南半球での排水

 世の本には「排水口で水が渦を巻くのは地球の自転が関係しているのだ」と 書いているものが多数ある。どうやら多くの日本人が、そのように思っているようだ。 しかし、地球の自転による力は、排水口付近の数センチでは極くわずか。 こんな効果が効くのだろうかと、かなり疑っていた。
 しかし、理論だけで判断するのは観測屋/物理実験屋としては恥である。 せっかくチリまで来たのだからと実験してみた。

1.実験場所
 サンチャゴ市内にあるヨーロッパ南天天文台外来者用宿舎guest houseの 風呂場で入浴した際に、お湯を抜いて確かめた。実験は1998年12月3日夜 (現地時間)に行なった。

2.方法
 風呂桶から立ち上がり、静かに栓を抜いた。水は最初は渦巻きを示さずに 流れていったがやがて上から見て反時計周りに渦を巻き流れていった。 2回繰り返したが同じであった。
 次に、再びお湯を満たし、風呂桶に座り込んで、静かに栓を抜いた。 たまたま、右足が前に出ていて排水穴の右側に来ていたが、座り込んだのは 様子を良く見ようとしたためである。 今度は、水は上から見て時計周りに渦を巻き流れていった。
 再度、立ち上がって実験したが、やはり反時計周りに流れた。

3.結論
 地球の自転は関係ない!
 私が小学生の頃に読んだ「子供の科学」誌には「排水口が完全には円形では ないので、微妙な摩擦の違いで決まるのだ」とあった。排水穴の近くに 足を置くと渦巻きが逆になったことから考えると、どうやら、こちらが 本当のようである。
 で、あるならば、なにも南半球まで出かけなくとも、自宅の風呂場で排水口の 周りに色々なものを置いてみて逆向きに渦巻くかどうかを調べるだけで 確かめることができるはず。ご自身でお試しあれ。