チリ国鉄

 チリの鉄道は、大部分が国有化されていて、国鉄EFEの管理下にあるが、1983年に 分割され3社となっている。主にサンチャゴを境に軌間が異なる。
 サンチャゴから南部へ向かう路線はFC del Sur(南部鉄道)と呼ばれ、 1676mmの広軌。 南米の大半を植民地にしていたスペイン国鉄も広軌だが、それとは異なる。 標準軌より広いので、大変幅広な感じを受ける。サンチャゴからプエルトモンへ 向かうのが主要幹線で、大半が電化されている。電化方式は直流3000V。
 一方、北へ向かう路線はFC del Norte(北部鉄道)と呼ばれ、大部分が 1000mmの狭軌である。1067mmの日本の在来線の軌間に近いので線路を見ていると 親しみを感じる。サンチャゴからラセレナを経て、アントファガスタ以北まで 国土を縦断している。
 さらに、最北部はペルー国境に近い都市アリカを中心とした 小規模な(総延長206kmしかない)FC Arica(アリカ鉄道)がある。軌間1000mm で、ボリビア国鉄と接続している。

 北部鉄道は、アントファガスタを中心とする銅鉱石輸送を初めてとして 貨物輸送主体である。ただし、縮小の一途のようで、旅客列車の設定は今は 全く無くなっているようだ。 北へ向かう線のサンチャゴ始発駅だったマポチョ駅は改装されて 音楽ホールになってしまっているし、 1997年9月の水害で破壊されたラセレナ付近の南北縦断路線は11月になっても 復旧していない。
 南部鉄道は国鉄が積極的に観光客誘致をしたり、Metrotrenと称して「国電」 運転をしている。が、国電と言っても1.5時間ヘッドで、大変のんびりしている。 南部幹線は、サンシャゴから隣駅のサンベルナルドまで(片道250ペソ)しか 乗車しなかったが、 複線電化で、70km/hほどで結構高速運転を実施している。 試乗したサンチャゴ−サンベルナルド間16kmほどは15分を要した。 複線区間は左側通行。 ただし、軌道状態はかなり悪く、日本のローカル私鉄に似た感じである。 広軌であることが幸いしているのであろうか。 これに対して架線は山手線と同じダブルシンプルカテナリーで、 なにかちぐはぐな感じがする。
 乗車した際は、上りが40分程度遅れたが、案内放送もあったし、乗客は 発車予定時刻頃から、みんなそわそわと待っていたので遅延は珍しいらしい。 一緒に待っていた英語のできるおばさんに確認したら、遅延は稀であるとのこと。
 南部鉄道のサンチャゴ始発駅は地下鉄1号線のEstacion Central(中央駅)である。 フランス人建築家ギュスタフ・エッフェル設計の、この駅は欧州式に屋根が かかっている。とはいえ、連結器は自動連結器だし、中央駅は構内入場に入場券 (200ペソおよそ50円で窓口で買う)が必要など、 完全に欧州大陸調というわけでもないらしい。 Estacion Centralはサンチャゴ市内ではそう呼ばれているようだが、 EFEの切符や時刻表ではAlamedaと書かれており、こちらが正式名らしい。
 Metrotrenは地下鉄と連帯運輸をしているのか、地下鉄と類似のマークを 掲出して運転している。とはいえ、1-1.5時間ヘッドだから利用には気を付けないと 行けない。1997年10月現在、サンチャゴSantiago−ランカグアRancagua間を 運転している。車内路線図によれば、Santigo - San Bernardo - Nos - Ruin - Lideros - Paine - Hospital - San Francisco - Graweros - Rancaguaを 運行しているようだ。 使用車両は25m級電車4連でAEL30型というらしい。ランカグア側からA-B1-B2-Cとの 記号が車体に記されていたので、4連で固定編成のようだ。AとCの連結面寄りに 1つずつパンタグラフが付いているが、一方しか使用していない。 サンチャゴの駅員は日本製だといっていたが、製造銘版がないので確認できなかった。 外観からは製造は日本車両かと思われる。

AEL-30型のMetrotren。サンチャゴ中央駅にて  車内は2人掛け転換クロスシート主体。戸袋部に1人掛けのロングシートが1つ ずつ配置されている。AとCとは1両に1ヶ所、B1,B2は2ヶ所 の客用ドアがある。両開きドアで、日本と同様の自動開閉である。プラットホームが 西欧式に低いので2段のステップが付いている。

 1997年11月になって、チリ国鉄はMetrotrenに新型を投入!現在試運転を 繰り返している。積極策に転じるようだ。25m級で、1編成はランカグア側から R101,I101,M101と記されている。もう1編成は101が105となっていたので、 100型と称するようだ。101と105の少なくとも2編成は確認した。 車体構造と重量標記からはTc-T-Mcか思われる。McにはZパンタが2丁。ただし、 一方しか使用していなかった。
 サンチャゴの駅員は新型も日本製だといっていたが、製造銘版がないので 確認できなかった。空調付きで側面は日本で流行の柱間を黒く塗った連続窓風で ある。

100型のMetrotren。サンベルナルド駅にて。駅の方は1857年開業で 現在の建物は1880年に建てられたらしい。  車内を覗いてみたら、2人+2人固定クロスシートと3人+3人固定クロスシート で構成されており、AEL-30型よりは長さ当たりの着席定員が増えている。このため、 4両編成から3両編成になったのだろう。