野望乱立〜その三〜











漢の偏将軍となった廖影に任せられた兵は新兵ばかりだったが、そのことに関する不満は、廖影にはなかった。
元々、子飼いの兵なども引き連れず、単身やってきた校尉なのだ。
それが将軍に任ぜられ、さらには1万もの兵を「もらえた」ことだけでも十分な厚遇――廖影はそう認識している。
ただし、信頼できる下士官・将校が皆無であることは、少なからぬ問題だった。
一口に1万といっても、廖影一人でその集団の現状を把握することは、不可能に近い。
下士官は部隊の背骨であり、将校は部隊の目にして耳。
効率よく自分の部隊を知るためには、兵たちを直接束ねる下士官、そして下士官たちを指揮する将校たちとの意思疎通が絶対に必要だった。
にもかかわらず、
「身ひとつ」で洛陽にやってきた廖影は、まったくもって初対面の背骨や目、耳でもって、部隊の訓練と掌握を進めなければならなかった。

一方の下士官・将校たちも、彼らなりの問題を抱えていた。
自分たちの大将となった廖影なる者は、身ひとつで涼軍から郭図公則軍へと鞍替えしてきた男。
たとえ、敵方からこちらへ転んできた者とはいえ、廖影が一般的に言う「裏切り者」であることは事実であり、今後、この上官とどのように向き合っていけば良いのか、彼ら自身も決めかねていた。
戸惑いの中でもっと積極的だったのは、「裏切り者の下で戦えと言うのか」という義憤。
廖影をあからさまに白眼視する将校・下士官を数えるのに、両手では指の数が少なすぎる、というのが編成直後の廖影隊の実情であり、つつがない部隊運営など到底望めるものではなかった。
そんな状況を打開するに、廖影は将軍としての地位を振りかざすことはしなかった。
居丈高になることもなかったし、さりとて懇々と、あるいは営々と話して聞かせることもしなかった(元々廖影は、口の上手い方ではない)。
代わりに廖影は、日が昇る前に起き出し、深夜に床に就くまで部隊と供にあった。
将校も、下士官も、そして兵も、常に将を見ている。
そのことを、廖影は知っている。
ましてや自分は、「裏切り者」と称される身であり、横着が許される立場ではない。
廖影はひたすら、「身を粉にして働く」自分の姿を示し続けた。
そして、話を聞いた。
将校たちの話を、そして、下士官たちの話を。
話を聞くことで、現在彼らが感じている部隊の問題点を把握できる。
彼らの人となりも把握でき、場合によっては彼らの戦闘能力すら掴むこともできる。
何より、彼らの大将がどのような男であるか、彼らに伝えることができる。
地味にして、時間のかかる手法ではあるが、それが廖影の現状を打開するに、もっとも効果的なものだった。
少なくとも、自分に反発する部下たちを職権でもって処分し、強圧的に従わせようとするよりは、遥かに。
実際、部隊のために真摯に献身し、部下の話をよく聞く廖影は、次第に下士官・将校たちの受け入れるところとなっている。
もちろん、全ての者たちが廖影を「信頼できる上司」として認めたわけではないが、部隊を預かって1月が経過した現在、下士官・将校の廖影に対する認識の変化と比例するように、部隊の練度も上がってきていた。
兵個々の戦闘能力はまだまだ覚束ず、とても戦力と呼べる代物ではないにせよ、廖影が命令を下した時、集団として動けるほどのレベルには達しつつあった。
実は先日、廖影隊は郭図公則の視閲を受けていた。
緊張で固まっている廖影を尻目に、新生廖影隊の動きを一通り確認した郭図公則は、「ふむ」とだけ漏らした。
そして、廖影に一瞥もくれることなく愛馬に跨ると、そのまま走り去っていった。
気に入らなかったのか?
去りゆく郭図公則に声をかける勇気もなく、アタフタとする廖影に、郭図公則の副官の糜統が言った。
「良かったな、廖影殿」
そう言う糜統は、満面の笑みを浮かべていた。
「あれは、閣下が絶賛される時の癖さ。私も改めて感服した。よくこんな短期間で、ここまで仕上げられたものだ」
絶賛の癖。
あれがか?と廖影は思ったが、その日の夜、司隷校尉府から「兵たちの慰労用」として、百本の酒樽が届いたことを鑑みるなら、糜統の言葉は素直に信じるべきものなのだろう。
廖影はホッとするとともに、郭図公則の温情に喜び、自分が為してきた成果に満足した。
ただし、「誇る」気にはならなかった。
むしろ、皮肉な気分になる。
部隊を掌握するためのこの一連の手法は、廖影が考え出したものではない。
二ヶ月前まで廖影の主君だった男が、試行錯誤を重ねながら身につけたものであり、自分はその傍で見てきたことを、実践しているだけだ。
それはつまり、自分はこれまで、「良き上官」の下で働いてきた、ということでもある。
にもかかわらず、自分が懸命に育てている部隊は、「かつての上官」が従軍しているであろう軍勢を叩きのめすために編成されたもの。
さあさあ、世の者に問う。
廖影なる武人は、「真っ当」と評されるに足る者か否か――。
廖影自身は、その答えを既に出していた。
そして、その答えに後悔はしていない。
自分は、1万に上る部隊を預かる身となった。
夢にまで見た、将軍となった。
一体どこに、後悔するだけの理由がある?
あるいはそれは、自分にそう言い聞かせようとしているだけの強弁なのかもしれなかった。
ただ、今の廖影にとって、最も大切なものが「かつての上官」ではないことは確かだった。
それどころか、今の上官たる郭図公則ですら、ない。
廖影は、自分の部隊が可愛かった。
自分の兵たちが可愛かった。
廖影隊、1万。
これこそが、今の廖影にとっての「全て」だった。



