公務員みたいなラクな仕事じゃないんや!」と、高圧的な言葉を浴びせられることもあった。不満を募らせた滞納者と窓口でもめ、上司に仲裁されたこともある。

・それでも、継続は力なり。法知識を学び、差押えなどの厳しい対応を地道に行うことで、 徴収率は大幅に改善。2005年度に93%だった保育料の徴収率は、岡元の在籍した 最後の年、2010年度には978%2017年度には978%に達した。

60頁・同僚と良好な関係を築き、周囲のサポートを得る

 

・役所の中で仕事を頑張ると、上司や同僚の一部から叩かれることも少なくない。だが、岡元は入庁以来、各性を発揮し、良好な関係を築いてきた。

・保育担当のときも、普段からコミュニケーションを大切にしていました。僕の母型ぐらいの年齢の女性が多くいらしたこともあって、自分が子育てで頼んでいることなど、プライベートな話も聞いてくださいました。本当に息子に接するみたいな感じで可愛がってもらいました」

・そんな元を上司も強力にサポートした。

 

「催告書を送付したりすると、電話が何本もかかってきて、他の人にも対応していただく必要が出てしまいます。そういうときに「部署としてはこういう方針で動くから、岡元くんに協力してあげてください」「岡元くんは厳しい処分を一手に担ってくれるから、周りもサポートしてあげてください」と、課長が協力をしてくださいました」

・上司にとって、良好な人間関係を構築している職員はサポートがしやすい。逆に、協調 性の低い部下のために、積極的な協力を呼びかけることには二の足を踏む。それによって、「えこひいき」などと言われ、余計な反発を受けることになりかねないからである。

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・気迫を込めてマニュアルを作成 他自治体にノウハウを共有

2011年度から2012年度、岡元はおおさか市町村職員研修研究センターが立ち上 げた「徴収力強化研究会」に参加する。研究会の目的は、徴収職員向けの「徴収事務マニュアル」をつくり、滞納整理のノウハウを広く伝えることだ。

・マニュアルのコンセプトは3つあった。

1つめは、理解しやすい「身近に頼れる先輩のようなマニュアル」であること。自治体は3月末に年度を区切るが、5月末までに徴収できたものは、前年度の徴収分として 会計処理をすることができる。つまり、前年度の未納とはならない。

・そのため、徴収部署では45月が追い込み時期となるが、4月は異動時期でもある。新人の 指導に十分な時間が割けない先輩・上司のかわりに、マニュアルが大きな力となる。

2つめは、「国民健康保険料や介護保険料など、税以外の徴収担当者にも参考となるマニュアル」であること。これまでにも税のマニュアルや、実務解説書は複数あっだが、かつて担当した保育を含め、以外の債権に関する実用的なマニュ ほとんど存在しなかった。

62頁・2023/06/07 10:38

 

「市税の徴収は職場内で先輩に相談したり出来るんです。でも、保育料の徴収などは担当が一人だけという場合も多くて、先輩から教えてもらうことがないんですよ。そういう人たちに向けてつくりました」

3つめは、「研修でも使えるマニュアル」であること。研修教材、OJTの教本として 活できることを意識した。実際にできあがった「事務マニュアル」は、その実用性の高さから配布を希望する自治体職員の教本として、広く活用されている。

・徴収力強化研究会において、ともにこのマニュアルを作成した松原市の原田和昌は、岡元 関わった2年間をこう振り返る。

・徴収現場でのあるある話や悩み、ときには愚痴なんかも含めて、とにかく熱く語り合いました。 岡元さんについて特に印象に残っているのは、マニュアルにかける強烈な思いです。妥協を許さず、収担当職員に寄り添うという気迫を感じました」

63

・本業で成果を上げ、異なる課題に手をつける

・岡元の功績は、滞納整理業務の成果だけではない。本来業務で成果を出しながら、合間って自発的に進めたのが、所有者不明不動産への取組みだ。

・「2040年には、所有者不明土地の面積が北海道くらいになると言われています。

この問題について、市役所の中で密接に関わる業務の1つが固定資産税の賦課・徴収なん です。

・所有者不明不動産にはいくつかのケースがあります。たとえば、代表者が死亡して会社の実感がない法人が所有する場合や、相続が幾重にも重なることで、相続人が容易に特定できない場合などです」

