ふるさと薩摩川内 いつか暮らした懐かしいふるさと
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川内大綱引
ふるさと薩摩川内   

綱の中央で繰り広げられる肉弾戦            

 川内大綱引は、綱の形状、スケール、ルールなど普通の綱引きとは違う。
 長さ365メートル、直径35センチ、重さ7トンもの綱を仲秋の夜3千人もの人が国道3号で引き合う、まさに「日本一の綱」である。

 
違うのはここ

 川内大綱は綱の長さ、太さ、重さの全てが桁外れで、綱の形状、合戦の方法まで違います。
 
 綱の両端には
ワサという直径2mほどの輪があり、合戦場の中央部には、綱が引かれていった時に、このワサを掛けるためのだん木という杭が立ててあります。

 開始の合図で互いに綱を引き合うのは通常の綱引きと同じですが、川内大綱引きは、互いに相手の引き手をけちらすため、綱の中央で上半身裸の押し隊という青年たちが一斉にぶつかり合います。綱の中央部での肉弾戦が繰り広げられる中、綱が何れかに引かれていった時には、ワサをだん木に掛けそれ以上引かれないようにします。

 押し合い引き合いの末、一度力のバランスが崩れ綱が動き出すと、もう少々の力では止まることはありません。引かれた側は綱が引き去られるのを避けるため、大急ぎでワサをダン木に掛けるため走り出しワサの付近は騒然となります。

 綱をだん木に掛けた側、つまり綱を相手に引かれた側は、引き手、押し隊の体勢を立て直してそれを引き戻そうとします。互いの作戦のもと太鼓隊の合図で、これが夜8時頃から10時頃までの約2時間にわたり繰り返され、青年たちは熱く燃えます。

 合戦の間にワサをだん木に掛けそこなうと永遠に綱を持ち去られ、意気盛んな多くの引き手押し手ての中では、仕切り直しは不可能でこの時点で勝負が決してしまうこともあります。緊張感の中、この2時間の間に優勢な方が勝利という審判がくだり、綱引きはオフサイドとなります。

 400年を超える歴史があるといわれる、この大綱引きは、最初、関が原の戦いに向かう島津軍の士気を高めるため行われたといわれます。それ以来、江戸期を通して北薩摩の各地に広まり継承されていました。川内地域の最も大きな綱として残ったこの大綱引きは、近年は向田地区と大小路地区の商業の繁栄を占う祭りとなり、毎年9月22日の夜開催されます。
 関が原の戦い(1600年)の数年前、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、島津軍が朝鮮に駐留していたことがありましたが、その折りに、この祭りを持ち帰ったのではないかとの説もあるようです。 

合戦前には、だん木祭りという神事が行われ綱引きの安全と今年の五穀豊穣に感謝します。
上方(赤)下方(白)の大将以下トップが正々堂々と戦い合うことを誓います。
綱が乗せられている赤い杭が「だん木」、会場の国道3号に穴を掘って設備されています。
赤(上方)白(下方)の健闘を願い記念撮影も
本戦を前に大きな綱を頭上に揚げ、立派な綱を市民に披露
大綱引きは健康の象徴。近年は市内各中学校を卒業して還暦を迎えた方々も参加するようになりました。
いよいよ本戦。綱を引けの合図は、1番太鼓から2番太鼓3番太鼓と伝わっていきます。 
中央では押し隊の勢いで互いに身体が宙に浮く勢いです。
   2011年9月22日
後方では、太鼓の合図で力の限り引き合います。
相手が綱を引き不利になると、だん木にワサをかけようと必死で運びます。
末端部のワサが大勢で運ばれ、アッという間にだん木に掛けられます。

引き戻す時はこのワサをだん木からはずし自陣に運びます。引き戻しに備え準備は万端です。

引き戻して来た下方(白軍)の綱。引き手の少ないところでは綱を抱えることもできないほど重い。
制限時間の10時直前に引き戻した白軍
時間までは死守の覚悟
綱には座れないほどの引き手が尻を降ろして反撃に備えます。

この後の最後の引き合いで守り切り、この年は白軍(下方)の勝利となりました。
綱練り
夜の綱引きに向けて、午前中から市民有志で綱練りが行われます。
市内の3校の高校生も綱練りに参加してくれます。
綱の最先端では立山という器具を使って輪を全力で回して綱を練り上げます。
この器具の担当は、毎年、自衛隊川内駐屯地隊員。力持ちの協力をいただいています。
これまでに練り上げていた3本の綱を1本に練り上げていきます。
立山では力持ちが器具を回していきます。
3本綱に噛みこませてあるのは、「シンコ」という器具。シンコは練り上げのリズムに合わせて進んでいきます。
それぞれの持ち場で手助けして練り上げていきます。
こちらは立山が軽く回せるように小綱と呼ばれる綱を使って手助けをします。
綱を足で転がしながら、立山、シンコとリズムを合わせながら練り上げます。
「転がして、転がして、転がして、持ち上げて引っ張る」
3本の綱から共同作業で練り上げられた直径35pの立派な綱(365m)が完成
ワサ作り 
綱の両端のワサになる部分は練られていない。これから先は太さを調整しながら器具を使わず手で練り上げます。
ハンマーでたたきながら形を整えていきます。
ワサの大きさも作戦のひとつ
大きく作るとだん木に掛け安いが、重くて引く部分の長さが短くなる。

こちらは下方のワサ
ワサまで作り上げ、綱はとりあえず完成。運搬まで小休止
こちらは上方のワサ
綱出し
完成した綱をもって、合戦場の国道3号へ
会場に持ち込まれた綱は、最後にワサのお化粧や持ち綱をつけて本番を待ちます。