4年教材をどう扱うか

目次

「教科書ハンドブック」(新読書社 2011年4月発売)からの抜粋

1 春のうた

2 白いぼうし

3  漢字の組み立て

4 漢字事典の使い方

5 大きな力を出す

6 動いて,考えて,また動く

7 一つの花

8 かげ

9 忘れもの

10 ぼくは川

11 手と心で読む

12 茂吉のねこ

13 ごんぎつね

14 アップとルーズで伝える

15 三つのお願い

16 文と文をつなぐ言葉

17 のはらうた

18 ウナギのなぞを追って

19 額に柿の木

20 初雪のふる日

21 知ると楽しい「故事成語」

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◆は,「教科書ハンドブック」(新読書社)の小見出しです。
同書では教材分析の他に,主教材では指導案も掲載しております。
その中から一部抜粋したものをここに掲載しました。

1 春のうた  (草野心平)

◆題名・前文・本文
 草野心平のこの作品は、題名が本来は漢字になっています。(ここでは題名を「春の歌」として説明します。) 題名が〈春の歌〉となっているのに、本文は〈ほっ まぶしいな。/ほっ うれしいな。〉と、ずっとかな書きになっています。これは本文では語り手(話者)が〈かえる〉の身になって語っているからです。
 前文の〈かえるは冬のあいだは土の中にいて春になると地上に出てきます。〉というところは漢字と平仮名とで書かれています。これは語り手が、《外の目》(注1)で〈かえる〉のことを、自分のことばで語っているからです。しかし、本文は語り手が、〈かえる〉の《内の目》(注2)に「かさなり」ながら〈かえる〉の「身になって」語っているので、〈かえる〉のことばをイメージする「かな書き」になっているのです。この時、〈かえる〉のことを視点人物(注3)と言います。
 一方、「春の歌」というのは視点人物の〈かえる〉のことばでもなく、語り手のことばでもありません。作者が付けた題です。だからこれは「漢字かな交じり」になっているわけです。
◆声喩の本質
◆喜びが広がっていく
◆ この詩にも「筋」がある
【「春の歌」の板書例】
【「春の歌」の指導案例】



2 白いぼうし  (あまんきみこ)

 これは、あまんきみこの『車の色は空の色』という、連作を集めた童話集の中の作品です。全部、タクシーの運転手の松井さんが主人公で語られています。
 非常に評判が良くて、続編が出ており、それぞれがおもしろい作品です。
◆ひびき合っている書き出しと結び
 まず、「白いぼうし」という題名と、〈「これはレモンのにおいですか。」ほりばたで乗せたお客のしんしが、話しかけました。〉という書き出し、この二つは、四年生になったら特に取り上げて指導してほしいことです。
 題名については、後にまわして、まず書き出しについてみていきましょう。書き出しが、会話から始まっています。会話から始まると、読者がすっとその話の中に入っていけます。
 また、〈「これは、レモンのにおいですか。」〉という書き出しと、〈車の中には、まだかすかに、夏みかんのにおいが残っています。〉という結びのところがひびき合っています。首尾照応しているといいます。このあたりも、指導のポイントの一つになると思います。これは、作文指導にもつながることです。
 前置きなしに会話で始めると、読者は、興味をひかれ、話の中にすっと入りこむことができます。ですから、こういう書き出しも、大変効果的です。
◆松井さんの基本的人物像をとらえる
◆松井さんの目と心に寄りそって
◆現実と非現実のあわいに成り立つ世界
◆くり返される言動から人物像をとらえる
◆初読と再読の読みを重ねるおもしろさ
◆松井さんの優しさがもたらしたもの
◆題名「白いぼうし」のはたらき
【「白いぼうし」指導案例――全体の概要】
【「白いぼうし」二場面の板書例



3 漢字の組み立て

 ここの「漢字の組み立て」の〈ヘンとつくり〉の図を見ると、九宮法(一マスを九つに分けた上に字をバランスよく書くこと)が使われていることがよくわかります。縦横三分割した枠の中に漢字を入れると、〈へん〉は、左の一列に入り、〈かんむり〉は上段一列に入り、〈あし〉は、下の一行に入ると全体のバランスのとれた形のよい字がかけます。
 新出漢字の指導の際には必ず、部首の名称も覚えさせて、できるだけたくさんの部首名に慣れさせます。