・不動産は存在するが、そこに納税義務者の姿はない。こうなると、納税通知書の送達先もなく、督促状も送付できない。担当の固定資産税課は手をこまねいていた。

「所有者が不明の状態だと、まともに課税できないんです。それを、徴収担当の立場か ら解決できないかとずっと考えていて、2011年度から本来業務とは別に、少しずつ対することにしました」、

64頁。

・所有者不明不動産の問題を解決するには、多大な費用・時間・労力を要する。地方自治 第2条における最少の経費で最大の効果という理念に照らせば、案件への着手に が生じる。ところが、岡元に考えがあった。

・「確かに純粋な回収だけを見れば、費用対効果かもしれません。しかし、所 有者不明のまま放置された場合の土地は事実上、使用不可となります極端に言えば、目の前の仕事に割りを仕事に全力を「国土が喪失する」ということです そうなってしまった場合、大きな調査費用や人件費 もかかります。むしろ、案件を後回しにせず、速やかに対応することが、長期的に見ても費用対効果が高いと考えたのです」

から税金を回収して、残金を強い意志は、具体的な行動に直結する。

「まず所有者の相続人を調査・特定するように動きました。次に、特定した相続人に対して、不動産を相続するのか放棄するのか選択を迫ります。もし、滞納固定資産税を支払わない場合は、差し押さえて公売にかける。最後に売却代金から税金を回収して、残金を相続人に振り分けるのです」

・このスキームは権限上、固定資産税担当者に行うことはできない。国税徴収法に基づき、押え・公売できる職員だから可能となる。

65頁・2023/06/07 12:48

「売却が前提のスキームなので、不動産がある程度流通する地域でないと難しい面はあります。また、資産としては小さい額の場合もあるでしょう。ただ、その土地が流 通したり、開発されたりすることの価値は大きいと思います」

2017年、 岡元はこの経験を活かし、所有者不動産活用プロジェクトチーム」を立ち上げた。

 

者不明不動産に関する自主研究会「迷子不

・「専門家を招いてフォーラムを開催したり、過去の取組みや他自治体の先進事例をまとめて報告書をつくりました。報告書は、この問題に取り組む全国の同志にも『使える』『役に立つ』内容にすることを心がけました。そのため、実際の起案文書や様式、参考資料などを添付しています」

・徴収事務マニュアルを作成したときと同様に、岡元は自らの経験や成果をかみ砕いて共有した。誰も手をつけたがらなかった領域を体系化し、報告書はウェブ上にも公開した。

・「お前の顔に火つけたるわ」恐怖に心折れないために

・「お前、夜道に気をつけろよ」「お前にも大事な家族がおるやろ」「顔と名前覚えているからな」

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・「俺は全部失ったから、怖いものはないからな」冒頭で紹介したしめいた言葉は、実際に元が滞納者から投げかけられたものだ。は、常に危険と隣り合わせにある。

・実際に、トラブルは発生する。2013年には、 宝塚市役所の市税課で、ガソリン入りの火炎瓶が投げつけられる事件が起きた。職員2名が軽傷を負い、市民までをも 巻き込んだこの事は、宝塚市に預金を差し押さえられた滞納者によるものだった。

・その事件の直後に一本の電話があった。岡元が担当する滞納者からだ。すると、耳を疑うような言葉が電話口から聞こえてきた。「俺やったら、お前の顔に火つけたるわ」。突然の犯行予告だった。 大事には至らず、この人物は後に逮捕される。しかしながら、これらの出来事から、職員にのしかかる精神的負荷が大きいことは明らかである。

・徴収業務を担当したばかりの岡元も、やはり、不安と戸惑いを強く感じていた。

・「恥ずかしながら、僕も1年目、2年目はけっこう泣いていましたよ、本当に」

・心の支えの1つが読書だった。

・「パナソニック創業者である松下幸之助さんの本もよく読んでいました。「順境まし、逆またよし」みたいな箇所を見つけると、「なるほど、逆境よしや! この逆境が自分を鍛えているんや!」というふうに、自分に言い聞かせていたんです。講演も毎日のように聴いていましたね」

67頁・

読書を通じて、「ほめる達人」という、人やモノの価値を積極的に見出す活動にも出会った。2013年から仕事の中でも実践し、疎まれがちな滞納整理という仕事に価値を見出すことができるようになった。

