真の新交通システムたるガイドウェイ高速道路(誘導付き高速道路)を整備・建設すべし!

2001年2月1日 半田利弘(東京大学理学部)

長距離道路交通への具体的施策

交通機関を総合的に考えた場合、300kmから700kmの長距離で、日本の典型的な 幹線交通に相当する交通量がある場合、 新幹線級の設備を持つ高速鉄道が最適であることは、今や世界的に立証されつつある。 しかるに、輸送量がそこまで達しない場合や100kmから300km程度の中距離では 自動車専用道路を用いた自動車交通の方が便が良いというのも日常的に 感じることである。
 鉄道に対する自動車交通の優位性は、フィーダーサービスを必要としないこと、 つまり、同一の乗り物だけで直接、出発点から目的地まで到達することができる点で ある。この利点があるために、乗換や待ち時間ロスが発生する公共交通機関は 最高速度が圧倒的に速くないと到達所要時間で優位に立てない。
 一方で、自動車交通の大きな欠点の1つは、自ら運転する必要があることである。 1台ずつ個別に運転する必要があるというのは、運転動作によって運転者の時間が 拘束されることになるため、全人類的にみると、人的資源の浪費というべきである。 これを解消するには自動運転を実現すればよいことは明らかであるが、 その実用化には、自動車車両と道路とが別々に多数の事業者によって整備されている という現状から極めて困難であった。
 そこで、これを解消できる暫時導入策として誘導付高速道路整備という提案をしたい。 この案によって解消可能となるのは、上記、人的資源浪費の防止のみならず、 交通事故の減少、大気汚染防止まで可能であり、現代自動車交通が抱える問題を かなりの部分まで解消しうると考えられる。

誘導付き高速道路の機構

 基本的着想は、建設省で開発し、2001年、名古屋市で一般供用が始まる 「ガイドウェイバス」である。 この構想は、上記と類似した発想に立ち、 「路線バスによるフィーダーサービス+地下鉄級大容量都市内鉄道」から、 輸送量が小さいことに限定されるものの、 これをシームレスにした交通システムであるといえる。
 ガイドウェイバスでは、誘導レールを車線の両側に設け、これによって車体を はさみ、ハンドル操作なしで運転が可能となっている。 ここで私が提案する誘導付き高速道路は、車体の右側のみに誘導レールを設置し、 そこへ接する案内輪を車両に装備するという点がガイドウェイバスと 異なっている点である。 右側のみの案内輪なので、車両が左側にそれないように、案内輪の 支持腕に圧力センサーを設置し、ここに加わる力を検知することで、案内輪が常に 誘導レールに接触しているようにする。 誘導レールはガイドウェイバスや新交通システム同様、垂直面を持つ壁で、 その表面を車両の案内輪が接触する。 進行方向を安定させるために案内輪は車両の前後2ヶ所に設ける。
誘導レールを右側のみにする利点は、 随時左側への離脱および左側からの進入が可能とすることにある。 これによって、以下の利点を生じることができる。


走行時の様子


操舵誘導進入時の様子


 実際の動作は以下のようになる。

  1. 車両の進路誘導システムを起動する。
  2. 車両に設置された案内輪が展開する。
  3. 誘導レールに接するように車両を接近させる。 システムの初期には手動で接近するようにしてもよいし、 進歩すれば自動接近するようにすることも可能であろう。
  4. 案内輪支持腕に取り付けられた応圧センサーによって接触を検知し、 進路誘導を開始する。
  5. 進路誘導を受けている間は、車両のハンドルは操作不要。
  6. 進路誘導を解除する際には、ハンドル操作によって案内輪を 誘導レールから離すことによる。これと、進路誘導システム停止準備 操作との論理積によって、実際のモード解除を行うことにしても良い。
  7. 進路誘導が完全に解除されたら、案内輪を収納する。

このようなシステムを、道路側及び車両側に設置し、新しい交通機関として 発足させることが、ここでの提案である。

段階的整備案

 この考え方の究極は、自動運転自動車にたどり着く。 自動車の自動運転については過去より多数の考え方があったが、 今日に至るも、実用化された物はない。 これは、鉄道や大型航空機・大型船舶と異なり、 道路施設はともかく、車両を整備する事業者の数が極めて多いことによる と考えられる。このこと自体が、自動車交通の普及に直結しているので、 本質的問題点と見るべきである。
 したがって、このようなシステムの実現を図るには、 システムに対応する設備を整備した車両としていない車両とが混在しても 問題が最小限で済むようにする、具体的段階を考えることが重要であると考える。
 そこで、以下に、具体的な段階別整備計画を示した。
  1. 進路誘導運転:この段階では、進路の誘導のみを行う。 速度制御は従来通りとし、車両の改造コストを最小限とする。 ガイドウェイバスの例を見るまでもなく、既存車両を改造して 進路誘導装置付とすることは容易であると思われる。 ハンドル操作がなくなるだけでも運転者の労力を大幅に軽減でき、 交通事故の減少に直結することが予想される。
  2. 自動運転:車間センサーを設置するなどにより、速度制御も自動化する。 これにより、運転者の労力負担を事実上なしにすることができる。 また、交通量制御や定時運転確保も容易となる。
  3. 電気運転:電動機駆動のハイブリッド車の普及と合わせて、誘導レールに 併設した給電レールからの電力供給を行い、これを車両で集電することにより 車載発動機を運転することなく、運転を可能とする。
  4. 将来へ発展:ここまで普及した段階になれば、接触型誘導レールに代わる、 非接触センサーなどを用いた進路誘導を導入することも可能となろう。

発展性


 このシステムの特徴として、アプローチに特別な施設が不要なことがあげられる。 誘導レールは、まず、高速自動車国道に設置されるべきである。 左側からのアクセスが自由であるため、一般道とのインターチェンジはもとより サービスエリアなどへのアクセスについても、特殊な地上設備面を必要としない。 高速自動車国道は、原則として右分岐が存在しないため、最も右側の車線を 誘導付き専用車線とすることが可能である。
特に、片側3車線以上となる高速自動車国道では、最も右側の車線をこれ専用に 当てることも可能であろう。 普及のためのメリットとして、進路誘導時には、制限速度を上乗せする(本則+20km/h などと規定すればよいのではないか)ことを実施すれば、 これを追い越す車両はあり得ないはずなので、最も右側の車線を占拠することに 道路交通上の不都合は発生しないはずである。
 車両側については、高速自動車国道を長時間運行することが多い、定期旅客バスや 定期貨物運送業者に優先的に取り付けるようにすることがよいかと思われる。 有効に普及させるには、税制を含めた優遇措置や補助金制度なども考える必要が あるかも知れない。