人工島問題を考える 

〜 1999年日本共産党鹿児島市議団発行 資料「人工島問題を考える」パンフレットより抜粋 〜

 <経済・財政政策の根本的転換が求められる人工島建設>

住民の要求ではない人工島建設

 現在、示された計画(24.7ha)だけでも402億円、全体では一千億円をこえ、沖防波堤を含めると、
県に入る税収の倍の大型プロジェクトの計画が人工島建設計画です。
 この計画は、県民・市民の日常生活や切実な要求から生まれた計画ではなく、特定の経済界などの要請に
もとづいたものであることが市議会の審査で明らかになりました。

全国的にも破綻の大型ふ頭や大型公共事業

 バブル全盛期に全国の北から南まで、大型ふ頭や大型空港、人工島建設などが、政府の景気対策として
すすめられてきました。しかし、空港はできても飛行機の定期便が就航しなかったり、港は整備したが船は
こず、「100億円の釣り堀」(福井港など)となっています。船がこないから「ポートセールス」に金を
つぎ込み、港湾を使う企業を探してまわる、いわば ゛客引き゛に自治体がかけずりまわる状態です。
 バブル崩壊後、全国でこのような事業はことごとく破綻し、今、事業のストップと見直しがすすめられて
います。
 このようなとき、鹿児島だけが、失敗が証明済の国際観光船の着く港や国際会議場のための「人工島建設」を
新規事業として進めようとしているのです。

鹿児島港の港湾整備の見直しこそが必要
鹿児島県・市の経済財政政策の転換をめざす運動に

 1991年策定の「鹿児島港湾計画」にもとづいて、本港区520億円、進行区22億円、与次郎ヶ浜97
億円、谷山港区851億円などと港湾整備にこれまで1,490億円以上のばく大な税金が投入されました。
 谷山港区の「石播」用地は、県が埋め立て「石川島播磨重工業」へ格安で分譲し、活用されないままの土地が
未だ94ha残されています。また、1号用地A区の県所有の遊休地も19ha。これだけでも120億円(埋立費用
からあん分)の土地がそのまま残っています。
 本港区の北ふ頭も埋立は完成しましたが企業は立地せず、大部分の土地は活用の見通しすら立っていません。
 旧木材港区の小型桟橋も本来、市民のための小型船係留施設(620隻可能)ですが、使用できる状態にある
のに市民に利用させません。
 「税金を投入し、完成したものが有効利用されず、さらに新しいものを」という政策そのものの転換こそ
必要です。

 <これまで明らかにした6つの問題点>

問題1 分割埋立出願で「環境影響調査」もまともにやらず

日本共産党市議団の議会での徹底審議で計画のズサンさ
そのデタラメぶりが浮き彫りに
○県が、分割申請(67ha計画を24.7ha)したことにより、県の環境影響評価要綱や本年6月12日から施行
された国の「評価法」の厳しい調査をのがれることになり、住民への説明会、専門家の意見聴取も行いません
でした。
○今回の県の調査は、実は民間企業(潟Gコー)に委託。民間企業の言うがままの資料を、いかにも今回の
埋立に際して調査したかのように発表しました。日本共産党の追及で23項目の評価のうち、新たにおこなっ
たのは、わずか4項目。あとは昭和57年、60年などの古いデータをそのまま使っていることが明らかに
なりました。
○県の埋立願書にたいして県民から43項目の質問や意見が寄せられました。しかし、県は、「県政かわら版」
で都合のよい30項目しか回答せず、環境影響の数値が大きく違っているという専門家の指摘についても、誤り
を認めたものの修正していません。
○他県や他都市の「環境影響評価要綱」と比較しても規制が甘いなど、「環境影響調査」のやり方、内容など
多くの問題も明らかになりました。
他県・他都市の環境影響評価要綱
鹿児島県 福岡県 長崎県 宮崎県 沖縄県
(規定)
川崎市
(条例)
名古屋市
(要綱)
神戸市
(要綱)
埋立・干拓
50ha以上
3ha以上 埋立5ha以上
干拓15ha以上
50ha以上 30ha以上 15ha未満 10ha以上 港湾法15ha以上
公有水面埋立法50ha以上

