客車

2003/9/17 作成
2005/1/6 更新

総論

客車の形式は、重量および構造用途を示すカナ記号に続けて数字で表される。 昭和16年式以前(明治44年式)は、数字は5桁で型式番号と車両番号とを合計する 合算方式であった。 昭和16年式以降は、数字は2桁とし、車両番号と型式番号とは空白で 分割する区分方式となった。 カナ記号は、昭和16年改正時では大きな改正はなかったが、 より以前(明治44年式以前)には、別の記号が用いられていたこともある。

カナ部の構造用途を表す部分(カナ記号用途部と仮称)と 数字部分とがセットで形式であるとする立場なので、 いずれかに相違する部分があれば、別形式として、重複を許すが、 この際に重量部は重複判断には用いない。 例えば、ナハ10とナハネ10とは重複しないと考えるため、共に実在するが、 ナハ10とオハ10とは重複と考えるため、後者は存在しない。

JR東日本のある時期以降の車両のみ、数字の先頭にEが付くが、 それを除くと国鉄時代の基本を継承している。 ただし、重複に関しては重量部も含めて考えないと重複形式になるものや、 番号自体完全に一致してしまうものが発生している。

なお、以下の記述の一部は明文化された規約に基づいておらず 筆者の推測によるものが含まれる。


カナ記号重量部

先頭のカナ1文字で車両重量を表す。 語源が明記された資料は目にしたことがないが、私の予想も示す。 ただし、現在の定義は重量のみにより、ここでの推測語源の内容とは一致しない。
記号重量推定される語源
22.5t未満「小型」から?
22.5〜27.5tボギー車から?
27.5〜32.5t「中型」の「中=ナカ」から?
32.5〜37.5t「大型」から?
37.5〜42.5t鋼製車両の「steel」から?
42.5〜47.5t大質量の「massive」から?
47.5t以上超過の「過」から?
丁度境目の重量のものは、重い方とみなす。

カナ記号用途部

カナ記号の2文字目以降は用途・客室構造に関する仕様を示す。

カナ記号用途部は私の見解では以下のように細分類できる。

優先順位分類記号仕様内容推定語源
寝台イネ1等寝台車(→区分廃止)イロハ順+寝る
ロネ2等寝台車(→1等寝台車→A寝台車)
ハネ3等寝台車(→2等寝台車→B寝台車)
座席1等座席車(→区分廃止)イロハ順
2等座席車(→1等座席車→グリーン車)
3等座席車(→2等座席車→普通車)
米軍用客車(→占領時一時期のみ)軍用(ミリタリー)の頭文字
接客食堂車、ビュッフェ車食堂
展望車展望
郵便郵便車郵便
荷物荷物車荷物
業務職用車役職
救援車援助
暖房車温(ぬく)める
配給車配って回る
車掌緩急車ブレーキ付き

合造寝台は、等級記号を列記してからまとめてネを付ける。つまり、2・3等合造寝台 ならば「ロハネ」となる。
緩急車については、 手ブレーキ付き車掌室が設置されていても、 編成端に来るのが当然と考えられた展望車などでは省略されていたようである。 真空ブレーキが実用化される以前の鉄道車両のブレーキは、 すべて手動であり、機関車以外は、 車掌やブレーキ手が乗車している車両にしかブレーキが装備されていなかった。 このため、車掌が常時乗務する設備が備えられている車両のみを 緩急車と呼ぶようになったらしい。
編成中間に連結する眺望車やサロン車を展望車と扱うかは事例によるが、 単にハとして扱う場合が多い。

仕様に該当するものがある場合は、この順に記号を並べる。 例えば、「マロネロ」「スイロネフ」「オハユニ」などとなる。 上の表での同一分類内では寝台・座席が優等順ということは確定しているが、 それ以外は、実例がないため判断できない。

JRになってから、機関車制御機能が付いた客車には電車の制御車同様、「ク」を 付するものが発生した(オクハテ)。この場合、「ク」はカナ記号用途部の先頭に 割り付けられている。

