『虹の家』のお風呂の設計にあたっては、一番悩んだところであります。市内には「大理石の大浴場」とか「天然温泉のお風呂」など鹿児島らしいキャッチフレーズで宣伝されているデイサービスも少なくありません。
 それに比べて、私たち『虹の家』は沸かし湯ですし、大理石の浴槽でもありません。
 しかし、私たち『虹の家』のお風呂は、障害の重い方でも安心して入浴できるお風呂をめざそうということで、生活リハビリ方式の浴槽を参考に「三人浴槽」ひとつと「一人浴槽」ふたつを設置しました。
 三人浴槽は仕切り板を使用して2対1の使用が可能です。障害の重い方と、比較的ADLの高い方が同じ浴槽でおしゃべりをしながら入浴していただけるよう設計しました。
 一人浴槽は2タイプあり、標準体型サイズと小柄な女性向けタイプとなっています。
 今回の『虹の家』の浴槽は、深さ55センチの半埋め込み型浴槽。浴槽の縁が40センチの高さで、ちょうどいイスの高さと同じです。浴槽の横に入浴台を置くことで、可能な限り利用者さんに残存機能を使って入浴していただけることを想定しています。
 また、3タイプとも設計を変えることで、さまざまな利用者さんの状況にあわせて使用したいと考えています。
 入浴は日本人の大切な生活文化です。単に身体の清潔保持のためだけでなく、日々の疲れをいやし、人と人がふれあうコミュニケーションの場だと思います。そんな「お風呂」を実現したいものです。
お風呂について
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           〈三人浴槽〉
仕切り板を使用すると2:1に浴槽内が分割されます。個浴がひとつとゆったりめの浴槽がひとつといいった具合です。障害の重い方と比較的ADLの高い方が同時に入浴を楽しめることができます。
また、寝たきりで硬縮の強い方の場合は仕切り板を外して使用します。
            〈一人浴槽〉
家庭のお風呂に近いサイズの個浴ですが、これが入りやすく介護しやすいとはコロンブンスの卵?
実際、車椅子対応の利用者様も写真のブルーの入浴台に移乗すると、あとは自力で入浴されます。(大浴槽なら二人がかりかな?)
ちなみに隣のお風呂とはプライバシーを配慮してカーテンを設置しています。
ここもポイント!
浴槽の縁は5.5センチで握りやすく、同時にお尻を乗せても体勢が安定することを考慮しました。
また、壁面側を10センチ落とし込むことで右の写真のように手スリ代わりになるよう掴みやすくしています。
3タイプのバスシート(入浴台)は浴槽内の安定に有効です。浴槽の深さが55センチあると小柄な利用者様には少し深すぎることがあります。バスシートを使うことで浴槽への出入りを助け、入浴中は腰掛けることで体勢の安定を保持します。
ADLの高い方には家庭用の椅子とバスマットを使用します。利用者様の要望で準備しました。お風呂の入り方も人それぞれですね。
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もうひとつ重要なことは、脱衣室の広さです。
浴室が広くても脱衣室が狭いと、入浴者の流れが悪くなります。脱衣室は入浴中の人、これから入浴する人、入浴が終わった人の三つの流れが混在します。
できれば浴室以上のスペースが理想です。虹の家の脱衣室は浴室よりも若干狭いのですが、ゆったりめの空間を確保できたと思っています。