4 漢字辞典の使い方

 漢字辞典を引く時、漢字の画数の数え方で注意することがあります。たとえば、画数を数えて、仮に「九画」だとします。「九画」のところを見て、探している漢字がなかったら、再度画数を数え直しさせて、一画多いか少ないところを引かせます。なぜなら、四年生の児童にとって画数を正しく数えることは、できにくいということがあるからです。総画引き、部種引き、音訓引きの三種類の引き方を指導し、新出漢字の時にこの三種類の引き方を使い分けて調べさせていくと身につきます。また、熟語には二字熟語や四字熟語があります。これらを漢字辞典で引いてみるのもいい方法です。



5 大きな力を出す  (西嶋尚彦)

◆構造的・関係的・機能的にみる
◆題名の機能
◆説明文の観点
 書き出しでは、わたしたちは、〈ふだん、特に考えることもせずに呼吸をしています。〉と読者の誰でもうなずける常識的なことから書き始めています。次に〈特に考えることもせずに〉ということと対比するように〈でも、考えて呼吸すると、もっと体の力を引き出すことができます。〉と書いています。そのため、読者は「ええっ、どんなふうに考えて呼吸をすれば力がでるんだろう。」と強く興味・関心を持って読むことになります。ここも仕掛のある表現になっています。
 教科書の脚注には、〈文章のはじめには、話題がしめされている〉と書かれています。それだけでなく、ここは、この説明文の言いたいこと、考え、結論が書かれており、説明文全体の観点にもなっています。
 また、〈考えて呼吸すると、もっと体の力を引き出すことができる〉というのは、筆者の仮説ともいえます。
◆体験による説得



6 動いて、考えて、また動く  (高野進)

◆題名と書き出しの機能
 〈動いて、考えて、また動く〉という題名から、〈動いて〉終わるのではなく〈考えて、また動く〉、つまり、これらの行為がくりかえされるというイメージがしてきます。読者は〈動いて、考えて、また動く〉ってどういうことなんだろうと先を読みたくなり、これを仕掛といいます。同時にこの説明文が、〈動く〉と〈考える〉という二つの行為の関係を観点にした文章だと分かります。
 「書き出し」は、〈運動でも勉強でも、「まず動く、そして考える」ことが大切です。〉で始まります。筆者は初めに説明文の観点を示し、この二つの行為が運動に限らない大切なことだと知らせています。〈そうして何度も失敗をくり返しながら工夫を重ねる〉(「試行錯誤」を重ねる)と、〈きっと〉必ず、〈自分にとって最高のものを実現できる〉と「結論」を先に述べています。
(以下略)
◆仮説を立て、検証し考察する



7 一つの花  (今西祐行)

◆特殊な視点であることを考慮して
 この作品は、一貫して話者(語り手)がすべての人物を《外の目》で異化して語っている作品です。ふつうは話者がそこに登場する人物のだれかの目と心によりそって、あるいは重なって語ることが多いのですが、この作品はある意味では特殊な作品です。日本の文芸作品の中でこういう視点をとっている作品はきわめて少なく、小学校の教材の中でも、これしかありません。ですから、そのことを頭において教材分析と授業のあり方に、特に注意してほしいと思います。
 「話者の外の目で語る」というのはどういうことかというと、作品の人物の気持ちになって読む、つまり同化体験ということよりも「目撃者体験・異化体験」が中心になるということです。読者がゆみ子たちの言ったりしたり、していることを、すぐその場に居合わせているつもりで、その一部始終を見て、聞いていくということです。
 話者はどの人物の内面にも入らず、どの人物の気持ちをも直接的に語らず、ただ言っていることと、していることを語ります。それから読者は、ある程度は人物の気持ちを推察することはできますが、それはあくまで読者がそのように推し量ったということで、本当はそうであるかどうかは決め手がないのです。文芸作品というのは読者が切実な体験をする世界ですが、この作品の場合は、作中の人物と一つになって体験するというよりは、異化体験・目撃者体験を切実にすることが大切です。
◆書き出しの二行のはたらき
◆強調の効果をひきおこす問いかけの文
◆〈一つだけ〉のくり返し
◆地の文から話者の思い、態度を読みとる
◆再び「問いかけの文」による強調
◆人間は条件的に生きている
◆〈ところが〉という接続詞から
◆心にもないこと
◆強めの表現
◆〈一つの花〉の意味づけ
◆父の子に対する願い
◆浮かびあがってくるゆみ子の姿
◆「一つの花」の美
◆戦争中と戦後を対比する
〈一つの花〉は何を象徴しているか
【「一つの花」まとめよみの指導案例】
【授業展開】
【「一つの花」まとめよみの板書例 】