・岡元には全国から研修依頼が寄せられる。その主なテーマは「滞納整理の価値と戦略」だ。現役の収職員に対して、滞納整理のノウハウだけでなく、その価値をも説いている。

・「自分に辛い経験があったからこそ、この仕事の価値を伝えていきたいですね」

・岡本は現在も「ほめる達人」の活動を続け、2018年には「優秀認定講師」として表彰された。

・心の支えとなるものは他にもあった。それは、全国でともに学ぶ仲間の存在だ。

「「LGINet」という自主勉強会グループに10年近く参加しています。普段はインターネット上で情報共有をしながら、年に1回大規模な研修会を開催して、交流を深めています。

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・心を支えてくれる存在が複数あることが大切ですよね」

・さまざまなコミュティに関わることで、知識だけではなく、精神的な安定も手に入れることができた。

・徴収職員は悪魔ではない徴収の仕事に誇りを

岡元はある 観しながら、収の仕事をこう振り返る。

「徴収職員は、滞納者が大事にしているお金であっても、心を鬼にして取り立てないと いけない場合があります。たとえば、子どものための学資保険であっても、差し押さえて強制解約し、滞納金に充てていました。恨まれて当然だと思います。『あなたは、子どもの未来を潰しました』と言われることもありました」

・確かに、滞納者から見れば、徴収職員は敵視せざるを得ない存在だ。多くの徴収職員も それは覚悟できている。一方で、岡元が何より心を痛めるのは、頑張る徴収職員に対する役所内の目だ。

・「法律に基づいて役割を果たそうと一生懸命にやっていたつもりなのですが、僕も一部の同僚から『悪魔』と呼ばれていた時期がありました。もちろん、権力を笠に着て、高圧的な態度を取るような職員は論外です。でも、徴収の仕事に真摯に向き合い、役割を果たそうと頑張る人たちは、しっかりと評価されるべきだと思います」

20184月に岡元は債権整理回収室から異動した。しかし、今も日々奮闘す全国の職員にエールを送り続ける。

・「徴収職員が感謝されることは、ほとんどありません。窓口や電話で怒鳴られるなど、怖い思いをすることもあります。それでも僕はこの仕事に携わることができて良かったと心から思っていますし、徴収の仕事に誇りを持っています」

どんな仕事にも価値がある。そして、どんな仕事も改善できるのだ。

 

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岡元讓史 に学ぶ、役所でやりたいことを 実現するヒント

・好んで市民と敵対したい職員はいない。でも所有者不明不動でも、強烈な課題意識が元の原動力となった。課題意識を持ち、自発的に行動する姿は、お役所仕事の対極にある。

・モチベーションをマネジメントする

新たなチャレンジが想定通りに進むことはない。困難な状況でも 行動を継続できるかどうかはモチベーションに依存する。 岡元の場 合は「読書」 「仲間」などが自らの挑戦を支えた。

周囲と協調し、信頼を得る

たとえ成果を出したとしても、組織内でいざこざを起こす人間に 仕事は任せにくい。組織に所属する限り、周囲との円滑なコミュニ ケーションが求められる。

71頁・

COLUMN 1

世界は変わっている。 公務員も 変わらなければならない

強烈な課題意識が行動力の源泉となる、倉田哲郎 (箕面市長)・行政は社会の映し鏡だ。社会で起こるすべての事象(課麺)について、行政内では必ず誰かがそれを担当し、コ 下が起これば対応を求められる。

・そして、世界は時代とともに変化している。 そこで暮 らすたくさんの人々を支え、生活圏域を日々改善していくのが公務員のミッションである以上、世界の変化に遅れることなく、公務員も変わっていかなければならない。

・公務員の皆さんには、あなたの就いた役職が、この世 世界で唯一無二の役職であることを常に忘れないでほしい。同じ地域、 同じ対象、 同じ分野を、 同じ職責で任せられている人は、 世界中どこを探しても、あなたのほか には誰もいない。

・あなただけに任されたその世界で暮らす人々を、支え、笑顔にしていけるか否かは、あなた次第だ。折に触れ、公務員を志望した初心を振り返り、変化を恐れずチャレ ンジし続けてほしい。

そして、すべての行政組織が、そのチャレンジに十分 応えられる組織となっていくように、私も頑張りたい。

72頁・終、2023/06/07 13:24

 