糜統も忙しい日々を送っていた。
多岐に渡る細作団の指揮にあって、最近特に力を入れているのは、許昌への調略だった。
この地にある涼軍が帝都近郊に出現することは、もはや避け得ない未来だ。
そんな軍勢に、悠然と出師の準備をさせてやる理由は、洛陽方にはない。
それに、いざ合戦を迎えた時に芽を出せるよう、様々な種を捲いておく必要もある。
となれば、この都市に存在するありとあらゆるものが、調略の対象となる。
将兵、糧食、馬、武具、そして、民。
これらに対して施せる調略は、離間、埋伏、扇動、工作、情報遮断と、いくらでもある(もちろん、こちらにとって必要な情報収集も行いながら、だ)。
糜統は、思いつくあらゆる調略をこの都市に向けて放っていた。
ただし、彼の地にある涼筆頭軍師・希代之も、間抜けではない。
こちらが打ってくるであろう調略を読み、とっくに防御の手管を用意しているため、残念ながら果々しい成果が上がっているとは言いがたい。
それどころか、最近では細作の許昌侵入ですら、かなりの難事となりつつあった。
また、「攻め」だけを楽しむ余裕は、糜統にもなかった。
希代之は希代之で、受身で終わるつもりは毛頭ないらしく、最近、明らかに涼方の工作員によるものと断定される風聞の流布や放火が、糜統の元に報告されるようになっている。
早い話、涼との戦闘は、水面下においては既に始まっている、ということだ。
(筆頭軍師…………いや、呉嬰。望むところだ)
希代之細作団を束ねる男の顔を思い浮かべ、糜統は戦意を高める。
郭図公則細作団と希代之細作団。
長きに渡って涼の諜報・謀略活動を担ってきた両細作団だが、これを「双璧」と称するには、かなりの憚りがある。
両細作団の対抗意識が、あまりに強すぎたからだ。
「相手を出し抜こう」というライバル心が、互いの実力を高めてきた面は当然あるし、その心理を背景とした活動が思いも寄らぬ成果を挙げたこともある。
しかし、まったく異なる指揮系統の、かつ大規模な細作団が二つも存在することの弊害の方が、日頃見られる傾向としては強かった、というのが現実ではあった。
その弊害に、早い時期から着目していたのが、大史農の公孫師である。
ただでさえ、細作の育成には時間がかかり、金もかかるというのに、一本の弓を二人で引き絞る必要がどこにある?
国庫を預かる身として、公孫師はまず、そう考えた。
次いで、他の将たちに比して、隔絶した地位にある七同志たちの力を削ぐという、公孫師が当初から抱く目的を遂行するためにも、両細作団を何とかできないか、という考えが浮かんだ。
郭図公則と希代之は、永安義挙から10年を経ても、互いに理解しあうことも、協調し合うこともなかった。
本来ならばそれは、公孫師にとって歓迎すべき関係だが、上司の対立をそのままなぞるように、両細作団の細作たちも互いに強いライバル心を抱くようになり、それが高じて細作たちの忠義がその大元たる涼王ではなく、郭図公則と希代之の方にそれぞれ向かっているという事実は、公孫師には少なからぬ問題と映った。
かくして公孫師の頭の中には、「郭図公則・希代之両細作団の合併」と、「新生細作団を涼王直轄組織に編入」という案が浮かぶに至る。
合併させたなら、細作団の効率のよい育成・運営が可能となる。
涼王直轄組織としたのなら、細作たちの忠義の方向転回が果たせる。
何より、郭図公則と希代之から細作団を取り上げれば、連中の力を大きく削ぐことができる。
「最高の展開」、と考えた公孫師は、さらに強欲なことに、「涼王直轄」の名の下に、自分がこの新生細作団を掌握することすら夢想していた。
しかし、この最高のアイデアが、涼王に具申されることはなかった。
さすがの公孫師も、郭図公則と希代之から細作団を召し上げるための具体的な手段にまでは、思い至ることができなかったのだ。
無論、涼王がこの案を「是」とし、合併命令を下したなら、という期待もないわけではなかった。
だが、当時、正副軍師に対する涼王の信頼は絶大であり、こんな案を具申したなら、かえって自分が不興を被ることは明白だった。
かくして、「郭図公則・希代之細作団の合併」というアイデアは、細作たちはもちろん、郭図公則らにも伝わることなく、公孫師の頭の中だけで「廃案」となった。
そして、今である。
これまで、「涼」という同じ旗を仰いできた郭図公則細作団と希代之細作団は、異なる旗を仰ぐに至った。
両者はもう、「ライバル」ではない。
「敵」だ。
それぞれに強烈な個性の総指揮官を頂き、互いの総力を挙げて、明確明瞭な「敵」として争っている。
だから、糜統も気合いが入る。
負けるわけにはいかない、と心も引き締まる。
細作たちに対する糜統の命令と要求はこれまで以上に高くなり、糜統の執務室に呼び出された細作たちは、常に胃の痛みを堪えながら、青い顔で入室するに至っている。
そんな糜統を、郭図公則細作団に所属する細作たちは、「小司隷校尉」と称していた。
1月ほど前、郭図公則が司隷校尉に昇進するに及び、それまでの「小太守」の渾名から格上げとなったものだ。
細作たちは、司隷校尉と小司隷校尉を、「冷徹さ」という共通項でもってひとくくりに認識していた。
何があっても慌てることなく、誰に対してもひたすら強面。
命令を下す時は、短く、明瞭で、冷たい。
失敗を犯した細作に処罰を下す時は、その冷気がさらに下がる。
ある細作が「息が詰まりそうだ」と評するのは、細作たちにとっての上司二人が、かくも性格を同一のものとしていることに起因する。
もちろん細作たちは、郭図公則への忠義を抱いているし、その懐刀たる糜統への敬意も抱いてはいたが、近寄りがたい雰囲気を存分に発する上司が二人もいることが、細作たちの胃痛の原因となっていたことは確かだった。
一方の糜統は、そんな細作たちの嘆きを耳にしたなら、間違いなく満足の笑みを心中で浮かべたことだろう。
冷徹にして恐ろしい上司と部下たちから見做されること、すなわち、郭図公則の「ような」者として他者から認識されること。
糜統の日頃の振る舞いは、まさしくそうありたいが故の努力の産物なのだから。
郭図公則の冷徹さが生来のものであるのに対し、糜統のそれが後天的なもの、さらに言うと、郭図公則をお手本としたものであるとは、細作たちも気付いていない。
常に冷静、冷徹、冷厳。
それこそが糜統の憧れる人物像であり、その最高のお手本が、郭図公則だった。
しかし最近、随分地金が出るようになってしまったとは、糜統自身が自覚するところでもある。




━━叛乱発生から五十三日、洛陽。廖影邸

廖影の杯に酒を満たしながら、糜統は言った。
「馬超軍は、ここには来ない。やはり、武関だ」
「確定情報なのだな?」
重要な情報に、廖影の目が光った。
この瞬間、波々と注がれた杯も、廖影の意識からは消え失せている。
その酒が、庶民の喉を潤すことは絶対にありえない、最高級品であることも。
「複数の線から確認できた。間違いない」
糜統は断言した。
許昌に潜伏させた細作、馬超軍の一兵士に身をやつす細作、そして、希代之の補佐官として許昌にある、郭嘉の参謀・翻武からの密使。
いずれからもたらされる報告も、先日許昌を発した馬超軍4万が、長安の防波堤・武関を目指していることを示していた。
安堵の吐息を漏らした廖影は、そこで杯のことを思い出し、一気に乾かした。
「良かった、と言っていいのではないか? 先鋒・馬超将軍、本隊・涼王。これらが帝都に押し寄せてきたのなら、さすがに面倒なことになっていた」
「それは何とも言えんさ。馬超がこっちに寄せてきたなら、がら空きとなった宛を郭嘉殿に突かせる、という手も取り得たのだから。連中もそれを嫌って、宛は長安、許昌は洛陽と、それぞれ侵攻先を分担させたのだろうよ」
「なるほど、なるほど」
糜統の説明に一々納得したように頷いた廖影は、糜統の杯に返礼の酒を注いだ。
「武関の守備は、郭嘉殿自ら?」
「閣下と郭嘉殿は、言うなれば同盟の間柄だから、こちらから指示や命令を出すことはない。だが、多分そうなるだろうな。錦馬超を迎え撃つに、郭嘉殿以上の人材は長安にはいない」
「では、もっとも我らが注意すべき涼王の軍は?」
「出師の準備は、大方整ったらしい。それなのにまだ、動きがない。恐らく…………」
「恐らく?」
「馬超軍はいったん宛に入り、体制を整え直してから武関に向かうそうだ。許昌の軍も、それに呼応して動くのではないかな。つまり、長安侵攻と時を同じくして、洛陽侵攻に及ぶ…………二正面同時侵攻だ」
「ほう!」
廖影は、一層目を輝かせた。
二正面同時作戦。
武の道を進む者で、これに心を躍らせぬ者はいない。
たとえ、侵攻を受ける側であったとしても。
「何とも雄大な話だ。漢の正副都を巡る、二つの戦役…………その一端に名を連ねることができるとは、武人として最高の栄誉だ」
廖影は、無邪気に相好を崩した。
本心から喜んでいる廖影をチラリと見て、糜統は視線を落とした。
杯にはまだ、波紋が残っている。
飲まんのか?と声をかけられた糜統は、曖昧な表情を浮かべた。