8 かげ  (ニコライ=スラトコフ作・松谷さやか訳)

◆「ようす」と「きもち」
 〈森の中は、おどろくほどしずかだ。森は、休息している。木もれ日はじっとしたまま、動かない。えものがかかるのを待っているクモの巣が、かすかにゆれている。〉という書き出しです。この一節は森の「ようす」を表現しています。しかし、語り手(話者)の「きもち」もその裏に同時に表現していると考えられます。つまり、森の中の〈木もれ日〉や〈クモの巣〉の「ようす」が表現されていると同時に、その「ようす」を《外の目》で見ている語り手自身の神秘的でいて、爽快な「きもち」も同時に表現されているのです。
 次に語り手は森の中を歩いていきます。そして〈草地から草地へと歩いていくのは、いい気分だ〉と自分の「きもち」を語っています。そして、森の中の平らな草地を〈緑の大きなさかずきのようだ〉と比喩的に表現し、その草原が〈温かいエキスがみちている〉と感じています。この部分も草地の「ようす」を表していると同時に、草地を〈さかずきのよう〉に見て、温かいエキスが満ちていると感じる語り手の「きもち」も表現しています。つまり、「ようす」の裏には語り手の目と心(きもち)があるということです。
◆語り手と子ぐま
◆ユーモア
◆文芸か説明文か



9 忘れもの  (高田敏子)


◆〈夏休み〉を人物化するおもしろさ
 〈入道雲にのって/夏休みはいってしまった〉とあります。語り手(話者)の〈ぼく〉は小学生ぐらいでしょうか。その語り手の〈ぼく〉は、〈「サヨナラ」のかわりに/素晴らしい夕立をふりまいて〉〈夏休み〉が去って行ったと言っています。〈夏休み〉を人物として語っています。姿・形のない〈夏休み〉を人物として見ているのが、まずこの詩のおもしろいところです。〈夏休みはいってしまった〉の〈しまった〉の文末から、語り手の〈ぼく〉が〈夏休み〉に対して心残りがあることがわかります。
(以下略)
◆〈忘れもの〉というたとえのおもしろさ
◆題名に象徴されているもの



10 ぼくは川  (阪田敏夫)

◆川のイメージ
◆複合形象(人物)としての川
 語り手である〈川〉の〈ぼく〉は、「人間」と「川」の複合した形象(複合形象)であり、人物です。その複合形象である〈川〉は、人間のイメージと川のイメージの共通するイメージを土台にして作られた形象です。
 〈川〉は、自由に力強く〈ほとばしり〉、〈とまれと言っても〉、困難があっても止まらずに流れ続けます。そのイメージは、どんなことがあっても未来に向かって力強く生きていこうとする人間のイメージと重なります。



11 手と心で読む  (大島健甫)

◆身近なことがらから説得する方法
 書き出しは「既知のことから未知へ」すなわち、読者の「身近なことから縁遠いことへ」という説得の順序をとっており、読者をなるほどとうなずかせます。駅の自動券売機というのは、読者が日常よく見ているものであり、そこにある〈小さな点のうき出たテープ〉というと、「あっ、そういえば見たことあるな。あれは何だろう。」と、子どもたちの興味・関心を引き出すことができます。
 こういう身近なことから書き出して、読者に興味・関心を持たせるのも基本的な説得の論法の一つです。
◆現在の〈わたし〉と過去の〈わたし〉
◆人間にとっての文字をもつ意味
◆点字も記号



12 茂吉のねこ  (松谷みよ子)

◆題名と本文の関係
 題名が「茂吉のねこ」と「茂吉とねこ」では、イメージが違ってきます。「茂吉のねこ」であれば、「茂吉が飼っているねこ」「茂吉のもっているねこ」というイメージになります。しかし、「茂吉とねこ」であれば、茂吉とねこが対等の関係というイメージがします。題名は本文の内容と密接に関係します。この違いを考える題名読みから始めてはどうでしょうか。もちろん授業後には、もう一度題名に帰り、題名の意味づけをする「まとめよみ」をするといいでしょう。
◆書き出しの仕組
◆書き出しの仕掛
◆仕掛で話を進める
◆話者は誰に寄り添って書いているか
◆ファンタジーの世界
◆この作品でどんな考えを学ぶか
◆読み終わって題名の意味を考える
◆民話の指導について



13 ごんぎつね  (新美南吉)