問題2 これまでの「埋立」や「諸手続」とも違う手法

○これまで北ふ頭から谷山港までの一連の公有水面埋立は、全体計画で申請したうえ、工事は分けて行ってい
ます。
 例えば、本港区では今回の人工島の8.7倍の埋立でしたが全体計画で申請したうえ、工事は10工区に
分けて行いました。そうでないと錦江湾に与える影響もはっきりしないからです。
○国や県は、これまで陸上における土地造成でも、全体の計画を一体的、連続的なものと位置づけ、分割した
許可申請は脱法行為と見なし、許可していません。
 今回の埋立申請が全体計画(67ha)を示さないまま、分割埋立(24.7ha)をおこなうことになっているのは
これまでの手続きとも違う手法であることを認めざるを得なくなりました。 
 まさに、手続き的にも脱法行為といえるものです。

問題3 申請前にすでに漁業補償16億3,500万円

 過去の支払った海域へ二重払い!人工島埋立と関係ない海域にも! ―― 違法・不当な公費支出の疑い ――
 漁業補償は、まだ国に「埋立申請」を行っていない段階で鹿児島市漁協に16億3,500万円(67ha分)が
支払われており、そのうち1億1,000万円が市負担となることが明らかになりました。
 さらに、
  1. 漁業補償は、“その海域の魚の漁獲高、漁獲量などが積算の基礎になっている”と県は言っていますが、漁業補償の対象となった魚の種類や漁獲量などの積算根拠は、何一つ明らかにされていません。
  2. 今回の埋立申請は24.7haなのに、いつになるか分からない残りの埋立計画分を含め、67ha分の漁業補償をすでに支払っています。
  3. いつになるか分からない残りの42.3haの漁業補償を先に支払った理由については、答弁不能です。
  4. 過去に漁業補償を支払った海域や人工島とは関係ない国の事業ですすめている沖防波堤の工事部分にも支払っていることなども明らかになり、その他、日本共産党の多くの矛盾の指摘にまだ回答がないままです。

問題4 県は突然 年71億円の経済効果ありと発表 ―実は”期待と願望”のつみあげ―

(最近の県内でひらかれた国際会議)
回数
H9年度 現在、国際会議のできる施設(同時通訳)
・城山観光ホテル
・鹿大稲森会館
H8年度
H7年度
@日本一のメインホールをもつ国際会議場が必要なのか
  
  現在、日本一のメインホールをもつ宮崎のシーガイアは、累積で
 一千億円を 超える赤字で苦しんでいます。
 こんな国際会議場計画は今や国内どこにもありません。国際会議の
 できる会場は 既に市内に二カ所ありますが、この施設はもう使わ
 れないのでしょうか。今後の国際会議開催の見込みもはっきりしま
 せん。

A大型外国観光船の入港はほんのわずか
国際会議場 メインホール(大会議室)
幕張メッセ・千葉 1,390u
パシフィコ横浜 1,323u
名古屋国際会議場 1,920u
シーガイア・宮崎 2,603u
鹿児島人工島計画 3,450u
  鹿児島港への観光船入港状況はむしろ減少傾向にあり、県の言う
 年4.8%ずつ増えるというのは県がかってに つくった数値である
 ことが明らかになりました。5万トン以上の大型外国観光船は平均
 年一回もなく、現在入港している谷山港の整備で十分です。

B人工島建設は、米鑑による核もちこみに道をひらく危険性
  
  これまで米軍は錦江湾の水深、病院、水の供給体制など、詳しく
 調査している経緯があります。ガイドライン法(戦争法)は本年
 8月施工にともない、大型ふ頭は核兵器を積んだ米鑑入港に道を
 ひらく恐れがあり警戒が必要です。 
県の"期待と願望"の経済効果試算
観  光  船  4億7,000万円 6年間で5万トン以上の大型船は4隻。人工島が
できると(年1万トン以上)16隻が32隻に増えると試算
見本市・展示場  31億7,000万円 建築費・維持費は全く想定せず、建物ができたものとして
その効果積算。
国際会議場のメインホールは日本一をめざす。
国際会議場  7億円
マ リ ー ナ  1億9,000万円 市民のための小型ボート係留施設と言っているが
実は大型ヨットが対象。
イベント開催  26億円 現在イベント開催が実施されている本港区以外にも
必要の理由が示されない。
合   計 71億3,000万円

問題5 「埋立が必要」の根拠不明確

埋立の処分場は緊急に必要なし  ―― 有村採石場跡地(桜島)を利用すれば、22年間(年平均30万立方メートル)は大丈夫 ――
 県は「桜島の土石流処分のため埋立が必要」と言っていますが、日本共産党市議団の調査と追及で「市所有の有村
溶岩採石場跡地を活用すれば22年間分はある」(九月二十日市議会本会議局長答弁)ことがはっきりしました。
 いよいよ、埋立の理由がくずれ「人工島建設はムダづかい」が明らかになりました。

問題6 県の財政はきわめてピンチ! 返済は子や孫の代まで26年間も! 

