半田利弘のSF感想:リム・ランナーズ

 C.J.チェリーのスペオペです。「ダウンビロー・ステーション」で提示した 地球会社艦隊vs連合vs同盟の3巴対立世界を舞台にしています。
 読んでいて、鋼とオイルが感じられます。スペオペって元来西部劇っぽい イメージで捕えられていますが、これは、ディーゼル船時代の荒くれ船乗り の世界ですね。ドックの描写など、鋼鉄の巨大な宇宙船が、鋼鉄のガントリー クレーンに囲まれてドックインしているっていう感じです。重いんですね、 船もイメージも。
 無法者の世界ですから、描写はかなり暴力に満ちています。「ダウンビロー・ ステーション」はずいぶん前に読んだので、詳細を覚えていませんが、 なんとなく、衰退して行く人類文明って感じが色濃かった記憶があります。
 ハインラインの「宇宙の戦士」で広く知られるようになった「パワードスーツ」 ですが、ここでは、より詳細に描写されています。曰、1人ずつ調整しないと 使えないとか、初心者は必ず尻餅をつくものとか。
 最後にあまり救いがない感じなのが頂けません。主人公は女性なのに、しかも 作者も女性なのに、「女子供に読ませてはいけない」感じがする、やばっちい 話です。ルビが多用してありましたが、俗語卑語が続出しているようで、 翻訳者は、さぞ苦労したかと思います。 ちなみに、「リム・ランナーズ」を訳すとしたら「辺境放浪船」とでも なるのでしょうか。