5月12日号、12/4/30 958分、


堺屋太一、彼を甘く見ていませんか「橋下徹という男」橋下徹という政治家を日本のメディアは異色の政治家と位置付けて報じています。そうしたニュースに接している人たちも、彼のことを異端児と捉えているかもしれません。でも、この見方は全く違います。実は彼こそが「本来の政治家」というべきです。

いまに日本の政治家は猟官者、つまり官職を欲しがって群がって人が多くなってしまっている。その中であって、この国を絶えて久しく登場しなかった本来の政治家が現れた。だから、橋下さんが異色に見えたいるにすぎません。


では、本来の政治家とはどういもうものか。


政治には政局と政策と政見の3つがある。政局というのは、だれが政権をとるかといった人の動き、政策はどれに予算をつけて何をやるかです。そして、一番大切なのが3つ目の政見。


どういう理念でどんな構造に日本を作っていくかを決めるのが政治の根幹なのです。

川に例えるなら政局は川面の波。常に見えている部分だから、よく目立つけれども、風が収まれば波も消えてしまう。政策は川の流れにあたり、流れはとことともに変化していく。

これに対して政見は河道です。そして、構造改革というのはこの河道を変えること。川の構造を作り出すことです。その重要性から見ると、誰が担当するかという上っ面の政局など、たいした問題じゃありません。

政権=国の構造改革に取り組むのが本来の政治家であり、橋下徹がそうであると私は見ているわけです。私が橋下さんと初めて会ったのは、5年前の秋でした。私は同時、太田房江大阪府知事の公認候補を探していたんですが、彼の擁立が念頭にあったわけではありません。仕事の早い弁護士だという評判を聞いて、軽い気持ちでお会いする気になったんです。ところが、ホテルの喫茶室で1時間ほど話すうちに、私の中で「この人こそ」という気になりました。

その理由はまず、仕事が早いという評判に違わず、見るからにスピード感があった。2つ目に、しがらみがなかったことです。


政治の世界に入ってくる人は、多かれ少なかれ支持者の基盤があり、良くも悪くも色がついている。フリーな人はなかなかいない。

3つ目に大阪に対して強烈な愛郷心を持っていた。彼が生まれたのは東京のようですが、大阪が抱える問題点について鮮明な問題意識を持っていましたね。ただし、この時すでに彼が政治家になって大阪を何とかしようと思っていたかどうかはわかりません。

ともかく今挙げた3つの理由から、私は「この人だ」と思ったわけですが、橋下さんの最大の魅力は、やはりスピード感です。

実業家でも芸術家でも、職業を問わずスピード感のある人と会っていると心地よいものです、スピード感を形成しているのは、決断力と行動力と発信力の3つですが、最も重要なのは決断力です。


例えば橋下さんは、問題教師の排除を目的にした大阪府教育基本条例の制定を目指していますが、パッと決断したらすぐに始める。普通は、まずあちこちに意見を聞いて、その上で官僚にすり合わせをする。そうこうしているうちに、いや、これはどうもなかなか難しいな…で終わってしまうことが多い。


これが今の「決められない政治」の実態ですが、橋下さんは違う。まず決断力があって、その上に行動力と発信力が伴う。だから、彼と向き合っていると心地よさを感じます。

もう一つ付け加えるなら、彼の父親や親戚のスキャンダルは出てきたけれども、本人のスキャンダルは出てこない。あれだけ敵が多ければ、スキャンダルの一つや二つ出てもよさそうなのに、決定的な金銭問題も女性問題も全く出ていない。まあ女性の方は、高校の同窓生と早くに結婚して7人の子どもをもうけているから、浮気する暇もなかったのかもしれませんけどね。


平成の高杉晋作


私は橋下さんのことを、日本に絶えて久しくいなかった「本来の政治家」だと言いましたが、あえて彼を過去の人物と重ねるなら、高杉晋作です。長州藩を改革してみ治維新の先鞭をつけた高杉の仕事で注目すべきは、騎兵隊をつくったこと。これは武士だけではなく農民も町民も交えた混成部隊で、小さな組織であったけれども、それまでの身分制を変えたという点で大構造改革だった。その改革をやった高杉は、「幕府に入って老中になろう」などとはまったく考えなかった。