廖影を前にする時、糜統は必要以上に気を遣う人間と化すようになった。
(すっかり、地金が出るようになってしまったな)
苦い思いでそう自覚する糜統は、自分がそうなってしまった理由を知っている。
廖影に対する後ろめたさ、これに尽きる。
廖影は自分自身の判断でもって、業βから上党を経て、単身洛陽へとやってきた。
だが、そうなるよう唆し、道を作ってきたのは、糜統だ。
さらに、廖影が全てを捨てて郭図公則軍に参陣してきたまさにその日、涼王は洛陽からの脱出を果たしていた。
それがどれだけ涼の残党を勇気づけ、郭図公則軍を苦境に追い込んだか、今さら言うまでもない。
この事実が喧伝されるに及び、涼内における涼からの離反の動き、あるいは郭図公則軍への同調の動きは、最低限のものに留まり、加えて朝廷と郭図公則の間に生じかけていた溝は、もはや修復不可能な幅と深さに広がるに至った。
そして、まんまと許昌へ逃げおおせた涼王は、着々と帝都奪還の動きを進めている。
不可避となった涼軍との戦いに敗れたら、それでもって、郭図公則軍は終わりだ。
弘農や上党、それに燕領など、逃げ込める都市はまだ残っているにせよ、一度敗れた「裏切り者」を支えようとする酔狂な者はいないし、何より兵を集められない。
すなわち、再起の余地がない。
涼王の暗殺に成功していたのなら、そんな不安に怯える必要はまったくなかった。
郭図公則は自分に従わない旧涼の都市をどの順番で刈り取っていくか、その計画立案に頭を悩ませる「贅沢」を楽しんでいただろうし、廖影にしても、大陸の主導権を握る勢力の将軍として、希望と期待に胸を膨らませていたはずだ。
しかし、現実は違う。
郭図公則は今、許昌発の軍勢の「迎撃」準備に全力を上げている。
全てを捨てて洛陽にやってきた廖影は、「裏切り者」の汚名を着たまま戦場の骸となる可能性を秘めた戦さに臨もうとしている。
これら愉快ならざる現実は全て、涼王の帝都脱出に起因する。
そして何より、涼王の帝都脱出は、自分の失態をその大元の原因としている…………。
あの日の夜から50日余りが経過した今なお、糜統の胸中から悔いの情が消え去ることはなかった。
糜統が渾身の力を込めて突き刺した、大剣の先。
病で伏せっていたはずの涼王がそこにいないとわかったあの瞬間を思い出すたびに、糜統は叫び声を上げたくなる。
いや、実際に上げているようだった。
夜半、しばしば糜統は、あの瞬間の夢を見た。
夢はいつも、豪奢な布団がかけられた寝台に、自分が大剣を突き刺した直後から始まった。
見える光景も、常に同じだった。
夢の傍観者である糜統は、部屋の斜め上方から眼下の出来事を見下ろしていた。
涼王がいない!
激しく狼狽する自分がいる。
布団を跳ね上げ、寝台の下を覗き、眼球が飛び出るほどに目を見開き、部屋中を探し回っている。
やがて、壁の隅に半開きの小さな扉を発見する。
抜け穴。
「涼王が逃げたぞ!」
ほとんど半狂乱になって叫ぶ、自分。
「捜せ! 何としても見つけ出せ!」
その時叫んでいるのは、夢の中の演者たる眼下の糜統だけではなかった。
俯瞰して見下ろしている糜統もまた、叫んでいた。
「涼王を捜せ! 殺してもかまわんっ!…………」
そんな自分の絶叫で、目が覚める。
全身にグッショリと汗をかいて。



廖影に酒を注いでいたのは、ほとんど機械的なものだった。
一方の廖影は、それをありがたそうに口へと運んでいる。
安酒を浴びるように飲み、ひたすら大騒ぎするだけの涼王やその親衛隊長と異なり、廖影はいい酒を、ゆっくり飲むことを好む。
「本当にこいつは効くな」
顎を上げながら、廖影。
舌で味わい、喉で味わい、胃で味わう。
廖影は、それこそが良い酒に対する礼儀と信じて疑わない。
親衛隊長・曹表と何度か同席したことがある廖影は、あの男の酒の飲み方を、酒に対する冒涜と認識している。
糜統は、そんな廖影に頷いてみせいた。
ただ、やはりそれも、機械的なもの。
「どうした? 今宵は進まぬな」
酒瓶を持ち上げた廖影が、笑みを投げかけてきた。
糜統はその笑みに、正面から応じることができない。
確かにこの男は、郭図公則を頼って洛陽へやってきた。
だが、それ以前の話として、廖影は糜統を頼っていたのだ。
しかし、その結果としての現状は、どうだ?
郭図公則軍は、文字通り「負けられない一戦」に臨もうとしている。
負けられない一戦、すなわち、負けたら終わり。
自分はそんな境遇に、この気のいい男を引きずり込んでしまった。
「道連れ」にしてしまった。
その認識が、糜統を息苦しくさせている。
そして、配下の細作たちから「小司隷校尉」と称せられる男を、無駄に小心者とさせている。
(やはり自分は、閣下のようにはなれないらしい)
確かに自分は、細作たちから「冷たい上官」として恐れられるようになった。
それは、糜統にとって快適な見られ方だった。
だが、結局はそれも、精一杯の背伸びに伴う上辺だけのものでしかなかった。
その証拠に、失態のショックから未だ抜け出せず、さらには廖影を抜き差しならぬ苦境へ追いやったことを、かくも悩んでいる。
そんな自分が、「冷たい上官」か。
ハッ、笑わせる。
「糜統殿。何と言うべきかな。まあ、あれだ」
廖影が極めて直接的な言葉を投げかけたのは、廖影の注ぐ酒が、糜統の杯を半分ほど満たした時だった。
「余り気にするな。前を向いて進んでいく。我らには、それしかあるまい」
常と変わらぬ廖影の口調だったが、糜統は危うく、盃を取りこぼしそうになった。
驚いて、声の主を見る。
廖影の目には、憐憫も、怒りもない。
それでもってようやく糜統も、剥がれた地金に気付いていたのが、自分だけではないことを悟った。
「迂闊だった」
糜統は照れ隠しに苦笑してみせた。
「考えてみれば、貴殿もまた、長きに渡って七同志の副官として務めてきた者だったな」
どうやら自分は、廖影を過小評価していたらしい。
膂力に優れ、兵を率いるに優れた武人。しかし、謀略には向いていない。
それがこれまでの糜統の廖影評であり、大筋においてそれは正しい。
ただ、廖影という男はそれ「だけ」ではなく、糜統が察していない一面も有していた、ということだ。
「そうさ」
廖影も笑った。
「相手が今、何を考えているか、何を感じているか、それを察せぬ者に、そもそも副官職など務まらんよ」
そして、酒を促す。
今度こそ糜統は、自然に盃を差し出した。
妙なもので、自分の苦悩が既に廖影の知るところだったとわかるや、随分気持ちが軽くなった。
もちろん、自分の苦悩の全てを廖影が理解している、とまでは思わないにせよ。
「そうは言っても、気持ちを切り替えるというのも、なかなか難しいものだ」
グイと盃を飲み干した糜統は、配下の細作の誰一人にも見せたことのない表情で言った。
「私は人間だ。人間なれば、失敗もするし、失態も犯す。なればこそ、二度と同じ失敗はせぬと自分に言い聞かせてきたし、失態を覆す働きをしようと努めてきた。だが、今度ばかりは、さすがにな…………」
「あの夜、涼王の屋敷で何があったのか、詳しくは知らぬ。だが、貴殿のような腕利きでもできなかったことだ。他の者に成し得たとも思えん」
「ハハハ。今度、貴殿に何か危機が生じたら、万難を排して手助けするとしよう」
「その時はありがたくお受けするよ」
「だが、あの夜こそが、2年に渡って閣下が巡らしてきた策の集大成だったのだ。もはや過程云々の話ではないし、同じ失敗を繰り返さなければ良い、というものでもない。そもそも、失態など絶対に許されない時と場所において、私は涼王を取り逃がした」
「あの夜、一体何があったのだ?」
「抜け穴があった」
「何だと?」
「涼王の寝室に。屋敷の裏手にある小さな家の庭まで続いていた。私が踏み込んだ時は既に、涼王はそこから逃げていた」
「涼王は決起を察していたのだろうか」
「わからぬが、その可能性は低いように思う。首尾は完璧だったのだ。実際、あの大史農も完全に虚を突かれ、簡単に囚われの身となったしな。何より、涼王はあの日、病となって寝室に伏せっていた。そんな涼王が、決起の報に触れていたとは到底思えぬ」
「では、相手が悪かった、と考えるしかあるまい」
「というと?」
「涼王は、逃げることにかけては天才だ。それに、逃げにおいて神がかった曹表までいる。だいたい、考えてもみろ。その後の大捜索でも、結局涼王を捕えることは叶わなかった。天才と神。こう言っては何だが、貴殿には相手が悪すぎた」
糜統は、思わず吹き出した。
そして、そんな自分に驚く。
相手の冗談に吹き出すなど、何年ぶりのことだろう。
「非常に面白い見方だが、それに安住するわけにもいかん」
大分気が楽になるのを感じながら、そして廖影という男の器の大きさを感じながら、糜統は言った。
「私はそれなりに、自分の能力に自信を持っていた。だが、涼王を取り逃がしたことで、私は無能者となった。正直、しんどいよ」
「それを言うなら、それがしだって不忠者だ」
口元に笑みを浮かべながら、廖影は言った。
「10年以上に渡って仕えてきた主君を裏切った。それがしごときに伝が建てられるとは思わぬが、廖衛将軍の伝にならば登場することもあるだろう。そこでそれがしは『恩を仇で返した裏切り者』と紹介されるわけだ。いやいや、実に気が滅入る」
「無能者と不忠者が、こうして酒を酌み交わしているわけだ」
「どっちがマシだ?」
「それは究極の選択だな」
「その通り。しかし、その評を覆す方法があるとは、貴殿も知っているはずだ」
「涼軍を撃退する。そして、郭図公則様を歴史の勝者とする」
「わかっているなら、笑って飲め。この酒は、苦虫顔で飲むにはもったいなさ過ぎる」
その瞬間、配下の細作たちから「小司隷校尉」と称される男の涙腺が、緩みかけた。
慌てて目を見張って落涙を堪えると、糜統はやや乱暴に、「注げ」とばかりに杯を突き出した。
糜統はこれまで、廖影を「策の駒」と見ていた。
だが、そんな見方は完全に消え失せている。
自分を「救って」くれた者を駒と見做す気風は、小司隷校尉と揶揄される糜統であっても持ち得ない。




