◎ トンネル・用水路工事をする人たちの苦労や大変さをつかませる。 |
説明1 今日は,このトンネルと用水路を作った人たちのことを考えていきます。 (『工事をした人たち』と板書) 指示1 まず,次のことを調べてノ−トに書いてもらいます。(下を板書) | ||
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トンネルの大きさ @ 全体の長さ A 高さ B はば |
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必要な場合は,図を書いてもいいです。時間は,3分です。 |
1 トンネルの大きさ @ 長さ(全体)→11,358m A 高 さ →245cm B は ば →240cm |
指示2 今から,このトンネルの大きさがどれだけなのかを実際に体験してもらい ます。全員廊下に出なさい。 |
説明2 最後にトンネルの長さです。11〜13kmあるということでしたね。こ の4年生教室の廊下から6年生の教室の廊下の方を向きなさい。 ちょうど,この廊下の大きさのトンネルが実は,ここから「末吉」や「志 布志」まで続いている長さになるのです。 この廊下は,6年生の向こうの出口で切れていますが,それが末吉や志布 志までずうっと続いていくわけですね。 当時の人たちは,これを実際に掘っていったんです。すべて手作業でやっ たわけです。 |
指示2 裕樹君,6年生教室に向かって,トンネルの掘っていきなさい。ただし, 君の目の前は,壁と思いなさい。壁をこわして,トンネルの穴を掘っていく のです。当時の人になったつもりでやってみなさい。 |
発問1 裕樹君のトンネル工事の仕方は,これでいいですか。 指示3 おかしいと思った人は意見をいいなさい。 |
・ 裕樹君は簡単に前に進んでいったけど,目の前には固い岩や土があるのに,そん なにすぐは,前に進めるわけがない。 ・ 目の前は壁なのに,1か所だけ掘っていって,どんどん前へ進んでいった。そこ だけしか掘っていないことになる。 上も正面も掘らないといけない。 ・ すぐには掘ることはできない。1つのところを掘るのに,そうとう疲れると思う |
説明3 今,裕樹君がやったように,当時の人たちは,手作業でこの工事を進めて いったですね。次は,このトンネルを掘るのに,どんな道具を使ったか。ま た,そのときの工事の仕方はどうだったかを考えます。 指示4 教室に戻りなさい。 |
指示5 では,どんな道具を使ったのか,ノ−トに道具の名前を書き出していっ てもらいます。 次のように書いていきます。(下のように板書) | ||
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《工事に使った道具》 @ C F A D G B E H |
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時間は,2分です。 |
《工事に使った道具》 @ もっこ C み A くわ D じょれん B またぐわ E かけや |
発問3 実は,あと2つあるのです。絵では書かれていませんが,P81のどこ かにそれがのっています。 さあ,どこでしょう。 |
発問4 では,それぞれの道具は,どのように使われたのでしょう。 指示6 こんなときに,このように使われた,ということを,グル−プになって 考えます。(2回くり返した)(『こんなときに,こう使った』と板書) では,グル−プを作って,話し合いなさい,時間は2分です。 その場で実際にやってもいいです。 |
説明4 残り時間3分となりました。残念だなあ。ここからが,おもしろいのに なあ。 今まで,「トンネルの大きさ」を考えたり,「道具の使い方」を考えた りしてきたけど,ここからがおもしろいのです。 この2つのことをもとにして,今から考えることがとってもおもしろい のです。 今までのは,実は,それまでの前置きなのです。ここからが本番なので す。 |
指示7 では,簡単なものからやってもらいます。 実際に使い方を体でやりながら,「こんなとき,こう使った」というふ うに説明してください。 では,くわからやってもらいます。 |
発問7 裕樹君は,今もっこの両方に「土」を積みましたね。 積んだものとして,他にどんなものが考えられますか。 |
もっこの両側には,いろいろなものが積まれたであろう。そして,それはある程 度の量が積まれると,持ち上げる際,また持ち運ぶ際,相当な重さになったことで あろう。肩にズッシリとくる重さだったと想像できる。 ところで,土でも十分な重さであろうが,これが砕けた岩や小石だとすると,そ の重量感は,もっと増したはずである。それを積んで持ち上げたとしたら………, と積まれるモノが発表されるたびに,その重量感を想像したのではないか。 つまり,この発問をすることにより,そのような思考が促されることを期待し, 手作業や肉体労働の苛酷さをより強く実感させることできると思ったのである。 |
発問8 裕樹君にもっこの使い方をやってもらいましたが,そのやり方は,あれで よかったでしょうか。 十分だと思った人?(なし)やり方で意見のある人?(多数) では,意見のある人は起立しなさい。 |
説明9 今みんながやったように,当時の人たちは,全て工事を手作業でやった んですね。 発問9 では,当時の人になってみてください。この工事,次のうちどうだったと 思いますか。 1 とても大変だった 2 少し大変だった 3 そうでもない |
発問10 では,どんなことが大変だったと考えられますか。 指示8 3つ以上考えて,ノ−トに書きなさい。 こんなときに,こうなったとか,こうだったとかいうように,できる だけ詳しく考えます。時間は5分です。 |
