半田利弘の政治提言:日本の都市にもっと市電を!

今、ヨーロッパおよびアメリカの大都市では路面電車のリニューアルが盛んです。 交通量が集中する都市部では、バスを含む道路交通ではさばききれないほどの 交通需要があるからです。乗用車はもとより、バスであっても、単位面積当たりの 輸送力は鉄道に適いません。これを解決するには最新技術を導入した「路面電車」を 建設するのがもっとも効果的です。
 もちろん地下鉄や完全高架鉄道ならば敷地をほとんど 使わないので単位面積当たりの輸送力はより大きい(ほとんど無限大)と 言ってもよいのですが、なんといっても建設コストと期間がかかり過ぎることと、 乗降が不便で、バスや乗用車の乗降の便利さに勝てなくなります。
 一方、モノレールや新交通システムなどが各地で盛んに建設されていますが、 実は、これらは最新の路面電車よりも輸送力がありません。つまり、そこそこしか 混まない都市近郊やビル間ならともかく、ある程度の距離と交通需要がある 地区では、運びきれなくなるのです。行く先がポートアイランドや六甲アイランド しかない神戸臨海部ならなんとかまかなえるかも知れませんが、大阪モノレールや 多摩モノレールは早晩、猛烈なラッシュになるでしょう。既存鉄道線との乗り入れも できませんから、昼間の少し空いた時期になっても、乗り換えの不便さを 解消できません。
 かつて運輸省で運転手不要の自動誘導自動車の開発をしていたそうですが、 道路に沿って間違いなく進む自動車を作ろうとしたら結局もっとも良い方法は 線路を引くことという結論になったそうです。
 ヨーロッパの大都市へ行く機会があったら、そこでの路面電車利用を 経験してみてください。そして日本の状況と照らし合わせてみてください。 きっと、理解できるでしょう。
 ではなぜ日本ですたれてしまったのか。運輸省が阿呆だったこともありますが、 道路が狭いのを解消するために、線路(軌道)内に自動車を入れることを 許してしまったからです。電車は線路以外は通れないので馬鹿者が線路内で 停車していると電車が通れないのです。本来は、軌道にはみ出ない程度は 道路を拡幅していれば問題の解決になったはずなのですが、とにかく自動車用の 道路幅を確保することを優先したために、電車がまともに走れなくなってしまった のです。電車を廃止したため、人々はますます自動車を利用するようになり 交通渋滞には拍車がかかりました。欧米でも同じ過ちをした都市もありました。 しかし、これにこりてわざわざ最近になって路面電車を引き直しているところが 多数有ります。また、簡易地下鉄をつくって都心部だけは地下に入れ近郊では 路面電車にするという「路下電車」を作っている都市も増えてきました。 1998年秋開業の京都地下鉄東西線+京阪京津線がそのパターンに近いです。
 個人的には、天文台通り(より広く言えば、調布-武蔵境-田無-ひばりが丘) に路面電車を作って欲しいと思います。軌間を1067mmか1375mmにして、 データイムは西武線、中央線か京王線へ乗り入れ運転するととっても便利です。 誰か実現してくれないでしょうか。


なお、この話に関連した書籍として特におすすめするのは 宇都宮 浄人 著「路面電車ルネッサンス」新潮新書 です。 観念的な話ではなく、きちんと資料解析して書かれている 内容の確実さは、さすがです。