━━叛乱発生から五十四日。洛陽、河南

「左の森に敵の伏兵! 多いぞ!」
廖影は叫んだ。
「弓隊、敵に向かって横陣! 急げ!」
行軍中だった部隊は、突然の命令に慌てふためいた。
兵同士でぶつかり合いながら、何とか将の命令に従おうと右往左往している。
これに、将校や下士官たちの怒声が降り注ぐ。
「何をしておるか! 早くせい!…………こら、おまえ! どっちに走っておる! 敵はあっちの森だぞ!」
敵軍は、距離5里(2キロ)先の想定。
こちらより多勢で、こちらの脇腹を貫くべく、突進中。
(三射は無理だな)
忙しく周囲に目をやりながら、廖影は冷静に判断した。
弓をつがえている兵は極一部。
残りは自分の立ち位置を捜すことで精一杯だ。
せいぜい、二射。
第二次業β攻略戦に従軍した当時の廖衛隊なら、軽く五射はこなしただろうが。
寂寥の思いとともに、廖影は部隊にさらなる試練を課すことに決めた。
「右の丘からも伏兵!」
廖影の怒鳴り声に、兵の多くが恐慌に駆られた。
かまわず、続ける。
「宗文! 左翼の指揮は御辺に任せる! 右におる者、槍構え! わしが指揮する!」
「御意!」という張りの声が聞こえた。
うん、やはりあいつは使えるな、と廖影は配下の校尉の顔を思い浮かべる。
「右翼、鬨の声を上げよ! 続け!」
馬上の廖影は、槍を振り回すと、一気に走り出した。
しかし、右翼の兵たちから上がる喚声は、廖影が期待したほどの音量ではない。
大将の動きに機敏に反応する兵の数も同様。
(これでは、簡単に敵中に孤立してしまうな)
苦笑を浮かべる気にもならず、廖影は思った。
兵が素早く動けるよう、更なる訓練を施すことはもちろんだが、自分が突っ走る頃合も、もう少し考えなければならないようだ。
そう考えた時、後方から、矢を放つ音が聞こえてきた。
振り向くと、数百本の矢が飛んでいくところだった。
少ない。
かつ、矢の方向もバラバラだった。


実際に部隊を動かす。
それこそが、部隊の調練でもっとも効果を望める手法だ。
兵たちは、将校や下士官がどのような声で、そしてどのような顔で命令を下すか、その匙加減を知ることができるし、将校や下士官は、自分たちの命令に兵がどのような反応を示すのか、その目で確認できる。
これによって把握できた不手際や不徹底を、素早く矯正する。
その繰り返しを経て、部隊は有機的に動く戦闘集団となっていく。
洛陽の南・河南でその調練を行っているのは、廖影隊の中核となる3000の兵たち。
戦場では、何が起こるかわからない。
突如発生した事態に将が下す命令に対し、兵がどれだけ機敏に、そして的確に動けるか、把握しておく義務が将にはある。
だから廖影は、様々な命令を唐突に発した。
その都度、兵も下士官も将校も、大将の意を部隊の形として実現すべく、動き、指揮し、声を枯らす。
その様子を廖影は逐一観察し、問題点を頭の中に書き込んでいく。
編成から一月程度という点を考えるなら、廖影隊の動きはかなりいい。
しかし、
実戦ではまだまだ使えないというのが、現実ではある。
あと2ヶ月、訓練期間がほしいところだった。
それが叶わぬなら、1ヶ月でも。
ただ、許昌の涼軍の出撃が秒読み段階に入っている今、それすら贅沢な望みとなりつつあり、さすがの廖影も、焦りを感じるようになっていた。
この程度の部隊で対峙したら、かつての主君もさぞやがっかりすることだろう。
いや、これ幸いとばかりに、郭図公則軍の一角を切り崩すとともに、裏切られた怒りの発散も果たそうとするかもしれない。
廖影は、かつての主君・廖衛が自分に対し、激しい怒りを抱いているであろうことに、一片の疑いも持っていなかった。
自分を完璧な人間と自惚れるような性分は廖衛にはないが、それでも廖衛が、良き上司たらんと努めていたことは事実だし、現実に廖衛は、良き上司だった。
それなのに、裏切られた。
しかも、信頼する副官が出奔した先は、よりによって廖衛が毛嫌いする郭図公則だった。
廖衛にとっては、二重の屈辱に違いない。
自分と郭図公則が天秤にかけられ、郭図公則の方に重きが置かれた形となるのだから。
来る決戦の時、郭図公則軍の中に翻る「廖」の軍旗を見つけたら、廖衛は感情の昂ぶりを押さえられないだろう。
怒りに満ちた廖衛が突進してくることについては、廖影も既に割り切っている。
廖衛が怒って当然のことを仕出かしたのだから。
しかし、現在の練度の部隊でもって、かつての上官の部隊と対峙したいとは、廖影も思わない。
「わしを裏切った結果、こんな部隊を得たのみか」
廖衛からそんな侮蔑を受けることが、廖影は怖かった。
怒りは、いい。
だが、軽蔑されたくない。
それが廖影の本音だ。


