半田利弘のSF感想:ガイア−母なる地球

 知性化戦争シリーズで定評の有るブリンの作。 うって変わって、地球での話。設定されている宇宙も知性化戦争シリーズとは 別物のようです。ぞくぞくする不安感を があります。
 近未来の舞台がそこそこ悲惨なうえに説得力があるというのがこわいところ。 ヘルベチア戦争の設定はたまげましたが、他の海上都市国家とか、耕地の砂漠化とか 我々は対応できるのでしょうか?
 中国人の海外旅行客が至るところにいるという描写は笑わせてくれます。 団体旅行客を見て、「彼らもそのうち日本人のように洗練された個人旅行者になる だろう」と主人公が感想を述べるのは、書かれたのが日本人団体旅行客が顰蹙だった 80年代当時だということを考えると、著者の達観を伺わせます。もちろん、 かつての米国人や英国人がそうだったという歴史的事実を踏まえているのだと 思いますが。
 後半は、かなりご都合主義的です。まあ、そうしないと、ハッピーエンドで 終わらないからでしょうね。 (読了)