人工島建設費の98%は借金!
 県民所得は全国で下から二番目。
 豪華さでは東京都庁に次いで全国二位の県庁舎建設。
 県は今、年間予算の1.3倍にあたる1兆2,700億円の借金を抱えています。(九州で福岡県に次いで
二番目・県民一人当り72万円)。その上、さらに人工島建設に一千億円をつぎ込もうとしており、その殆どを借金し
ようとしています。
 そのため県は、財政再建のためとして、県立学校の授業料をはじめ、各種公共料金の値上げ、県職員のリストラ計画を
すすめています。
 不況がいっそうすすみ、県民の暮らしや営業も深刻ななか、財政危機というならば、人工島建設は中止し、福祉、
教育の充実を図るべきではないでしょうか。
人工島のほかに、国は「沖防波堤」(200億円)を。県・市の負担はさらに重く
 人工島建設のための国の沖防波堤工事(約200億円−県63億円、市21億円の負担)もすすんでいることが
わかり、さらに県・市民への負担が明らかになりました。
 この沖防波堤はケーソン(コンクリートのかたまり)を当面80函投入予定。ケーソン一函は約1億5,000万円。
ケーソン5函で特別養護老人ホーム1カ所が建設できます。
今回の埋立計画
24.7ha
人工島全体
67ha
沖防波堤
事業費 402億円 1,090億円 200億円
負担金 109億円 298億円 116億円
240億円 651億円 63億円
53億円 141億円 21億円

日本共産党は提案しています

ムダな埋立をやめ、「住民型」公共事業への転換を!

既存の施設や県所有の遊休地の活用こそ必要

 谷山一号用地内には、県がこれまで埋立ててつくった土地19haとふ頭用地13ha、合わせて32haの未利用地が
あります。(別に本港区にも5haの未利用地)
 また、木材港入口の港には、小型船舶の係留所がほぼ出来上がったまま放置されていますが、利用すれば今でも
620隻は係留できるものです。
 新たな埋立ではなく、これらの遊休地を活用すべきです。

漁業補償問題など、市議会で指摘した問題点、57項目(県へ要請)が明らかにならない限り、市予算は執行させない

 日本共産党市議団の提案で、議会審査で明らかになった57項目の問題点を建設委員会の全会一致で確認。知事に
対し、市議会として異例の申し入れをおこないました。
 これらの問題点解明をぬきに漁業補償1億1千万円をはじめ、人工島建設にともなう162億円をこえる市負担を
市民は納得しないでしょう。

改めてウォーターフロント計画(鹿児島港湾計画)を見直し、生活密着型公共事業を

 港湾事業は、県港湾協会に所属している建設業者(県外14社、県内23社、係36社)が独占しています。「不況打開の
ために人工島建設を」といっていますが、一部の業者が潤うだけです。
 日本共産党は、”生活密着型の公共事業で市内中小業者の潤う事業の優先”をと主張しています。

日本共産党は、今後も全力をつくします

人工島建設の見直し、中止の運動はこれから・・・ここまで追いつめてきた日本共産党市議団

日本共産党は、県政、市政の場で「人工島建設」の問題をここまで追いつめてきました。
 計画当初の「埋立諮問」の段階でこんなに問題点が明らかにされたのは、全国でも初めてのことで、他都市では着工後、
見直し・中止を求める運動が主流です。
 県財界あげてのキャンペーンにみるように、自民党と推進勢力はあくまで計画を強引に進めようとしていますが、世論の多数は反対であり、計画中止に追い込む可能性は十分にあります。
日本共産党県・市議団は、8月4日、党国会議員と共に、運輸省などへ「大きな問題を含んだ鹿児島市沖の人工島建設のための公有水面埋立の認可は慎重に慎重にしてほしい」と陳情しました。
 これからも引き続き、議会で未解明の漁業補償や港湾負担金問題、錦江湾のウォーターフロント計画そのものの問題点と
すでに存在している遊休地や施設の有効利用こそ、急ぐべきという日本共産党の提案を含めて審査を続けていきます。