北の方から軍勢が現れたのは、部隊に命じた小休止をそろそろ切り上げようとしていた時だった。
旗印を確認して、廖影は眉を潜める。
それは、洛陽軍の一翼を担う、潘璋の部隊だった。
「おう、廖影。精が出るな」
近寄ってきた潘璋が、好意とは無縁の表情で語りかけてきた。
「はっ。先輩方の足手まといとならぬよう、励んでいるところにございます」
「謙虚でよろしい。現状を正確に認識しているところは、なおよろしい」
潘璋が口にしているのは、誉め言葉だった。
だが、やはり表情には、賞賛の情など皆無。
この男は、関平の首を廖影に「横取り」されたことを、未だに根に持っている。
「今日は、司隷校尉が我が隊の練度を視察することになっておる」
潘璋は言った。
「間もなくここに来るはずだが、せっかくの機会だ。模擬戦をせぬか? 互いの部隊の問題点を洗い出すに、それが一番手っ取り早い」
廖影は、口から発せられようとした呻き声をかろうじて押さえた。
模擬戦は、自分の部隊を二つに分けて行うより、勝手の知らない他の部隊と対峙する形で行った方が遥かに実戦度が高く、効果的だ。
その意味では、一刻も早く部隊の練度を上げようと腐心する廖影にとって、願ったり叶ったりの申し出といえる。
しかし、相手が潘璋となると、廖影も二の足を踏んでしまう。
潘璋が模擬戦を申し出てきたのは、「互いの部隊の練度向上」などという麗しい成果を求めてのことではない。
郭図公則の面前で廖影隊をこてんぱんにすることで、廖影に恥をかかせようという、早い話、「意趣返し」に過ぎない。
そうでなくとも、潘璋隊は洛陽軍にあって、郭図公則隊に次ぐ最精鋭部隊。
散々に蹴散らされた結果、兵たちが自信を失ってしまっても困る…………。
だが結局、廖影はこれに応じる旨を伝えた。
これぐらいのことで自信を喪失し、今後の調練に齟齬を来たすような兵なら、最初から外してしまった方が良いし、何より兵たちに、部隊としての現状をその傷の痛みでもって把握させることは、今後の調練で必ず意味を持ってくる。
郭図公則の前で恥をかく?
それがどうした、部隊はおろか、俺だって将として駆け出しなのだ。
今さら笑われて困るようなことがあるか。
同時に、潘璋への反発もある。
「窮鼠猫を噛む」という。
鼠の意地、見せてやろうではないか。
だが、至極当然の結末ながら、廖影は鼠の意地すら見せることができなかった。
司隷校尉・郭図公則が見下ろす平野にて、廖影隊は潘璋隊に、木っ端微塵に粉砕された。



郭図公則、潘璋、廖影、糜統。
4人は他に伴も護衛もつけず、河南を疾駆した。
やがて、郭図公則が手綱を引き、全員がその場に停止する。
面前には、広大な麦畑があった。
まだ収穫に適さぬ時期ゆえ、全体的に青みがかっているその周囲には、なだらかな丘を含んだ平地が広がっている。
「決戦の地は、ここだ」
ゆっくりと周囲を一望してから、郭図公則は言った。
「あの麦を収穫できねば、来年の今頃、帝都は餓死する者で溢れよう。よって、あれを死守すべき我らは、籠城の手を取ることはできない…………表向きは、そういうことになる」
「朝廷に対する表向きならば、それで十分でしょう」
潘璋が冷笑を浮かべた。
この男、現在陳留にいる黄忠とは違った意味で、郭図公則に対しても容赦ない。
「帝都の城門に賊の衝車が突っ込むような事態となったら、恐慌に駆られた朝廷が何を仕出かすか、見当もつきませぬからな。お察しいたしますぞ。司隷校尉ともなれば、気を遣うべき方面も、実に多岐に渡る」
軍事の総司令官は、一人いれば十分だ。いらぬ口出しは、戦局に悪影響を及ぼすばかりだからな」
郭図公則は潘璋の指摘を、婉曲的に認めた。
洛陽の城壁は高く、厚い。
城内に残る兵も、10万を超える。
その点から考えるなら、籠城した方が圧倒的に有利ではある。
いくら涼側が帝都奪還を望んだとしても、力押しなどいたずらに兵を失うだけであり、結局は城を遠巻きに取り囲むほかないのだから。
何より、戦闘の長期化は、涼軍にとって確実に不利だ。
襄陽の関羽や西涼の馬騰など、反涼の姿勢を示した者たちの蠢動が怖いし、一時の和約を結んだとは言え、魏がいつ許昌に攻め込んでくるかとて、知れたものではない。
しかし、長期戦が望ましくないのは、郭図公則も同じだった。
洛陽のすぐ外に敵がいるという状況は、中に潜む皇帝以下朝廷の者たちの激しい動揺をも引き起こす。
朝廷と郭図公則の関係が、強い信頼関係とは対極なものであることからも、そんな事態は戦闘指揮における朝廷の干渉を招く恐れがあった。
何より、希代之が計略によって、城を内側から崩そうとしてきたら、郭図公則としてもかなり厄介なことになる。
ただ、郭図公則が、戦闘に限定すれば有利なはずの籠城策を自ら捨てる理由は、それだけではなかった
籠城戦でこちらが能動的に軍を動かせない間に、北の勢力・燕が魏に侵略されては元も子もない――。
口にこそ出さないものの、それこそが郭図公則が籠城策を捨てた、最大の理由だった。
郭図公則は、現在の燕公・袁譚の人となりを知らない。
義父の下で細作の修練に明け暮れていた頃、袁紹の長男を見かけたことは何度かあったが、言葉を交わしたこともない。
そんな袁譚に、郭図公則が心からの忠義を抱く必然性はなかったが、それでも郭図公則の義父・郭図が、袁譚への忠誠を誓っているという事実は、義父への孝を貫徹せんとする郭図公則にとって如何ともしがたいものであり、それが燕公の安堵も考慮に入れた歪な戦略を郭図公則に強要していた。
その一方で、いち早く袁譚を洛陽に入城させた上で、じっくり涼との対決に臨むという選択肢は、最初から郭図公則の排除するところとなっている。
父・袁紹から業βを含む8つの都市を引き継ぎながら、あっという間にその半分を魏に奪われた袁譚に、総指揮官としての力量を期待するほど郭図公則はお人よしではない。
叛乱を起こした直後の困難極める舵取りを要する洛陽にそんな主君を迎え入れるなど、郭図公則にとって悪夢以外の何物でもなかった。
養子のそんな懸念は、義父の理解するところでもある。
だからこそ、「燕公の洛陽入城は、
洛陽周辺の地歩を磐石なものとしてから」という合意が、郭図公則と郭図の間で取り交わさたのだ。
郭図公則は、そんな義父の譲歩に応えなければならない。
燕は魏に対し、柔らかい横腹をさらけ出す位置関係となっている。
あまり時間はない。
曹操が燕侵攻に及ぶ前に、一刻も早く涼軍を撃退することこそが、今の郭図公則にとっての至急課題だった。