◆本文と関係がある題名
◆〈ごん〉の複合形象
 〈ごん〉のどこをみても、狐らしいところは、ありません。むしろ、これは人間の物語といえましょう。
 〈きつね〉という動物は一般的に人間からうとまれ、きらわれているイメージをもっています。この〈ごんぎつね〉も、人間世界から疎外されて生きていかざるをえない存在として描かれています。このような人物(人間のイメージと動物のイメージが複合された形象)の設定が、この作品を成立させ、深い意味を作り出しています。
◆作者と話者ははっきり区別して
◆人物像を浮き彫りにする手掛かり
◆村人から見たごんぎつね
◆文脈の中での言語指導を
◆主人公〈ごん〉の紹介―書き出し
◆ごんの目と心によりそって見たあなの外の様子
◆声喩と視点
◆独特な巧みな情景描写
◆読者も話者とともにごんの目と心に重なって
◆ごんのいたずら――兵十のうなぎをにがす
◆くり返される人物の本質
◆いたずらからつぐないへ
◆視点人物〈ごん〉の条件
◆ごんのつぐない
◆文芸の表現方法をつかんで読む
◆視角の転換――ごんから兵十へ
◆兵十の悲劇
◆〈青いけむり〉が象徴する美
◆言いたくても言い合えない関係
◆作品を典型として読む
◆この作品で育てる認識の方法
◆視角が転換することで
◆ごんと兵十、両者の悲劇として
◆反復されるごんの兵十へ寄せる思い
【「ごんぎつね」の指導案例――全体の概要】



14 アップとルーズで伝える  (中谷日出)

◆アップとルーズの具体例
 「アップとルーズで伝える」という題名を見ても、四年生の子どもの多くは聞いたこともない、聞いたことはあってもその意味・内容がよくわからないのではないでしょうか。そのため、どんなことだろうと関心をもつのではないでしょうか。
 そんな読者のために、一段落から三段落で「アップとルーズ」について、ていねいにわかりやすく説明しています。
◆アップとルーズの長所・短所
◆文章の表現の方法でも選択する



15 三つのお願い  (ルシール=クリフトン作/金原瑞人)

◆昔話の機能を借りた現代的な童話
◆仕掛のある書き出し
 〈わたし〉が友達のビクターと雪の道を歩いていたら生まれた年と同じ年にできた一セント玉を拾います。
 これはあまり普通のことではありません。でも、ありうることです。ありうることですが、めったに無いことです。ですから一セント玉を拾うと願いがかなうという話はいかにもありそうな感じになってきます。〈「そうねえ。お願いっていえば、この寒さ、なんとかならないかなあ。」〉というのは、わざわざお願いしたわけでもないのに、なにかお願いしたような感じもします。どっちつかずの、どっちでも取れるようなお願いです。ほんの冗談で言ったのに、〈ひょいとお日様が顔を出し〉てあたたかくなります。〈どんぴしゃり。お願いがかなった。〉そうなると、〈これはちょっと考えなきゃ、という気になった。〉と続きます。このあたりが読者を、「うん、なるほどそうだろうな。わかる、わかる。」という気持ちにさせるところです。この〈わたし〉という人物に読者は同化体験します。〈お日様が顔を出した。〉というのは、偶然〈顔を出した。〉ともとれます。願いがかなう一つのステップかもしれないともとれます。だから、本当に願いがかなうのかな、そんなことはないだろうと否定する気持ちがある反面、もしかすると、そういうことがあるかもしれない、そうであればおもしろいなという期待ももちます。〈わたし〉は、〈だったら何をお願いしようかな〉と考えます。これは読者に対する仕掛になっていて、読者に、今度はどんなお願いするのかなという期待をもたせます。
(以下略)
◆本当の願いとは
◆現実と非現実のあわいに成り立つ世界として読む
【「三つのお願い」まとめよみの指導案例】
【「三つのお願い」まとめよみの板書例】



16 文と文をつなぐ言葉

◆聞き手・読み手に予告する
 〈雨がふりそうだ。だから・・・〉〈雨がふりそうだ。しかし・・・〉の〈だから〉と〈しかし〉は接続語と呼ばれています。ここでは、それを「つなぎ言葉」と言っています。接続語は、前と後ろをつなぐということを表した用語です。しかし、これは、言葉や表現の本質をふまえたものになっていません。
 はじめに〈だから〉について考えてみましょう。語り手が〈雨が降りそうだ.〉と言っているのは、聞き手に対してです。〈雨がふりそうだ。だから〉と聞くと、〈かさを持っていくだろうな。〉と聞き手は予想します。後の文を読むと予想通り〈かさをもっていく。〉となります。
 日本語では、わけを先に言うことがよくあります。たとえば、「おなかがすいた。だから、ごはんを食べました。」と言います。「ごはんを食べた」のは「おなかがすいた」という理由からです。
(以下略)
◆方向指示器としての予告語