高杉晋作から見ると、老中人事など「小さな話」です。

ところが、今のマスコミはしきりに「橋下は幕府の老中になりたがっている」と繰り返している。本当の狙いは、総理大臣になることだ、と。幕末の江戸でも、幕府の紀州派と一橋派の権力争いとか老中人事とか、政局の話題ばかりが重視されました。いまのマスコミもこれと同じで、永田町(東京都千代田区)の政局ばかりを追いかける千代田城のウオッチャーになっているわけです。

橋下さんも高杉晋作と同様に構造改革をやろうとしているのですが、東京のマスコミはどうしても彼の動向を政局にしたがるんですね。石原新太郎東京都知事と新党を作るとか、民主党の小沢一郎元代表と連携するとか。そういう政局が渦巻く中に橋下さんを位置づけようとするから、彼のやろうとしていることが分からなくなる。

12/4/30 1146分、
2012年4月30日 11:49:02


はっきり言って今の橋下さんは国政に出る気はないし、大臣になる気もない。要するに永田町の政局とは無関係の存在です。それが、政治は政局と考え、表面の波しか見えていない人の目には奇異に映る。したがって、今多くのマスコミには、彼が珍種の動物のように見えているのでしょう。


では、橋下さんが目指す構造改革とはどういうものか。それは中央集権から地方主権の行政を実現するというものです。

消費者主権というのは、例えば先ほど触れたように、問題教師を排除するために大阪府教育基本条例をつくること。つまり、生徒にとってもダメ教師は迷惑だから、そういう人には研修を受けさせ、それでも良くならないなら辞めてもらう、というものです。学校教育の消費者は生徒と保護者ですから、そちら側の視点に立って改革をしていこうということです。

今は政治家も官僚も供給者重視になっています。農業問題なら農民が大切で、消費者は蔑にされている。医療問題なら医師と製薬会社が大切で、患者は置き去りにされている。教育では教師が大切で、生徒は軽視されている。すべて供給者主権になってしまった。

政治家が供給者利益の擁護者になっている。そんな問題意識から、消費者主権を明確に打ち出したわけです。

今の政治家は第二公務員


さらに、今の政治家は支持者を広げるために、四方八方にいい顔を見せる。特に小選挙区制度導入以降は、一つの選挙区で1人しか当選しないものだから、労働組合にも農家にも商店にも媚びるような発言をする。

そうしたなかで橋下さん率いる「大阪維新の会は、消費者主権という立ち位置をはっきりさせた。このことは同時に、対立軸は明確になることでもあります。それを一部の人達が「喧嘩民主主義」などと的外れな批判をする。改革を目指すというのは、旧来のものを否定するわけですから当然、対立軸ができる。それは望ましいことであって、対立軸のない政治こそ、八方美人、口先だけの「決められない政治」です。

ちなみに維新の会と対立軸をなしているのが、供給者側主権を推し進めてきた官僚・労働組合勢力です。維新の会は、この在来勢力との間で綱引きをやっており、民主党も自民党もその中間にいて、双方の動きをうかがっているのが現在の構図と言えます。

しかし、我々から見ればいま憂慮すべきは、「ごまかし政治」「ごますり政治」「傲慢政治」という「三語政治の蔓延です。みんなにいい顔をしてバラまき型のごますりをする一方、官僚の言いなりになっているくせに、国民には傲慢になる。こういう政治家が非常に多いのが現状です。

また、橋下さんに対して劇場型とかポピュリズムといった批判がありますが、これは全くの見当違い。ポピュリズムだったら教員組合とそのシンパから逆風を受けることが分かっている教育改革なんてやりません。対立軸を明確にすると言いうことは、敵も作るということですから、橋下政治はむしろポピュリズムとは正反対です。

橋下さんの消費税主権が新鮮に映るのは、それだけ世の中が供給者主権になっているからです。日本がそんなことになった大きな原因は、政党助成金です。

政党助成金は細川内閣で導入されましたが、これによって政治家は国の助成金で暮らす第二公務員になり、選挙民の意見を聞く必要がなくなりました。それまで政治家は選挙民から票とお金をもらわなければならなかったので、熱心に国民の意見を聞いていたのです。

国から金をもらえることになったので国民の声を聞かなくあってしまった。代わって政治家が熱心に耳を傾けるようになったのは、組織票をくれる労組、農協、医師会、あるいは低所得者を食い物にする貧困ビジネス業者など、供給者側の声です。