「あの麦畑が、我らにとって貴重なものであることは、希代之も当然知っている」
燕のことはおくびにも出さず、郭図公則は言った。
あれを質とすれば、我らを城から引きずり出すことができ、合わせて厄介な城攻めも最低限のものに終わらせられる、とな。だからこそ、収穫前に滞陣を完了すべく、出撃準備に躍起となっているのだ。だが、それはこちらも同様である。我らにとってあの麦畑は、さっさと涼軍の出撃を促し、さっさと決戦を終わらせるための餌だ
軍司令官はまず、自分の望む時期、望む場所で戦闘を行うことに腐心する。
しかし今回に関しては、敵味方双方が、早期の決戦を求めている環境にあり、その点、楽ではあった。
「仰ることはわかりますが、あの麦畑を守ることは、極めて困難なのではありますまいか?」
模擬戦で潘璋隊にしこたま痛めつけられ、自身も体中に痣を作っていた廖影が尋ねた。
「火矢の一本でも放たれたなら、途端にあそこは火の海と化します。そうなれば、帝都の民や兵どもが飢えることは必定と存じますが」
至極、もっともな指摘だった。
古来、民や兵の飢えを起点に崩壊の道へとたどった勢力は、枚挙に暇がない。
だからこそ洛陽軍は、何としてもあの麦畑を守らねばならないはずだった。
しかし、守りやすさを考慮して畑を切り開く農民などおらず、ましてや眼下の麦畑は、洛陽の民を一年間食わせるだけの規模にふさわしい広さを持っている。
全てを守り切るような布陣は不可能にして、麦畑全体を覆うような城壁を作ることも非現実的だった。
一体、どうやってあの麦畑を守るというのか。
廖影の懸念は、まさしくその一点に絞られていたが、郭図公則はそれを「かまわん」の一言であっさり片付け、質問者を激しく狼狽させた。
「廖影将軍に申し上げます」
素早く、糜統が口を開いた。
廖影は偏将軍、糜統は校尉。
郭図公則たちの面前だけに、糜統の口調にいつもの気安さはない。
「たとえあの麦畑が全焼したとしても、中華の糧食全てが焼き尽くされるわけではございませぬ。足りぬ分は、各地の商人より買い求めればよい。閣下はそのようにお考えでございます」
「買う、と簡単に言われるが」
動揺を完全には消せぬまま、廖影は糜統の方を向いて言った。
「洛陽の周囲は、敵勢力ばかりですぞ。糧食の調達など、口で言うほど容易なものではないと存ずるが」
「御尤もな指摘と存じますが、ご懸念は無用にございます。こちらには潤沢な資金がございますれば」
「資金? はて、それがしは新参にて、左様なる事情は知らなんだ」
「涼王が朝廷に献上せし金10万。これを糧食調達に当てる算段にございます」
「ああ、あれか!…………しかし、朝廷はあの金でもって、近衛を編成中と聞いているが」
「桁が桁ゆえ、なかなか計算も追いつかぬだろうが、心配するな」
ここで、面倒くさそうに郭図公則が口を開いた。
「現在、近衛は3万規模を目指して編成されておるが、それでも必要な金は1万程度だ。まだまだ余っている。そして商人どもには、漢も涼も魏も関係ない。連中にとっては、高値で品を買い上げる者こそが上客なのだ」
「しかし、朝廷が自腹を切りますかな?」
断定的な郭図公則の物言いに反発するように、潘璋が皮肉な問いかけを為した。
これに対する郭図公則の回答は、「それを説得するのが私の仕事だ」だった。

それでも承服しかねる様子の潘璋と廖影に、郭図公則はやや強い口調で続ける。
此度の戦さの目的は、麦畑を守ることではない。麦畑という餌に食いつき、のこのこ出撃してきた涼軍に、城攻めの遂行が不可能となるだけの打撃を与え、撤退させること。究極はそれに尽きる」
だが、潘璋はその説明に、今度は総司令官の正気を疑うかのような顔になって言った。
「それだけでござるか?…………本気で言っておられるのなら、えらく欲のないことだが」
潘璋ほどではないにせよ、廖影も同様の驚きでもって、郭図公則の顔を見た。
決戦という大舞台に臨むにあたって、敵に打撃を与えるだけで由とするなど、消極的にも程がある。
しかし郭図公則は、廖影たちの疑念などまるで意に介さぬ風に言った。
「私が求めているのは、戦術的な勝利ではない。全体を見据えた、戦略的な勝利だ。極端な話、この地で涼軍に敗れても一向にかまわぬ。涼軍に、その後の城攻めを断念するような手痛い打撃を与えられたなら、それで事足りる」
「戦術はともかく、戦略はちと苦手です。もう少しわかりやすく、御教授願いたいものですが」
「無学の徒を配下に持つというのも、面倒なものだな」
「まあ、そう仰らずに。帷幕はともかく、戦場では役に立つ身と自認しておりますれば、大目に見ていただきたく」
“あの”郭図公則に対し、平然と軽口で返す潘璋。
そんな男を、糜統と廖影は驚異的なものでも見るような目で見つめた。
ここらへんは、潘璋の性格ゆえか、それとも外様ゆえの割り切りのよさか、二人には判断がつかない。
一方の郭図公則は、鼻を鳴らした。
郭図公則が潘璋に求めているのは、帷幕の謀臣としての智謀ではなく、実戦部隊指揮官としての力量だ。
それさえ満たしているのであれば、潘璋が
物欲甚だしく、上司への物言いにも頓着しないことなど、何ほどのことでもない。
「涼の此度の出師は、最後の力を振り絞ってのものである。これで帝都を抜くことかなわざれば、涼王が二度とここへ軍を送ってくることはない」
郭図公則は、この男にしては珍しく、律儀に説明してやった。
そうなれば、魏公や関羽の目は、洛陽より近く、かつ陥としやすい許昌に目がいき、転じて洛陽周辺は当面安泰となる。こちらはその間に、兵力の再編を行いつつ、手を打てば良いのだ。守備に専念するもよし、他の旧涼の都市を刈り取るもよし、曹操と関羽を争わせるもよし」
「ほう…………」
ここでようやく、潘璋は感心したような声を上げた。
一介の武人であり続け、これからもそうありたいと願う潘璋にとって、郭図公則が開陳した物事の捉え方は、実に新鮮だった。
郭図公則の戦略を既に知っている糜統はともかく、廖影もまた、感嘆の情を浮かべている。
ただ、当の郭図公則本人は、この戦略が希望的観測を多分に含んでいることを自覚していた。