実例としては、 マロネロ(2等寝台2等座席合造車)、オロハネ(A・B寝台合造車)、 オハユニ(普通郵便荷物合造車)、オハネフ(緩急室付きB寝台車)などがある。


数字の意味

以下のようになっているらしい。詳細は文献を見つけ次第更新中である。

明治44年式

番号ボギー形式車種
5000〜2軸ボギー特別車、寝台車、食堂車
5100〜1・2等車
5200〜2等車、2等緩急車
5700〜2・3等車
6000〜1等病客車、2等病客車
6100〜電車
6400〜電車
6500〜3等車
7400〜3等緩急車
8000〜3等郵便車、3等郵便緩急車
8200〜3等郵便荷物車
8300〜3等荷物車
8500〜郵便車、郵便緩急車、郵便荷物車
8800〜荷物車
9000〜3軸ボギー車特別車、寝台車、食堂車など
9200〜2等食堂車、1等車、2等車、1・2等車
9300〜2等車、2等緩急車
9400〜2・3等車、2・3等緩急車
9500〜3等車、3等緩急車
9700〜3等郵便車、3等郵便緩急車
9900〜郵便荷物車、荷物車
10000〜1等寝台車、2等寝台車、食堂車
出展:鉄道ファン2005/2 (vol.45, No.526, p.139)

明治44年1月公布「車両称号規程」による。 基本型客車のみ対象で、それ以前製造のものは1〜4999に収められたらしい。 台車の種類で大分類した後、客車の用途区分で区分けしていた。
後に、病客車・電車以外は番号が不足したため、 10000を加算した値範囲も使用した。

昭和3年式

番号種別
1〜19999小型木造車
20000〜29999大型木造車
30000〜99999半鋼製車、鋼製車
ここでいう「大型」というのは、鉄道国有化以後、車両限界が大幅に 拡大された時期があり、その新限界に対応しているかが判断基準となる。 この基準での大型車では、車体幅が大きくなったため、ようやく、 2等座席車でも中央通路+横4列が確保できるようになった。 日本の鉄道車両が線路幅に対応する「狭軌車両」から、線路幅はそのまま ながら車体サイズが「標準軌車両級」になった時期といえる。


なお、この時期には気動車は客車の一部として扱われていた。

昭和16年式

初期には昭和16年以前の上2桁をなるべく維持して付番するように しているようだが、変更になっているものも多く、 対応関係について厳格な規定はないようである。

上記の中での順番は基本的には登場順。

使用している台車の種類で以下のように分類していた。

1の位が0-6
2軸台車車両、
1の位が7-9
3軸台車車両

昭和28年式

原則として昭和15(?)年式と同じだが、2軸台車車両の 番号が不足気味であったのに対し、3軸台車車両の新製が事実上 なくなったため、この間で番号の振り替えが行われ、 対応して現役車両で抵触するものの改番が実施された。

上記の中での順番は基本的には登場順。

使用している台車の種類で以下のように分類していた。

1の位が0-7
2軸台車車両、
1の位が8-9
3軸台車車両
これに伴う改番実例は、現在収集中。
さらに、10系では、台枠流用鋼体改造車について1位の数値を 7から降順に付番しており、寝台車や食堂車に実例がある。

昭和34年式

原則として昭和28年式と同じだが、1等が廃止になったため、 カナ記号のイロハの意味が名目上順送りになったことと、 イが付いていた車両のロへの変更が行われた。

車両番号部の数値を大きく飛ばすことで形式に準ずる区別を行う、 いわゆる、区分番台も併用されているが、 統一的に使われているのは、以下の通り。
900 試作車
2000 蒸気暖房から電気暖房への改造車(電暖改造車) (最初から電気暖房だった形式はのぞく)

客車は原則として、自在に編成を組むことができるので、 複数の形式をまとめる「系列」の概念が薄いが、 20系以降の固定編成設計の車両や、 外観に影響する基本設計が共通していると思われるものは、 「系列」と見なすことができる。 実際に、混結の不可と関係なく、10系などと呼ばれることも多い。 その具体例についてはここを参照のこと。


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