半田利弘のSF感想:アースライズ

 マイクル・P・キュービー=マクダウエル著のシリーズ3部作の第1作です。 ファーストコンタクト物です。
 核戦争を阻止するために発明された核反応抑止技術により、世界に エネルギー危機が訪れ、科学研究が大幅に抑制された地球で、 地球外文明からの通信が受信されます。これに答えるために、 科学技術文明の再たちあげに如何に取り組むかが1つの大きな流れです。 これには設定されている国際政治構造が楽しめます。米国や日本・ヨーロッパを どう扱っているのかが、未来物SFのひとつのカン所ですが、なかなか面白い 設定になっています。日本が軽くあしらわれているのは、ちょっと心外ですが、 上記の設定ですから、仕方ないのかも知れません。
 科学技術が再建されていくようすなどわくわくさせるものがあります。
 これにくわえて、ファーストコンタクト物の定番である、 通信をどう解読するのか?そこから予想される相手異星人の 姿や文化の予想がどう正しいのかとかなどが、もう1つの楽しみになっています。
 全体を通じての「個人としての主人公」が希薄なストーリー展開ですが、 そのために、科学研究の現場にいる私としては、かえって現実的に感じています。
 お勧めの1冊です。
(読了)