20日余り前、郭図公則は魏軍が許昌攻めを行っていることを知った。
当時、涼王を取り逃がしたことで朝廷からの激しい反発を受け、「得点」を必要としていた郭図公則は、ほとんど反射的にこれに飛びついた。
果たして、ろくに守備兵の残っていなかった陳留は、黄忠率いる精鋭によって簡単に陥落し、
新しい勢力地拡大という実績を挙げた郭図公則は、朝廷からの風圧を和らげることにも成功した。
しかし、今にして思えば、あの時の郭図公則は、焦りすぎ、かつ短絡的過ぎた。
それこそ、戦略というものを完全に忘却していた。
陳留を奪われる曹操の怒りを考えもしなかったこと、そして曹操が涼王との和約に至ったとの報を受けた時、初めて愕然としたことが、その何よりの証左だ。
言うまでもなくその和約は、郭図公則を共通の「敵」と見据えたもの。
抜き差しならぬ洛陽軍の現状を考えるなら、一都市を得る代償として、それは余りに大きすぎるしっぺ返しだった。
今さら陳留を曹操に返還したとしても、返って足元を見られ、突け込まれるだけだろう。
郭図公則としては、曹操が河南での涼軍との決戦に横槍を入れてくることのないよう、黄忠に厳重な警戒を命じる以外に手はなかった。
さらに付け加えるなら、
涼との決戦を無事に切り抜けられたとしても、「反郭図公則」の念を抱くに至った曹操が、郭図公則の読み通りに動いてくれるかどうか、自信もなかった。
それでも、部下たちにそんな不安など微塵も見せないところに、郭図公則の総司令官としての器量があることは、間違いなかった。


「潘璋!」
配下の将軍を呼ぶ郭図公則の声は、何かを振り払おうとするかのように、強かった。
そしてその口から命令が発せられるのは、潘璋の返事よりも早かった。
「あそこに楼台を構えろ。柵はさほど堅牢なものでなくてもよい。ただし、5万の兵が休める広さは確保せよ」
対する潘璋の反応は、完全に「無礼」の域を超えていた。
「はぁ?!」
やくざ者のように眉間に皺を寄せた潘璋は、司隷校尉という顕職にある者に明確な「睨み」の視線をぶつけた。
「何です、そりゃ? そういう土木の雑用は、新参者にやらせるのが筋でしょうが?」
だが、郭図公則は涼しい顔で応える。
「先ほどの模擬戦を見る限り、御辺の隊は十分な練度に達している。転じて、廖影隊はまだまだ使い物にならぬ。決戦が迫っている今、更なる調練が必要なのは、廖影隊だ。よって、楼台建設の任は、御辺に託す」
問答無用の郭図公則の物言いに、潘璋は絶望的な顔になった。
一方、新参者にして使い物にならない部隊の長たる廖影は、かすかに眉を動かしただけで口を閉ざした。
ただ、郭図公則を睨みつけていた潘璋が、ついでに廖影の方を見た時がまさに廖影の眉が動いた時であり、そんな廖影の態度に潘璋は余計激昂した。
「おい、新参! 貴様、将とはいえ、洛陽軍にあっては最下層の幹部と知らぬか?! なぜ、ここで進み出ない? 雑用を果たすが新参の務めぞ!」
潘璋は本気で怒っていた。
しかし、廖影はたじろがなかった。
確かにもっとも低い将軍位たる偏将軍の自分は、洛陽軍にあって最下層の幹部だ。
しかし、それでも将軍だ。
謂れのない難癖に甘んじる気はない。
いや、ここで潘璋の怒号に屈してしまったら、そもそも廖衛の元から出奔した意味がないではないか。
「確かにそれがしは、貴殿より低い将軍位にある。しかし、貴殿の指揮系統の下に属しているわけではない」
廖影は毅然と胸を張って、潘璋を睨み返した。
それがしは司隷校尉閣下の命ずるところに従うまで。新参であろうが、下位であろうが、この際関係はござらぬ」
「な…………何をおっ!」
潘璋としては、廖影から反論されるなど、考えてもいなかったのだろう。
その顔は一気に真っ赤となり、腰に帯びた剣の把に右手が及んだ。
だが、潘璋が剣を抜くより素早く、糜統がその右手を押さえた。
「ご無礼仕ります」
両手に万力を込めつつも、声と表情は努めて冷静なままで糜統は言った。
「潘将軍。どうか落ち着いて下さいませ。戦さを前に、味方の将同士が斬り合って何とされます」
「やかましい! 腰巾着野郎が賢しげに口を利くな!」
潘璋は落ち着くどころか、さらに頭に血が昇ったようだった。
比較的華奢な糜統を強引に振り払い、剣を抜く。
これに応じるように、廖影も剣を抜いた。
正当防衛だの何だのと、小難しいことを考えた上での行動ではなかった。
廖影は、武人だ。
一方的に斬り付けられる気はないし、ましてや殺されて「やる」つもりもない。
大きく剣を構える。
その瞬間の廖影は、むしろ溌剌としていた。
かかってこい、潘璋。
最初から、おまえは気に入らなかったのだ。
斬り合いの場数なら、俺だって負けてはおらぬぞ。
廖影に「狩られる」意志がないことは、潘璋もすぐに察した。
怒髪天を突くから一転、薄氷の上を慎重に進むように、ジリジリと廖影との間合いを取り始める。
「潘将軍! 廖将軍! やめられよ! 我らは味方ですぞ!」
二人の間に割って入った糜統が、さすがに絶叫した。
しかし、二人の眼中に自分が入っていないことを、糜統は理解した。
廖影と潘璋は、糜統をその中心に置きつつも、糜統がそこに存在しないかのように、互いの隙を伺い合っている。
堪りかねた糜統は、救いを求めるように郭図公則の方を見た。
もはやこの場は、郭図公則以外の者に止められるとは思わなかった。
そして郭図公則は、見事糜統の期待に応える。
「潘璋。10日で完成させろ」
面前の光景をまるで理解していないような郭図公則の呼びかけは、続きがあった。
「達成したなら、御辺がほしがっていた呂氏鏡をやる」
物欲旺盛なる潘璋の摺り足は、その一言で止まった。



「約束は守っていただきますぞ」
念押しをした潘璋は、それでも不機嫌さを隠せず、廖影をジロリと睨みつけてから、ようやく愛馬に蹴りを入れた。
その背を見送ることなく、郭図公則が言った。
「廖影」
「はっ!」
「まさかとは思うが、御辺。このまま調練を切り上げて、城に戻るとは言うまいな?」
「滅相もござらん!」
廖影は反射的に、片膝をついていた。
「先ほどの模擬戦で醜態を晒したこと、廖影隊の恥と心得ております! これより調練を再開し、今宵は夜営に臨む所存!」
「そうせよ」
短く返した郭図公則は、鹿毛の軍馬に跨ると、もはや廖影の方を見向きもせず、走り出した。
さすが長年に渡って仕えてきただけあって、糜統も素早い。
郭図公則からさほど遅れることなく、愛馬の脇腹を蹴る。
去り際、糜統は廖影の方に顔を向け、笑みを見せた。
これに対して廖影が返したものも、当然笑みだった。








207年5月現在(C)◆KOEiWSYs

                 北平
         
┏━┳━━━━━━
       
晋陽  ┃    ┃平原
         ┃
渤海━━┳━━┳━┓
西涼   上党┃     業β ┗┓┗北海
   
     ━━━━━━┓  ┃  ┃
   ┃ 弘農  ┃     
┃ ┃濮陽済南┃
西平┫ ━━洛陽 ┏┛ ━━┛  ┃
   
    ┃┗━┳━━┻━┓   ┃ =呂砲
天水┏ 
┃長安 ┗┓ ┃ 陳留   ┃ ┏━┛  @=第一軍(呂砲)
  ┃┗━
━┓ 宛┃@許昌  小沛    A=第二軍(吾玄)
  