1 手作業だったから,つかれたかもしれない。 2 シラスだから,雨がふったとき,かべがくずれてやりなおしになったと思う。 3 つるはしでいわをけずっているときに,いわがなかなかわれなくて大変だった と思う。 4 山の中の遠くへ入ったら,岩を運ぶのがつかれたと思う。 5 岩を運んだら,きん肉つうになった。 6 大きい石を運んだら,足に落ちたりした。 7 のみでくぎをうつときにはずしたら,手をいためた。 8 つるはしで手をすべらせ,足にささった。 9 山という高いところでの工事だったため,空気が少なくいきがやりにくかった 10 石にこけて頭をうつ。 11 石が落ちてきて,ふみつぶされる。 12 けがをしたかもしれない。 13 死人が出たかもしれない。 14 きん肉つうになったかもしれない。 15 人がすくないから大変だったかも。 16 入口がうまってしまったときがあったかもしれない。(がけくずれなど) 17 こう水だったときが大変そう。 18 ほりすぎて,こわれたときもある。 19 もっこの人が入口まで持っていって,また来るのが大変そう。(トンネルは長 いから) 20 トンネルの中は,真っ暗だから工事をするのが大変そう。 21 岩が落ちてきたら,大変そう。 22 岩がくずれて,死人が出ることがあったかもしれない。 23 土にシラスがまざっているから,どしゃくずれがあり,工事がふりだしにもど ったかもしれない。 24 とくにこう水のとき,水が急に出ておぼれて死にそうになった人がいたかもし れない。(用水路工事) 25 シラスはかんたんにくずれるから,できてもくずれるときがあったかもしれな い。 26 雨の日に,工事でくずれたかもしれない。 27 けがをしたかもしれない。 28 くずれだしたら,一気に全部くずれだして,死人がたくさん出たかもしれない 29 道具のつるはしを思いっきりふって,後ろに人がいて当たって死んだかもしれ ない。 30 道具をトンネルまで入れるのが大変だったかもしれない。 31 水がいきなり出てきて,おぼれて死んでしまう人がいたかもしれない。 32 風の強いときは,ほこりやすなが飛んできて目がいたかった。 33 もっこでかたがはずれそうだったかもしれない。 34 つるはしをうちつけるとき,手がしびれたかもしれない。 35 ランプが消えたら,何も見えなくなってしまったかもしれない。 36 朝起きて,工事をかいさんしたところまでまた行くので,体力を半分とられた ことがあったかもしれない。 37 工事をしていると,いわが落ちてきたかもしれない。 38 雨がふったらシラスが流れて,また最初に(工事が)もどってしまったかもし れない。 39 つるはしを使ったときにつるはしのはしが人に当たって,けがをしたかもしれ ない。 40 どうしてもこわれないいわがあったから,そこで手まどってしまったかもしれ ない。 41 急に雨がふってきたら,にげるのが大変だったかもしれない。 42 石や岩がかたくてほるのが大変だったかもしれない。 43 もっこにのせた石を持つのが重たかった。 44 重たい岩や土をもっこで300mぐらいのトンネルの中から,300mぐらい 歩いて大変だったかもしれない。 45 雨や台風で,トンネルの中がくずれて大変になった。 46 人がけがして,人数が少なくなり,(人手が足りず工事が)大変だったかもし れない。 47 使われる道具がこわれて大変だったかもしれない。 48 小っちゃいことから大きなことまで,きちんとしないといけないから大変だっ た。 49 家から坂をのぼって,何キロもはなれているトンネルまで行くのが大変だった かもしれない。 50 あなをほっていくと,目にごみが入って,大変だったかもしれない。 51 おじさんたちがほっているとき,いわが足に落ちてきてけがをした。 52 くわやまたぐわ類でけがをしたこと。 53 いわや石などがたくさんあって,工事がしにくかったこと。 54 いわや土をもって行くとき,とても重たかったこと。 55 すべて手さぎょうだったので,とちゅうで道(ほる所)をまちがえたこと。 56 何年もかかっから,ふくがぼろぼろになったこと。 |
説明5 さっき,真澄さんが「死んだ人もいるのではないか。」ということをい いました。このことについて,少し考えてみます。 発問9 さて,工事をしていて,死んだ人や病気になった人がいたでしょうか どうでしょうか。 |
1 苦労の中でも,より深刻な問題,つまり工事が原因による「死」や「病気」へ 考える局面を限定する。 2 1により,子どもの思考は「質的な広がり」が促されるであろう。 3 1,2のことから,児童は工事の苦労をより強く感じることになるであろう。 |
《病気になった人について》 @ 工事がとても大変だったので,それがもとで,胃潰瘍になり,胃に穴が開い た人もいたのでないか。(精神的にまいってしまった。) A 工事が何年も続いたと思う。それがもとでつかれがたまり,とうとう病気に なったのではないか。 B トンネルの中は,空気が悪かったかもしれない。あまりよくない空気をすっ て,病気になった人もいたのでないか。 C その他 《死んだ人について》 @ がけくずれなどで下敷きになり,それで死んだ人もいたのではないか。 A つるはしなどが顔に当たり,打ち所が悪くて死んだ人もいるのではないか。 B その他 |
説明6 そんなこともあって,工事から離れていく人もいたんですね。 でも,野井倉の人たちは,この工事をあきらめない。 そして,野井倉の台地に初めて水が引けたのが,工事が始まってから約60 年後のことでした。20歳だった甚兵衛さん,そのときには80歳になって いました。 出来上がるまでの60年間,みんなが言ってくれたように,大変なことが たくさんあったでしょうね。いや大変なことの連続だったかもしれない。 ここまで,甚兵衛さんたち野井倉の人たちを頑張らせたのは,何だったの でしょうね。(しばらく間を置く) では,その後野井倉台地がどう変わったのかを次の時間に勉強します。 |
工事が終了するのにかかった期間を,「60年という時の長さ」と「人間の歳の推移 (20歳から80歳に)」の2つ言い方で示すことにより,児童の苦労の感じ方の強度 は増すであろう。 それは,「あんな苦労が60年もあったのか。」また「20歳だった甚兵衛さんが, 80歳になるまで,工事は続いたのか。」と,当時の人たちの苦労を,時の長さに乗せ て感じることによる。 これにより,子どもたちは,野井倉台地の開発の苦労について,それぞれの感じ方に |