17 のはらうた  (工藤直子)

◆前書きーー複合形象について
 前書きには、〈たくさんの住人〉〈野原のみんな〉〈どんなことを考えたり思ったり〉〈野原の仲間たち〉〈だれ〉〈友達〉という言葉が書かれています。「のはらうた」に登場するのは、例えば〈すみれほのか〉であれば、花のスミレであると同時に人間です。スミレのイメージと人間のイメージが複合した複合形象として登場します。「のはらうた」には、このような人物が住んでいます。
「のはらうた」は、作家工藤直子さんが、人間と虫や花、あるいは川、空、雲などの複合形象である人物を作者として設定し、その作者が語り手となって語っていきます。また、多くの場合、自分自身のことを語るという構造になっています。
◆「おと」 いけしずこ
◆「ひるねのひ」 すみれほのか
◆「おれはかまきり」 かまきりりゅうじ
◆「ぼくは ぼく」 からすえいぞう
◆「うみへ」 おがわはやと
◆「くらし」 きりかぶさくぞう



18 ウナギのなぞを追って  (塚本勝巳)

◆題名の働き・・・観点と仕掛
◆書き出し・・・読者を引き込む工夫
 〈今年もマリアナの海にやって来ました。〉〈今年も〉とあるので、毎年のように来ていることが想像できます。地図や〈二千キロメートル〉という数値を使って読者が行ったことがないであろう海を説明しています。さらに、〈やって来ました。〉〈海の真ん中です。〉〈あざやかな・・・しまいそうです。〉などの表現によって、読者は、この海の世界に引き込まれていきます。
 そして、〈毎年のように・・・・調査することです。〉と、調査の目的が、ウナギの一生を調べることだとわかります。〈ウナギは、日本各地の川や池にすんでいます。〉そのウナギが、実は二千キロメートルも離れた海でたまごを産み、赤ちゃんは二千キロメートルの旅をして日本にやってきます。日本の川や池で一生を過ごしているのだろう、と考えていた読者にとっては驚きです。そして、それがわかるまでに、〈実に七十年以上の年月がかかったのです。〉とあります。一体どんな調査をしてわかったのか疑問をもって読むことでしょう。
◆たまごを産む場所をさがす・・・時間をさかのぼる
◆場所の特定・・・仮説と検証
◆わかったこととわからないこと・・・科学の態度



19 額に柿の木  瀬川拓男

◆民話―教材の特質を生かして
◆因・縁・果
◆ほら話
 このように因・縁・果の連環によって話がどんどん大きくなっていくのですが、こんなことが実際に起こるはずもありません。世の中、理屈通りにいくはずがないということを皮肉った話が、この話のおもしろさであり文芸における美と考えられます。この民話は、実際にはありえない話を理屈(因・縁・果)という考え方で言いくるめた「風が吹けば桶屋がもうかる」式の「ほら話」といえましょう。



20 初雪のふる日  (安房 直子)

◆現実と非現実のあわい
◆輪を飛ぶイメージと白いイメージのくり返し
 女の子は、石けりの輪をどんどん進んでいきます。〈バスの停留所の辺りまで来たとき、ほろほろと雪がふり始め〉ます。〈風も冷たくなり〉雪ははげしくなります。〈女の子の赤いセーターの上に、ほっほっほと、白いもよう〉がつきます。「白いイメージ」が、ここでくり返されます。その時、女の子の後ろで声がします。振り返ると、〈真っ白いうさぎ〉が石けりをして女の子を追いかけてきています。白いイメージのくり返しと、女の子が石けりをしながらぴょんぴょんとぶイメージのくり返しによって、この〈真っ白いうさぎ〉の出現が違和感なく読者にも受け入れられます。
◆白いうさぎは
◆魔よけのよもぎ
◆ファンタジー
◆つづけよみ



21 知ると楽しい「故事成語」

 「故事」とは「現在普通に用いられている表現の特殊な構造や、興味が持たれる社会慣習・言語慣習などに関して、なぜ、そういうことになったかについての昔からの言い伝え」で、「成語」とは「故事に基づいて出来たり、有名な古人が言い出したりした熟語で、気のきいた・(含みの有る)表現として何かというと引用されるもの」です。