  ┃ ┗━━┗━┓    ┃┗下丕β・ 
  
漢中┃    ┗━┓ ━━━┛ ┃   =曹操
武都┗━━━┓新野━┓ 礁  ┃   =孫策
    
┏┛ ┃  ┃   汝南┗┓   ┃   =郭図公則・袁譚
    
┃上庸┃  ┃襄陽    ┃  ┏広陵 =関羽
  
┛ ━━━┓  寿春    =馬騰
  
┃   ┃   ┃ ┃      ┃    =劉璋
  ┣━┓
 ┃永安┏┛┏江夏   ┏┛    
  ┃巴━┳━┫┗━┓A抹陵  
 
 ┃ ┃   ┃江陵┃柴桑┗廬江 ┃    
成都━┛ 武陵  ━━━┫ ┏━┛  
  ┣┓    ┣━   ━┛  ┏┛   
永昌┃  零陵 ┃長沙  翻陽   ┃    
  ┃建寧  ┗       会稽◆       
三江┛    桂陽                   



郭図公則の叛乱に関する時系列

「★」に続く赤文字は今回更新分の出来事
黒文字は洛陽関連、桃文字は第一軍関連
  緑文字は第二軍関連青文字は第三軍関連
  紫文字は魏関連、水色文字はその他
4月 皇帝が洛陽に帰還
叛乱
発生
初日
洛陽太守・郭図公則、呂砲に対し叛乱の兵を挙げる
糜統、呂砲を取り逃がす
潘璋、公孫讚を殺害
華キン、公孫師を捕縛
士炎、楽楊を取り逃がす
黄忠、町費を取り逃がす
糜統が偽の呂砲の首を用意
2日 郭図公則、皇帝に「呂砲殺害」と嘘の奏上
皇帝、中華各地に反涼の兵を挙げるよう促す勅を発す
町費、部隊の兵士の家に匿われる
呂砲の偽物の首が市場に晒される
關龍白、呂砲の生存を確信
楽楊が呂砲を匿う
3日 呂砲の「影武者」探しの名目で、捜索継続
4日 俸仕が許昌に逃げ帰り、希代之が郭図公則叛乱の報を入手
郭嘉配下の文官・翻武が郭図公則に通じていることを把握
郭図公則の使者が宛の馬超に挙兵を告げる
6日 郭図公則、呂砲を取り逃がしていたことを朝廷と洛陽軍幹部に告白
7日 関平隊、許昌から出撃。目的地は洛陽
曹操が郭図公則の叛乱を知る
宛に希代之の使者と勅使が訪れる
8日 成抗が新野で賈クと会談
10日 郭図公則、司隷校尉に昇進
12日 町費隊の将校およそ50人、公開処刑
蒼月、町費の配下となる
13日 成抗、馬超と会談
14日 関平隊、洛陽郊外に到着・滞陣
呉嬰、俸仕が洛陽に潜入
15日 関平と潘璋の会談
俸仕、洛陽軍に入隊願い
第三軍が叛乱を知る
曹操率いる汝南の魏軍が出撃。目的地は許昌
程cの細作が「汝南魏軍出撃準備」の報を宛にもたらす
程cの細作が「長安は洛陽政権に同調」の報を宛にもたらす
18日 呉嬰、司馬懿と再会
呂砲、呉嬰、司馬懿が会合
馬参、呂砲の後を継ぐことを決断
抹稜で吾玄隊と袁奉隊の兵士が衝突(抹稜騒乱)

袁奉が吾玄に対し自身の第二軍離脱を再度求める。吾玄、受諾
20日 上党で第三軍が燕軍に敗北
袁奉隊、抹陵から離脱
許昌に汝南の魏軍が襲来
21日 廖影、第三軍から離脱
俸仕、司隷校尉府付き兵士となる
22日 文醜率いる燕軍4万が洛陽に到着
伏幹、宛の馬超に許昌への援軍派遣を要請
馬超、許昌へ出撃
「襄陽の蔡瑁自立」の報が宛に届く
23日 廖影が郭図公則陣営に参陣
陳留と礁の魏軍が許昌に到着
洛陽南門郊外で戦闘勃発
俸仕、公孫師と出会う
監禁されていた町費隊1万4000による暴動
町費、洛陽脱出
関平、戦死
楽楊、死亡
呂砲と町費が合流

温寧が業βの放棄を提案
馬参と温寧が「一合戦」
24日 郭図公則、呂砲捕縛を断念
袁奉が盧江守備隊の呉班らを殺害
吾玄、郭図公則の叛乱を
知る
第三軍が業βを放棄
26日 馬忠が袁奉と呉懿の戦闘に遭遇
27日 馬超隊、許昌に到着
28日 馬忠が袁奉と呉懿の戦闘を吾玄に報告
30日 吾玄隊、抹陵を出撃。目的地は廬江
袁奉、呉懿も殺害
31日 袁奉、停戦の使者だった参露を地下牢に幽閉
33日 第三軍が陳留を突破して許昌に到着
呂砲、許昌に帰還

許昌攻撃中の魏軍が撤退
陸遜隊兵士・茸松、「宝の山」が「禿げ山」と化したことを知る
34日 吾玄隊、廬江に到着
蔡瑚、第二軍混乱に関するすべての罪を被って自刎
成抗、西涼に帰還。馬騰が挙兵
36日 蒼月、新野の状況を探る
38日 朔夜、成都太守府より馬を大量受注
39日 張合β、陳留陥落を把握
40日 長安の使者・楊修が馬騰に同盟を持ちかける
許昌で軍の再編が本格化
43日 吾玄と袁奉、抹陵に帰還
45日 帝都奪還軍の陣容が決まる
馬超、琉蹴に洛陽奪還軍への編入を告げる

抹陵に夏侯惇と孫策が相次いで布陣
47日 茸松、親衛隊参軍となる
48日 参露、襄陽にて関羽と対面。劉進に殴られる
馬超率いる長安方面軍が許昌を出撃
49日 西涼に鮮卑族の軍勢が侵入
51日 波羽於莉が茸松、町費と商談
52日 朔夜が漢中に到着
楊丙と馬鉄が大喧嘩
宦玄が皇帝の真意を確認
53日 蒼月が町費に荊州の状況を伝える
新野の状況に付いて、町費と希代之が意見交換
朔夜が五斗米道教祖・張富と会談
★廖影と糜統が杯を交わす
54日 錘柄率いる撹乱隊が孫呉軍に夜襲
夏侯惇と黄蓋が鯨飲

★郭図公則、糜統、廖影、潘璋が河南を視察
55日 吾玄が孫策に内通していた呂蒙と宋謙を殺す
魏軍と呉軍が抹陵城攻撃を開始
56日 魏呉軍の抹陵城夜襲、失敗
吾玄、魯粛を処刑
57日 宦玄と關龍白が会談
58日 魯粛の葬儀が執り行われる
59日 魯真衣、抹陵から離れる
参露、抹陵に帰還
60日 馬騰軍が西平攻略を開始
呉軍の増援部隊を魏延が撃破
孫策が抹陵から撤退

寿春の満寵率いる魏軍が抹陵に到着
61日 涼魏和約の知らせが曹操から夏侯惇に届く
袁奉が魏軍への夜襲を実施。戦死
夏侯惇、抹陵から撤退
68日 馬騰軍が西平を制圧
成抗、「涼軍が長安に向け出撃」の報を受ける





郭図公則

廖 影

糜 統 

  

       

野望乱立(その二)       野望乱立(その四)

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