家庭配線を220V化せよ!

世の中、政府に不況対策を求めるという他力本願的雰囲気が蔓延しているが、 その是非は置いておくとして、提案されている話の観点がおかしい。 目先の対策だけを問題にすべきではなく、それによって後世にプラスの 効果が生じるようなことで対応すべきである。

後に残らないことで「赤字国債」を発行して景気対策というのは、 返す当てもなく生活費をサラ金から借りるようなものだ。 そのため、「赤字国債」は財政法で本来禁止されている。 そんなことは素人でもわかることだが、このような圧力がかかるのは、 一般に(洋の東西を問わず)「財界人」が目先のことしか考えない輩が ほとんどだからなのか。

この点で、後世への社会資本を残すための「建設国債」は、 財政法で正当化されているように、まだ、ましな選択である。 とはいえ、いまさら不要なダムや道路を建設しても仕方が無いというのも 一理ある。ならば、なにを「建設」するべきなのか。

他の稿で述べている、「国土基幹高速鉄道」(低公害で国内流通を確保する)、 「自動誘導高速道路」(公害と無駄な労力を減少させる)、 「路面電車建設」(都市内交通の低公害・面積効率化)などもある。 これらは「日本の交通事情をエネルギーと労働力の観点から効率化し、 国内活力を高める」という観点で共通している。しかも、 現在の社会経済構造のために直接利益が現われにくかったり、 全国的規模で実施しないと効果がでないため民間資本で可能な逐次改善では なかなか効果が現われないという点で共通している。 そして、この観点でいえば、もう1つ策がある。 それが「家庭配線220V化」である。

知っての通り、電気抵抗によるエネルギー散逸は、同一抵抗値に対して 電流の2乗で増加する。一方、電力量は電流と電圧の積である。 したがって、同一電力を供給する際には、極力、電圧を上げた方が損失が少ない。 とはいえ、電圧を上げると絶縁を強化する必要があり、貧弱な配線では 漏電の危険が伴う。

日本では漏電による火災を恐れたためか、現在でも家庭内配線の電圧は 100Vであるが、これは、(先進国に限らず)世界で最も低い。 これに次ぐのが米国の120Vで、欧州や南米では220Vを採用している国が多い。 技術力もあり電気製品を多数輸出しており、なにより 無駄を嫌う日本が100Vという低電圧というのはいかがなものだろうか。

実際、この電圧差のため、海外旅行の際には変圧器を用意したり、 乾電池駆動のものを使用せねばならない。 輸出用と国内用と2製品製造しなければならないのも不経済である。

そこで、この際、「不況対策」として「220V化」するのである。 これによって各種電気製品の効率が上昇し、エネルギーの無駄が減る上、 世界の標準に近い規格となる。 電気製品の買い替えも促進する波及効果もあろう。 これになかなか踏み切れないのは影響が大きすぎ、政府が音頭を取ることでも しない限り、実行に移せないからである。

かつて、「景気対策にデノミ」とか主張していたおめでたい政治家もいた ようだが、やるなら、このような後世に有益で、かつ、政府がやらないと ほぼ確実に実行されないことを考えるべきなのではないだろうか。