しかも、これらの組織はほとんど官僚によって動かされているのが実態です。例えば農協は農水省の意見で動いていて、農家の意見で動いているのではない。永田町への陳情も、すべて農水省が農協に指示してアレンジしているのです。医師会も同様に厚労省の意見で動いているにすぎません。

今のところ、橋下さんはその協力者の大阪維新の会は、政党助成金をもらっていません。


12/4/30 1343分、

政党助成金は、国会議員5人以上という政党要件を満たせばもらえるのだから、大阪維新の会も協力議員を集めることは、やろうと思えばできるでしょう。でも、それはやっていません。


問題は、橋下さんとその同志である維新の会の目指す政権(構造改革)の実現には、国会で多数の賛成が必要なことです。いまの国会で構造改革の法案に賛成してくれない議員とは、戦うしかないでしょうね。

そんな橋下さんが府知事になった当初、「あのタレント弁護士が」い言った世間の見方が少なからずありました。特に東京では、「大阪の有権者は面白半分で橋下さんに投票したんじゃないか」と思った人も多いかもしれません。


でもそれは違う。大阪の人は、候補者をものすごくよく見たうえで判断しています。かつて横山ノックさんが大阪府知事に選ばれた。タレントだからじゃないんです。彼は実にすばらしい英語力の持ち主で、情報通でもありました。

英語の堪能な政治家と言うと宮沢喜一元首相を思い浮かべますけど、はっきり申し上げて、ノックさんの方が上だったでしょう。彼の英語は、かつて上岡竜太郎といっしょに駐留軍のキャンプを回ってやった米兵相手の漫才で身に付けた英語です。

話術でお金を稼いでいたのですから本物です。参議院議員としても悪くはなかった。大阪の有権者は、ノックさんの政治家としての働きを評価したんです。

もう一人西川きよしさんについて申し上げると、国会で彼ほど短い時間で的確に質問した参議院議員はいません。私は閣僚としていたから現場にいたんですが、彼は質問に立つと福祉の問題を必ず1問だけピシャリと聞いた。無所属だったから与えられた質問時間が短いのですが、あれくらい効率のいい質問をした議員はいない。官僚出身の政治家は、自分の知識をひけらかすために長ったらしい質問をしますが、西川さんは明確に的を衝きました。

大切なのは、政治家を前職で判断してはいけないということです。かつてレーガン大統領が出てきた時「あんな俳優上りが」とよく言われた。けれども、結果的にレーガン政権の8年間でアメリカは、規格大量生産の社会から地価社会へと転換します。


政治は決断すること


そのレーガンも軸足がしっかりしていましたが、日本では軸足がしっかりした政治家は、どうかすると独裁に見られる。その結果が今の「決められない政治」です。

例えば小沢一郎という政治家は、常に何かをかき回しているのが好きなのであって、別に何も決めていない。何も決めないことが、小沢さんの虚像をより大きくしているところがある。


結局、「決められない政治」というのは「決めてはいけない政治」であり、「決めないのがいいことになっている政治」です。だから、何事かを決めると「あいつは独裁者だ」と批判を受けるわけです。


しかし、本来の政治とは決断することであり、その結果、必然的に対立軸も明確になる。そこで、対立するもののうち、どちらを取るかを選挙で決める。それが民主主義であるというのが橋下さんの考えだし、私もそう思う。


ただし、繰り返しになりますが、橋下さんは国政に出ない。それは奇異なことでも何でもありません。かつて徳川最後の将軍、慶喜は幕府を改革しようと動き回ったけれど、結局、何もできなかった。それは、彼が将軍だったからです。幕府の中に入ってしまえば、幕藩身分体制を肯定せざるを得なくなる。つまり将軍であれ老中であれ、体制=幕府の中から体制そのものを変えよとしても、大勢の幕府官僚たちの組織立った抵抗にあえば実現できない。それが現実なのです。

これと同じで、今の日本の中央集権を変えよとするとき、官僚に依存しては出来ない。現に野田総理はその一例です。だから、橋下さんは「大阪維新の会の理念で地方主権を捉えて、地方から構造改革の運動を実現しようとしているわけです。したがって橋下徹は、地方改革実現以前に国政には出ないし、出たはいけない。確実な改革を、まずは一つ進めていくはずです。

12/4/30 1748分、
2012年4月30日 17:51:39